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三重県議会 > 県議会の活動 > 委員会 > 委員会会議録 > 平成20年度 委員会会議録 > 平成21年3月5日 NPO等ソーシャルビジネス支援調査特別委員会  会議録

平成21年3月5日 NPO等ソーシャルビジネス支援調査特別委員会 会議録  

    NPO等ソーシャルビジネス支援調査特別委員会

会 議 録

(開 会 中)

 

開催年月日   平成21年3月5日(木)  自 午前10時03分 ~ 至 午後0時02分

会 議 室    601特別委員会室

出席議員        11名

                          委  員  長   稲垣 昭義

                          副委員長   中森 博文

                          委   員   辻 三千宣

                          委   員   笹井 健司

                          委   員   竹上 真人

                          委   員   中嶋 年規

                          委   員   藤田 泰樹

                          委   員   野田勇喜雄

                          委   員   三谷 哲央

                          委   員   西塚 宗郎

                          委   員   西場 信行

欠席議員       1名

                          委   員   森本 繁史

参 考 人    3名

                          農村コミュニィ協会(RCC:Rural Community Council)南西州事務所長

                          Mr. Stephen Wright (スティーブン・ライト)

                          GAVCA(Gloucester Association for Voluntary and Community Action)事務局長

                          Ms. Sally Pickaring (サリー・ピカリング)

                          四日市大学総合政策学部教授、四日市NPOセクター会議議長

                          松井 真理子

委員会書記   

             議  事  課   主査       西塔 裕行

                企画法務課    主幹         福井 夏美

傍聴議員       1名

                          議   員   藤田 宜三

県政記者クラブ 2名

傍 聴 者      4名

議題および協議事項

Ⅰ 調査事項

 1.英国の市民活動について(参考人:松井真理子氏)

 2.英国のパリッシュと住民自治活動について(参考人:スティーブン・ライト氏)

 3.英国のNPOと自治体との協働について(参考人:サリー・ピカリング氏)

Ⅱ 協議事項

 1.委員長報告について

 

【会議の経過とその結果】

 

〔開会の宣言〕

 

Ⅰ 調査事項

 

 1.英国の市民活動について(参考人:松井真理子氏)

○松井真理子参考人 それでは、最初、今日お手元に日本語でスティーブン・ライトさんの原稿がございますが、ちょっとこれをお出しいただけますでしょうか。「コミュニティの政府-場所として、目的として」というとじたものです。8ページぐらいあると思いますが。
 スティーブンさんの話、事前に送っていただいたこのペーパーは大変量が多うございます。きょう通訳を入れての30分ですと、話しきれないということがございますので、これを使わせていただいて、最初の説明にかえさせていただこうと思っております。
 お二方のご紹介は先程稲垣委員長の方からありましたので、これ以上は申し上げませんけれども、最初にお話しなさいますスティーブンさん、お仕事としてはパリッシュの活動をより促進するというお仕事をなさっています。
 パリッシュということですけれども、お手元の資料の1ページの一番下に見出しの3番、パリッシュの歴史というのがございます。こちらをごらんください。
 パリッシュというのは、もともと歴史的にはかなり古くて、教会の方々が実際に地域に出かけていって説教なさったり、あるいはその場としてその後、教会ができていって、そういう場としてできていったのが最初ですけれども、今あるパリッシュというのは、それとは切り離されております。
 現在の形でのパリッシュというのは、100年ほど前、当時のグラッドストーン首相がいらしたときに、選挙で選ばれた議員、日本で言うとパリッシュというのはちょうど地域の自治会に当たるような、やっていることはそれに当たるようなことをされていますけれども、単なる地域の自治会ではなくて、より選挙で選ばれた人で行う自治体というふうなものにしていこうということで、グラッドストーン首相の提案で動きが始まりました。
 後は書いてあるとおりなんですけれども、実は、イギリスも日本も同じように、中世というのは地方の大名、あるいは貴族、そういう人たちが牛耳っていたものですから、その人たちにとって見ると、時代的に見て、地域の大富豪とか、貴族とか、あるいは教会の関係者、聖職者というのは、住民自治というのは当時余り好まなかったということでございます。
 そこのところを、そうではなくて、地域の民主主義を育てようということで、そういう新しい試みをして、非常にたくさんトラブルもあったようですけれども、法律ができて、19世紀終わりごろ、その形が整ってきたということでございます。
 ただ、イギリスも農村地帯の経営というのは大変難しくて、農業が大変衰退しましたので、ご存じのように1920年代、ちょうど今と同じように大恐慌、世界恐慌が起こるということでございまして、農村の土地の値段も、農村経営が大変難しくなってきました。
 ですから、当時パリッシュの運営経費というのは、土地代などに反映させるということだったんですが、もうそれができなくなっていくということもありまして、収入源の問題、その他の問題でだんだん衰退の道をたどってしまった。
 そこのところが、1960年代ころから次第に流れが変わってまいります。そのあたりが2ページあたりに書いてございますので、詳しいところは見ていただいたらよろしいかと思います。
 そして、1972年、大体35年ぐらい前、このときの地方自治法、これは74年の施行になっておりますけれども、このときに、きちんと初めて明確によりきちんとした形でパリッシュが現在の形と申しますか、新しいエネルギーを吹き込むという形でとらえ直しをされた。
 このとき実はほかの自治体の組織も変更になって、今のような形の基盤ができてきたときですけれども、そのときに再度、パリッシュが力を盛り返すように変更し直されたというような形になっております。
 今、イギリスの自治体の話が出てきておりますので、3ページをごらんください。
 3ページの6番のところにイギリスの自治体制度の混乱というのがございます。イギリスの自治体制度というのは、非常に変化が激しいわけでございまして、基本的には今日おいでになっていただいているグロスターシャー県では、日本と同じように県、県はカウンティと申します。それからディストリクトというのは市町村に当たります。カウンティとその下にディストリクトというのがあると、そういう形になっておりますが、実はこの制度が随分最近変動しておりまして、要するに県と市町村という二つのものは要らないと。県と市町村を一体化して、これはユニタリィ・オーソリティといいますが、単一自治体、要するに県と市町村を一体化するものに動きが変わってきているということで、最近は県、市町村の数がだんだん減ってきている、このユニタリィ・オーソリティというものに変わってきているという傾向がございます。
 それから、同じくイギリスの場合、今、ライトさんが働いていらっしゃいますが、南西州、サウスウェストリージョンといいますけれども、リージョンというのは、ちょうど日本がこれから進めようとしている道州制のようなものですが、ただイギリスの場合は違いますのは、道州制の州、リージョンというのが国の出先機関であるということでございます。日本の場合はちょっと違います。
 そこのところで、リージョンがあって、そのリージョンを通して県、あるいはユニタリィ・オーソリティ、単一自治体というふうなものがいろいろ関係を持って仕事をしていると、こういう形になっております。
 非常に制度が変わるものですから、イギリスの自治体、あるいは住民も非常に混乱をしていると、こういうことが書かれておりました。
 それから、4ページをごらんください。
 ちょっと長くなっちゃったので、急ぎますけれども、これはあとサリーさんのことにかかわってまいりますが、4ページのところ、非常に重要なところでございまして、イギリス政府、ちょうど1997年にブレアという人が労働党政権を、長らくサッチャー以降の保守党から変化いたしました。このときに非常に大きく変わったことの一つに、きょうのテーマでもございますが、NPOというものを大きく位置づけていく、それまでサッチャー政権まではNPOというものはもちろん力がないことはなかったんですが、それほどの特別の価値を見出すということではありませんでした。
 ところが、労働党政権になりましてから、そこに、特に地域の民主主義の住民の声を代弁するという意味で、非常に民主主義を代弁する組織であるということで、非常に重視されまして、特に自治体とNPOとの協働、パートナーシップというものを政策にかなり進める、大きく進めるという手法がとられました。
  その代表的なものが、4ページに紹介の7番の(1)地域戦略パートナーシップというものですけれども、これは各自治体が総合計画をつくっていくときに、自治体単独でつくるのではなくて、一過性ではなくて恒常的なNPOとか、それから自治体でも県、市町村、国も入りまして、時にはパリッシュも入りまして、あるいは企業も入りましたパートナーシップという組織をつくって、そこが長期計画をつくっていくと、そういうことが義務づけられました。
 特に最近、(2)の政策合意協定(LAA)というものですけれども、これは何かといいますと、特に自治体が住民の方にちゃんと顔を向けて仕事をしなさいと、イギリスの場合、地方自治ということももちろんあるんですが、かなり国のリーダーシップが強いです。政治主導というのが非常に強いですので、労働党政権になりましてから、かなり国は地方自治体に対してハッパをかけるということでして、住民の方を向け、そしてNPOを巻き込めという支持がたくさん矢継ぎ早に出ておりまして、このLAAというのは、各県の仕事を193項目に必要な仕事がいろいろあるわけですけれども、その指標を193項目つくりまして、そのうち35項目を各自治体に優先順位を決めさせて、自分たちはこれを優先的に守っていく、進めていくというものを選ばせる、そしてそれをことし4月から毎年、毎年チェックしていく、国がチェックしていくという、そういうシステムをつくりました。
 この中の一つに重要なもので、7番目というものがあるんですが、この中に「活力ある第3のセクター」、要するに活力のあるNPOというものを進めていけという指標がございます。多くの自治体がこの指標を採用しております。
 ですから、今この指標を掲げた後、何を物差しにするのか、「活力ある第3のセクター」は一体何なのか、そのことを決めていくために、今調査を行っていて、自治体に関することについてのNPOに対する全国調査が行われていて、この結果が昨年やられまして、この結果がことし4月にまとまります。これで指標の物差しができるという形になっております。
 それから、もう一つ、その下の(3)コンパクトというものですが、このコンパクトというものは、国が始めましたけれども、国とNPOセクター全体での協定というところから始まりました。NPOがお金が必要であったり、国からいろいろな補助金とか、それから委託金をもらったりしていきます、あるいは自治体でもらっていきますと、独立性が脅かされていく。
 どうしてもお金、スポンサーの方を向いて仕事をしなければいけない、それではいけない、独立性を維持しなければいけないというニーズも高かったので、そのための協定を結ぶというようなことも行われていて、これは今、全国の自治体に広がり、ほとんど99%ぐらいの自治体でこのコンパクトが県レベルでも、市町村レベルでも結ばれていると、こういう状態になっております。
 あとは、少し具体的な話の中で出てくるかと思いますので、大きな流れとしては、そこまでにさせていただいて、後はお2人の話に移らさせていただきたいと思います。
 以上、終わります。

 

 2.英国のパリッシュと住民自治活動について(参考人:スティーブン・ライト氏)

○稲垣委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、続きまして、早速スティーブン・ライトさんの方から、英国のパリッシュと住民自治活動についてというテーマでお伺いしたいと存じます。
 スティーブン・ライトさん、どうぞよろしくお願いいたします。

○スティーブン・ライト参考人 今日は本当にお招きいただきましてありがとうございます。
 非常に今日のこの場をうれしく思いますし、それから皆様方、この直前にお会いしましたけれども、萩野議長さんにも非常に貴重な時間をいただきました。本当に今日はありがとうございます。
 もう言うまでもないことですけれども、こういう人々と仕事を通じて、こうして直接会ったり、お話をして、そしてネットワークをつくっていくということが非常に重要だと思っています。三重県は初めてですけれども、ぜひ皆様方と考え方を共有して意見交換できることを楽しみにしております。
 本日私は、特にパリッシュの役割とか、そういうことについてお話をするように求められています。私は非常にパリッシュ、特になぜかというと、住民による民主主義、住民自治というものに非常に心ひかれて頑張ってきたということがあるからです。このパリッシュというのは、議員がいらっしゃいまして、パリッシュに限らず民主主義というのは議員というのが非常に重要だと思っています。
 私は議員さんというのは個人的な思いですが、勇気のある方というふうに思います。そのような方が民主主義を支えていらっしゃるので、日本はわかりませんけれども、イギリスでは選挙に出るのが結構難しいという状況にもなってきております。
 選挙に出ることは難しいことだとしましても、議員がいなければ、民主主義は実現しません。発展しません。民主主義というのは非常に重要なものでして、投票する自由でありまして、民主主義というのは自由の表現をするわけでして、投票する自由、あるいは反対意見を述べる自由、意思決定をする自由、こういうふうなものがまさにコミュニティ、この自由がコミュニティをつくっていきますし、ひいては国をつくるものと確信しております。
 お手元の資料ですと2ページの一番下の4番になります。議員と財源。イギリスの人たちというのは、結構まだ混乱があります。政府も自治体をよく二層性、県と市町村、ディストリクトの二層性という言い方をしますが、そうではなくて、本当はパリッシュがある、三層性なんです。
 パリッシュはちゃんと法律に定められた自治体ですし、議員さんは4年ごとの選挙で選ばれています。そしてその財源ですが、主として市町村の住民税に上乗せされました税金です。税の徴収、これは県や市町村が行っておりまして、6カ月ごとに年2回に分けてパリッシュに支払われます。
 法的な団体ですから、自治体に対して事業補助金などの申請もできます。しかし、県とか市町村のように中央政府からお金を得るということはできなくなっております。
 お金が国からは来ないということです。
 1997年の地方自治及び地方税法ができましたが、ここのところで今までパリッシュがなかったところに対して、新しくパリッシュをつくるということができるようになりました。
 そのやり方ですが、地域に住んでいる住民の請願です。地域に住んでいる住民の250人以上、または選挙人の10%以上、そのどちらか多い方の署名が求められます。請願を受け取った自治体は、意見を付すことはできますが、必ずそれを国務大臣に申達しなければいけません。国務大臣は請願に対して、みずから承認、または非承認の決定を行うか、または自治体委員会というのがあるんですが、こちらに諮問を行います。この手続ができるようになりましてから、多くの新しいパリッシュが生まれました。
 この手続、もともとパリッシュは農村地域にあるものなんですが、ロンドンとかほかの大きな都市でもできることになりました。しかし今のところ、大都市にできている例は、バーミンガムぐらいではないかと思っております。
 私が今います組織は、農村コミュニティ協会RCCと申します。これは非常に長い歴史があるんですけれども、私が長くおりましたグロスターシャー県の農村コミュニティ協会というのは、これは各県単位にありますが、その中でも最も古く、1923年にできました。現在、全国で38RCCがあります。そして、州ごと、先程申しましたが、リージョンというイギリスには州がございますが、その州ごとに7つの事務所を持っております。
 私は、南西州というところの州に属しているRCCの州事務所の事務局代表をしております。
 今やっておりますのは、6ページの10番です。もう既に始まっておりますので、4行目、5行目のあたりから始めます。全国に38の農村コミュニティ協会がありまして、これはパリッシュを支援するNPOのようなものですけれども、これは中間支援組織と位置づけられております。中間支援組織というのは、ほかのNPO、あるいは団体を支援していくという意味がございますけれども、多くの中間支援組織と呼ばれているものが必ずしもその役割を果たしていないということがよくあります。しかし私の団体は違います。
 例えば、1930年代に農村のいろんな手工業をされる方々を支援する必要性を感じまして、私のおりましたグロスターシャー県のRCCは、グロスターシャー県手工業者ギルドというものをつくりました。
 それから1930年代終わりには、パリッシュが非常に重要ですから、これをサポートするために県全体のパリッシュ連合をつくることに支援をいたしました。
 それから1980年代、グロースターシャー県にエイジ・コンサーンという高齢者のためのNPOがあるんですが、この自立をすることを支援いたしましたし、県内にボランティアセンターも設立いたしました。
 そのように、地域のニーズを把握したり、それをプロジェクトで新しい組織づくりにつなげるということについて、非常に長い歴史を持っている団体でございます。
 それから、中間支援だけではなくて、パリッシュを通じて地域に直接的なサービスも提供しております。
 例えば、直接的なサービスの一つには、農村地域の集会所の運営の支援があります。こういう集会所というのは、県とか国とかが運営に係ることはなくて、農村地域の人たちが自分たちで所有してマネジメントしておりますので、そのサポートもしております。
 もう一つプロジェクトをご紹介します。「働くための交通」というプロジェクトがあります。農村地域で車を持っていない、そこに住んでいる人たちでお金がないために車がないという人が結構いらっしゃいます。また、農村地域というのは公共交通機関が大変乏しいわけです。ですから、そういう人たちが仕事、特に失業する人が結構多いですので、仕事を探したり、あるいは職業訓練を受けるための人たちで、自分の車がなかったり、あるいはバイクがないという人たちのために、仕事を獲得するまでの間、6カ月間を上限としてバイクを貸し出します。その間に自分のバイクを買うためのお金をつくっていただき、そして後は自分でそのバイクで引き続き継続して仕事を探すか、訓練を受けるか、もしくはその間に仕事を見つけると、こういうことになろうかと思いますが、非常にシンプルで経済的な活動だと思っております。
 私たちの組織は、このほかにも高齢者の方のサービスとか、あるいは精神障がい、障がい者の方のサービスとかいろいろやっているわけですけれども、特に重要なものといっても過言ではないものに、パリッシュ、各地区でつくる住民主導の地域計画をつくることのサポートがあります。
 私は、このような住民が中心になってつくる地域計画づくりというのは、地域住民が活性化する上で非常に重要なかぎと考えております。この計画は地域住民によって、地域住民とともに、地域住民のために作成される計画です。
 手法としましては、いろいろなアンケート調査、3Dモデル、聞き取り調査、テーマ別委員会、いろんなありとあらゆる多くの手法を使いながら、地域のニーズを探ってまいります。このようなことを私たちはサポート、支援しているわけですが、そのおかげでイギリス全体でこのような住民主導の地域計画づくりへの住民参画率というのは65から90%という、非常に高い数値が出ております。
 もともとこの住民主導の地域計画の取り組みというのは、2000年に政府が農村白書をつくったんですが、その中で位置づけられました。
 ところが、当時自治体、県も市町村も非常にこれは無理、意味がないと考えていました。なぜならば、普通の地域の方々がそんな自分たちで計画なんかつくれるはずがない、それはまさに専門的なシンクタンクとか、そういう方がするものであって、できるわけがないと考えておりました。
 しかし、今いろんな取り組みを通じての、このような計画づくりというのは地域の方が地域の自分たちのオリジナルな戦略計画をつくる、生み出すということにおいて非常に意味がありますけれども、それだけではなくて、地域の人々がみずから、地域で何が重要なのか、自分たちの本当に地に足がついた計画を自分たちでつくれると、こういうすぐれた点があるということを自治体もようやく理解するようになっております。
 今年の4月から私が冒頭で申しましたけれども、各自治体は国の方から事業の進捗率、住民に向けていかに協働した行政を行っているかということについて、客観的に示すことが義務づけられました。これはLAAで説明を申し上げたことです。しかもそれは毎年、国が監査に入って進捗状況がチェックされる。これによって、自治体が設定した目標をチェックされるわけですが、非常にこれは重要な新しい動きということができます。
 このLAAというのが今年からチェックが始まるわけですけれども、この意味というのは、いかに進捗をしたかどうかということももちろんなんですけれども、そのことが各自治体がいかに住民のニーズを把握しているのか、住民にとって意味があることをしているのかということをチェックされることになります。
 私たちは、この動きというのを非常に重要に考えておりまして、このパリッシュが地域の人々の意見を聞きながらいろいろなことを進めていくという自治体がよい成果を上げていく上で非常に重要な役割を果たすことができるということを示す、いわばスタート時点に立っているというふうに考えております。
 パリッシュの議員というのは4年に1回選挙で選ばれるんですが、議員の選ばれる資格というのは、パリッシュの中に住んでいること、あるいは中でなくてもパリッシュの外3マイル以内に住んでいることだけです。年齢はあるみたいですけれども。そのことが地域のことをよくわかっているということで、地域の利害を代表することができるんですが、当初からパリッシュの議員、あるいはパリッシュで働く職員の方々への教育訓練ということについての考え方がなかったんです。
 でも、これは非常によくないということでして、私たちは1980年代からこれのための勉強のコースを考えてまいりました。そこのところで簡単に申し上げますと、私自身が1980年代にそのことに気づいて、ちょうど同じことを考えているパリッシュの職員とか、大学の関係者とか、そういう方々と一緒になって、パリッシュの議員、それから職員、このトレーニングのための教育訓練コース、最初は2週間の夜間コースから始めました。
 現在、私がおりますグロスターシャー県の大学、グロスターシャー大学というのがございますが、こちらの方に2年間の学士がとれる、そういうふうな資格もとれるようなトレーニングコース、勉強のコースというのができるようになっておりまして、非常に進歩していると思います。
 先程紹介しました2000年の農村白書の中には、パリッシュはたくさんありますけれども、この中のモチベーションを高めるために、品質の高いパリッシュという認定制度をつくることになりました。このパリッシュというのは、より責任ある役割が果たせるためにこの認定制度をつくったわけですが、その基準はそこにお示ししているとおりでございます。
 簡単に申し上げますが、実はたくさん基準があるんですが、その中の一部です。民主的に選ばれた議員、要するに選挙をしていないところも中にはありますが、選挙で選ばれた議員が80%いるということです。それから教育訓練を受けていること、先程の教育訓練には実は終わりましたら認定証が出るんですけれども、その認定証を持っているかどうか、これは職員です。
 それから、議会が年に6回以上開催されていて、1回は年をきちんと総括する年次議会であるかどうか、それから地域住民とのコミュニケーション、例えばニューズレターとか、ホームページをつくっているかどうか、それから会計が含まれました年次報告書をつくって、すべての世帯に見せているかどうか、それから会計はちゃんと資格を持っている会計士に監査されていて、議会にちゃんと迅速に報告されているかどうか、あとパリッシュの議員とか、職員のものがイギリスにありますそういう基準があるんですけれども、それをちゃんと守っているかどうかというふうな、たくさんの基準でチェックされてきます。このチェックされてきたことを満たせば、品質の高いパリッシュということを認められることができます。
 この基準を満たしているかどうかという審査ですけれども、各県が審査委員会をつくっております。私はグロスターシャー県の審査委員会の委員長なんですけれども、多くのパリッシュが応募してきますけれども、多くの場合は最初の申請でパスはしません。
 今は全国で約1万ほどパリッシュがございますが、恐らく1割ぐらいのパリッシュがこの認定を受けることができたと考えています。進捗は思ったより遅いんです。しかしこの理由は恐らく二つありまして、一つはパリッシュの職員の方が教育訓練を受け、認定を受ける。認定がなければいけないんですが、受けることに余り積極的ではない。それからもう一つは、議員が高品質だということで認定を受けて、何が変わるのか、何のメリットがあるのかと思いがちな人がいらっしゃる。私たちは研修開発に力を注いできたので、非常にそれが残念なんですけれども、最近この動きもよりよい方向に変わってきているように感じております。
 最後ですけれども、これまでにいろいろ述べてまいりました。これは相互に、パリッシュにとって非常に意味のあることと考えております。例えば、先程申しましたパリッシュは品質の高さを求められて、認定もできるようになりました。また、県や市町村がまじめにパリッシュを取り上げてくれるようになりました。それから地域の人々とともに、パリッシュの地域計画の策定もしております。このような動きというものは、県や市町村の総合計画にも生かされておりますし、4月から始まります国のLAAの評価基準にも反映されていくと、このような動きになっております。
 パリッシュが正式な自治体となってから100年を経過したわけですけれども、やっと今日に至りまして、本来の民主主義という、パリッシュの本当の役割にめぐり会って、ついに信頼を置かれる立場になったという状態になったと考えております。
 最後、同じように自治体の中核に取り込まれていくパリッシュが、こういう時期に来ているということでございました。

 3.英国のNPOと自治体との協働について(参考人:サリー・ピカリング氏)

○稲垣委員長 どうもありがとうございました
 それでは、次にサリー・ピカリングさんの方から、英国のNPOと自治体との協働についてお伺いしたいと思います。
 サリー・ピカリングさん、どうぞよろしくお願いいたします。

○サリー・ピカリング参考人 今日お招きいただきまして、大変ありがとうございます。私たちの国でやっていることをご紹介できると同時に、皆様方の活動について意見交換ができることを楽しみにしております。
 最初に、紹介から入ります。
 今日のタイトルですけれども、グロスターシャー県アセンブリというタイトルなんですが、このアセンブリというのは何かというと、一般に議会というふうに訳しますが、ここでは四日市が持っていますNPOセクター会議というのがございますが、それに当たるものです。要するに民間のNPOの集合体ということで、これをアセンブリと申します。
 これは協働していくため、行政との協働、自治体との協働を進めていく上で非常に基礎となる組織でございますので、このことを中心にお話をさせていただきたいと思います。
 これから、まずイギリス全体のNPOのセクターのことについてお話をいたします。
 イギリスのNPOセクター、いろいろな呼び方がありますが、最近は第3セクターという言い方をします。第1は国とか自治体の政府、第2は企業などの営利セクターでございます。これらのセクターで働いている主にNPOの人たちですけれども、地域のために、地域のコミュニティとか、公共の利益のために活動しておりますし、すべて非営利で活動している団体でございます。
 国全体ではっきりした数はわかりませんが、わかっている限りで86万5000団体という数が出ております。この団体の総収入は1090億ポンドなんですけれども、円に換算するとかなりの金額になると思います。この70%は自治体レベル、全国レベルとか国際レベルではなくて、自治体レベルで活動しております。
 次に、私たちのグロスターシャー県のNPOについてお話をいたします。
 引き続き、正確につかむことは大変難しいんですが、これまでの調査でわかっている限り、2830団体はあるということはわかっております。それから頻繁にできたり、消えたりしていきますので、今のところわかっているのはこの数字。
 主に子供のこと、それから青少年の問題、健康、福祉、こういうふうなことについてやっている団体が多うございます。
 2830団体ありますが、約半数に有償、お金をもらってのスタッフがおります。しかしその他の団体というのはボランティアの職員がマネジメントしているということでございます。
 最近調査しました245団体だけの調査なんですが、そこでやりました調査によりますと、無償でやっているボランティアが生み出す経済価値というのは大体7億円だというふうに計算されております。
 次に資金のことを申し上げます。NPOの大体3分の1は公的な資金に依存しています。公的資金の半分は自治体なんですけれども、ほとんどこれは県です。
 NPOというのは何を一番期待されているかというと、公共サービスを提供する役割を期待されております。これまでのサービスの提供の仕方なんですが、自治体から補助金をもらう形が非常に多かったんです。しかしその補助金をやめて、委託契約という形に移行していく流れが非常に強まっております。
 自治体は、国の方から効率的な運営、そういう形で財政削減を求められると、こういう動きのプレッシャーは大変強まっておりまして、特に最近は景気が世界的に悪くなっている、グロスターも全くその例外ではございません。
 私の属しておりますGAVCAというのは、訳せばグロスターシャー県NPO協会というふうに訳すことができます。
 NPOには、直接いろんなサービスを提供するNPOもありますが、NPOを助ける、いわゆる中間支援と呼ばれるNPOもございます。私のNPOはそういう団体で、県全域をカバーするという組織でございます。
 そこに書いてありますように、中間支援組織があることによりまして、NPOと自治体との対等な関係を促進し、それからお互いに協力し合いながら、市民活動を支援していくというようなことをしております。
 GAVCAは、実は全国組織なんですけれども、その中のGがつくのはグロスターの団体です。五つの基本的な役割がございます。最初ですが、地域の中にありますさまざまなニーズを調査いたしまして、新しいサービスを提供する開発を担っております。
 2番目の領域ですが、実践的なサポートでございます。これはどういうことかというと、例えばNPOが補助金、あるいはいろいろな助成金の申請をする場合の書き方を支援するとか、いろいろなトレーニングをするとか、いろいろな計画をつくるときにサポートに入るとか、あるいはボランティアを紹介するとか、さまざまな実践的なサポートをしております。
 3番目の領域としまして、ネットワークづくりがございます。NPO同士を一緒にして意見交換をするとか、あるいはNPOと県などの自治体との関係づくりをしていくとか、そういう役割を果たしております。
 4番目の領域ですけれども、NPOはいろんな意見を持っております。それらの声を集めて、自治体などに届けていくという役割がございます。
 最後5番目ですけれども、自治体がいろいろな政策をつくっていきますが、その政策づくりのレベルに参画していくという役割がございます。
 グロスターシャー県だけではなくて、全国的に各県レベルでこのようなグロスターシャー県会議というのがございます。これはどういうことかといいますと、県、それから市町村、それから大学、企業、NPO、そういうところの人たちが集まってきて、恒常的な組織をつくっております。
 このグロスターシャー県会議というのは、いろんなパートナーシップ、専門分野ごとのパートナーシップというのがあるんですけれども、パートナーシップのパートナーシップです。パートナーシップのパートナーシップというのは、そこにありますように色が分けてありますが、その中の左上にあります県戦略パートナーシップというのがございます。これは各領域ごとのパートナーシップの代表が集まってきているというものでございます。ここで全体のビジョンをつくりましたり、いろんな審議を行っております。
 それから、右下の責任団体グループというのは、ここでいろんな全体としての予算を割り当てましたり、意思決定をしていく役割、それから最後に左下のコミュニティ戦略幹部会というのは、その中で実際の運営委員会のようなものでして、これを進めていくための実施部隊というふうな形になっております。
 グロスター県としましては、まず総合計画の10カ年計画を持っております。それからそのもとに、先程も出ましたLAAという政府との関係の合意が3カ年計画になっております。
 LAAというのは非常に新しい政府のやり方で、政府から県にやってくるお金というのは、一つのポットに入れられる形です。そのポットをパートナーシップ会議が割り当てていくと、こういう形になっております。
 LAAのメンバーには、先程申しましたように、それを決めていくのは全体のパートナーシップ会議で決めてまいりますけれども、いろいろな関係の方々が入っていて、進めてまいります。
 LAAは、全体では五つの分野に分かれます。そこに書いてありますが、子ども・青少年、産業振興というふうに五つの領域に分かれております。
 このLAAの目的というのは、国の方が指標を定めてくるわけですけれども、その指標を達成することによって、お金を減らされたりすることがあるわけです。それのインセンティブになっております。
 これからお話しするのは、グロスターシャー県アセンブリという、いわゆるNPOセクター会議です。これはGAVCAが開発いたしました。
 非常にややこしい図で見にくくて申し訳ございませんけれども、これがそのグロスターシャー県のアセンブリ、セクター会議の構成図でございます。
 ちょっと色がわかりにくいんですけれども、薄紫と下が水色みたいになっています。薄紫の部分のところまでがNPOの関係のセクターに属します。それから下のブルーのところが自治体の関係のところに入ります。
 薄紫の一番上の段ですけれども、真ん中の四角に書いてありますのが、たくさんあるNPOの存在なんですけれども、中間支援組織というのは実は一つではない。幾つもありますが、その中間支援組織グループのGIGというのがございます。GAVCAはその代表みたいな形であります。そこのサポートを受けながらネットワークをつくっていくわけでございます。
 その下の段ですけれども、NPOをいろいろ集めてきて、その分野ごとに戦略的なグループ、戦略的な領域というのをつくっております。ごらんになっているとおりです。このようにNPOの声を整理してつくっていくわけです。
 薄紫の真ん中のところの各領域、分野ごとの政策的な意見というのは、その代表者によって薄紫の一番下のところの運営委員会、それぞれの分野の代表者が集まって組織される運営委員会に集められます。
 これからお話ししますのは、グロスターシャー県とNPOのセクターと合意をいたしますコンパクトというものです。これはそれぞれの間の協働関係をよくしていくための合意文書というものでございます。
 コンパクトはまず国レベルで始められましたけれども、今、県あるいは市町村レベルでも、ほとんどが取り組まれていますが、その取組を通じまして、両者の関係というのは非常に改善が図られました。
 コンパクトの考え方というのは、両者の関係の非常に大事なところを明示していって、これをお互いに守っていくということを明確にしていくことに意味がございます。
 コンパクトは、本文、いわゆる総論のほかに分野別の指針も持っております。これはコードと呼びます。そこに書いてありますような六つのコードをグロスターシャーのコンパクトは持っております。
 グロスターシャー県のコンパクトは国全体でも非常に優良コンパクトとして認定されております。
 グロスターシャー県のアセンブリ、NPOセクター会議ですけれども、これはチームで運営されております。このアセンブリチームというのは、グロスターシャー県からお金が出ております。全体としてのアセンブリの仕事のコーディネートをいたしております。
 アセンブリチームの仕事はたくさんございますけれども、いろんな、例えばコンパクトをつくっていく上の支援ですとか、それからアセンブリの活動をしていくためのいろんな資料作成、計画、企画、もろもろのことをやっておりまして、この事務局は私のおりますGAVCAにございます。
 さらなる情報のためにここにウェブサイト等をご紹介いたしました。GAVCAというのは非常にたくさんの情報を提供しておりますし、グロスターシャーにありますたくさんのNPOの紹介もしております。
 真ん中の「gloshub」というのは、アセンブリチームで運営されておりまして、アセンブリに関すること、ほとんど載っております。
 最後のものは、県のホームページです。ここにはグロスターシャーのいろんなパートナーシップの組織のことなどが紹介されております。大変申し訳ありません。すべて英語で書かれています。
 ありがとうございました。

○稲垣委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまお二方からお話しをいただきまして、委員の皆様からご質疑等がありましたらお願いしたいと思いますが、なお委員からの質疑につきましては、議事録に残す必要があることから、日本語でお願いしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それからまた、松井教授におかれましては、引き続き通訳につきましてよろしくお願いをいたします。
 それでは、質疑をお願いいたします。どなたかご質疑のあります方から。

○野田委員 スティーブンさんにお尋ねします。
 今、パリッシュの議員自身が専門化しているような、そういうお話を伺ったんです。ただ、日本は、市議会、また県議会とありまして、町議会もあるんですけれども、その中でなかなか住民の自治会というのは自発的に事業を起こすというよりも、パリッシュの議員たちが考えているようなところではないんですよね。その辺を説明の中でもそういうことはできないだろうと、イギリスでも考えられていたんだけれども、もっともっと実際10年間やっていたら、そういう動きになったというんですけれども、なかなか日本では難しいのかなと、それはお国柄、国が、国がと言ってなかなか自発的にやらないで、国が決めた制度のもとでやっている。県の行政自身も国が決めた制度の中でしか動けないというような窮屈な状況でいつも思うんですけれども、自治体と言いながら、セルフガバメントと言いながら、なかなかそういう制度になっていないというのが、日本の中でなかなかイギリスの制度が導入できないかなというふうなことで、いつも感じているんですけれども。
 僕もパリッシュに行かせていただいて、勉強させてもらって、その中でもそう感じているんですけれども、その辺を打破するような考え方というのを、どういうふうに住民に植えつければいいのかなという、住民と考えていけばいいのかなというのが根本的にわからないんです。その辺をまず教えていただきたい。

○スティーブン・ライト参考人 まず言えることは、パリッシュの議員というのは、生活の中でも一番基盤になるようなところだと今考えているんです。
 基盤というよりも、パリッシュの議員というのは低い地位というのかな、そういうふうに感じで思われているのかもしれませんが、そうではないんだということを自信を持っていただくということが大事かなということで、先程申しましたように、勉強のコースも1、2月の夜にやるということで、たくさんの方が入っていただくように、何とか勉強していただくように、随分その話をしてきていて、地域の住民自治、民主主義のために極めて重要な役割を果たしているんだということを働きかけてきているわけでございます。
 パリッシュの議員になるのは、別に資格など何も要らない。本当に専門的な仕事、お医者さんとか、弁護士さんでもあるでしょうし、農業される方もあるでしょうし、どなたでもできるわけで、だれでもできるけれども、ただ大事なことは、地域を変えることができるということへの確信を持つ、このことが極めて重要です。だから、確信を持っていただくということに対して非常に力を注ぐということがやってきたことだと思っています。

○野田委員 あと、県の職員は認定制度ですよね。研修はするけれども、議員は認定制度がないのはなぜかと思うんですけれども。認定証がもらえないという。

○スティーブン・ライト参考人 大変興味深いご質問ですけれども、議員というのはプライドがあるので、そういう認定とかするのはなかなか好まれないことが多いように思う、これが多分一番大きな理由です。
 もちろん勉強というのは誰も必要ですから、私たちが今新しくトレーニングコースをグロスターシャー大学で開発していますけれども、特に最近新しいコースとして、ローカルガバナンスというコースをつくっております。これならどなたでも勉強できるし、余り抵抗なく入っていけれるのではないでしょうか。
 何としても、議員は地域の意思決定をする、方向性を決める方であり、職員の方はそれを誠実に進めていく方である。こういうことははっきりと役割分担はあると思っています。

○藤田委員 1点だけ教えてください。
 今のお話の中で、議員に立候補するというのが大変大事なことで、これはすばらしいことだというのは、お話の中でわかったんですけれども、それが選挙に出るのがだんだん難しくなってくるという表現を使っていらっしゃるんですが、何が阻害をする要因になっているんでしょうか。

○スティーブン・ライト参考人 恐らく二つ理由が考えられます。一つは、だんだん皆さんが忙しくなってきていて、多分イギリスの場合、議員はほとんど無報酬だから、収入を得なきゃいけない。特に若い方にしてみれば、生活がかかっているので、公的なところに割く時間がないというところが大きな問題かと思います。
 それからもう一つの問題ですけれども、イギリスは非常に中央政府からの介入が多い。ですから、地方で幾ら頑張ったって、変えることができない、何をやっても中央から指令が出てきて、そのとおりにやれということできますと、頑張る気を失わせてしまう、これが二つ目の理由だと思います。
 ただ、先程サリーさんも紹介していましたLAAというのは、非常に国から出てきたものではありますが、地域の優先順位ですとか、住民の方を向いているとか、そういうことを地域で決めさせるわけですから、そこのところに果たす役割は極めて大きいわけで、ここのところで初めて地域の議員とか、そういう方たちが頑張っていく意欲を発揮させる、非常に大きなモチベーションになるのではないかと思っております。

○稲垣委員長 ありがとうございます。
 ほかにご質問。

○三谷委員 住民主導の地域計画づくりへの住民の参加率が65から90%と、非常に高い数値が出ているんですね。これは非常に驚きなんで、パリッシュがこういう住民主導の地域計画づくりをやる場合、単位というのは、パリッシュの場合は教会があったエリアぐらいで一つずつできていると思っているんですけれども、日本で言えば一つの集落単位ぐらいかなと思うんです。
 三重県も「美し国おこし」で地域づくりのイベントを6年間にわたってやって、それぞれ座談会を称するものを数多くやって、住民を巻き込んで地域課題を見つけて、住民とともにそれを解決していこうということを考えているんですが、こういう65から90という大変数値の住民が参加してくるというそのポイントというか、もし三重県が学ばなければいけないとすれば、どういうところにあるのか、そのあたりを教えてください。

○スティーブン・ライト参考人 これは恐らく地域の人自身がそこにかかわるというか、地域の人の独立心が強い、そこを大事にするということが一番大きいんだと思います。グロスターでもいろいろ県とか市町村が地域の住民の声を聞くということで、いろいろやろうとすることはあるんですけれども、自治体の職員がリードしようとすると、その途端に地域の方々は抵抗感を示す。例えば、私たちがサポートに入る、私たちはNPOですから、民の立場として入っていきます。そこでそれは成功するわけでして、地域の方の声を聞こうとすることを行政が主導していくということは、絶対に避けなければいけないと、これが我々の経験です。
 ですから、最終的に地域の方が決めて、そこに参加していくことは大事で、大学であったり、NPOであったり、この方々がサポートに入るということは当然あるわけですけれども、しかし行政ではないということであります。
 だから、本当のパートナーシップというのは、あくまでも自治体はあって、民というのは平等な立場でなければいけない、こういうことです。

○竹上委員 住民主導の地域計画で聞きたいんですけれども、そういうふうな形で計画を皆さんが作りますね。そうすると、多分グロスターシャー県にも総合計画なりがありますし、多分実施計画というのがありますね。多分市にもそういうものがあるでしょう。
 住民主導の地域計画と、いわゆる市がつくっている総合計画がかみ合わないケースも十分出てきますね。そこはどういうふうな形で調整というんですが、折り合いをつけるかということを教えてほしいんです。

○スティーブン・ライト参考人 もともとそういう計画というのは、国からスタートしてきて、だんだん下に、草の根におりていくという計画づくりが多いと思うんですけれども、本来はそれはちょっとおかしいんじゃないかと思うということです。
  それから住民の地域の計画づくりというのは、そんなに簡単にできるものじゃなくて、話し合い、いろんなところの調整をとったりすることにつけても、非常に長い時間をかけてやります。その中でニーズを出してきて、調整を図っていったりすることについてもサポート役が必要ですから、そういう方にも入っていくわけですけれども、いずれにしましても、自分たちのやったことの具体的なところが話題になってきます。それがむしろ将来的に地域の方の本当のニーズが反映されていくような全体計画として求められてくるんじゃないでしょうか。
 ちょうどマーティン・ルーサー・キングさんがおっしゃったように、夢を持っていなければ将来を変えることはできないと思います。だから、ビジョンを持ってこれから動いていくということが将来の本当の変化につなげることができると確信しております。

○竹上委員 もう一つ、今度はサリーさんにお聞きしたいんですけれども、コンパクトコードの中に、行政との協議、意思決定の参加というのが入っているんですよ。中間支援組織として意思決定へ参加していくというのを、もうちょっとわかりやすくできれば教えてほしいと思うんです。要するにどういう形で意思決定に参加していくのか。

○サリー・ピカリング参考人 例えば、いろいろあるわけですけれども、とにかく基本的には行政が何かするときには、NPOなどの声を聞かなければいけないと、こういうことが基本にあります。例えば一つの例ですけれども、日本で言えばパブリックコメントのようなものがございますけれども、パブリックコメントですと大体12週間が最低限、聞く期間は12週間というふうに定めております。そのぐらいないと、自分たちはぱっと聞かれて、ぱっと意見を答えるというふうな安易なものではなくて、聞かれたことに対しては自分、特にNPOに対してのことですから、NPOの中でしっかり議論をして、そしてお答えをするということになると時間がかかる。その意味でも時間をしっかり確保させてくれということが、このコンパクトコードには書かれている、例えばこういうこともございます。
 それから、こういうこともございます。主に県民とか市民の意見を聞くということについて、単一の方法では無理です。例えば若い方だったらウェブサイトでいいかもしれませんけれども、例えば農村に住んでいる高齢者でありましたり、女性でありましたり、障がいを持っている方でありましたり、あるいは外国人の方でありましたり、こういう方に対して一律の方法で聞くということは、基本的におかしいわけです。
 だから、いろんな手法で、例えば電話で直接聞くとか、あるいは伺って聞くとか、そういう多様な手法をとれということもここに書いてあるということでございます。
 そしてまたコンパクトというのは、確かに行政とNPOとの約束事ではありますけれども、行政だけにこの義務を課すわけではございません。同じく人の意見を聞くということは、NPOに対してもこれは課されているわけでして、例えば私の組織ですと、やっているサービスに対して、いかに住民の声を聞きながらやっているかと、これが義務づけられて、約束事に書いてございます。
 だから、コンパクトのいいところというのは行政側にも努力をさせますし、NPO側にも努力をさせる。あるNPOなどは本当に自分勝手で人の意見を全然聞かないでやっていることもあるんですけれども、それはだめだということになるわけですから、両者にとって非常に意味のあることだと考えています。

○辻委員 まず松井先生にお聞きしたいんですけれども、この中でカウンティという言葉を県と訳されましたけれども、その隣の言葉にカウンティバラとバラという二つの自治体の単位ですかね、それは日本語でどういうふうに訳されているんでしょうかね。

○松井真理子参考人 非常にイギリスの自治体組織がややこしいので、しかもかなり歴史がいろいろありまして、なくなったり、あらわれたりしているわけですけれども、カウンティというのは基本的に、日本ではカウンティというのは、わかりやすく言うために県という言い方をします。
 それから、カウンティバラとか、バラというのは、これも言い方はいろいろあるんですけれども、ロンドンの場合ですと、日本で言うと区に当たります。
 ただ、今カウンティバラとか、そういうものは基本的にほとんどなくて、カウンティとディストリクトという、大体そういうふうな形で、ディストリクトを日本で言えば市町村と、でも市町村といっても、ちょうど人口が半分のグロスターの中に六つしかそのディストリクトはないので、非常に広いんですよね、日本に比べると。というような違いがあります。
 だから、全く同じようになかなか理解できないんですが、自治体を訳すときに、違う国の制度をほかの国の言葉で訳すというのは大変難しくて、あくまでも便宜的に県という言い方をしている、こんな感じです。

○スティーブン・ライト参考人 日本人の方どころか、イギリス人もよくわからないんです。余りたくさん違う種類のものがあるので。

○辻委員 それと、パリッシュと先程の最初の自治組織というか、単位だというふうにお聞きしましたけれども、本来教区という意味に受けとめているんですけれども、英国においても英国国教会とか、カトリックとか、プロテスタントとか、いろいろ教会はあると思いますけれども、そうするとパリッシュの一つの影響の中で、教会の教義というか、そういうものが何らかの形でその地域に影響を及ぼしているのかどうか、その点はどうでしょうか。

○スティーブン・ライト参考人 確かにおっしゃるように、パリッシュは教区というような形から、キリスト教色でスタートしていますけれども、しかし今はそうではない。今はむしろシビルパリッシュみたいな形、名前としても変わってきています。教会との縁というのは100年ほど前にグラッドストーンが新しく組織し直そうとしたときまでは結構教会色は強かったんですけれども、そうではなくて、彼は民主主義、地域の住民のコミュニティづくりということが重要だと考えたので、その後は、特に現在に至るまで住民自治の基盤ということで、教会色というのはほとんどない。
 ただエリアというのは、大体共通でやってきたものですから、教区としての教会というもの、もちろん教会そのものはあるんですけれども、それと別に選挙で選ばれた市民のパリッシュは別ものというふうに位置づけているわけです。だけど、やっぱり人々は混乱します。

○稲垣委員長 ほかにご質問はございませんか。

○中嶋委員 サリーさんにお聞きしたいんですけれども、GAVCAはどうやってお金をもうけているというか、どこかからの委託でやっているのか、それか何らかの会費で集めて、ファンディングをどうされているのか。

○サリー・ピカリング参考人 会員制度をとっていますので、会費というのはあることはあるんです。これは大変少ない。NPOはお金がないので、そんなに取れませんから。ほとんどは県です。それから県の中にある市町村、ディストリクトからももらっています。国からもあります。
 それから、チャリティという立場、これは日本にはないんですけれども、特別な地位がありますので、チャリティという立場でいろいろな財団からお金をとってくると、こういうこともございますが、一番大きなのは県からお金が来ている。
 自治体がなかなか住民のところに本当に近づいていくというのは難しいから、中間支援組織の方にお金を出して、その役割を担ってもらう方がはるかに効率的であると、こういうことでお金を出していると思います。

○中嶋委員 そういう中で、今世界じゅうで景気が後退して、お金の出どころというのはどんどん絞られてくると思うんですね。その場合、その組織をどう維持していくのか、そのサービス提供をどう維持していくのかというのは、今、どうお考えなのかな。

○サリー・ピカリング参考人 私も知りたいです。中間支援組織というのは自治体にとってなかなか見えにくい、サービスを提供するところに直接あげた方がいいんじゃないかと思うし、そうなりがちです。だから、中間支援組織の意味をしっかり理解してもらわないといけないんですが、なかなか簡単ではないので、これから戦わなきゃいけないでしょう。
 こうして景気が悪いと、失業者も多いというような形で、本当に困った貧困者、さまざまなな困っている方がふえてくるので、この方々に対するサービスは、むしろNPOの役割がふえているというふうに考えていて、ですから、NPOに対する中間支援だけではなく、NPO全体に対する資金をカットをしないように交渉し、戦っているという状況でございます。

○スティーブン・ライト参考人 国の方も、やっぱりお金が直接サービスを提供する側に回りがちになってきている、これは非常に大きな問題ですし、シチズンアドバイスビューローという組織、直接アドバイスをするところにお金がいく、そういう形や流れはあるんですけれども、中間支援組織みたいなところはなかなか難しいというのが大きな問題ですし、非常に景気が悪いということで、NPOがかかわっているところ、銀行だとか、そういうところがだめになっていくところで、ダメージを受けていると、こういうこともございます。

○中嶋委員 チャリティというのをもう少し説明していただきたいんですけれども、今サリーさんの言葉から何回か出てきたんですが、松井先生、ご存じのところでお話しいただけるといいんですが。

○松井真理子参考人 チャリティというのは、チャリティコミッションというイギリスの中央にある認定機関みたいなものがあって、日本のNPO法人に近いんですけれども、法人格を与えるものではなくて、要するにチャリティという資格を与えられるといろいろな税金の免除がある。例えば消費税を払わなくてもいいとか、さまざまな特権があるので、ただしそれは非常に手続的にはややこしいと、こういうデメリットがございます。
 けれども、とっている団体は、日本の認定NPO法人と比べるとはるかに多いので、メリットは大きいから応募者も多いと、こういうステータスですね。

○稲垣委員長 ほかにご質問は。

○野田委員 このグロースターシャーカンファレンスの表とこれも一緒だと思うんですけれども、円と表との関連が少しわかりづらいんですよ。例えば、多分ここの責任団体グループというのが県の組織の職員がするのかな、これ議会がどのようにかかわるのかなという部分ですね。県と職員と議会。
 あと、ここの評価がありますね。この評価はグループ、それはNPOの団体が評価するのか、あるいは第三機関団体、ほかのところに委託して監査してもらうのか、この評価のあり方と責任がよくわからないんですよ。どこがするのか、この表を見させてもらっても。
 あともう一つは、パートナーシップの人たちと県の実際に事業をやる人たちのいろいろ問題なときがありますよね。今のような形で参考人で直接聞きたい、こういったときには、どの時期にやるのか、要するに年に1回なのか、それとも複数回するのかというのが、例えば日本の場合だと補正でやりますよね。6月、9月、12月という形で。そうしたのがあるのかなと、日本に例えばこういうやり方を導入しようとしたときに、不ぐあいが結構あるように思いますので、そのへんのところを教えていただけたら。この表の見方がよくわからない。

○松井真理子参考人 この丸い円は何かというと、県が持っているパートナーシップ組織といって、県の組織なんです。県がいろいろなことを決めていくために県の議員も入っていますし、それから市町村の関係者も入っているし、警察の方とか、教育委員会とか、それからNPOとか、企業の方とか、大学とか全部入っているのが県。例えば福祉のパートナーシップとか、環境のパートナーシップとか、いろんな人たちが入っている分野別のパートナーシップもあるんですけれども、それを統括する全体のパートナーシップというのが、このグロスターシャ会議になります。
 もう一つのこのややこしいのは、これはむしろNPOだけ、NPOの連合体の組織です。だから、これは行政の入っている組織とは違って、民間のNPOというセクターの中でのセクター会議の組織形態です。だから、こちらの丸い方は県の組織であり、こちらはNPOのセクターの中の連合体の組織であると、こういうふうにまずご理解いただきたいと思います。

○サリー・ピカリング参考人 このコンファレンスの絵をお持ちだと思いますが、評価というのが、まず全体の戦略のビジョンをつくる。そのビジョンがどのように行われているのかということを評価する、自分たちがつくっていったビジョンの評価をしていくと、こういう形になります。

○稲垣委員長 時間がかなり押してきておりまして、今後のお2人の予定もありますので、まだまだ御質疑あろうかと思いますが、このあたりで質疑を、途中かもわかりませんけれども、終わらせていただきたいと思いますので、ご了承願いたいなというふうに思います。
 以上で参考人をお呼びしての調査を終了いたしますが、お手元にチラシをお配りさせてもらっていますが、あすはお二人は四日市市総合会館の方で日英市民活動交流フォーラムに参加いただいて、あさって英国に帰られるという日程になっておりまして、その宣伝のチラシも置かせていただいております。またお時間あります方、委員の皆さんでもよろしくお願いいたします。
 それでは、スティーブン・ライトさん、それからサリー・ピカリングさんにおかれましては、日本滞在中のお忙しい中ご出席いただきまして、本当にありがとうございました。残り2日間、今日を入れて3日間ですかね、日本、特に三重県を楽しんでいただければなと思います。
 ご帰国された後もますますのご活躍をお祈り申し上げます。
 そしてまた、松井先生におかれましては、大変お忙しいところご出席をいただき、そしてご意見いただきまして、長時間にわたり通訳もしていただきまして本当にありがとうございました。委員会を代表して厚く御礼を申し上げます。本当にどうもありがとうございました。(拍手)

○スティーブン・ライト参考人 皆様方のためにパンフレットを置いて帰ります。
 一つはパリッシュとはどんなものかというガイドブック、それから先程クォリティパリッシュという品質のパリッシュということのための、議員のための解説書、それからもう一つは、ちょうどコンパクトみたいに県とパリッシュの間の約束事、チャーター、憲章みたいなものをつくっておりますので、これも置いてまいります。英語で書かれているのでゆっくりお楽しみください。

○稲垣委員長 どうもありがとうございました。
 それでは参考人の皆さんが退席されますので、委員の皆さん、着席のまま暫時休憩といたします。
 どうも参考人の皆さん、ありがとうございました。

 

Ⅱ 協議事項

 1.委員長報告について

   ・委員長報告(案)の配布

   ・委員会報告(案)の配布  

○稲垣委員長 以上でNPO等ソーシャルビジネス支援調査特別委員会を閉会させていただきます。1年間大変お世話になりましてありがとうございました。お疲れさまでございました。

 

〔閉会の宣言〕

 

NPO等ソーシャルビジネス支援調査特別委員長   

稲垣 昭義

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