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第2部 パネルディスカッション

パネリスト 千葉 正美 氏(宮城県議会議会改革推進会議会長)
  襲田 正徳 氏(全国都道府県議会議長会事務総長)
  襲田 正徳 氏(全国都道府県議会議長会事務総長)
  妹尾 克敏 氏(松山大学法学部教授)
  岩名 秀樹 氏(三重県議会議会改革推進会議会長)
コーディネーター   大森  彌 氏

(大森)

 それでは、引き続きましてパネルディスカッションに入りたいと思います。よろしくお願いいたします。
 私は、自分で言いたいことのいくつかを申し上げてしまいましたので、あとはこの4人の方々から自由に御発言いただくという打ち合わせになっています。
 本日は、御案内のとおり、宮城県と三重県、我が国の都道府県議会の改革のリーダー格でおられる2県の、しかも現在その推進会議の会長さんをされているお二人が御登壇してくださっております。
 それから、私もいろいろお世話をいただいているのですが、全国都道府県議会議長会の総長が今日はおみえくださっていますので、現在の研究会の様子などについても、一部お話いただけるものと思っています。
 それから、妹尾先生は、地方議会そのものについて御関心をお持ちの数少ない研究者でございまして、この4人で議論を展開していただければと思っています。

(千葉)

 宮城県議会の千葉正美でございます。
 県議会での改革の取組状況を報告せよというお名指しでございますので、これよりさせていただきますが、その前に先ほどの大森先生の基調講演は大変心強く拝聴させていただきました。議会改革は私らには避けて通れないところでありますから、ぜひこれからも強力な応援団として御指導を賜りますようにお願い申し上げたいと思います。  議会改革でございますが、時間がありませんのでかいつまんで申し上げますが、よく「住民意思と議会が乖離しているのではないか。議員は身近に感じるけれども、議会はどこにいるのか分からない」という声を聞きますけれども、こういう点をどういう風に是正するかという一つの視点があろうと思いますし、議会は何をしているのか分からないとか、何ができるかも分からないという指摘があるのも事実のようでございますので、こういうものにどのように議会自身がこたえて、住民と一体感を持っていくかというところに一つの視点があるように思いますし、最近特に分権改革、先生からもお話がありましたように、第一次の機関委任事務が廃止された第一次分権改革、そして財源問題の第二次分権改革、これによって私たちの置かれている立場が大きく変わってきております。こういうことを踏まえて、新しい時代にどう対応していくかというのが、この議会改革のテーマであると思っております。
 そうした中で、宮城県議会の取組でありますが、改革に至った要因を、二つほど挙げてみたいと思います。一つは、これは我々の県にとって不名誉なことですから、あまり申し上げたくありませんが、実は執行部の不祥事件がきっかけでありました。平成5年に執行部のほうに不祥事件が発生いたしまして、これは御記憶の方もいらっしゃると思いますが、裏金事件というのが起きておりました。続けて、平成7年には情報公開に関連した食糧費の問題、そして同じく平成7年に旅費の問題、不適正支出の問題でありました。こういう問題が発生して、これは政治家個人のこと、さらには執行部の関係ではあるけれども、その予算を審議した議会はどういうことをやったのか、決算をした議会がどういう監視をしたのかということがテーマになってきたわけであります。議会としても、これらについては直ちに対応しなければならなかったということで、いわゆる監視機能の部分については、これがスタートになったということであります。
 二つ目は、先ほど申し上げましたように、分権改革であります。従来、都道府県事務の7割が機関委任事務で、これは議会が触れられない部分と言われておりましたが、その後の改正によって、475法律のうちの298法律、54.7%になりますが、これが自治事務になり、247法律、これが45.3%ですが、法定事務に大別されました。廃止も40ほどありますけれども。自治事務は勿論でありますが、この法定事務についても議会の関与できる対象になったということから、大きな変化が出てきたわけであります。こういうものを踏まえて、議会のあるべき姿を模索してきたというのが、第2点の私たちの要因でありました。
 こういう中での、活動状況でありますが、議会ではいろいろな機関を設置して、これらの問題に対処してまいりました。平成5年、事件の発覚直後でありますけれども、不祥事関連で最初の調査特別委員会を設置してから、不祥事関連で6回、それから議会改革関係で3回、検討機関等を設置して、これらの問題に対処してきたところでございます。
 その結果、宮城県議会での改善済事項と言いますか、改善が図られたものを申し上げますと、監視機能強化部分では、平成9年にすでに予算特別委員会、決算特別委員会、これは全員構成でありますが、一問一答方式を導入しております。従来の本会議質問だけですと一方通行でありますから、突っ込んだ質疑ができないということから一問一答方式の導入をし、その結果、決算も4回にわたって不認定にした経緯があります。
 それから、立法機能の充実についてでありますが、これは一番大きいのは、議会事務局の調査課に政策法令班を新設したということです。これは知事のほうの理解もありまして、知事部局から法令担当の者を3名出向させていただいて、そこから議会の、後ほど申し上げますが、議員提案条例の活動が活発化してきたということがございます。さらにその活動についての費用でありますが、これは各都道府県議会も処理済みと思いますが、政務調査費が自治法改正によって法定化されましたので、これについての条例制定を行って、予算上の裏付けを作ってきたという経緯がございます。
 さらに、改革のきっかけがこのようなことでありましたから、議会に対する県民の信頼を得るというのが最大の課題でありましたので、それに向けて、県議会独自で情報公開条例の制定を行うとか、宮城県議会で独自に政治倫理の確立の条例も制定してあります。さらには、各種会議は基本的に全部公開と。代表者会議は一部非公開がございますが、すべてにマスコミを入れて公開にするという形に直しました。
 その他に、議会の広報テレビ番組は、定例会ごとに4回行うとか、議会の傍聴は許可制であったものを、これは原則認めるというふうに変えてございますし、議会が何をやっているか分からないということにも対応するために、一般質問等の質問項目、さらには代表質問の質問項目、日程等もそうでありますが、前日の新聞にこれは全部記載をするという手続等も取らせていただきました。他に議員宿舎の廃止でありますとか、議会バスの廃止でありますとか、さまざまなものがありますが、これらは議員の活動にとどまるものは立法活動なり、監視活動なり、議会活動に役立つものはスクラップ&ビルドで変えていくという方針に従って進めてきております。
 その結果の成果を、1点申し上げますと、この後、総長さんのほうからもお話があるようですけれども、議員提案条例でありますが、宮城県議会はお陰様で、政策条例が10件、それから議会と執行部の関係、さらには議会内部の規程等を条例化したものが6件、それから条例改正したものが2件ということで、かなり多くの議員提案条例が制定されております。
 さらに、この他に議員提案条例として教育の日を定める条例であるとか、行財政運営の見直しを促進するための条例であるとか、にも取り組んでいるところでございます。
 時間がなくなってきましたけれども、もう1点だけかいつまんで申し上げますが、先ほど、各機関を設置して対応策を協議してきたと申し上げましたが、一番直近の提言を実は昨年12月に議長宛に提出をいたしております。これは我々の職務であります「議会審議の充実に向けて」が一つ、それから「議員提案条例の充実に向けて」が二つ目、三つ目として「制度改正に向けた連携について」、各ワーキンググループを設置いたしまして、その中で専門的に調べていただいたものを議員全員で構成する全体会議にかけて、議長に答申したところであります。
 内容をかいつまんで申し上げますと、議会審議の充実に向けては、一問一答方式に対面演壇方式、これは三重県議会がすでに実施なさっているようでありますが、この問題。それから、専決処分制度の厳格な運用と臨時議会の開催について、常任委員会、特別委員会の活性化等について提案をいたしております。
 それから、2番目については、議員提案条例の充実に向けましては、さまざまな議員提案が出てまいりましたので、ある程度のスキームを作るべきではないかという話が出てきておりまして、この提案をいたしております。
 それから、議会で政策条例の作業を始めますと、専門的な知識がどうしても必要になってまいりますので、議会の中にアドバイザー制度が導入できないかという提案をいたしております。それから、事務作業をするための補助員でありますけれども、法科大学院の設置等々が決まっておりますので、例えばその学生の皆さんにお手伝いをいただくようなインターンシップの制度は導入できないものかということ、などなどの提案を行っておりまして、只今、議長の下でこの提案を整理いただいて、それぞれ担当する関係機関に付託をしていただいているというのが現状でございます。

(大森)
 ありがとうございました。ちょっとすみません。一言だけで結構ですが、このぐらいいろいろ足早に改革した時に、知事部局と言うか、知事さんのほうの反応と言うか、態度について何か最初の御発言で御指摘いただくことはございますか。少し個性的な知事さんですよね。

(千葉)
 議会改革を進めているところは、知事も改革派だとよく言われますが、一面で私は当たっていると思います。と言いますのは、後で報告する機会があるかと思いますが、基本計画を三重県でも議決対象にいたしましたが、これなどは執行権との兼ね合いがありまして、好む人はいないと思います。そういう時に、法に触れなければまずやってみる。その結果、悪ければ直せばいいという姿勢が大事と思います。伺っている範囲では鳥取の知事さんもそうだと聞きましたが、そういう意味では、執行部、知事の理解も必要な部分であるという認識も持たせていただいております。

(大森)
 じゃ、議会と知事さんの関係は、比較的良好なんですか。相当緊張のある関係なんですか。

(千葉)
 本県知事の方針は、根回しは全然なしということでして、本会議場で一発勝負ということです。もう一つ例を申し上げますと、東京都議会で30年ぐらい前にあった再議権の行使ですね。平成12年に宮城県議会で2例目として再議権の行使が行われております。「良好な」ということよりも緊張状態が保たれていると思っております。

(襲田)

 全国都道府県議長会事務総長の襲田でございます。
 先ほど、大森先生のお話にありましたが、今、全国で、特に都道府県の場合ですが、議会改革に熱心でございますが、特にここ三重県は、言わば、先導役で頑張っておられまして、その三重県のシンポジウムに参加させていただきまして、本当に光栄に存じているところでございます。
 10分程度ということで、短い時間でございますので、主に3点につきまして、つまり一つは「第一次分権改革の意義と地方議会」、それから第2点目は「現在の都道府県議会におきます議会改革の取り組みと評価」、それから3点目は「今後の方向」という、この三つにつきまして簡単にお話をさせていただきます。
 まず、第一次分権改革ですが、御案内のように、地方分権一括法の施行によりまして実施された改革を指しているわけですが、一番の成果というのは、何と言っても機関委任事務が廃止されて、自治事務と法定受託事務ということで、共に地方公共団体の事務になったことでございます。ですから、都道府県あるいは市町村で行っている今の仕事の中には、国の事務というのは無くなったわけでございます。
 それから、後で出てまいりますが、条例制定権の範囲が拡大しまして、自治事務、法定事務、両方に対して条例の制定権が及ぶ、すなわち議会の権限が原則として及ぶということであります。そして、細かいのですが、大きな点は、今まで長の規則制定権、そちらのほうでは過料、行政上の秩序罰ですね。刑罰ではなくて、行政上の処分のほうですが、5万円以下の過料というのを科することができたわけですが、今度は長の規則だけではなくて、条例のほうでそういうのも科することができるようになった。つまり、従来の刑事罰プラス、そういう行政罰も入ってきたということが、長との関係で言えば、議会の条例制定権が相対的に強化をされたというふうに言っていいかと思います。
 それから、自治事務、法定事務の両方に検査権なり調査権が原則として及ぶ。また、国の関与というのも法定されまして、先ほど、先生のお話にもありましたが、いわゆる通知とか通達というのは、基本的にこれは国の技術的な助言だということでございます。あくまで法令解釈権は、国であろうと都道府県、市町村であろうと、対等であるということになったわけでございます。もしそれに異論があれば、国地方係争処理委員会にかけて、それでも不服がある場合は高等裁判所に行くという仕組みになったわけでございます。
 これらをどう評価するかということですが、これらは主として「団体自治」の拡大に係る改正であったわけです。ただし、団体自治のうちでも、地方の税財源の充実確保の問題につきましては第二次分権改革の課題ということで、先送りになっています。それが今政府が進めているいわゆる三位一体の改革にかかわってくるわけでございます。
 もう一方の地方自治の大変重要な中身であります「住民自治」の拡充の問題、これにつきましてはほとんど手が付けられていないということでございます。地方分権推進委員会の最終報告では、住民自治の拡充方策がおそらく第三次分権改革の最も中心的な課題になるのではないかと述べられているわけでございます。当然ですが、私どもとしては、この住民自治を具体化するための諸制度の根幹を成すものが、まさに議会であると。議会こそが住民代表機関であると考えているわけでございます。
 そういう中で、今度は2番目でございますが、各都道府県でどういうふうな改革が現実に行われており、これをどう評価するかという問題でございます。お手元に配付いたしております資料集の中に、3頁以下ですが、『都道府県議会における議会改革に関する取組状況』というのがありますので、ざっと御紹介させていただきます。ただこれは、実施していただいていることの全部ではございません。一部でございますので、念のため申し上げておきます。
 大きく三つの柱で整理しておりますが、最初のところが「開かれた議会の推進」ということで、これは「身近な議会」とかいろいろな言い方がございますが、要するに住民に議会をオープンにするということで、例えば(1)にございますように、委員会は47都道府県で原則公開ということで、委員長の許可が要ったり要らなかったりしますが、基本的にはもう公開してやっております。それからモニター室の設置とか、そういうことで委員会でもできるだけオープンにしています。委員会の記録も住民に閲覧できるようにしているところでございます。
 それから、次のページで情報公開のことが書いてございますが、全都道府県議会が情報公開の対象になっております。議会独自で条例を作っているところもあれば、知事部局と同じ条例の中で実施機関に入っているところとかありますけれども、基本的に全部対象となっております。
 なお、個人情報保護条例との関係では、18の議会が対象実施機関となっているということでございます。
 それから、最近特にインターネットの活用が非常に広がっておりまして、議会にとっても大きな武器になっているわけでございますが、ホームページの充実については、本会議あるいは委員会をインターネット中継する、あるいは会議録も検索できるようにする、それから議員の資産をホームページで公開したり、あるいはホームページで議会への意見募集をするということで、インターネットの活用が急速に進んでおります。
 それから、下のほうに議会中継の充実ということで、これは庁内モニターテレビ、普通のテレビ等で行っております。
 それから、次のページで議会の広報、これも非常に重要でございますが、ここに書いてございます他に、テレビ討論をするとか、議会のPRコーナーを作るとか、あるいは最近ですと、議長さんとか委員長さんが定例的に記者会見するとか、広報活動に力を入れております。
 それから、傍聴者への配慮ということで、身障者あるいは乳幼児等に対する配慮、言わば議会棟のバリアフリー化というのも積極的に進んでおります。
 住民との関係強化では、子ども議会あるいは女性議会、出前委員会、あるいは出前の県議会、例えば「こんにちは県議会です」という長野県の例とかが進められております。
 それから、次のページが2番目の「政策立案機能の強化」ということで、これは後ほど議論があろうかと思いますので簡単にいたしますが、議員提出でいわゆる政策条例というのがどんどん出てきております。後ほど御覧いただきたいと思いますが、議員提出条例に非常に熱心な県は、宮城県、それから三重県、鳥取県、こういうところが上位3クラスぐらい、他に島根とか高知とかも多いですが、極めて特色ある動きかと思われます。
 それから、委員会の活動の充実ということで、勿論、審議時間を十分確保する等々、ございますが、参考人制度の活用、あるいは提言を取りまとめて知事や関係部局に提出するということが行われております。それから条例案を立案するにはその体制整備、政策法務の専門家がいなければいけないということで、議会事務局の法務部門を充実するとか、議事調査と一緒になっていた課から調査部門を分けるとか、衆参の議院法制局に人を出すということで、議会の補佐体制の整備も図っているわけでございます。
 それから次のページの大きな3番目、「監視機能の強化」ということで、自地法96条2項の活用というのもございますし、運営等の改善として、先ほど出ておりました一問一答方式の導入、予算・決算の特別委員会の設置がございます。その他の取組といたしましては、政策討論を議員同士が行うとか、本会議場で対面式演壇を採用するとか、あるいはここに書いてございませんが、審議会等に議会から委員を出すのは二元代表制からしてどうかということで引き上げるとか、いろいろな試みが成されているところでございます。
 これらをどう評価するかということでございますが、時間の関係で一つだけ申し上げれば、議員提出で条例を作るというのは、言わば今までやらなかったこと、行政としては難しかったところをやろうということですから、それなりに課題が多いわけですね。ですから、一つは十分時間をかけて、住民参加でやるということ。それからもう一つは、法制的にきちっと説明できるかどうか、特に96条2項ですと、いろいろ法律上の難しい議論もありますので、いざ裁判になっても、負けないだけのきちっとした理論武装をしておく必要があるという感じがいたしております。
 それから大きな3番目、今後の方向でございますが、議会制度の改正が必要であると考えております。現在第28次の地方制度調査会でいろいろ審議がなされておりますけれども、課題の一つとして「議会の在り方」というのが審議項目に入っております。今までは他のテーマ、例えば道州制等が審議されてきたわけですが、この4月以降に議会の在り方が検討される予定でございます。そういうことを見越して、私共としては、去年、都道府県議会制度研究会を立ち上げました。なお、市議会議長会、町村議会議長会も、それぞれ似たような研究会を立ち上げております。
 そこで学識経験者に議会機能強化のための制度改正について、全体的に理論的な見地からの議論もしっかりしていただいて、それらを基に議長会という組織として言うべきことをきちっと言っていこうというのが基本的なスタンスでございますが、最近の地方分権の動きとの関連で言いますと、従来あまり議論されなかったようなところが重要になってきております。先ほどの話と若干ダブりますが、専決処分をとってみても、例えば三位一体の関係で税率等も地方が決めるということになりますと、従来の「議会を招集する暇がない」ということで、一番大事な議決権を長の専決に委ねてしまってよいのかということになってまいります。
 確かに全員協議会等を開いて、ちゃんと執行部が説明した上で今までやってきているわけですが、最近は、標準税率の他に制限税率と言っていたのがなくなるとか、あるいは今後所得税から個人住民税に税源委譲されるということになって、その税率がフラット化されるということになりますと、例えば5%から10%になれば、それは住民から見ると地方は増税になるわけです。ただ、所得課税全体で国税、地方税を通じて、実質的な増税にならないよう適切な調整措置をすることになるわけですが、地方だけで見ると増税になるわけです。そうすると議会は、もともと歴史的には君主が勝手に税金を課してはいかんということから発生したわけですが、そもそも負担とサービスの在り方、これをきちっと議論する場が議会であるべきではないかという新しい問題意識も出てきているわけです。
 現行制度について、もともとおかしいという部分と、最近のいろんな行政課題に議会がどういうふうに適切に対応していくか、その両面からいろいろ議論をしているわけでございます。必要な制度改正、それから議会自身で活性化なり改革のための運用の改善をする部分と両方ありますけれども、両方相まって、議会として期待されている役割をしっかり果たしていくべきだと考えております。そもそも議会というのは、単に行政体制の一部ではなくて、まず先に政治があって、それから行政だったはずです。戦後50年を見てみると、執行はあったけれども政治がない、あるいは経営がないというのが日本の地方自治の実情でしたから、そこに基本的な視点と言うか、パラダイムの転換があるべきであり、政治の復権ということを意識して、必要なことは主張していくというのが、現在のスタンスでございますので、皆様方の御支援もよろしくお願いしたいと思います。
 とりあえず以上でございます。

(妹尾)

 四国の松山大学で地方自治法などという、言わば生臭い法律をやっております妹尾と申します。
 私のような田舎者がなぜこういう席にいるかということですが、昨年の5月と7月に松山市議会が主催して、議会改革の催しをおやりになりました。その時にちょうど地元に、何が専門かよく分からないけれども、使えそうな人間がいたということで、二度ともお付き合いをさせていただきましたら、このたびこういう運びになったということでございます。
 基本的には、一応、地方自治法という講義科目を担当しているという外観はありますが、もともと私は法学部政治学科の出身でして、そこでは地方自治体の権力構造などというのを一生懸命勉強しておったわけでございます。その学部のゼミの指導教授が、「法律と財政の観点を欠いては地方自治は分からないよ」というふうに何度もおっしゃいますので、財政は私にはできないので、それじゃ法律を勉強しましょうかということで、大学院は法律に進んだという、どっちつかずのことをやっておるわけです。かねてからこの都道府県議会、市町村議会、これは合わせて諸先生方は「地方議会」とおっしゃいますが、「地方」という存在はないので、私はこれをあえて「自治体議会」というふうに呼ばせていただいております。したがって、本日ここに看板が『全国自治体議会議会改革推進シンポジウム』と書いてあるのは、我が意を得たりというところがまずはございます。
 要するに、都道府県と市町村とを合わせて表現をするという時に「地方」はなかろうと。地方の反対は「中央」か「国」しかないわけです。というところからスタートさせていただきたいと思いますが、日頃考えていることを、まとまりはないかも知れませんが、三重県議会並びに宮城県議会の議会改革の当事者がいらっしゃいますので、その方々に若干質問をさせていただきながら、考えているところをお話させていただきたいと思います。
 まず「議会改革」という言葉ですが、議会の何をどのように改革するのか。「自己改革」という表現を大森先生はお取りになりました。自己改革には終わりがあるのか。こういう素朴な疑問がずっとつきまとっております。それから、現在、自治体の議会が置かれている法律上の位置付け、ちょっと難しく言うと「定位」という表現をしたいと思うんですが、そこではどう考えたって、今日ずっと皆さん方が御発言、御主張されている二元代表制なんてことは出てきません。どこまで行っても議会は自治体の内部機関扱いです。だからこそ、議場の秩序維持権が議長にありながら、その議会の招集権が議長それ自身に保障されていないなんていう、言ってみれば歪んだ構造になっているんだろうというふうに思います。
 その中で、法的な意味で自治体議会に与えられた最も重要な権限というのは、やっぱりこれは地方自治法第96条に明文化されている議決権だろうと思うんですね。議決というのは、表決をすることだと思いますが、その議決権の具体的な中身というのは、要は条例制定権と予算の議決権、プラスアルファということになろうかと思います。
 三重県においても、宮城県においても、この議決権の拡充のためにどういう取り組みをどのように行われているのか。96条の1項は、第1号から第15号まで限定列挙です。言い方を換えると、「これ以外やっちゃいけませんよ」と。「必要的議決事項」とか、解説書を読むとそのようになっています。じゃあ、それ以外のことはしなくていいのか。しなくていいんですね。本来は。しかし、その15項目の必要的議決事項に加えて、96条の2項では、議会自らが条例を作ることによって、議決事項を追加、拡大することができる。これを先ほどの言い方に比べて、「任意的議決事項」というふうに呼ぶとすると、先ほど、襲田総長のコメントにもありましたけれども、非常に重要な論点が含まれているから、慎重に考えなくてはいけなくなる。
 三重県や宮城県を始めとして、すでに基本的な行政計画の策定や改廃というものについて、この96条2項に基づいて議決事項とするという条例を整備されているはずですが、昨年の8月1日現在で、三重県、宮城県の他、岩手、長崎、熊本、香川、埼玉、青森というところで整備されているということですが、これは、パイオニアとなった議会は大変しんどい思いをされたのではないかと思うんですね。そういうことを議会はやらないほうが平和だったんです。これまではね。しかし、これからはそうではありませんよ。言い方を換えると、それが地方分権時代ですよということになろうかと思うんですが、「やらなきゃいけないことはやらなきゃいけないんですが、やってもやらなくてもいいことについてあえて判断を加える」これがやっぱり自律権のある議会の、しかも合議体としての議会の本来の姿であろうというふうに思うんですね。
 いろんなデータは、先ほどの襲田総長の御報告の時にありましたけれども、例えば行政機関の保有する情報の公開に関する法律、いわゆる情報公開法の制定以降、都道府県議会、市町村議会が情報公開条例の実施機関として位置付けられるというふうな話がありましたが、これは要するに認識が進んだところでは、そういうものは放っておいて、議会だけで単独で情報公開条例を整備されてきているはずですよね。議会も交ぜてもらおうかという意識では、そういう実態は進んで行かないだろうと思います。
 もっとも、私は情報公開は当たり前のことだと思うんですけれども、それ以前に自律権を保障されている自治体の議会としては、もっと積極的に、問われる前から情報を提供する仕組みを作って然るべきだろうと。情報公開条例を整備して実施機関になるということは、説明責任を果たすんですよ、アカウンタビリティーを果たすんですよというふうに言うんだけれども、これは昨年の松山市議会の時にも申し上げましたが、それ以前に、住民の皆さんの負託を受けて、議席を保有して議員活動をおやりになっている皆さん方は、個々の有権者の皆さんに日常的に応答する責任、レスポンスビリティーというものを問われているんだろうというふうに思うわけです。したがって、そういうふうな観点からすると、先ほどの96条2項をどういうベクトルの中で考えていけばいいのか、ということが次第に明らかになるのではないかというふうに思います。
 それからもう一つ、政策条例が云々というお話がありましたが、これはもっと厳密に言うと、政策決定条例、あるいは政策評価条例、あるいは政策立案条例、そういう区分けができようかと思うんですね。そういう次元でもう少し任意的な議決事項の追加拡大というものを自ら自治体議会として考えるべきではないかと。
 それから、もう時間がないのですが、もう一つの予算の議決権ですが、今、自治体議会は、「議決科目」と称して、予算書の大枠の款・項・目・節のうちチェックできるのは款・項だけですよね。何で目・節をチェックできないのか。執行部局から行くと、ここまでは議員さんには言っても分からないんだからこの程度でいいんだよという対応になりませんか。そんなことを許してはいけないので、そういう意味で予算書の読める自治体議会の議員というのが求められているんだろうというふうに思います。増額修正ができる、当然、減額修正ができるということになると、現在与えられている議決科目のその範囲の拡大をなぜ施行しないのか。「予算は素人でして」では議員が務まるはずがない。議会がそういう集団で、「議決権」と称するものを行使できるはずがないというふうに私は考えています。
 もう時間がなくなりましたので、あと、議会の構成であるとか、あるいは機関としての議会改革であるとか、あるいは独自の議員研修であるとか、あるいは議会事務局の拡充であるとかいうふうなことについても、三重県、宮城県のお二人にお伺いしたかったんですが、後ほど、時間があればということにさせていただきたいと思います。

(岩名)

 

 本日はたくさんお越しくださいましてありがとうございます。まず、三重県議会の改革の取組について御説明を申し上げたいと思います。本県の議会改革は、平成7年、ちょうど当時、北川正恭さんが知事に当選をされた年であります。また、私が初めての議長に就任をした年でもございます。まさに車の両輪説のとおり、あの方は行政改革に取り組むということから、私ども議会が議会改革に取り組むことになりました。これが最初でございます。
 その後、平成15年の10月に、議長以下、全議員参加の下に議会改革推進会議を立ち上げたところでございまして、我々がいろいろやってきたこの改革を全国の皆さん方に情報発信をし、そして問題点を共有しながら、議会改革をさらに一層進めるという趣旨の下に、まず大変議会改革に熱心でありました宮城県議会を訪問させていただき、皆さん方の御同意を得て、共に「議会改革推進会議」という同じ名前の団体を発足させた次第でございます。
 全国にこれから少しでもネットワークを作っていきたいということで、愛媛県議会にもお願いをし、現在、愛媛県議会では「議会改革推進研究会」というものを設置をしていただきまして、これは推進会議の前提になる組織であるというお話を伺っているところでございます。今後こうした県が、点を線にし、線を面にしながら、全国の議会改革をより高めてまいりたいと、こう考えているところでございます
 そして、次に議会特区構想というのがございまして、平成16年、昨年の10月に内閣官房の特区推進室に四つの項目、もう言い古されておりますが、「議長への議会招集権の付与」、「複数の常任委員会への委員の所属を可能にするとともに、規定上、議長は常任委員会には所属しないものとすること」、それからいわゆる議長の諮問機関とかそういうものでございますが「県議会への附属機関の設置を可能とすること」、それから四つ目には先ほどもお話がございましたが、「知事の専決処分の要件から『議会を招集する暇がないと認める時』という要件を削除すること」、この4点について申請をいたしました。しかし、総務省からは「代議制民主主義における議会と執行機関の関係は地方自治制度の根幹をなす重要な事項であり、その在り方は首長・議会など関係者によって意見も様々であり、制度設計の再構築に当たっては、制度のあるべき改革の方向について地方公共団体の代表者や各分野の有識者の意見を聴きながら幅広く議論していただくことが適当であり、慎重な検討が求められるものである。」というような、ちょっと不満足な回答がまいりまして、結果はあまりよろしいものではありませんでした。
 そこで、昨年12月20日に、構造改革特区推進室から再度総務省に対して再検討の要請がなされたところでございます。ところが、今年の1月7日に総務省から再検討要請に対する回答というものがございまして、「貴府が、(いわゆる内閣府のことでございますが)16年12月24日の経済財政諮問会議に提出した資料にあるように、地方議会の制度は地方公共団体の統治機構の根幹にかかわる問題であり、その在り方は地方制度調査会で慎重に議論されるべきものである」という、門前払いのような回答がまいりました。
 そこで、1月14日、提案主体としての私どもの意見を次のとおり提出をいたしました。「貴省回答には、提案内容に対する考え方が示されていない。特区として適用不可である理由を提案内容に即して示されたい。また、貴省回答に『地方公共団体の統治機構の根幹にかかわる問題』とあるが、根幹にかかわる問題であるがゆえ、全国的な対応ではなく、特区によって実験的な取組を可能とすることを要望するものである」と、こういう意見を今出してあるところでございます。またこの結果はいずれマスコミ等で発表されると思いますが、非常によくない状況でございます。
 次に、前述の「県議会への附属機関の設置」という申請項目の中で、「議長の私的な諮問機関」については、やってやれないことはないなと思いまして、三重県におきましては、三重県の公営企業事業など、つまり、電気、水道、県立病院などの、公営企業事業の在り方検討委員会というものを民間の学者の皆様、また県議会からも3名の委員を選抜いたしまして、7名による委員会を立ち上げたところでございます。
 それから、二元代表制における議会の在り方検討会の最終結果報告書というものが、素案として皆さんのお手元に配付をさせていただいておると思うんですが、これは平成14年度にニュー・パブリック・マネジメントの考え方に基づき政策推進システムが知事部局に導入されたことに伴いまして、将来にわたり県民の負託にこたえることのできる議会の在り方、在るべきシステムの構築を目指して、これも超党派の議員7名で調査検討に入ったものでございます。平成15年2月にはその中間報告を行い、そこで議会が担うべき基本的な役割と新たなシステムの構築、つまり執行機関限りのプラン・ドゥー・シーのサイクルとは別次元の、議会による政策方向の表明、プラン・ディサイド・ドゥー・シー、こういうことの展開を目指すことが、この報告書に盛られております。これは素案の5ページを御参照いただけば詳しく書いてありますので、また後ほど御覧いただきたいと思います。
 それから、執行部との協働によるプロジェクトチームの設立を行いました。これは三重県の東紀州地域という南の端の大変過疎化、高齢化が進んでいる地域がございます。お手元に木の札が入っておりますが、熊野古道で世界遺産に指定を受けたところでございますが、非常に高齢化、過疎化が進んでおります。この地域の対策について、議会がプロジェクトチームを作り東紀州地域経営創造会議というものを立ち上げまして、約1年間の議論、そして視察あるいはまた講演等々を経て、議会独自の東紀州活性化方法を知事に昨年11月に提案書を提出いたしたところでございます。
 それから、あとは住民本位の政策決定と政策監視・評価の推進でございますが、もうご案内のとおり、議会を対面方式にいたしております。それからまた予算決算特別委員会というものを議員の全員参加で立ち上げまして、昔から決算委員会というのはございましたが、このたび、決算を踏まえた上で次の年の予算を審議するということで、一体的な取扱いの中で特別委員会を立ち上げ、今、そうした中で予算・決算の審議をいたしているところでございます。これらにつきましても、またすべての本会議につきましても、本県ではすべてテレビによる実況中継を行っておりまして、県民の関心が非常に高まっていることを感じているところでございます。

(大森)
 ありがとうございました。特区構想は、これは制度改革論と連動しているんですが、今の段階ではなかなか内閣府も総務省も簡単にはOKが出ないような話ですから、正面作戦で、片一方で大きな制度改革、法律の改正を迫りながら運動を続けるというような、そういう話ではないかと伺っています。おいそれとは簡単にこれは認めませんよ。議会のほうで押して行けば、今度は知事部局のほうで、従来の権限行使に一定の制約を加えると必ず考えますから、そちらのほうから今度は声が聞こえてきますので。
 ただ、先ほど、襲田総長もおっしゃっていますように、地方制度調査会が地方議会の在り方を全面的に検討するというのは、これ自身は画期的なことでして、ですからその意味で言いましても、都道府県、市議会、町村議会もこぞって、自分たちはこういう観点でこういうふうにいろんなものを直してもらいたいんだということを、やっぱりタイミングを失わないできちっと言わなくちゃいけない時節ですので、そういう意味で言えば、大きな改革の論議というのが少し台頭するのかもしれません。どのくらい改革の実が上がるかということは、今後皆さん方の御努力次第だと思うんですが、今、そういう情勢の中にあるということを前提にした上で、いくつか議論を展開したいと思います。
 先ほど、妹尾さんからいくつか御議論が出ていまして、まずここからちょっとお三人の御意見を伺って、この問題を一応議論しておきたいんですが、96条2項についての疑問と言うか御質問が出まして、これは地方分権推進委員会で私どもも、96条2項でただし書きがあるんだけど、従来これは制限列記だと解釈されていたんだけど、これはおかしいので直せと言いましたら、当時の自治省は、ただし書きがあるんだから、自治体でおやりになるんなら条例で追加できるんだから、特段に法律を改正しなくてもどんどんおやりになったらどうですかということを通知で出していますので、どんどんやればいいということだと思うんですが、ただ、若干の整理がありまして、任意的に議決事項を追加するものを、政策条例風のもので独自なものが出てきているということですので、この96条の2項についての意味合いと言うか、これについてどういうふうにお考えになっているかということを、ちょっとお三人からまずお伺いをして、その次のテーマに入りたいと思います。

(襲田)
 非常に重要な論点で、私どもの研究会でも議論があったのですが、多少おさらい的に申し上げますと、第一次分権改革で条例制定権の範囲の拡大ということを申し上げましたが、そこで自治法の4条2項というところで、「義務を課し、又は権利を制限するには、法令に特別の定めがある場合を除くほか、条例によらなければならない」となっているのです。権利を制限し、義務を課するようなもの、こういうものが本来的な条例事項ですよということで、これはもともと行政法のほうで法律の留保ということにかかわるのですね。何が法律事項かということについて、いろいろ昔から議論がありまして、侵害留保説、つまり、義務を課したり権利を制限するようなことは、これは法律で決めなければいけないというのが伝統的な侵害留保説で、自治法の14条2項は広い意味での侵害留保説に立って規定されているのではないかと理解されるわけです。
 では、その考え方で、例えば先ほど私が資料の中でちょっと説明した、議会の権限強化に係る事柄、例えば96条2項を使って基本的な計画を議会の議決事項に追加するというようなことも、侵害留保説で説明できるかと言うと、それはちょっと辛いと。そうすると、学説の中でもいろいろあるのですが、例えば重要事項留保説あるいは本質性理論という難しいドイツの判例法から出た考え方があるのですが、単に侵害留保じゃなくて、もう少し広く考えて、重要な事項は議会の議決、つまり条例で規定すべきではないかという考え方があって、これであれば、今の96条2項に基づく条例が説明できるのではないかと一応言われているわけでございます。
 ただ、一つ気を付けなければいけないのは、国会の場合には国権の最高機関ですが、地方団体の場合には、議会も法律の範囲内という制約があるわけで、いろいろ法律上の問題があった時には裁判所へ行くわけですね。つまり、最終的には司法の判断というのがあるわけで、そこで負けないようにちゃんとしておかなければいけないわけです。仕組みとしては自治法176条4項以下で、議会の議決で権限を越えるようなもの、法令に違反違法するものは、長は再議に付さなければならないとなっております。つまり、条例の制定とか予算に関する議決に異義がある時は、長は再議に付することができると言う場合ではなくて、違法な議決は176条4項で長は再議に付さなければならないとなっているわけですね。これは最終的には裁判所に行くわけです。滅多にこれは行使されるわけではありませんが、いざという時には法律上の問題があった時には、住民訴訟その他で裁判所へ行くということも予想して、その時にきちっと頑張れるだけの理論的な根拠を固めておく必要があるわけです。議員立法だから詰めが甘くていいかと言うと、そういうことにはならないので、やはり国法の、法治国家の一部になるわけですから、そこをきちっとしておかないといけないわけですね。
 先ほどちょっと申し上げましたように、通常、役所と言うか、執行部であれば、そういう法律上の問題がある場合には、要綱とか行政指導という世界でやってしまうのが普通のパターンなのです。しかし、それでは問題解決できないのではないかと。例えば産業廃棄物を県内に持ち込ませないということをやりたいと。しかし、それをストレートに条例で書けるかと言うと、今の法律の下では難しい。しかし、ポリシー、政策としてはそうしたい、ではそこを条例でどうするかというのが、香川県その他でも議論になったわけですね。
 何かを規制する条例を作った場合に、今直ちにそれが違法かどうかを審査する仕組みは無いのです。個別の事件があった時に、それをベースに住民訴訟その他で裁判になるわけですが、その時に負けないようなきちっとした理論武装をしておく必要がある。そのためには議員も相当勉強しないといけませんが、やはり議会事務局でいわゆる政策法務に強くなければならない。単なる解釈が得意なだけではなくて、どういう立法、条例を作ればよいかという法律上の問題、また、それが実際に執行の段階でワークするかどうかという問題。そもそも執行部が提案する条例ではないですから、本音はやりたくないわけですね。それがちゃんと議会の議論を踏まえて、必要な規則も作り、あるいは執行体制、機構とか予算とか職員の士気の問題とか、いろいろありますが、きちっと整備できて、プラン・ドゥー・シーがうまく働くかどうか、その全体の設計を上手にやらなければいけないということだと思うのです。
 ですから、私は最初のうちはとにかく十分議論すると。例えば産業廃棄物でも、県内の関係団体から聞くのも必要ですけれど、市町村との関係とか隣接の自治体との関係とか、今まであまり手を付けてこなかったところをよく検討しなければ、実効性のある議員提出条例というのはできないのですね。それだけに勉強になるわけですが、そう慌てず、本数だけを云々するのではなくて、よい条例を十分議論して作っていただきたいというのが私の気持ちでございます。

(千葉)
 基本計画議決条例は平成15年に議員有志で提案しまして、その後一議会は継続になって、2回目の議会で可決ということになりました。条文は御案内のように、たった3条なんですが、含んでいるものは非常に多うございまして、例えば執行部との関連で言いますと、執行部の執行権との絡みの問題があります。実際にこれは作業の途中で言われましたが、その計画段階で議会が議決をすれば、それに基づいて予算を組むんだから、予算の分はフリーパスでいいのかというような話も実は出ていました。
 それから、じゃあ基本計画というのはどういうものだという時に、執行部が言ってきましたのは、「箇所と数字(予算も含めてですが)、これが入っているものは基本計画じゃない」という言い方をしながら、基本計画と実施計画の間に整備計画なるものを持ち出してみたり、かなり抵抗がありました。私どもの考え方は、長期総合計画のような全体計画は当然ですが、あとは各部のマスタープラン的なもの、一定の方向を示すものですから、こういうことでこの問題をクリアをさせていただきましたが、これについては、先ほどお話いたしましたように、悪いことじゃないわけですから、知事に最初に理解を求めたのが、条例を制定できた要因だというふうに思っております。
 それから、宮城県の場合、この基本計画条例の審議において2時間ほど議員提案で説明して、議員間のやり取りを行いましたから、議事録に残っているんですね。それまでは検討委員会、常任委員会、特別委員会で政策提案条例をやってきましたから、ほとんどが質疑なしで全会一致、議事録に残らなかったんです。見る人たちからすると全然経緯がつかめなかったというところがありましたけれども、この場合には4時間ぐらいのやり取りが全部表に出ているので、一般の方々にも意図するところは十分御理解を得やすかったという成果があったというふうに思っております。
 それから、先ほど妹尾先生のほうから議会改革の自己改革の中身のことでお話がございましたので、ここでお答えをさせていただきます。
 自主的で自立的な地方自治をやっていくためには、私は、執行部、議会、住民がある程度の基本的な方向については、意思の共有を持つべきじゃないかと思っているんです。ですから、情報公開ということがテーマになりましたけれども、情報公開は数字的なものをただ表に出して、事件的なことをやるというのも一つの監視の機能部分かも知れませんが、その先には情報公開というツールを使って政策的なものの受け皿にならなければならないという点があります。議会はそういう方向に向かって、持っている機能をフル活用する方法を常に模索すべきだというふうに思いますし、それから、制度の改正によって、さらにその機能が発揮できるものがあれば、常にそれは追求するのが議会改革じゃないかと思っておりまして、この議員提案条例等々もそういう方向に従ったものだというふうに認識をいたしております。

(大森)
 ありがとうございました。
 岩名会長さん、よろしゅうございましょうか。先ほど、妹尾さんから予算書の読める議会と言うか議員さんだという話で、款・項まで行っているけど、目、その下、少なくとも目ぐらいまではきちっと出させろということは、三重県の議会改革で言えば、予算・決算を合同でやっていて、きちっと来年の予算編成に決算の評価、決算に基づく評価を入れ込みたいという、そういう新しい動きですが、この御提示があった予算書の目まで出せという議論についてはどんなふうにお考えでしょうか。

(岩名)
 まず最初に議決権の強化のために私たちはどのようなことをやっているかということについて御説明いたしますが、この素案の8ページ、議決事件の追加のとらえ方と、それから素案29ページの提言3を見ていただくとよく分かると思いますが、平成13年3月に基本的な計画を議決事件とする条例を、都道府県議会では全国で初めて議員提案で条例化をいたしております。
 また、平成14年3月には県の出資法人への関わり方の基本事項を定める条例を議員提案し、法人に対する県の出資割合が4分の1以上になる場合には議決を必要とするということになっております。
 今、妹尾先生の款・項・目・節のどのへんまでやったらいいのかということでございますが、なかなかここまで行ったらいいんじゃないのというようなことは、私も到底、今申し上げる知識がございません。一つみんなで一生懸命頑張ってやりながら、できるだけやはり節のほうまで近付いていく努力をしていく必要があるのではないかというふうに思っております。

(大森)
 ありがとうございました。多分、「款・項・目までは何とか入れろ」という御主張の背景は、このところ、自治体レベルでは事務事業評価というのを言い始めていまして、その事務事業レベルというのは、予算の項目のレベルで言うと、やっぱり目ぐらいにまでならないと、それをやっていると言っても、議会のほうで本当にそれをやっているかどうか分からないので、少なくとも事務事業評価の仕組みをおやりになるのならば、予算編成上の目ぐらいまでお示ししてくださいと。そうでなければ、本当にちゃんと評価しているかどうかということについて、議会が評価しにくいじゃないですかということも背景にあるものですから、自治体レベルで行い始めている内部改革論と、今のようなものも連動しているというのが一つの背景じゃないかと私は理解しています。
 それから、これは各省庁の個別に運用している省庁がどう考えるかということにもよっているのですが、実は各省庁が自治体に計画を義務付ける時に、事実上ですけれども、その時にこれを必ず議会の議決にするかどうか、あんまりやってこなかったんですよ。みんな首長さんの決裁で、これは行政計画でいいですと、その止まりでいいですと言って、重要なことを国の省庁の施策をみんなこの行政計画でさせてきたんです。これが実は各省庁縦割りの行政と連動している手法だったんじゃないかと。したがって、議会が実は任意の議事事項の中に従来だったら首長さんのところだけで決め得た行政計画が、議会のほうの議決事項に入ってくるということは、従来と違った視点でこの計画の在り方を見ていない限り、単に追認するだけに終わってしまう。つまり、国の縦割りの行政計画の手法に対して、自治体がどういう武器なら戦えるのかと言うか、どう対処できるか、その観点からもこの96条2項の運用は意味があるんじゃないかと私自身は考えていまして、いずれにいたしましても、これは全体としては前向きと言うか、拡大する方向に向かっていますので、各自治体で取り組める、そういうテーマになっているんじゃないかというふうに考えていいものと思っています。

(千葉)
 基本計画の議決条例の国との絡みですけれども、暫定措置として13計画を議決対象にするということで、附則のところに載せたわけですね。その時に議論になりましたのは、国の法律に基づいて作られる計画、これは全部最初から対象外だという話が出てまいりました。しかしその計画の中に、例えば自治事務に関係するものが入っているとするならば、これはまさに私どもの対象内の問題でありますから、そういう場合には中身で判断するということで、私どものほうは国で決めた計画、それも対象にしています。中身で国の専管になるものについては勿論審査対象外となりますが、これはその審査をしていく過程で判断するということにして対象内としております。
 それから、情報公開で一つ、この機会に申し上げておきたいと思いますのは、宮城県議会は独自の情報公開条例を持っております。ここで問題になりますのは、住民から不服審査が出た時です。不服審査が出た時には、議会が判断するわけではなくて、第三者機関の判断を仰ぐということにしておりますが、この機関は、法律が禁止している附属機関になります。それに審査会の委員の費用弁償もしなければならないという事態も出てまいります。厳密に言えば法律違反かも知れませんが、私どもは、これを実際に今持っています。考え方は住民にとって不利益を与えない、逆にプラス面があるわけですね。こういう形から是正をできるところ、やれるところをまずやっておくというところが、先ほど大森先生がおっしゃった、今の法律の中でやれるところというようなお話がありましたが、それに沿うところかと思っております。
 ただし、そうされては困ることですけれども、こちらから煽ったような感じで、法律違反だからどうこうしてくれというような意味じゃありませんので誤解がないように願いたいと思います。できるだけ前向きに取り組んでいきたいという主旨でございます。どうも失礼いたしました。

(大森)
 今のことは重要でして、私は2000年4月以降の解釈としては、附属機関を持ってはいけないという、あの解釈が問題なんじゃないかと。やっぱり従来、執行機関、執行部優位の体制の中で、議会はもともと合議体だから、別にそういう審議会とか指導機関を持つ必要がないと勝手に考えてみて、持てないと解釈してきただけなんじゃないかと。だから、やっちゃっても構わないんじゃないかと私は考えているんですけれども。総長、これについて一言何か。

(襲田)
 後段から先に申し上げますと、それが非常に有力と言うか、そう考えるべきだと思うのですが、ただ、現場の事務局のサイド、現場の担当職員の立場から言うと、仮にそういう時に公費を支出して、それが住民訴訟か何かになった時に、大丈夫だ、裁判所でも勝てるという何かお墨付きが欲しいという気持ちがあると思うのですね。
 地方分権一括法の中ではまさに法令解釈は自主的にやるのだ、対等だということからすると、自治法138条の4の「執行機関の附属機関として審議会等を置くことができる」という規定は、別に議会で作ってはいかんとまで書いていないから、かつての旧自治省の指導か、担当者の解説書か知らないけれど、そこでは何か議会には附属機関ができないように解釈されているけれども、それは地方分権一括法以前の話だから、以降はそこを切り替えるべきだと。まさにパラダイムの転換があるべきだということでやるのは、私は非常に有力な考えだと思いますが、現場では多少まだそこまで踏み切れない。議員からお尋ねがあった時に「大丈夫です」と言うだけの材料がないので、心配がないわけではないと思います。
 今、私どもの研究会でもそういうことをやったらどうかという方向の意見が大勢だと思っておりますが、いろいろ悩みながらも、まさにパラダイムの転換をしていくべき話かなと思います。
 それから、ちょっと恐縮ですが、前段の96条2項との関係で申し上げますと、先ほど、千葉議員がおっしゃったのは、法律に基づく計画にも96条2項の規定が及ぶと。それは計画の策定自体は自治事務だからということで、三重県と違って宮城県はそうされたということでございます。また、それとちょっと違う話として、96条2項の議決事項の対象の中からは、法定受託事務が外れています。括弧書きで除いています。しかし、法定受託事務というのはいろいろな定義の変遷があったのですが、最終的には自治事務であろうと法定受託事務であろうと、地方公共団体の事務であるされ、条例の対象事項となっているのですから、96条2項の括弧書きは落とすべきであると私は考えておりまして、都道府県議会制度研究会でも、そういう議論の方向でございますので、多分これも報告の中には入ってくるのではないかと思っております。以上です。

(大森)
 妹尾さん、先ほど言い残している御意見や御質問があろうかと思います。それを少しいただいて展開したいと思います。

(妹尾)
 要するに、議会事務局の組織としての改革と言うか拡充方策というものと、それぞれの自治体議会独自の議員研修、あるいは議員個々人の皆さんの資質の開発の実情を若干お教えいただければというふうに思います。この部分に関しては従来から指摘はされているけれども、制度趣旨と運営との間のギャップが甚だしいのではないか。ここが実は、自治体議会の世に言う過小評価につながっている最大の原因ではないかなというふうに考えているところなので、是非先進県議会である三重県と宮城県に、その実情の一端をお教えいただきたいということです。

(大森)
 それじゃ、三重県からまいりましょうか。

(岩名)
 議会事務局の政策立案能力を高めるということは、議会全体のグレードアップにつながっていくわけでございます。数だけでは判断できませんが、三重県では執行部の役人6,500人が知事を支えているわけです。でも、議会では私を支えてくれる人数は35人でございますから、これは大きな差があるわけでございます。
 しかし、三重県議会は平成10年までは議事調査課というのがあったのですが、調査部門を分離させて、政務調査室を設置し、さらにその後、政務調査課として平成12年から今の体制になっているところでございます。課内に政策法務担当を設けておりまして、法務監というポストもございまして、平成13年4月からこの制度をとっております。
 また、平成12年度から職員を参議院の法制局、あるいはその後、衆議院の法制局へも派遣を2年ずついたしまして、政策法務担当として議提議案の条例案検討業務等に従事をしていただきまして、大変議会として大助かりをいたしているところでございます。

(大森)
 それじゃ、宮城県、お願いしましょう。

(千葉)
 事務局は、いわゆる法令上は「議会の庶務を司る」となっておりますけれども、御講演にもございましたように、その性格がもう変わってきております。例えば議会の今の調査活動、政策立法活動等々新しい部分も含んでおりますと、この状況を踏まえ、「庶務」という言葉を少なくとも「事務」に変えるとか、事務局の位置付けを直すべきだという提言をいたしております。
 それから、今の体制ですと、例えば執行部の職員定数管理、それの対象にも事務局はなりますし。それから予算の編成方針、シーリング、さまざまありますけれども、その対象にもなってくるということですし、加えてその執行に当たっては、議会事務局長他課長クラスまでだと思いますが、併任職員制度を採っておりまして、執行については議会が関係なく、執行部が行ってしまっているという、議会であって議会でないような形が今の事務局体制じゃないかと思っております。独立性に向けた努力をしていかなければならないと思っていますし、そのために各都道府県と連携が取れればというふうに思っております。
 法令審査班につきましては、先ほど申し上げましたように、3名でスタートいたしましたけれども、議員提案条例の策定について大変効果を上げているということでございます。以上でございます。

(大森)
 ちょっとこの段階で、会場にたくさんおいでになりますけれども、せっかくの機会ですので、それぞれお感じになっていることや疑問があれば、この段階で何人かの方から出していただいて、こちらの皆さん方からお答えいただくようなことにいたしたいと思っているんですが、ちょっと何人かお手を挙げていただけますか。

(栃木県矢板市議会・宮川昭夫氏)
 特に今、先生が言った議員の研修と資質ですね。それと先ほど、政策の立案等々言われていますが、実際は議会がどうも監視をしていないのが実態。議員同士の議論がないんですよね。その辺をどういうふうにやられて、資質の向上と議員提案がくっついているのか、その辺をお伺いしたい。

(大森)
 私もちょっとそれを落としました。議員さんの研修はどう行われているか、実際には議会を通じてどういうふうに議員さんが鍛えられているかを含めて後でお伺いします。

(群馬県議会・山本龍氏)
 妹尾先生のほうから御発言のありました長期ビジョンを議決権の対象とするまで拡大せよという御指摘でございますが、知事が直接住民に長期ビジョンを提案したマニフェストという形で選挙に当選した場合、いわゆる議会との衝突、それをどういうふうに調和をしていけばいいのかということを教えていただきたいと思います。
 もう一つ、議会自身も外部評価を受けるような、そういうシステムみたいなことは必要ではないかということと2点、お尋ねしたいと思います。

(東京都江東区議会・豊島成彦氏)
 東京の江東区という下町からまいりました豊島と申します。
 今日はさまざまな論点が出たんですが、私が是非お聞きしたい論点が、自治体改革と選挙のかかわりについて、是非御意見をお伺いしたいんですね。今の自治体議会は大変さまざまな問題がございます。課題もございますが、では、今の議会を選んでいるのはどなたかと言うと、主権者の方々が選挙で選んだ方たちが今の議会というものを構成しているわけですよね。だから、自治体議会を本当に改革するという時には、今の選挙の仕組み、今の選挙の入れ方をどう変えていくんだというのを、是非御意見をお伺いしたいんです
 例えばいろんな議会を見ていましても、議員さんを見ていましても、自治体議会改革に一生懸命取り組んでいますという人で選挙に出る人って、あんまり見たことがないんですよね。それは自治体議会改革を一生懸命やっているから選挙に強いんじゃなくて、他の大変な地元の地道な活動をいっぱいやっているから選挙に強いだけであって、一言で言って、自治体議会改革は票になるんですかという現実というもの、私は本当にこれは避けては通れない課題としてしっかり受け止めていかないと、本当の意味での自治体議会改革というものはできないというふうに私は思うんですが、この現状を何とかしたいので、是非コメントをいただければと思います。よろしくお願いします。

(大森)
 今の3番目の御質問のほうから行きますので。議会改革に熱心だと、次の選挙が危ない可能性があると。お二人、議長さんの体験者ですから、この問題についてまずお二人からお伺いしましょうか。じゃ、三重県のほうから行きますか。

(岩名)
 確かに、今までの自治体議員はそういう傾向が強かったと思います。利益誘導型の話をしていれば目を輝かせているけれども、「議会の改革なんか、我々には関係ないわ」というような感じで有権者は見ていたと思いますけれども、それは我々が議会の仕組みとか、これから果たすべき議会の役割というものを丁寧に教えると言うと失礼ですが、説明してゆくことが必要ではないのかというふうに私は思います。
 例えば、私はかねがね三重県議会でもお願いしていることは、国は議院内閣制ですから、1人の議員を選んで、その数の多いところが総理大臣を選ぶけれども、いわゆる県議会議員も、知事も、ともに県民から選ばれている二元代表制ですから、我々が政党とかを主張し出すと、結局、自治体議員の固まりというのは弱い存在になってしまう。例えば議会が二つに割れていたら、やはり知事は多いほうを取り組んで御自分の意見を通そうとするのが普通じゃないですか。それよりも、やはり我々は一枚岩になって、県議会が知事と対峙をしていくことによって、住民の要望する施策の実現をしていく。こういうことがやはり大事なんじゃないかと思いますし、その辺の切り替えが今必要な時期に来ているし、そのことを我々は住民の皆様に説明責任を果たす必要があるんじゃないかと思います。

(大森)
 千葉会長さんは何で選挙に強いんですか。

(千葉)
 私の選挙区は3人区ですが、トップ当選したことがありませんから、強さは分かりません。非常に改革は見えづらいと思います。どのようにチャンネルを多くして、どのような中身で提供していくかということに尽きるような気がいたします。御理解をいただく努力を続けることが必要と思います。

(大森)
 一番最初に御質問の方から、私も落としていたんですが、議員さんの研修の在り方、研修がどうなっていて、どういうことが大事かということについて御質問がありますから、これもすみませんが、議員さんのお二人からお答えいただきましょうか。

(岩名)
 政務調査費を私たちも皆さんも同じくいただいていると思うんですが、この活用をきちっとすること、そして透明性を高めることを念頭に置きながら、やはり個人個人、あるいはグループグループでの研修に力を入れてやっております。また、外国への調査につきましても、私ども、4年に1回、三重県では120万円以内で2人以上のグループで参加をすることができるようになっておりまして、勿論、議長に対してその目的をまず申告し、帰国後それを報告書にまとめ、皆様にお配りすると共に全員の議員の前でその報告をするというようなことをやっておりまして、かなり皆さん、こうした費用の上手な活用によって、かなりいろいろな勉強をしていただいていると考えております。

(大森)
 宮城県では議員さんの研修はどんな感じですか。

(千葉)
 議員提案条例を作る際のことをお話したほうが御理解いただきやすいと思いますが、検討委員会等を例えば構成してやるようになった場合、条文の検討まで入ってしまうわけですが、委員会として大学の先生とか有識者の皆さん方にいろいろ御意見を拝聴するということもありますし、そこの舞台に向かうために、各会派でまた別な先生方に御意見を聞くこともあります。個人の調査もあります。議会全体として勉強する場合、例えば今日の改革みたいなものもそうですが、会派として研修する場合、委員会としてやる場合等々かなり綿密な調査活動が必要になるということになります。
 最終的には、執行していくのは執行部ですが、その条例を作るまでは執行部は最終段階ではいなくてもいいわけですから、最後は議員協議を行うことになり、これは何回も続きます。委員会ベースで、議員だけの協議を何回も繰り返す中から条文の整理をして、そして方向づけをしていくという手続を踏んでおりまして、スケジュール化するかどうかは別として、かなり議員研修をしないと、議員提案条例は難しいという感じがいたします。

(大森)
 今の最後のほうの下りは、要するに議員さんがそういうやり方を採ると、オン・ザ・ジョブ・トレーニングになるんですよね。何回も議員さん同士で議論し、これならば外に向かって言えるぞとなる、そのプロセスに議員さんが参加すること自身が、議員さんを鍛えていくということになりますよね。
 ですから、オン・ザ・ジョブ・トレーニングのやり方はちょうど自治体の職員の人たちが仕事場で仕事を通して育っていくのに似ているところがありますね。やっぱり議員さんについても。そういうやり方自身が議員さんを育てていくということでしょうね。多分。
 もう一つ、群馬県の方から出ましたのは、マニフェストの話ですね。これは妹尾さん、何かお答えを。

(妹尾)
 難しいんですが、行政計画に関して、実は一度香川県議会の事務局から私のところに電話で問い合わせがありまして、どういう条文にしたらいいでしょうかというお話だったんですが、見せていただきました。基本的にはあって然るべき条例だと思いましたけれども、多分、意識の古いと言うか、追いついていない知事部局の皆さんの目から見ると、議会は議会で御自由におやりください、うちはうちでやりますからという、そういう発想だろうと思うんです。
 したがって、そこへ持ってきて、今、御質問、御発言のありました知事さんのマニフェストとして出された時に、それとぶつかって云々というお話だろうと思うんですが、ぶつかって然るべきだろうと思うんですね。しかし、その議会もこの点について、知事とは別の観点からこういうふうに考えているということをお出しになるわけですから、そこでそういう縛りをかけるということは、別に禁止されていることでもないし、今後はむしろ望ましいのではないかというふうに思いますが、それが理論的には侵害留保説に立つのか、あるいは重要事項留保説に立つのかということは、また別の次元の話だろうと思うんですけれども。

(大森)
 これは総長から解説でお願いしたいんですが、こういうふうにお考えくださいますか。今のような視点もあるんですが、マニフェスト風のものが出てきて、これが特定の候補者が首長選挙で自分はこういうマニフェストでやりたいとおっしゃってきて当選した場合、議会との関係が出てくるんですが、その時の一つのやり方として議論としてあるのは、特に都道府県レベルはほとんど政党化しているから、選挙そのものを比例代表制にしたらどうかと。政党が機軸で政策を束にして提示して、有権者の支持を集めた多数、一番大きな政党が、自分たちの掲げた政策を実現するんだと。その時は、うまく行くとマニフェストを考えた首長さんと一致する場合と、全然違うともっと激しく対立する場合が出てき得ると。つまり、比例代表制でやっても、首長と議会との関係にある種の問題が起こり得るという、そういうことを前提にして、マニフェストと比例代表制のような議論がどこかでもしかしたら結びつくのかなと思っていますし、私どもの研究会でも比例代表制の議論が出たんですけど、私どものメンバーは相対的に消極的なんですよ。比例代表制に。
 ただし、片一方で都道府県はほとんど全面的に政党化していますから、じゃ、政党の役割をどうするんだと。片一方は、もう全部仕込んできて、「マニフェスト、私はやるぞ」という人が出てきた時に、議会はどういうふうに対応できるのかということは、直ちに回答はないんですが、いくつか考えておかないといけないことがあります。それについて総長から一言。

(襲田)
 非常に大きい問題ですので、いっぺんにはお答えできないのですが、いくつかに分けて、気づいた点を申し上げますと、現在、知事、首長が中心になって「マニフェスト」という言葉で言われているものをどう見るかということですが、私は、もともとはイギリスの議員内閣制の下で、「自分たちの政党が政権を取った場合にはこういうことをやるのだ」ということで出てきた制度と言うか、一つの新しい政治手法だと理解するわけですが、そうすると国政はともかくとして、地方団体の場合には首長制あるいは大統領制と言われている中で、ちょっと違うのではないかということがあろうかと思うのですね。しかし、そこは大らかに考えて、通常の公約とは違う、つまり、検証可能な形で、いつまでに何をどうする、その財源はどうするということまで具体的に掲げて選挙を戦うと。これも主張する人の説によれば、候補者と住民あるいは市民との契約だということであります。それを支持する人もそれなりにいるわけですが。しかも、ほとんどの場合、無所属で出てくる場合が多いわけですね。
 ですから、ある意味で日本型のマニフェストなのかも知れませんが、そういうものを、では、どのように議会として評価するかということですが、一言で言えば、議論を活性化する一つの材料だろうと思いますね。「議会」と言った時に、厳密に言うと、議員個人の立場と、それから会派・政党の立場と、議会という集合体、合議体としての三つがあるわけです。ですから、それぞれの立場でこのマニフェストにどうかかわり合っていくか、どう評価するかというのはあろうかと思うのですね。
 いずれにしても、従来にない議論が議会で行われる。議会には、簡単に言えば、批判・監視機能とか、政策立案決定機能、立法機能があるわけですから、それぞれ議会の機能を十二分に発揮して、四つに組んで議論すればいいということになるわけです。もう少し細かく言えば、個人として首長のマニフェストに賛成する人もいれば、そうでない人もいる。会派として、あるいは政党として賛成する人もあれば、そうでない人もいるから、それぞれいろいろな議論が出てきて面白くなるのではないかなと思います。
 それからもう一つ、別の角度から、それでは議会にはマニフェストというのはないのかと。議員にマニフェストはないのか、会派についてあるいは政党についてはマニフェストはないのか、議会という集合体についてはないのかという議論だってあり得るわけですね。これは未開拓ですが、いずれにしても、従来の議論に必ずしもとらわれずに、大いにやってもらえばよいのではないかというのが私の今の考え方であります。
 次に、比例代表制ということですが、地方政治、特に都道府県の議会のレベルで政党をどう考えるかというのは大きな問題でございますが、それはともかくとして、現在の都道府県議員の場合には選挙区というのがあって、市町村とは違って郡市の単位で選挙される。これが社会経済の実態に合っているかどうか、いろいろ議論はあるのですが、郡市を単位として出てくる。そのために、地域代表的な側面であると同時に、単に選挙民の代理者ではなく、県民全体の代表者であるという認識や誇りを持ってやっているわけでございますが、そうした選出方法なるがゆえに、立場によっては十分サラリーマン、女性、その他多様な住民を代表していないのではないかという声があるのです。そういう人たちの主張として、都道府県議員になれる一つの方策として、例えば比例代表制と言う政党本位の選挙にして、名簿の上位にサラリーマンとか女性とか、あるいは今必ずしも十分に代表制を確保されていない方々、階層の人を位置付ければ、広域自治体としての議会にも、より多様な住民の声が反映されて、議論も活発になるのではないかという議論があるわけです。これは政治改革を志向する人が言っているわけですが。
 ただ、それがすぐ日本の風土に馴染むのかどうか、国政の場合と地方の場合、それも都道府県と市町村の場合でいろいろ違いがあると思いますので、まだ議論として十分されておりませんが、先ほど御質問がありましたように、議会改革、政治改革という時に、選挙制度をどうするかというのは、確かに大きな課題なので、これからそういったものをあわせて検討していく必要があると思っております。とりあえず2点でございます。

(大森)
 あと数人お願いします。

(宮城県議会・長谷川章氏)
 議会改革推進会議の第一ワーキンググループの座長を務めさせていただいております。
 宮城県議会は議会改革は昨日今日ではありませんで、ずっとやっておりまして、平成12年と13年に議会改革の特別委員会を作りました。その時の委員長をさせていただきました。
 私は、議会改革とか議会活性化の最後の目標は、議会が予算を作ることだと思うんです。予算を作らないから住民が向かないと思うんですね。さっきからお話のとおり、どうしたって、款・項しかやらないから。目・節をやらないでしょ。それで日本中に議会で議員定数よりも議会事務局に職員が多いのは東京都だけだから。宮城県議会は63人の議員に対して、議会事務局職員は41人、残念ながら、私が当選した時、平成7年は43人いたけど、減らされてきているから。定員管理とか言ってね。議会事務局を減らしてきている、執行部は。
 これ、どうするかと言うと、やっぱり先ほどのお話のとおり、日本では「地方議会なんて」とどうでもいいことなんですよ。私、つくづく感じる。あまり騒がないでくれと。知事とか市町村長がやるんだから、議会なんてあまり騒がないでくれというのが国策だったと思うんだな。つくづく感じます。
 私、議員になって議会改革の委員長をして、予算を調べました。平成7年、議会費0.2%、宮城県の予算は1兆円だから20億、これ、ずっと変わらないから。しかも、青森、秋田、山形、全部東北。僕ね、自治省に電話したの。あんた方、指導してるんだろって。予算規模の分母は変わるのに、0.2%ずっと変わらないんだから。分母は変わっているのに、毎年予算規模は変わっていますよ。宮城県だって。1兆円の時もあれば9,000億の時もあるし、景気が悪いから7,000億の時もある。なのに0.2%だから。
 私、だから思うんですけど、先生の御意見と襲田さんの御意見も是非お聞きしたい。地方議会が予算を作るという提案をした場合に、必ずその時に何をしなきゃならないかと言うと、議会事務局の職員を今までの2倍、3倍に増やさなければできないと思うんです。絶対できない。款・項・目・節の審議をするんだって、今の議会事務局職員の数ではできないと思う。きちっと調べなきゃいけないから。そういう場合の提言なりをした場合に、地方制度調査会なり、自治省なり、今の国の「地方のことは地方に」という方向の中で、4月以降、そういう議論、要するに議会の最終的な監視機能として予算の編成作業にも取りかかれるような体制を組むようなことは議論の対象になるのかどうか、そこらをちょっとお聞きしたいと思っているんですけど。

(奈良県議会・田中惟允氏)
 大変申し訳ございません。どうしても帰らなければなりませんので、仲間が答えを聞いて帰っていただきます。二つだけ、お話したいことがございます。
 今もお話がございましたように、来年度の予算では、議会費は何%ではなくて、割の単位で削減するというふうに理事者側は言っておられるようです。今日お越しの全国の議会もみな同じことだと思います。これで本当に議会がよくなるんでしょうか。まずそれが1点。
 それと、意見書という問題が今日は触れられておりませんでした。我々は、意見書を出して、政府でありますとかいろんなところへ出されますが、全国の議長会ではそれがどのように処理されているかということを把握していただいておりますでしょうか。我々ではなかなか把握できないところがございます。
 それと、同僚議員の方々にお伺いしてみたいなと思うことは、意見書が出ますが、私も自分の言葉でと言いますか、自分の直接関係のあるようなことを意見書として出させていただきました。しかし、多くの場合は、政党とか全国的に一律のような課題がたくさん意見書として出てまいります。もっと身近な課題を意見書として出したらどうでしょうか。そして、国なり、国会であったり政府であったりしますけれども、そういうところでその意見書はどのように扱われて、どういうふうな結果を生み出せるようになっているのか、私にはよく分からないんです。言われっぱなしのような形であるなら、これほど議会がバカにされていることはないと思います。その点を、できたら同僚の仲間が来ておりますので、お答えを後で結構でございますから、お伺いしたいと思います。以上でございます。

(宮城県議会・伊勢敏氏)
 宮城県の伊勢と申します。
 先ほど大森先生のほうから、政党化しているので比例代表制という意見もあるということでありましたが、実はこのことをちょっと議論する前に、私ども今回、フロンティア宮城12名のうち8名でまいっておりまして、議会改革を一生懸命やっていきたいということの一つの表れだというふうに思っております。
 そこで我が会派でよく議論するのは、今の奈良県の方と若干通ずる問題意識もあるんですが、意見書の取り扱いで、よく我が会派で発言があるのは、我々議会は、中央政党の下請ではないということをつくづく議論しているところでありまして、そういったことから比例代表制ということで議論していくと、やっぱり自治体の議会としては議院内閣制の国の制度と、それから大統領制、あるいは二元制と言われている地方議会と、全然違うカテゴリーであるということから、単なる比例代表制ではおかしいというふうに思っておりまして、その点で考えられるのは、今後ローカルパーティの存在ということも大事ではなかろうかと。
 例えば知事選挙の時に、会派あるいは政党ごとに政策目標、政策協定をする、そういったようなことも視野に入れながら、議会が動いていけばいいなというようなことも若干議論しているところがありますが、そのへんについてお考えがあったらお伺いしたいと思います。以上であります。

(福井県議会・山本正雄氏)
 福井県議会も今いろいろ試行錯誤しながら、議会の活性化に取り組んでいるわけでありますが、その中でいくつか出てきた課題の一つとして、先ほども条例なり政策的なことで提言ということでありますけれども、これは、理事者は数千人のスタッフを抱えているわけであります。私ども議会は、先ほども宮城県の話がございましたように、予算で制限されていて、事務局体制をいくら充実すると言っても、プロの常時勤務している者を抱えているわけではないわけでありまして、これに対抗して提案をしていくということは、相当な予算と政策能力を付けていかなければいけない。だから、それには私は少し無理があるのではないかと。だから、議会として、議員として、住民の立場に立った政策的なものとか、あるいは基本的なものとか、県民への呼びかけ的なものとか、その犯罪被害者的なもの、理事者が提案しにくいものとか、何かそういうべきものに少し、そういったことで考えていかなくては、あまりにもそういった理事者に対抗する、あるいはそれにまっとうな条例を作っていこうというようなことでは、なかなか時間と暇と、私らも本当に取れないわけでございます。
 そうしたことで、二つの先進県の経験から、どういったものに絞っていったらいいだろうかということをお聞きしたいのと、大森先生に理想的なこれからの政策条例なり、あるいは予算、あるいは条例なりの制定についての、議会としてどの程度のことを考えていったらいいだろうかという、ちょっと現実的な問題になるわけですが、そういったことについてお聞きしたい。

(大森)
 ありがとうございました。時間が少しずつ押してきましたので、今、何点か出ているんですが、まず議会の予算、議会に配分されている予算が非常に少ないと同時に、このところ削減されていると。こういう事態についてどういうふうに見るのかという御指摘がございまして、と同時に、宮城県の委員長さんからお話がございましたように、議会が最終的に予算を作る、これは執行権を持つということになるでしょうか。
 私どもは、とりあえず、議会としての活動機関が、議会に必要なお金についてはきちっと自分たちで始末がつくようなことまではやって然るべきだと思っていますが、自治体全体の予算編成まで議会が本当にやるような仕組みまで、今のところ踏み切って構想しているわけではないものですから、したがって、先ほどの御意見は、まず議会が議会の責任で支出できること、例えば議会の職員をどこかに派遣するような時の予算執行権は、わざわざ議会事務局長さんが知事さんのほうから委任を受けなくてもできる程度のことは、最低限議会の自律性としてやってみてはどうかなというようなことを考えているんですが、まず最初の御質問は、議会の予算の少なさと、そういう予算の編成・執行についてどう考えるかということがまず出ていますので、これについて、まずどなたかからお答えいただきましょうか。

(千葉)
 何か身内同士でやるような話になりましたが、いずれゆっくりお話を伺いたいと思いますが。
 執行権全部ということから言いますと、今先生がおっしゃったように非常に難しい側面があると思います。二元代表制のその性格付けみたいなこともあると思いますが、ただ、議会独自のものということになれば、今までも話をしてきましたし、先ほども話しましたが、これはできるだけ独立的に動けるような体制は作るべきだと。そうじゃないと、本来の我々の機能が発揮できないじゃないかという考え方はございます。

(大森)
 ちょっとついででございますが、最後の方が、福井県の議員さんから、いろいろな条例、政策条例を作り出すという議論を一生懸命やっているんだけど、少し無理があって、もし議会が何か新しいことに乗り出す時に、少し絞って何か考えるべきじゃないかと。理事者がと言うか、執行機関に対抗して議会がみんな条例を作るというのはちょっと無理があると。なかなかごもっともな御意見ですので、これについてどんなお考え方でしょうか。

(千葉)
 宮城県の例を申し上げますと、条例の性格は先ほど先生がおっしゃったようにいろいろあると思うんですね。一番最初に入って行ったのは、いわゆる理念条例と言われるものです。目標の部分ですね。その次には各執行部と議会との関係とか、外郭団体と執行部との関係とか、いわゆる関係を規定するような、若しくは議会の権限を変更するような条例を手掛け、その次に一般的な政策条例。最後が、これは条例改正でしたが、罰則規定まで入った条例改正の分まで宮城県議会では取り扱っています。
 これは、そういう意味では可能性を持つということになると思いますが、ただ、先ほどお話がありましたように、執行部と対抗しているという点は、ちょっとニュアンスが違うような気がいたします。基本計画を作る際に申し上げましたのは、知事制度というのはいろんなことを決定していくには一番いいシステムなわけですね。ただ、議会は先ほどからお話がありますように、住民意思を広く吸収するには議会の方がもっと優れているわけです。ですから両方で基本的な方向を詰めることは、決して住民にとってまずい話ではありませんから、そういう意味での議会の機能というものを発揮をしてきたわけでありますし、他の場合でも同じことが言えると思います。
 それで、執行部の方もこれは分かってきておりまして、例えば水産振興条例、この際には、逆に執行部側からその提案する議員有志のところに確か4、50名と聞いていましたが、関係の職員が全部集まって、何でもいいから聞いてくださいというところから始まっているわけですね。だから議会としても、条例は我々が作りますけれども、執行するのは別な部分にあるわけですから、当然そちらに配慮はしなければならないわけですので、そういう意味では、「対抗」と言うよりも「共同」になるかも知れません。そういう方向は模索していいんじゃないかという考え方を持っております。よろしいでしょうか。

(大森)
 福井県の先ほどの御発言の議員さん。今のようなお答えですが。別にそんなに無理をしているんじゃなくて、議会がちょっと従来の考え方をお変えになると、できることがあるということだと思うんですよ。だから、福井県の皆さん方がちょっと考え方を変えると、できることを三重県も宮城県もおやりになっているんじゃないかと、私は推測しているんです。ただし、今までなかったものですから、張り切って紹介しているんですよね。議会がこう考えると、こういうことができます、できないと思っているんじゃないですかということを言っているんですけど。どんなもんでしょう。

(山本)
 だから今の共同提案という考え方だと、僕はうまく行くと思うんです。そういう面でどんどんと理事者と話し合いしながら進めていかないと、なかなかあらゆる面にその理事者と、本来、理事者がすべきものまで議会ではすべきではないのではないかという見解を持っているわけですから、それはよく分かるわけです。

(大森)
 ありがとうございました。総長、今日は話題に出なかった意見書ですが、結構議会は意見書を出しているんですよ。多分ほとんど影響力を与えない意見書をやたら張り切って作っている。でも、真面目におやりになっていますので、これは重要な政治活動なんですね。議会は政治機関ですから、行政がやらないことで重要な活動の一つだと僕も思いますが、全国的なレベルで見ると、どんなふうに把握されて、意見書というのはどういう感じか、取り扱い方になっているかということについて、何か御意見があれば。

(襲田)
 気持ちは非常によく分かります。議長会として正式にどういう物言いで言ったかまではちょっとおぼつかないのですが、現行法で言えば、確か自治法の263条の3で、地方6団体が意見書を国会・内閣に出した場合は、内閣のほうに一種の誠実回答義務というのがあるわけですね。遅滞なく回答するよう努めることになっています。今思い出しつつあるんですが、過去、議長会としては自治法99条に基づく意見書に対して国の回答義務みたいなものを法律上書くべきではないかということを要望したことがあったように思います。ただし、実現を見ておりません。
 私も長い役人生活で思いますのは、役所から言えば非常にたくさんの意見書が各議会から来ます。これは都道府県だけじゃなくて、市区町村を含めてものすごい数が来るのですね。同じようなものもあれば、つまり、さっきどなたかの御意見にありましたように、どこかが雛型を示してそれに沿った内容のもあれば、非常に個性的なものも、毎議会ごとにたくさん来る。それを統一的に、例えばA省のどこかで、文書広報課なら文書広報課で全部把握していればいいのですが、そうではなくて、行く先々もさまざまであると。また、郵送で来るもの、持ってくるもの、とにかくたくさんあるわけですね。ですからこれを全部把握し、関係省庁あるいは国会も含めて、きちっといついつまでにこういう形で回答するという仕組みを考えることは容易なことではないだろうという実感はいたします。そこをどう突破するかということになると、ある程度的を絞って、こういうものについてはどうかというふうに、お互いよく協議しながら照会、回答するシステムみたいなものが運用でできれば望ましいと思いますが、現状ではなかなか容易なことではないという感じはします。
 我が議長会は、議長会として夏とか冬に要望書を出しておりますが、それについてはきちっと調査をして、毎年度こういう形になりましたという、一応、状況報告はいたしておりますが、各都道府県、各市区町村の意見書の処理状況の把握はなかなか難しい。各県の議会事務局も、そこまでできればいいのでしょうけれど、おそらく同じような悩みを抱えているのではないかと思います。

(大森)
 これほど意見書が多いと、もうこれ、超インフレでして、価値は下がってますよ、かえって。だから、一種のこれは国政参加風の影響を持つんですよね。いろいろ。国が物事を判断したり、決めていく時に影響を及ぼそうとしていますから、やっぱりもうちょっと国政参加で実が上がるようなやり方をお取りにならないと、何か一応出した、みんなでやったと言って、意気は上がるんだけど、ほとんど影響力を及ぼしていないんじゃないかと。本当に影響力を及ぼすなら、そのルートと言うか、手法と言うか、何か国政参加への道筋みたいなものを制度構想しないと、ちょっと空転する可能性があるので、せっかくの政治活動ですから、もうちょっとそれが国政のほうの意思決定につながっていくような、そういう仕組みみたいなものについても同時に考えてくださることは、私は大事かなというふうに思っています。これ自身は非常に大事な問題提起だというふうに本日は受け取らせていただきます。
 それから、先ほど、ローカルパーティの議論がございまして、これもナショナルセンターと言うか、日本の政党の体質とか、そういうことと関係がございますので、あれは御意見として伺っておいてよろしいでしょうか。今後、我が国におけるローカルパーティの可能性についてもいろいろ議論しなきゃいけませんので、本日直ちにはちょっとお答えしにくうございます。
 私どもの研究会は、相対的に比例代表制については慎重論が強いということを御報告申し上げておきまして、今後少しこの問題については検討させていただくということでよろしゅうございましょうか。ローカルパーティのことについては。
 少し時間が押してきまして、最後にこの4人の方々から、今後のこととも改革は関係ございまして、議員さんの身分について、議員さんというのはどういう職業で、現在のように特別職で非常勤でこういう扱いを受けていることについて、私は改革すべきだと考えているんですが、この問題について最後に締めくくりとして、4人から議員さんの身分についてどういうふうにお考えになっているか、今後どうすべきかということについて、一言ずつ言っていただいて、締めたいと思うんですが。それじゃ、どうしましょうか。どこからでも結構ですが。じゃ、総長からお願いします。

(襲田)
 議員の身分の問題というのは、非常に古くて新しい問題でございます。御案内のように、現行法では非常勤の特別職ということで、確か自治法の203条ですか、各種委員会委員と同じ扱いになっております。ただし、条文をよく見れば、単なる報酬、費用弁償だけでなくて、議員の場合には、報酬を条例で月額制としたり、あるいは期末手当を支給することができるということで、若干配慮はいたしておりますが、そもそもどういう職業であるのか、どういう仕事をやるのか。都道府県議員の場合、かなり常勤化している実態があるわけですが、どこまでが政治活動であり、選挙活動であり、あるいは議会としての公的な活動であるのか、これは以前から議論があって、なかなか解決がつかない問題でございます。
 しかし、放っておくわけにはいかない。やはり後顧の憂いなく堂々と議会人としての仕事をしていただかなければいけないわけですから、何とかこの問題に突破口を開きたいということで、都道府県議会制度研究会でもそこに焦点を当てて議論していただいております。今のところ、例えば選挙で選ばれた人、すなわち、議員なり長、そういう方々については公選職という、通常の常勤職員とか非常勤職員とは別の、第三のカテゴリー、公選職というカテゴリーを作って、そこで性格づけを明確にしたらどうかという議論が出ております。
 それから、これと非常に関連しているのは、公務の範囲というのはどこまでなのかということです。例えば、議員活動としては同じ日にここでは政治活動をやり、今度はこちらで別の議員活動を、その後には議会の活動に加わったりとか、いろいろなことをやっているわけですが、どこまでが公務の範囲なのか、どこまでが費用弁償その他、公的なお金が充てられるのか、あるいは議会事務局の職員はどこまで補佐できるのかとか、いろいろ悩ましい問題があります。そういうものが言わば星雲状態で、私自身も含めてうまく整理できていないわけでございまして、そこがはっきりしないと、各論の問題も解決できない面もありますので、私は是非今度の議会制度研究会でも、先生の御指導も得ながら議論を深め、何とか地方制度調査会で一定の主張ができればと考えているところでございます。

(大森)
 妹尾さんもいい問題提起をしていただきましたが、今までのことを含めて、最後に一言御発言いただけますか。

(妹尾)
 議員個々人の問題ですが、これは一応、住民感情を踏まえた言い方をすると、生活給に等しい議員報酬を受給されている皆さん方ですから、せっかく年4回の、いわゆる4場所議会ではなくなりつつありますので、月額報酬であれば、月に1回は某かの目に見える議会という組織としての活動が制度的に担保されるような運用が望ましいと思いますが、それにつきましては、議員の身分について、先ほど、総長の話ですと、公選職というのを考えたらどうかということですが、ひっくるめて「選挙職」というふうに、私は実は大学の授業なんかでは、「昨日まで家畜の世話をしていた人たちが、今日からもしかしたら牛の糞の付いた長靴を履いたまま議場に入って来るかも知れないけれども、それが厳粛な自治体議会なんですよ」という言い方をし続けているわけです。つまり、首長さんとは違った意味で複数のチャンネルをお持ちの自治体議会の議員の皆さん方が、より正確な住民代表機関として機能を発揮していくという場合に、やっぱりこれじゃやっていけないという最低ラインというのがあると思うんですね。
 都道府県議会の場合には政務調査費云々ということで、制度的にフォローをするという話が一般的に出てきますが、市町村議会の皆さん方に対する住民感情としては、「全く仕事もしていないのに報酬だけもらって」と。で、「お手盛りでそれを上げて」という議論がずっと先走りをするわけですね。そうでないような組織としての運用を考えるということであれば、どうにかして住民代表機関性というものを担保する何かチャンネルを特別に設ける必要があるのではないかというふうに思うんです。つまり、日常的に首長さんよりも我々議会の議員のほうが、住民の皆さんの意思を正確に議会に反映していますよということが分かるシステムというものを、構築する必要があるのではないかというふうに思うわけです。
 言うは易く、行うは難いかも知れませんが、都道府県議会についても、これから道州制の議論が多少なりとも動いて行く中で、やっぱり一番大きな土台となる、そういうところの問題を、自分の問題を自分の口から、こういう問題があるんですという情報発信をし続ける必要があるのではないかなというふうに思うんですね。
 繰り返しになりますが、多様な複数のチャンネルをお持ちになっている自治体議会の面々が、首長さんよりも住民感情に合致したことができないというのは、これはいかがなものかと思いますので、その道は探る必要があろうかと思います。例えば事務局の職員が、もうちょっと専門家が欲しいという時に、例えば理科系の学部を抱えている大学でよくやっているんですが、教員の面々がポケットマネーを出して、電話番のペイを手当てするとか、ということをやっているわけです。そうすると、この問題についてこの人が専門家だと判断をしたら、その人のレクチャーを受けるというふうなことにお金を使う。そのために批判の多い議員報酬の中からこういう使い方をしていますというのは、むしろ有権者にとっては知りたかったろうし、望ましい使い方だというふうに評価されるのではないかというふうに思うんです。
 「公選職」という言葉が望ましいのかどうかは別として、大森先生あるいは襲田総長、おっしゃる新たな枠組みを設けるべきだというのは私も前々から思っていますが、どういうネーミングがいいのかはちょっと私のところではまだ分からない。勉強不足で、中途半端ですが。

(大森)
 でも、おっしゃっているのは、「選挙職のほうがいいでしょ」と言っておられるんですよね。はい、承りました。考えてみます。
 じゃ、千葉会長さん、お願いします。>

(千葉)
 基本的には、我々の議員活動というのは、もう常勤に近い勤務状態にあると思いますので、それに対応した形を作っていただきたいということと、それから、議員活動の広範さ、複雑化、いろいろ考えますと、議員活動の支援体制というものも、この機会にご研究をいただければと思います。
 他に、今までの議論の中で、議員活動の基盤整備のみならず、議会の監視権とか調査権限とか、さまざまな権限について議論がありましたが、これらはいずれも制度改正に関係することでありますので、各議会とお互いに連携が取れればというふうに考えながら伺っておりました。
 何せ議会関係の地方自治法改正というのは、なかなか至難の業なところもあるようでございますから、お互いに十分研究、連携を取りながら問題に対処できればと思っております。以上です。

(岩名)
 今までの私たち県会議員というのは、各県によってみな温度差がありますけれども、執行部の追認機関の役割をしていたと言っても過言でないと私は思うんですね。それがこの2000年から、地方分権推進一括法ができ、これからいわゆる自治体議員の在り方が本当に大きく変わろうとしており、今、大切な時期を迎えていると思うんです。
 この際に我々の身分はこうなんだとか、あるいはまたこうしてもらわないと困るんだというようなことはなかなか言いにくいと思うんですよね。しかし、こうしていろんな議論をして勉強をしている中で、おのずからそういう道が開けてくるんじゃないかと思うんです。
 三重県議会を例に取らせていただきますと、昨年はだいたい年間90日ぐらい議会のオフィシャルな活動をしてまいりました。今年はどうも120日を超えるんじゃないかと。そうしますと、今120日に近い活動をしているのは、全国では沖縄県だけではないかと思うんですが、そのように都道府県によっていろいろ活動の内容も時間もまちまちだと思うんですが、これからこういう情報交換の機会を増やして、いろんな議論をし、そしてより高め合うことによっておのずから回りの人たちが私たちの処遇というものを「こうすべきじゃないの」というぐらいのところまで理解を示してくれるようにならないといけないんじゃないかと私は思うわけでございます。
 どうぞ今後ともよろしく御指導のほどお願い申し上げます。

(大森)
 ありがとうございました。
 もう定刻数分前でございますので、これで終わらせていただきますけれども、本日は三重県がこうやって頑張ってシンポジウムを開いていただいたんですが、都道府県の議会改革の最初の前触れというのは、全国で地方議会の改革を持ち寄って、研究報告をし始めた。議長さんや副議長さんや委員長さんが出てきて、全国の方々の前で自分たちは何をやっているかということを語り始めた。そうすると、これは持ち回りでやると、何にもやっていないところは出ようがない。ということは、研究会の御報告をするためにも、それが目的じゃないんですが、今日のように本当に議会が議会たり得るためにはどうすればいいかということを、各議会ごとがおやりになったことを持ち寄って、全国でこんなことが行われているということを交流し合っていく。お互いに励まし合っていく。そして、慎重に期さなければならないことも多々ございますが、議会がいいものになるためのさまざまな工夫をお互いに学び合っていく。
 そういう観点から見れば、本日の三重県のこの率先とした開催というのは、私は大変敬意を表したいと思って、本日まいりました。万端いろんなことで御苦労をかけた今日のお集まりだったと思いますし、たくさんの方がお見えくださいましたので、これをお持ち帰りいただきまして、それぞれの議会で一歩でも二歩でもいい議会を作っていただく、その糧になればというふうに私は思っています。
 本日はありがとうございました。これでお開きといたします。

(新潟県議会・三林碩郎氏)
 一言だけ。大森先生の基調講演の中で地震のお話が出まして、議会がその時にどうしたんだというような話が出たのでどうだという話ではありませんが、まず皆様方に地震に対しまして大変なる御支援をいただきました。本当に心から、この機会をお借りいたしまして、御礼を申し上げたいと、こう思うわけであります。
 新潟県は御承知のように、7月に7.13水害で県央で大水害を受けました。そして10月23日、10.23で新潟県中越大地震が発生したわけでございますが、その中、全国の議長会さん、そしてまた東京では近辺だけではなくて、ボランティアも参加していただきました。議員の皆さんから。本当に心から御礼を申し上げたいとこのように思うところでございます。ありがとうございました。
 もう1点でございますが、基調講演の中で、地震の時に県会議員も全然姿が見えないというお話でございましたが、私ら、ちょうど知事さんの選挙を終わりまして、当選者が決まりました。ただ、地震が23日でございまして、25日から新しい知事でございました。そこで、前の知事さん、まだ現職ですね。25日まで新しい知事さんにならないわけですので、平山という知事がおるわけでございますが、平山知事が対策委員長に就任したわけであります。当選いたしました泉田知事はまだ知事ではございませんでした。
 そんな中で、県の機能が果たしてどう動くのか、我々議会もすぐ対策本部を立ち上げました。会派で立ち上げまして、対策本部に私も行ってまいりました。ずっといたわけでありますが、ただ、この分権とか議会の云々ではなくて、私はあそこにいまして、あそこは大変に決定をするところなんですね。要するに予算とか云々の議論ではなくて、今どうなっているんだ、どうするんだという決定でございます。
 そんな中、議員がどうかと言いますと、大変日頃は「議員は何してるんだ」ということでありましたが、地震になりますと有事であります。実に選挙をやりますから、津々浦々全部分かります。地震になりましたら、あそこの集落はどうなっているんだ、どうなって今、自衛隊がどうなるんだというものまで分かりますから、つぶさに我々は情報をいただいて、そして対策本部に反映をさせました。そうしましたら、まさに住民は「いや、頼りになるなぁ」と、こういう評価をいただいたということだけは間違いございません。そんなことで、その評価が今度は予算にしっかりと反映されるように、今審議をいたしておるところでございますので。
 ただ、我々の報道はほとんどしません。マスコミというのは、議員が一生懸命やっても、なかなか報道されないのが事実でございますので、その点につきましては大変残念でありますが、議員としては、住民に喜ばれたということで、頼りになる県会議員だなと言われたことは大変嬉しく思っているところでありますので、皆様に御礼と御報告に代えさせていただきます。

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