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平成26年7月14日 戦略企画雇用経済常任委員会 会議録

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  戦略企画雇用経済常任委員会

会 議 録

(開 会 中)

 

開催年月日     平成26年7月14日(月) 自 午後1時31分~至 午後3時41分

会  議  室    302委員会室

出 席      8名

             委 員 長   津田 健児

             副委員長    田中 智也

             委    員   東    豊

             委    員   水谷 正美

             委    員   中嶋 年規

             委    員   青木 謙順

             委    員   前田 剛志

             委    員   三谷 哲央

委員会書記

             議  事  課  主幹  中村 晃康

              企画法務課  主幹  中瀬 元浩

参  考  人     1名

             北海道大学大学院国際広報メディア・観光学院

               メディア・コミュニケーション研究院 客員教授 

             株式会社野村総合研究所

                社会システムコンサルティング部担当部長(上席研究員)

                                           北村 倫夫氏

傍 聴 議 員     1名

                       中村 欣一郎

県 政 記 者     なし

傍  聴  者     1名

調査事項

 1 参考人からの意見聴取

  (1)自治体の広報戦略に求められる視点について

  (2)「三重県広聴広報アクションプラン(仮称)」について

 

【会議の経過とその結果】

 

〔開会の宣言〕

 

 1 参考人からの意見聴取

  (1)自治体の広報戦略に求められる視点について

  (2)「三重県広聴広報アクションプラン(仮称)」について

    ①参考人意見陳述

〇津田委員長 それでは、参考人からの意見聴取を行います。
 北村様、お願いいたします。

〇北村参考人 ただいま御紹介にあずかりました北海道大学の北村でございます。本日は、このような場にお呼びいただきまして、どうもありがとうございます。
 日ごろパブリックセクター広報論を大学で教えておりまして、いろいろ過去十数年間にわたり蓄積してきたものがございますが、今回は、三重県の広報広聴戦略について、どういう考えなのかということですので、そういったことを中心に、これまでの私がやってきたことから見てどうだということについて、お話しさせていただければと思います。
 自己紹介等は、このスライドの中にもありますので、早速スライドに沿って御説明させていただければと思います。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、若干個人経歴ということで御紹介させていただきます。
 本日は北海道大学の客員教授としてお呼びいただきましたが、実は、母体は野村総合研究所というところでありまして、今、東京の丸の内のほうにおります。パブリックセクター関連の部署に入社以来ずっとおりまして、専門分野といたしましては政策領域とか公共経営領域あるいは事業支援領域ということです。主に自治体及び霞が関の中央省庁をお客さんとして、いろいろな政策的な関連の仕事に携わってきた結果として、こういう専門分野を持っているということです。
 実際に北海道大学大学院で何をやっているかということを若干御紹介させていただきますと、パブリックセクターの広報論を演習ということでやっております。平成15年からずっとやってきているわけですが、演習形式ですので、学生が多いときで10人ぐらい、毎年5、6人とか7、8人ぐらいの演習でやっております。毎年テーマを決めて、学生と一緒にそのテーマについていろいろ検討し、その結果をこのテーマにかかわる行政機関なり公益団体なりに提案するという活動を、ずっとやってまいりました。
 最初のころは、札幌市とか小樽市の広報の根幹をなすホームページをどうしたらいいかとか、定山渓温泉の再生とか、あと、札幌市立大学がつくられたときに、ホームページ広報をどうしたらいいかというようなことを提案させていただきました。ただ、ホームページに限定していくと、だんだん広がりがなくなってきたということから、もう少し広報の中心、一番重要な部分というのはコンテンツになりますので、何を広報する、何をプロモーションするという事業領域まで立ち入って提案するような動きをしました。そこで、北海道の観光振興にかかわる部分や、札幌市のスイーツをどうやってブランド化してプロモーションしたらいいかとか、科学技術観光とか、あと、最近では中国や台湾からの留学生が非常に多い演習になっていますので、彼らの知見を生かして、中国や台湾、あるときは韓国から見た北海道観光について、どういったところを振興していったらいいのかという視点から、このプレゼン資料に記載しているようなテーマで、広報プロモーションの話まで持っていっています。提案先は、札幌市や小樽市、観光関連ですと北海道運輸局。それから、北海道に北海道観光振興機構という官民の大きな組織がありまして、そういうところには必ず聞いていただいているということです。中には我々の提案を実現してもらったものも幾つもあって、非常にいい交流関係ができているということです。
 このページのリストは、広報コミュニケーション関連で、これまでに私が書いて、ほぼ全部インターネット上で公開されているものです。パブリックセクターの広報に関連する研究等をずっとやってきた成果として、公開しています。幾つかにつきましては、事前にお送りして皆様のお手元にもお配りしてあるかと思います。こういった研究内容を踏まえて、本日のお話の骨子は、こういう流れにしています。
 自治体におけます戦略的広報、何に着眼していったらいいのかというお話を主に1から6まででします。それを踏まえて、7番目に今回のお題でございます三重県広聴広報アクションプランについての私的なコメントを、若干最後でさせていただければと思います。
 早速ですが、自治体の戦略的広報のあり方の前段として、皆様方は当然日々御認識のことかと思いますが、都市・地域間競争が激化している。これは、大体どの自治体でも枕言葉としては言われることですが、もう少し分解能を高めていくと一体何の競争をやっているのかについて、私の見方でいいますと3つの競争がある。市場的競争、制度・基盤的競争、そして、それらと密接にかかわる広報面での競争、これが三位一体の激烈な競争になっているのではないかと思います。
 市場でいいますと、企業誘致をどうするか、交流人口をどうやって持っていくかということ、それから、制度でいいますと、社会基盤とか、最近はやりの特区制度の話、こういったものが自治体間の非常に激しい競争の領域になっているということです。いずれも広報の部分というのが非常に重要で、広報がうまくできることによって市場的競争、あるいは制度・基盤的競争にも勝っていけるというような意味での三位一体の関係になっています。そうした環境変化の中で、なぜ広報するのかと言ったときに、最も重要な視点として、外を意識した経営の変革が自治体に求められているのではないかということから、論点を4つほど掲げています。
 要は、今はもう自治体が中だけのガバナンスをやっていても地域振興とか成長力の維持はできないということから、外の力をいかに内へ取り込むかという政策運営が非常に重要になっているということ。それから、住民との運命共同体的統治。これは東日本大震災後に、自治体と地域住民の関係性の面で、震災など大規模災害が起こる前から日々こういった関係をつくっていかないと、いざ有事の際には、その地域としての対応ができないということから、この運命共同的な統治(ガバナンス)の確立というのが非常に重要になってきています。それから、自治体といえども、社会的責任とか社会的貢献を重視した経営が重要です。それから、これは国及び自治体にとって今、非常に敏感な部分ですけれども、国民からの、あるいは地域住民からの支持、信頼、人気、これをいかに得るかということで、自治体、国も含めて、非常にその辺を意識した運営をやっていかなければならないのではないかということです。
 これらのことから、今後の自治体経営の重要な視点として、この「外」を意識したという点が重要です。ただし、私が申し上げたいのは、外を意識するとともに、この「内」の求心力・意識を高めるということも同時にやっていくということが非常に重要だということです。結局、今申し上げました外を意識した自治体経営の変革に必要なことをもう少しわかりやすく言うと、自治体を取り巻く外の人たちに、理解してもらう、信頼してもらう、共感してもらう、ある部分では貢献してもらう、そして、やはり自治体として長く愛されることというのが非常に重要で、これらを達成するために「戦略的広報」が必要であるということを申し上げております。
 次に、あまり抽象的な話ばかりしていても眠くなりますので、ここでいきなり戦略的広報のケーススタディということで、三重県のお話ですので、都道府県の中で戦略的広報のケーススタディとしてふさわしいものを幾つかピックアップし、なぜ成功しているのかという点を中心にスタディーした結果を簡単に御紹介いたします。紹介する事例についてはすでに皆さん御存じかと思いますが、改めて広報の視点から見たときに何でこれがいいのかという点を申し上げたいと思います。
 1番目が、高知県の県庁おもてなし課を題材にした小説、映画の事例。これによって高知県が全体として、いわゆるメタ広報、かなり超越した広報といいますか、本当は県庁のおもてなし課を題材にした部分の話が進んでいくのですけれども、結果として、高知県全体の広報として非常に効果を発揮した、いい影響が出たという事例です。経緯としては、「高知県の観光特使」に、有名な有川浩という小説家がなったことをきっかけにし、何かひとつ小説でも書いていただけないかというような話から、最初は新聞掲載の小説が単行本として発刊され、これが非常に売れたということから今度は映画化の動きになり、映画としても制作、公開されて、非常に観光集客という意味において効果を発揮したということです。
 なぜこの高知県メタ広報が成功したのかということの1番目の要因としては、先ほど申し上げたとおり、高知県のおもてなし課を広報することによって、最終的には高知地域全体の広報に結びついたということです。高知の全体のメタ広報ということで非常に効果を発揮しましたが、その際におこなわれたことが、プロダクト・プレースメント、サービス・プレースメント、それから物事の事、コト・プレースメントという3つで、この小説なり映画なり、全ての広報の媒体の中でうまく高知県のいろんなものが余り嫌味なく、取り込まれた。それをプレースメントといいますけれども、これが、うまくなされたというのが1点目。
 それから、2点目といたしまして、物語はフィクションなんですけれども、フィクションの中で語られていることが、自治体にとっては非常にリアルな観光論の展開になっているということです。決して夢物語とか架空の観光論をこの小説、映画の中で展開しているのではなくて、非常にそれがリアルで、他の自治体もまねができるといいますか、自治体にとって参考になるものを話の中にちりばめているので、観光研修テキストとして非常に価値があったということから、自治体関係者を中心に非常に評価が高かったということです。
 それから、3点目といたしましては、リアルとフィクションの融合ということになります。これは、小説、映画というのはフィクションで、ストーリー的にはフィクションですが、今、成功要因2で申し上げた点と重なってくるのですけれども。県庁おもてなし課のいろいろな活動の中で、キャッチコピーとかが出てくるんですね。実はそのキャッチコピーというのは、映画、小説になるかなり前に県庁の中で観光ビジョンとして検討された、その中のキャッチコピーが新たに脚色されたといいますか、お話の中で改めて使われたといいますか、再現されたということになります。そうすると、ビジョンがつくられた平成16年当時は余り評判にならないといいますか、目立たなかったキャッチコピーが、小説とか映画の中で改めて示されると、非常におもしろい、興味を引くようなキャッチコピーであったということから、こうしたことも成功の要因の一つとして指摘されています。どんなキャッチコピーだったかというと、新幹線はない、地下鉄はない、モノレールも走ってないなど、要するに高知県のネガティブな部分をばーっとキャッチコピー的に表現し、最後に、「けんど、光はある」ということで、何もないんだけれども、高知には光というか、これは観光の光ですね、光るものがあるというようなコピーの展開で訴求力を高めたということになっております。
 次に戦略的広報のケーススタディ2です。これも非常に有名な例ですので、皆さん御存じかと思いますが、「おしい!広島県」というやつですね。これは自虐キャンペーン型の広報として非常に成功した例ということで、今まさにキャンペーンが展開されている現在進行形の広報ということになります。有名な有吉弘行というタレント、広島県出身のタレントさんをうまく使って、さらに、県庁の広報課と観光課が一緒になって、外部のクリエイティブディレクターと一緒に全体を企画し、こういうキャッチコピーなんかも外部に委託して、それを今、官民一体となって展開してるというような事例です。
 この効果たるや、これを東京で記者会見して発表したのですが、その途端、インターネット上にばーっと情報が口コミで広がり、いわゆる「いいね!」効果みたいなことですね、これが話題になりました。そうすると、国民に対する露出度がもう格段に違ってくるということから、それに伴う広告効果や話題性という意味で非常に効果が出たというふうに言われています。その結果として、各種のアワードをとったり、それからホームページそのものも、自治体がみんな非常に注目しております全国広報コンクールのウェブサイト部門で特選(総務大臣賞)をとるとか、こういう意味でも話題性がどんどん波及的に出ていくということが起こりました。いいコンテンツというか、やり方、戦略をやると、それの波及によって、今はネット社会ですので、ネット的に広がっていくというような、こういう広報戦略がうまくいった例ということになります。
 成功要因としては、マーケティング発想というのが1番目です。民間のリクルート出身の樫野さんという方を、まず広島県の広報総括監として登用しました。それから、その役割をもっと大きくして、CMOと真ん中に書いていますけれども、要するにチーフ・マーケティング・オフィサーという肩書をつくり、樫野さんが総合プロデューサーみたいな位置づけで活動をやられているということです。彼は民間出身で、マーケティングということでは非常に見識があるので、その彼を中心にマーケティング発想でがんがんやったということです。
 それと、全体の企画というのを内製できちっとやったという点です。観光課と広報課が非常に密接にやり、先ほど言いましたとおり、外部のクリエイティブディレクターを呼んできてというか、委託のような形で据えて、それがある程度固まった後、最後に広告代理店に出して、あとの肉づけとか媒体の買い付けというのは広告代理店が得意とする分野ですので、うまくやったということ。要するに、決して最初から広告代理店丸投げではなかった。それは決してやってはいけないということから、内製企画重視でやりました。
 あと、3番目としては、トップとリーダーの腹のくくり。キャンペーンは、知事直轄に近い形というか、知事が全部意思決定してトップダウン的にやりました。自虐キャンペーン型の広報なので、なかなか知事がこれを決断するにはやっぱり相当な腹のくくりが必要であったというふうに言われています。要するに自分の県を否定した広告になってしまいますので。それが果たして県民にとってどうなのかということから相当お悩みになられたようですが、最終的には、よし、それでやろうということになりました。また、民間出身のCMOの樫野さんも自分の持論を正論として通したというようなことで、トップとリーダーの腹のくくりと両者の密接な関係でもってリードしていった、というふうに言われております。これも成功要因ということになります。
 それから、3つ目の事例です。これは話が飛んで沖縄県なのですが、これがまさに戦略的広報の戦略だろうということで、非常にわかりやすい例として挙げています。県が補助金を使って、「東方神島 沖縄攻略」という、中国の富裕層に特化した広報媒体をつくり、決して旅行代理店経由で配るとかはせずに、直に中国人の富裕層が集まる場所へその広報媒体をどんどん置いていった、配ったという、そういう戦略をやりました。媒体の中身も、よくある「るるぶ」的な観光広報の媒体ではなく、中身が相当練られています。沖縄と中国の歴史的関係をきちっと説くとか、それから、今、何に中国人が興味を持っているかということを、これをつくったのはスペースチャイナという那覇市にある中国人がやっている会社ですが、まさに今何を中国人が求めているのかというような点をきちっとサーベイした上で、このパンフレットといいますか、媒体をつくっています。
 ということから、コンテンツ的にも非常にすぐれているし、チャネルをどう開拓したかということでは、中国の富裕層向けの、富裕層が集まるような場所、ここに書いています経営者倶楽部とか、5つ星ホテル、銀行のVIPルームなどにピンポイントで置いていった。それが功を奏して、沖縄には米軍基地があるということぐらいは知っていたんだけれども、これだけ美しい海と空のリゾート地があるというのは知らなかったということで、中国人がどんどん来始めたということです。まさにこれも戦略的広報の一つのあり方かなということです。
 ということで、3つほど事例を紹介いたしました。これ以外にも戦略的広報として成功している例というのはいろいろあろうかと思います。私がそういった事例をざっと横並びで見たときに、何か共通的にすぐれた戦略的広報の原則のようなものがあるのではないかというふうに感じて、それをちょっとまとめてみました。それがこの7つの原則ということです。決して7つ全部備える必要はないのですけれども、こういった点でできるだけ多く取り入れ、この原則に沿ってやると戦略的広報に近くなるのではないかということです。
 1番目が、体系的かつ組織的に行われること。文字にすると何となく隔靴掻痒感がありますが、要は広報コミュニケーションの指針とかルールをきちっとつくって、広報って茫漠としているのですが、それを、少し分解能を高めて、何の広報なのかと、分野を体系化してやっていくということ、あと、組織的というのは、当然広報の担当部署というのが中核、ハブ、センターにはなるのですけれども、実際は広報広聴課だけがやっても、やはり限界があるということから、実際に広報のコンテンツにかかわるような関連の部署との信頼協働関係の形成が重要です。
 それから、2番目は持続的に行われること。これは、キャンペーンにしてもイベントにしても一過性で終わっちゃうような広報、プロモーションというのがいっぱいあるわけですけれども、できるだけ持続的にやるということ、あと、広報を通常はホームページを中心に展開するわけですが、そのきちっとした更新頻度が高く保たれることとか、広報の専門人材が登用されて、長期にわたって広報を担当するとか、そういうようなことによって持続性が保たれるということです。
 それから、3番目として、広報で訴求するターゲットとかテーマというのが明確であるということは、何はともあれ非常に重要な点かなということになります。特にターゲットについて、県庁の広報は決して県民にだけではないということを意識していただければと思います。要は、自治体から見た内と外というのがあって、内というのは県庁の職員、自治体というお役所から見る内というのは自治体の中ですよね。外というのは県民になります。ただ、三重県というのは県という地域でもあるわけで、地域からみると、内が県民で、外というのは県外におられる人や企業で、これから県に興味を持って来ていただくと、そういうような意味での内、外です。そこで、自分は今、どの立場から広報しようとしているのかということと、内、外の訴求の対象者、三重県のビジョンでは顧客と言ってますけれども、顧客とは一体誰なのかという点、その辺をもう少し明確にしていく必要があるということです。あとは当然、テーマですね。何の広報をやっているのかということです。観光広報なのか、産業広報なのか、最近はやりのUターン、Iターン者を増やすという意味での定住広報なのか。戦略性というのは、こうしたターゲットをある程度意識するということが重要ではないかと思います。
 それから、4番目。先ほどの高知県のときにプレースメントということを少し述べさせていただきましたが、いろいろな媒体を展開する中で、きちっと三重なら三重のモノ、コト、ヒトが、その広報の媒体の中で、きちっとプレースメントされていること。このような間接的宣伝とか露出とかいうことが4番目として重要です。
 それから、5番目の世界目線ですね。最近はもう、決して県民だから全部が日本人ということではない時代になっていますので、県民の中にも外国人の方がいっぱいおられます。それから、今、我が国は2000万人外国人観光客時代を迎えていまして、当然、三重にも大量の外国人が来られるということから、やはりそういった外国人の方を常に意識した広報でないと、もう時代遅れの感になってきていますということが世界目線の話です。
 それから、6番目が、先ほどの「おしい!広島県」や高知の事例でもみたとおり、大胆で意表をつくこと。要は、黙っていてもマスコミが取り上げてくれるようなインパクトがないと、広がっていかないということですね。逆に、マスコミが飛びついてくるようなニュース性のあるような取組をやれば、今はインターネット上で自動的にがーっと流れて、膨大な人が「いいね!」ボタンを押すかどうかは別として、露出というか、伝播されていくことから、やっぱり大胆で意表をつく、目立つことというのは非常に重要な要素ということになります。
 いろいろタイプがあって、ひとつは広島県のような自虐キャンペーン型プロモーションですね。それから、御存じのとおり、香川県が県の名称を「うどん県」に我々は変えますという広報をしました。そうすると、聞く側は、えっ、うそでしょうということから、ばかという言葉を使っていいかどうかは別として、いわゆるエープリルフールですね、健全なうそをついて、はっとさせるみたいな、私はそれを四月馬鹿キャンペーン型プロモーションと名づけていますけれども、香川県は「うどん県」に改名しましたというのはまさにエープリルフール型のインパクトを与えているということから、もっといろいろあると思いますが、何かこういう意表をつくことをやるというのが重要じゃないかということです。
 最後の7番目です。これは意外と意識されないんですが、広報している人の顔。漠然と何か県庁としての広報ではなくて、県庁の中でも、例えば、広報をやっている広報担当者が非常にユニークといいますか、おもしろい人ですとか、有名になるとか。人が有名になると、それだけでも広報の効果が出てくる。実際の例でいうと、広島県の樫野さんというのは、個人としても非常にマスコミや、いろいろなインターネット媒体でも取り上げられていますし、御本人もいろんな発言をされているんですね。そういったことから、少し広報の顔が見えるということも、戦略的広報としては重要な要素ではないかと思います。
 前段の話から、いよいよ具体の話に入っていきます。では一体広報をどういう切り口で料理していくかということですが、これは完全に私の切り口ですが4つのマネジメント領域があります。1つ目がミッションマネジメント、2つ目がシステムマネジメント、3つ目がメディアマネジメント、4つ目がプロセスマネジメント。この4つの領域で広報という茫漠としたゾウみたいなものを、うまく見方、切り口を変えて部分的にマネジメントしていくということで、それらのバランスがとれれば全体としてうまくゾウをコントロールできるということから、それの分解能を高めるという意味での4つの切り口となります。
 ミッションマネジメントというのは何を対象とするかというと、広報全体のフレームワーク、ビジョン、それから計画。最も上位に来る部分でのマネジメントということになります。それから、システムマネジメントというのは、何も情報システムのことではなくて、組織・体制、人材ですね。広報を動かす部分でのマネジメントをシステムマネジメントというふうにいいます。それから、もう一つ、広報というのは、媒体というのが切っても切り離せない非常に重要な要素となっておりまして、広報媒体をどうするのか、何に使うのかと、それを使ってどのように広報するのかという手段、これのマネジメントをメディアマネジメントというふうにいいます。それから、最後に、プロセスマネジメントです。これはPDCAサイクルできちっと管理していくというものです。この4つの領域でのマネジメントが重要です。
 次からは、4つのそれぞれについて、もうちょっと具体的に何をやっていったらいいのかを示しております。まず、1番目のミッションマネジメントですが、どう革新していったらいいのかということの1番目の要素は、フレームワークです。広報をやる際に、私は広報コミュニケーションという言葉を使っていますけれども、要するに、広報広聴というのは結局コミュニケーションですね。広報広聴という言葉はあえて使わず、広報コミュニケーションという言葉を使えば、コミュニケーションというのは双方向なので、結局、広聴部分もこのコミュニケーションの言葉に入るだろうということから、広報コミュニケーションという言葉で全部統一しています。
 まずは、それのフレームワークをどう考えるかということになります。そうしたときに、マーケティングとコーポレートとリスクというこの3つが、領域のフレームワークとしては基本的な部分として必要かなというように思います。
 マーケティング、これは、みえ県民力ビジョン(仮称)の中にもマーケティングという言葉が使われていました。イメージはもう、皆さんがイメージされているとおりです。自治体の政策とか行政サービス、これに対して理解を深めて、需要を広げる。例えば、行政サービスですと、要するに県民の方にちゃんと使ってもらわなきゃいけないということから、需要を広げることを目的として、対外広報コミュニケーション活動と、それから対内広報コミュニケーション活動をやるということです。この部分は、一応、自治体というお役所、三重県庁がやるという前提でのフレームワークとして考えていますので、対外というのは県庁以外の外の部分となります。それから、対内というのは県庁の職員。インナーとアウターという分け方もできるかと思いますが、対内と対外の両方ということです。
 特にマーケティングにおいて何で対内だということですが、要は、自治体の職員に皆同じようなレベルで自分たちが提供している政策とか行政サービスの理解がきちっと浸透してないと県庁一丸となった広報コミュニケーションができないということから、一部の広聴広報課の職員とか県の幹部だけがわかっていてもだめで、もっと職員の末端までうまく情報共有なり意識の共有なりができるということが重要ということから、この対内マーケティング・コミュニケーションというのも重要ですということを言っております。当然、対外のほうがメーンにはなります。
 次に、コーポレートです。これは、政策とか行政サービスを使う、使わないとかという話とは全く別の話しです。自治体という組織があります。その自治体という組織は、ほかのいろんな組織体との関係性の中で存在しています。そうしたときに、組織対組織の良好な関係を築いていくということを中心に考えるのが、このコーポレート・コミュニケーションということになります。
 具体的に言うと、メディア。このメディアとの関係は、メディアリレーションズという。これは和製英語ではなくて、欧米ではこのメディアリレーションズということが非常に重視されています。
 それから、あと、パートナーリレーションズ。県という自治体は、例えばNPO団体や取引先企業などといわゆるパートナー関係を結んでいろいろなサービスのやりとりや、政策のやりとりなどをやるということから、パートナーという位置づけの組織体というのはいっぱいあります。それらとの良好な関係を築くというのが2点目です。
 それから、国や自治体、いわゆる政府対政府の関係も、非常に良好な関係を維持していかないといけない。自治体でいうと、いわゆる広域連携を成立させて、うまく機能させていくためにも、このガバメントリレーションズというのも非常に重要な要素になってきています。
 あと、三重県でやっているかどうかは存じ上げませんが、いわゆるミニ公募債みたいなことというのは、県庁というか、自治体からすると投資家なわけです。そうすると、民間がやっているインベスターリレーションズというような考え方のもとに関係を良好にしていくコミュニケーションをやっていかなければいけないということから、マーケティングだけだと領域が限定されるので、組織対組織の関係という意味でのコーポレート・コミュニケーションも非常に重要ですということを言っています。
 それから、3番目。昨今、広報コミュニケーションをやる上で欠かすことのできないのが、このリスク・コミュニケーションになっています。特に三重県の場合には、東海、南海、東南海という大規模な震災に対応するということもありますし、昨今は、台風、集中豪雨、ゲリラ豪雨などの大規模災害は、どの自治体でも発生のリスクに直面していることから、ここでの言葉では社会リスクというふうに呼んでいますけれども、国民生活、県民生活に影響の非常に大きいリスクに対して、軽減するとか、起こったときにどう対応するかという、これに関する広報というのは、ものすごく重要な領域になっています。
 あわせて、この自損リスクというのも重要と考えています。これは、こう言っては何ですけれども、今、自治体も非常に不祥事といいますか、要するに個人情報漏えいなど、マスコミが取り上げるような事件とか事故を発生させてしまうという事例が多くなっていることから、もし仮にですが、もしそういうことが三重県の中でも起こったときに、広報でそれにどううまく対応していくかという、その部分も非常に必要性が高まっている部分かなということで、自損リスクと言っています。
 社会リスクと自損リスクの2つへの対応という、これを柱としたリスク・コミュニケーションもフレームワークとしては非常に重要ではないかと申し上げております。
 実際、そのフレームワークのもとで広報活動を自治体がやるときに、ある程度分野の想定というのは必要で、漠然と県庁広報をやるということでは、その戦略や選択と集中など、いろんな意味でまだ広過ぎて、もう少し分野の切り分けのようなものをしっかりと認識した上でやるほうが効果的ではないかというふうに考えます。そうすると、これで全てとは決して思いませんけれども、重要な広報の領域としてはこれぐらいあるかなということで資料の表に挙げています。
 イの一番に重要なのは、政策広報です。自治体として、政策、計画、施策、それから事業と、いろいろやられていますけれども、それに対する広報ということです。
 それから、政策の中に含まれるといえば含まれてしまうのですけれども、やはり少し領域が独立して展開されるということから、観光広報、それから産業広報ですね。この産業広報では、企業誘致というのもありますけれども、いわゆる投資を呼び込むことも含まれます。必ずしも企業の事業所を誘致するだけではなくて、投資とか物流のシステムなりネットワークなりを持ってくるとか、空港を持っていればその空港の路線を持ってくるとか、あらゆる意味で、産業活動上重要な、いろんな力を県の外から持ってくる、産業的な意味において、というので産業広報です。
 それから、人の面に着眼すると、定住広報ですね。いかにUターン、Iターンを、退職した三重県ゆかりの方が、健康で元気な方が三重県に戻ってきていただけるというのは非常に重要だということから、この定住広報を挙げています。
 それから、生活広報。県というのは基礎自治体ではないので、本当の住民の身の回りの生活広報というのは基礎自治体である市町村がやるべきものだと思います。ただ、そうはいっても、そういった市町村の上に立つ県庁のポジションから、全く生活にかかわることではないということではないので、県としての生活広報というのも当然あります。
 それから、最近は、環境面での広報ですね。国でいうと、クールビズやウオームビズなどが環境広報の最もわかりやすい例ですけれども、自治体においても環境に配慮したいろんな取組を住民にやってください、一緒にやりましょうというのが、やはり分野テーマとしては重要です。
 あと、先ほどのコーポレート・コミュニケーションのところで触れました投資家広報、それからメディア広報ですね。それからCSR広報、それと庁内広報なども非常に重要な広報領域です。
 それから、リスク・コミュニケーションの部分では、社会的な危機管理広報等、いろいろな自治体の不祥事に対して自らどう対応していくかという組織の危機管理広報が必要といいますか、今後重要となる戦略的広報の分野ではないかということで掲げております。
 ということで、ここまでがフレームワークの話です。こういったフレームワークを念頭に置いていろいろな広報の活動なり取組なりをやっていく、その前には計画づくりというのが必要です。その際に、フレームワークを具体的に計画に落とすときにはどういう計画の立て方があるのかということで、ここでは、まずはアメリカの例から引っ張っています。実は、今でこそ日本の自治体が、広報広聴戦略プラン的なものをどんどんつくり始めていますし、三重県もその中の一つということになりますが、ちょっと前、2000年ごろは、日本にはそういった計画というのがほとんどなかったです。ところが、その当時からアメリカは、コミュニケーションプランという名称のもとで各自治体がプランニングをして、そのもとに効果的なコミュニケーションを行っていた。これは大学院の広報論の演習では必ずこの話をしますので本日もこのスライドは残していますけれども、こういうことをアメリカは、最初というか、昔からきちっとやっていましたという例です。最初は小規模な自治体がやっていたのですけれども、最近では、アメリカでいうとダラスとか、カナダでいうとオタワとか、大都市もこういったコミュニケーションプランというものをつくって、計画的に、日本でいう広報活動を行っているという実態があります。
 ここに示しているのが、幾つかの代表的なコミュニケーション計画の事例の目次構成です。 やはり、後で示しますが、日本の広報広聴戦略プランと大きく違っているのは、どちらの例にしても、まずコミュニケーションの対象者というのががーんと来ているんですね。誰を意識したコミュニケーションなのかということ。例えば、左側は、ザ・シティ・オブ・アシュランドという、アメリカの中でもちょっと小さな自治体ですけれども、コミュニケーション対象者として、第1グループ、第2グループとプライオリティーをつけているわけです。第1グループのイの一番が市民です。それから、市評議委員というのは議会の皆さん方のことですね。それから、市職員とか報道機関とか。まずはこのグループに対してのコミュニケーションを一番重視して、戦略的にやろうと、こういう話になっています。それから、次に第2グループとして、市民以外の方とか、周辺の自治体の方とか、あと、市の外郭団体とか、その他のステークホルダーということで、明確にコミュニケーションというか広報の対象をきちっと認識して、それによってどういうふうにやっていくのかを、対象者の違いによって内容を変えていくという計画になっているのが基本です。あと、どうやっていくかという媒体とか手段については、大体アメリカでも日本でも、自治体がやる広報の手段というのは限られてきますので、大体似たようなものなのですけれども、基本的な考え方として、まず、誰に対してのコミュニケーションかというのを意識しているのがアメリカというか、カナダも含めて北米ということになります。
 これは平成18年ごろの、アメリカではかなりコミュニケーションプランというのが浸透していった時点で、日本で似たようなものをつくっていたのはどこなのかということを、当時、結構調べたのですが、平成18年までであったのが、広島県三次市の「広報戦略 広報マニュアル」。今もこの形で存続しているかどうかはチェックしてないですけども、これが多分日本では初めての自治体がつくったコミュニケーションプランに近い例かなと私は見ています。広報戦略ということを書く部分と広報マニュアルというのが一体化した冊子のようなものになっていましたけれども、これが取っかかりですね。
 その後、総務省、旧自治省系の指導があるのかどうかはよくわかりませんが、これは急速に日本でも増えているんですね。アメリカでいうとコミュニケーション計画、日本でいうとそれと中身が全く同じというふうには言い切れない部分もありますが、平成20年以降、広報広聴戦略プラン的なものが非常に増えています。ただ、これは常に改訂されているので、第1版ができたのが何年かというのはよくわからない部分もあるのですが、改訂されているのや新しくつくられたのを見ると、全部がつい最近、平成22年以降ぐらいに増えています。都道府県でいいますと、調べた限りにおいては、愛知県、山梨県、愛媛県、北海道、あとは市レベルになっています。だから、三重県もこの流れの中で取組はされているというふうに解釈できると思われます。三重県の場合、47都道府県の中では、取組としては早いほうかなと理解されます。
 では、実際どういうプランなのか。この表は、4道県の全部戦略部分だけを抜いて整理していますが、例えば、愛知県の場合ですと、行動目標として、県民とのパートナーシップ、魅力の発信で好感度アップ。その下にぶら下がる行動方針ということで、3つの柱を立てて、それぞれの取組に係る意思表示みたいな表現で書かれています。パートナーシップとコミュニケーション、愛知の魅力発信で好感度アップを図るため県外・国外での情報発信を強化など。あと、県庁の広報広聴力を強化する、みたいな話は、必ずどのプランでも出てきています。
 これが山梨県のですね。適時・的確・双方向・平易な広報の推進、国内外に向けての情報発信の強化、メディアミックス手法を活用した広報の推進と、こんなイメージです。それから、愛媛県も同様の感じですね。大体、内容、表現の仕方、言葉の使い方とか、柱立ては多少違いますけれども、全体のイメージは、この4つの道県でそんなに大きく違っているという感じではないですね。大体似たようなイメージのもので戦略の柱立てがされています。
 それから、これが北海道のです。北海道はプランという名前をつけてないですけれども、戦略広報基本方針ということでやっています。北海道価値の効果的な発信、道民の理解と協働によるコミュニケーション広報の推進、民間企業などとの協働、それから、マネジメント部分の話も入っています。大体同じような感じですね。
 それで、それぞれのプランにけちをつけるつもりはないのですけれども、ただ、私からすると、これは完全に私的な意見ですけれども、ちょっと問題といいますか、課題のようなものが、少なくとも今までできている広報広聴プランではあるなということで、本当のラフなスケッチですが、3点ほどにまとめています。
 1番目は、都道府県でいうと、いわゆるお役所のプランなのか、地域のプランなのかという、そこにちょっと曖昧さがある。どちらの視点で書いているのかということです。自治体という言葉は、日本の場合、いわゆる県庁というお役所を指すほうが圧倒的に多いですけれども、ただ、正確に言うと、地方公共団体ですよね、お役所を指す場合は。本来ならば、自治体というのは、この三重県でいうと、三重県という地域全体が自治体になると思います。そうすると、自治体の広報広聴戦略プランといったときには、三重県庁という地方公共団体の広報広聴戦略プランなのか、三重県という地域の広報広聴戦略プランなのかということで、そのどちらのスタンスに寄ったプランなのかによって、内容もかなり変わってくるのではないでしょうか。
 今のところ、例えば、この4番目の北海道の例でいうと、基本戦略に「(1)北海道価値の効果的な発信」とありますよね。これは何となく北海道地域の広報プランの柱としてふさわしいと思います。ところが下に行くと、(2)でも(4)でもいいですけれども、道民の理解と協働によるコミュニケーション広報の推進とかとなると、これはもう完全に、北海道庁が道民に対してどうやっていくかというような、自治体、地方公共団体計画の視点になっちゃうわけです。これが混在しているというのが一つの問題というほど問題じゃないですけれども、ちょっとわかりにくい面があるなということです。ほかのところ、例えば愛媛県でも、戦略の(2)で、えひめの魅力の発信力強化へ、これは愛媛県という地域の広報の柱ですよね。ところが、(3)の職員一人ひとりが広報広聴パーソンへと言った途端、レベル感がぐっと違って、いわゆる県庁の広報広聴のやり方、プランみたいなものの柱になってしまいます。そのあたりを、少し視点がばらつくので、きちっと認識するといいかなと。決して、どちらがいい、悪いじゃないです。混在していることがわかりにくい面かなというのが、今の31ページの黒丸の1番目の話ですね。ちょっと曖昧かなと。
 それから、それに伴って、戦略と手段の取り違えといいますか、戦略で示していることが、実はそれは手段でしょうということが起こっています。今もどこかの県の例を示しましたけど、実際に、メディアミックス手法を活用した広報の推進という戦略を立てていますが、これはどう考えても手段の話ですよね。手法を活用してなんです。それから、さっき紹介した職員一人ひとりが広報広聴パーソンへという戦略の立て方は、これも手段です。職員が広報広聴パーソンになって広報しなさいと。結局、それによって何がどう変わるのか、何を求めたいのかなど、職員一人ひとりが広報広聴することによって何が、何をというのを戦略で立てるべきであって、戦略で手段を立てちゃうと、一体これは何のためにやるのかというのが見えないですよね。要するに、一人ひとりが広報広聴パーソンになります、「それで」ということです。その「それで」が書かれてないから、何となく隔靴掻痒感が出てくる。この取り違えが多いかなと。
 それから、今のところ、日本の自治体の広報広聴戦略プランというのは自治体によって多少名称は違いますけれども、広報広聴課が所管課として取りまとめることから、このプランが、どうしても広報広聴課の世界観で書かれてしまうのかなということです。仮にこのプランが自治体という地域のプランであるならば、あるいは県庁という地方公共団体としてのプランであってもそうですけれども、もう少し、県庁のプランであるならば全庁的な視点、地域のプランであるならば全地域的な世界観で見たプランであるべきではないかというのが、この4つの例を見たときに私見として感じる部分です。
 ここまでで、ミッションマネジメントの話が終わりました。
 次に、システムマネジメントの話になります。
 これは、人とか体制の話になります。一般論として、日本の自治体の広報業務体制の問題、課題として指摘できるのは、まず、広報担当部署の戦略的位置づけが低い。要するに、自治体の中で知事直轄とか、あるいはもっと全体を統括といいますか、調整できるような、戦略的に位置づけの高いポジションであるべきところが、少し低いかなという印象があります。
 それと、広報コミュニケーションの専門家がいないということですね。やはり相当なスキルとネットワークが必要になってきますが、県庁の人事ローテーションで異動してしまうと、実際は長くても3年とか5年で広報担当者がぐるぐるかわってしまいます。でも、本当ならば、少なくとも10年ぐらいは専門家としているほうが、より熟練したいい広報ができることから、最近、民間人を任期つきで登用する場合もありますけれども、見る限りにおいては余り定着してないかなと思います。ということで、専門家をどう自治体の広報部門に配置し、根づかせるかというのが一つの問題、課題です。
 それから、組織の強化ということになります。ここは、コミュニケーション組織ですので、広報広聴課をどうするかという話ですけれども、広報広聴課というネーミングが、どこの自治体も大体そういうネーミングをしているのですが、アメリカ、カナダの場合、非常に多様なんですよね。例えば、下のボックスで書いていますとおり、コミュニケーションとマーケティング、コミュニケーションズ・アンド・マーケティング・デパートメントとか、オフィス・オブ・コミュニケーションズ・アンド・メディア・リレーションズとか、マーケティングとかコミュニケーションという言葉を組織の名前にし、やることも、やはり日本の広報広聴課よりはもう少し全自治体的なコミュニケーション部分を扱うような業務内容になっています。
 ということから、少なくとも北米のこういった自治体の取組なんかを参考にすると、もう少し広報コミュニケーションの組織の名称や、いわゆるミッション、それから、やる業務内容というのを見直したほうがいいのではないかというのが2番目の部分です。
 それから、さっき専門家がいないということを申し上げましたが、では、どうしたらいいのかという答えとしてはこの専門コミュニケーターを配置するということです。広報情報担当官みたいなものです。北米の場合、英語でいうとPIO(パブリック・インフォメーション・オフィサー)とかCIO(カウンティー・インフォメーション・オフィサー)というきちっとした名称での専門職がいて、それが自治体の広報担当部署にいます。これは庁内の中では全く異動がないです。いわゆるコミュニケーション・プロフェッショナル、あるいはプロフェッショナル・コミュニケーターとして役割と地位とが保障されていて、やっているということです。日本でこのように同じ形でできるかどうかということについてはいろいろ課題がありますが、これが理想形としてあるかなということです。
 あと、メディアマネジメントの話です。メディアマネジメントでの問題点というのが、日本の場合はいろいろあります。広報媒体と所管組織が分散しており効果が発揮されない、それから、「広報」の「広報」をしなければならない、それから、広報面でのデジタルデバイドというのにどう対応していくか。それから、能動型広報と受動型広報のバランスをどうとるか。それと、最終的には、今、世の中の流れとして、エブリシング・イズ・オン・ザ・ウエブという、ウエブが中心になっている中で、どう自治体の広報が対応していくかというような、このあたりが非常に大きな、どの自治体でも抱えている問題、課題です。
 回答については、これはケース・バイ・ケースということで、自治体によって違うのですけれども、このあたりを意識して広報戦略プランというのは練っていかなければならない。その際に、メディアというのも、いろんな切り口はあるのですけれども、パーソナルメディアからソーシャルメディア、マスメディアまで、それと媒体の特質に着眼すると、放送・インターネットメディア、空間メディア、いわゆる従来型の紙を使ったメディア、あと、ヒューマンインターフェース・メディアというか、コールセンターがまさにそうですけど、こういう切り口でいうと、非常に多様なメディアがあるので、それの特質に応じて、うまく切り分け、使い分けていかなければいけないでしょうと、総論部分としてはこうです。
 特にソーシャルメディアというのが、非常に今、自治体で重要視されていて、東日本大震災以後、急速にこのソーシャルメディアを利用する自治体が増えています。恐らく、三重県もフェイスブックなんかをやられていますし、ツイッターも使われているでしょうが、最近、このソーシャルメディアを利用した自治体広報というのは、いろんなデメリットというか問題も出てきていますし、一方で、非常にいいという評価が得られているという意味においては、メリットもたくさんあります。
 ただ、メリット、デメリットというのは、誰から見たメリット、デメリットなのかということを意識しないといけない。要するに、住民側から見てメリットでも、自治体側からするとデメリットになったりなど、ちょっと相互にそごが出てくるので、ソーシャルメディアの場合は特に、住民側、自治体側の両方にメリットとなるような使い方をするというのがベストですが、相当デメリットも出てきていますので、ちょっと気をつけたほうがいいということを言っています。
 ただ、このあたりは各論に近くなるので、今日は余り詳しく御説明いたしませんけれども、やっぱりソーシャルメディアをどう活用するかというのも、自治体の戦略プランの中ではやっぱり大きく取り上げるべき部分であるというふうに思います。そのときのガバナンスのあり方で、資料の右に書いていますけれども、こういった方向が、ひょっとしたら計画の中に書いてもいいのかなというような部分です。
 それから、最後にPDCAサイクルですね。これはもう、大体どこの自治体でも意識されています。広報活動についてもプラン・ドゥー・チェック・アクションをやりましょうという話です。
 ということで、一応ここまでで総論部分はおしまいです。要は、これからの戦略的広報を自治体がやるときに着眼しなければならない枠組みと、その核心の要素といいますか、ポイントについて、総論的に述べさせていただきました。
 実は、この各論ということで御用意したのですが、もう時間が来ていますので、もし質問等であれば後で述べさせていただきます。先ほどフレームワークでこの分野を示しましたが、中でもこの政策広報というのがやはり自治体の中では非常に重要な部分ですので、この政策広報についてもう少し深く、各論として御用意しましたが、詳しい説明は割愛させていただきます。ポイントは、この42ページですけれども、政策広報をやるときに、政策を説く、政策を問う、政策を売る、政策を守るという意味での、アカウンタビリティ型の政策広報、アジェンダ型の政策広報、プロモーション型の政策広報、それとリスク管理型の政策広報、こういう視点で少し分解能を高めて政策広報をやられれば、広報を受ける側も非常にわかりやすく、理解が進むのではないかということを言っております。ということで、政策広報論は割愛させていただきます。
 県の広聴広報アクションプラン(仮称)というのをペーパーでいただきました。それを見まして、またいろんな県の動きというのがあろうかと思います。ただ、そこは今回、余り詳しく勉強させていただく時間もなかったので、とりあえずペーパーでいただいたものを見て、これまでにお話しした他県の事例や、そもそも戦略的広報の視点から見てどうかという点から、気のついた点をまとめています。
 1番目が、先ほども触れましたとおり、これは三重県庁の広報プランなのか、三重県という地域の広報プランなのかということです。よく読むと、きちっとこれは県庁の広報プランですということが書かれていますので、それはそれでいいと思います。別に悪いという話じゃなくて、そういう位置づけがされているなと。そうなのですが、県民からすると、本当に求めているのが県庁の広報プランなのか、ひょっとしたら、私たち三重県民が愛着のあるこの三重という地域の広報プランが欲しいというか、あるほうがいいんじゃないかと感じている人がいるのでは、と私は思います。恐らく皆さんは議会で、県民の代表であられますので、むしろ県庁の広報プランというよりは三重県の広報プランへの関心が、ひょっとしたらおありじゃないかなと思ったのですが、それはちょっと私の推測で、別にどちらが良い、悪いの問題ではないのですが。でも、この今提案されているプランというのは完全に県庁のプランですよね。でも、地域のプランは必要ありませんでしょうかという、逆に、問いかけです。
 次は、ビジョン。現プランに書かれているビジョンについてです。これは、顧客、接点、マーケティングですよね。たしか、顧客、接点、マーケティングの実践となっていると思います。この部分について、まず、顧客と書いていますが、顧客の定義は、ビジョンで行政サービスの受け手というふうになっています。でも、行政サービスの受け手だけかという疑問がありまして、これは先ほどの説明の中でもちらっと触れましたけれども、県庁広報プランの場合、このプランに書いていますインナー、内というと県の職員ですね。それから、外というと、一応県庁の外ですので、主に三重県民、外国人も含めてになろうかと思います。これが顧客というイメージかなと。ところが、三重地域の広報プランの場合、内というのを完全に三重県民だとしたときに、外というのは、これから三重県に来てもらいたい人とか企業とかで、もっと具体的に言うと、国内外の観光客とか、U・Iターン者とか、誘致企業とか、投資先ですよね。アピールする、顧客というのはこういうイメージになるわけですよね。それから、昔三重県に住んでおられたとか、三重県で生まれた方、いわゆる三重県ゆかりの方々というのはたくさんおられて、それに対して、三重県はこんなに頑張っています、御協力をいただくとか、戻ってきてくださいみたいな話というのも当然広報の内容になりますし、訴求対象になるので、ひょっとしたら三重地域広報プランの場合には、顧客というと、こういう外の方も当然重要なターゲットに入ってくるのではないかと思います。どうでしょうか。
 それから、ビジョンでは、マーケティングという言葉を使われていて、このマーケティングについては非常に重要でよろしいのではないかと思います。ただ、私の先ほどの講演の中でも言いましたとおり、マーケティングだけであればややもすると県民を中心とした顧客のイメージになってしまうのですが、結局、自治体の場合には市民団体、NPOとの関係、メディアとの関係、パートナー企業との関係、それから他の自治体、特に県庁の場合は市町村との関係がありますし、今は周辺の他県との関係というのも本当に重要なリレーションシップの対象なので、そういったコミュニケーションの切り口もプランの中に必要ではないかと思います。あとは、三重県の場合、端的に言うと、大規模大震災への対応も含めると、やっぱりリスク・コミュニケーションは入れたほうがよろしいのではないかと私は思います。
 次に、視点について。3つの視点と戦略目標ということで書かれている、視点の部分です。原案ですと、人材と変革とか業務プロセス、顧客という言葉が並んでいて、人材、体制、プロセス、顧客という切り口は非常にいいのではないかなと思います。ただ、このプランを考えるときの視点というと、欠けているのはやっぱりテーマ、分野ですね。恐らくプランづくりというのは、いつ、どこで、誰が、何を、どのようにという、5W1Hに近い視点からつくられるのがベストだと思います。そうすると、誰が、どのように、どこで、誰に対しては明確に書いてあるのですけど、重要な、何をやるのかというのがなかなか見えない部分があるかなと。何をというのは、完全に広報プランなので、どの分野の広報をやるのかということです、戦略的に。そうすると、例えば分野の切り口でいうと、先ほどお示しした政策広報、生活広報、観光広報、産業広報とかで大体どの分野を重点的にやるのかというイメージの視点が必要ではないかというのが4点目です。
 それから、最後に、戦略目標について。今立てている戦略目標というのは、これで非常によろしいのではないかと思います。その前提が、県庁の、地方公共団体としての広報プランであれば、いいのではないかと思います。ただ、仮に、これが三重地域の広報プランというふうに考えると、全く別の戦略目標の立て方が出てくるのではと思います。
 私が頭に思いついた感じで書くと、例えば、対内戦略目標でいうと、これは鈴木知事が言われていますし、たしか県の最近のビジョンの中でも、「幸福実感日本一」の三重というのが出ていますよね。仮にそうだとしたら、県民が日本一の幸福を実感できる広報の展開というのがイの一番に来るのではないかと思います。それはどういうことかというと、三重県に住んでおられる皆さん方はこれだけ豊かな環境の中にいて、他県と比べても一番幸福な県ですよという、そういう何か指標とかをつくって、それを示しながら広報するというのがやっぱり一番わかりやすいというか、重要なのではないかなと思います。あと、県民が三重に夢と自信を持てる広報の展開とかは、政策広報的にいろいろやっている部分かなと思います。
 それから、重要な顧客として対外というのがあって、県外からの新しい血(活力源)を招き入れる広報の展開というのを戦略的な柱にすること。今後三重県は、鈴木知事が施政方針演説で言っておりますとおり、産業誘致と観光に重点を置いていることから、産業広報とか、あとは人の面での定住広報とか、この辺を重点的にやりますというプランの立て方もあるのではないかなと。それから、知事の言っておられる県と世界との心の距離を縮めるための広報の展開とかですね。戦略というのは、本当に抽象的でいいわけですよ、立て方としては。それを、戦術とか、具体的なオペレーションとか、どんどん細かく構成するのがプランですので、こういう戦略の立て方もひょっとしたらあるのではないかなと思います。あと、重要と言いましたソーシャルメディアをはじめ、メディアマネジメントについては、もう少し中身を増やしてもいいのではないかなとも思いました。
 以上です。

    ②参考人への質疑

〇津田委員長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御意見を受けまして、委員の皆様から御質問等をお願いいたしたいと思います。
 なお、念のため申し上げますが、参考人は委員長の許可を得て発言し、また、委員に対しては質疑をすることができないことになっていますので、御了承願います。
 それでは、御質疑があればよろしくお願いいたします。

〇中嶋委員 今日は、先生、ありがとうございました。難しいところもあって、特に片仮名がなかなか頭の中に入ってこないところもあったんですけれども、一つ、私としても、今、県の広聴広報アクションプランが県庁内のツールとしてのプランなのか、三重県という地域のための広報プランなのかというところの視点からの見方というのは、もう一度してみたいと思っております。ただ、基本的に戦略企画部は県庁内の広聴広報プランをつくってるんだろうなという認識のもとでお尋ねしたいです。そういった中で、マーケティングという言葉が県の広聴広報アクションプランの中にも出てくるわけですが、基本的に、県民の方が自らお知りになりたいだとか、興味があられるだとか、そういったところについては、場合によっては県民の方御自身がその情報をとりに行かれるということもあるわけですけれども、どうしても政策広報を中心として、余り県民の皆さんが興味を持ってらっしゃらないだとか、本当は知っていただきたいんだけどなかなか知るのが難しいだとか、届きにくい情報を届けるためにはどうしたらいいのかというところは、ここで参考人がおっしゃられるところのどこを改良するといいのか。質問が変なんですが、県庁内の広聴広報プランとした場合、どこの部分を注視すれば、そういった、県民の方に届けるべき情報だけど県民の方が余り興味を持ってらっしゃらないものを伝える能力が高まるのかというのを教えていただきたいなというのが1点。
 あと、PIOのお話があったんですが、広報情報担当官の方ですね。日本でこういう制度がなじむかどうかというのはあるんですけれども、仮にそのPIOと言われるような方を設置するならば、どういった御経験だとか知識だとか、広島県の場合はリクルート御出身の方ということなんですが、そういった、これまでにどういう経験だとか知識をお持ちの方がふさわしいと思われるのかについてお教えいただけるとありがたいと思います。済みません、質問がちょっとわかりづらくて。多分、余り十分理解できてないせいだと思うのですが、お願いいたします。

〇北村参考人 まず1番目の質問。県民になかなか届かないような情報をいかに伝えるかということ、ざっくり言うとそういう御質問だったかと思うのですが、届かないというのは2つあって、コンテンツの話なのか、手段の話なのかといういずれかがあって、コンテンツの話で届かない関心がないというのは、結局、今まで広報している内容が、県民の興味が起こらないというか、要するにおもしろくないというのが1点目ですね。2点目の手段の場合、これは以前事務局の方ともお話しさせていただいたときに、今、三重県のテーマは、全戸配布していた紙媒体のものが全部ニュースになって、ニュースになった途端見られなくなるというような、その手段の話をされていると理解しているのですが。
 まず、1点目のコンテンツの話で、おもしろくないというのは何かというと、例えば、事務局の方から、この「県政だより みえ」というのをいただきましたが、別に三重県だけでなくて、予算の話というのは大体どこの自治体でも広報を出しますよね、予算がどうだという情報。いわゆるお役所的な事業名の予算で、こういうのに幾らつきましたとか、出しますよね。でも、県民の方というのは、事業名で幾らということよりも、この事業によって私たちの日々の生活がどう変わるのかというのに関心があり、そこまで翻訳して示してあげないと、多分、事業の話をされてもわからないというか、余り関心を抱かないのではないかと思います。
 特に、話の中で申し上げましたとおり、都道府県というのは、市町村とは同じ自治体でも違うわけです。市町村が基礎自治体で、都道府県はその上の中間自治体というふうに言われていますけれども、要するに生活回りというのは、一義的には市町村が情報提供する役割を担っていると思います。そうすると、この少子化の話とか、それから不妊相談とか、子育ての話とかは、やっぱり一義的には市町村が生活回りの行政サービスを広報する上でこういう話が出てくると思うのです。そうすると、県がこれを直接やるというのは、県民の日常生活からちょっと距離がありますよね。県が実際に県民に対して直接やるというのは非常に限られていることかなと思うので。そうすると、県が少子化対策でこういうのをやっていますというのは、結局、市町村に対して補助金とか何かそういう事業の展開で、市町村を通して最終的には県民の生活にこうこうこういうふうに役に立っていますとか、何かそういう翻訳といいますか、日常感覚でわかりやすいコンテンツにしたほうが、多分、県民の方というのは理解されるのではないかということです。ほんの一例ですけれども、そのコンテンツで届かない原因というのは、そういうところにあるのではないかと思います。これは一般論ですけれど。
 それから、2点目の媒体の話でいいますと、実は、どこの大きな自治体でも、いわゆる紙媒体のお知らせ型の広報をインターネット型とどうやっていくかというのは、皆さんお悩みのところです。私が特に親しくおつき合いといいますか、関係のある札幌市も広報誌を全戸配布していました。ところが年間何億円とかという経費がかかるので、それではさすがに大変で立ち行かなくなってくるので、インターネット型に変えていきたいということで、一度それについてディスカッションしたことがあります。その時、私が申し上げたのは、まず、紙がいいのかインターネットでいいのかを市民に聞けと。聞けというのはちょっと言い方がよくないですが、住民の方にどちらがいいのかを選択してもらうというのもあるのではないかということです。そうすると、多分、スマートフォンを自由に扱える、インターネットに慣れた方というのは、もし重要な情報があるならインターネットで配信してくれというふうになると思います。その際に、インターネットで配信というのが、自動配信されるのか、県庁というか自治体のサイトに自らアクセスするのかで、受動型と能動型と分かれるわけです。
 自治体のホームページにアクセスしようとするのは能動型ですね。能動型というのは、かなり自分の関心がないと見に行かないということです。でも、最近、インターネットを使った受動型というのがあるわけです。要するに自動配信。結局、自治体に、こういう電子メールを配信とか、フェイスブックでもいいのですけれど登録し、かつ送ってきてもらいたいテーマ、何でもかんでも送られるともう膨大になってしまうのですけれども、このテーマとこのテーマだったら送ってくれと。例えば、子育てをしている若いお母様方というのが、子育て関係の情報が発信されたらそれを自動的に送ってくれと。今はそういう登録の仕方ができるわけです。でも、それは決して能動型じゃなくて受動型ですよね。受動型だけれども、選択しているわけですよね。そういうふうにすれば紙じゃなくて、インターネットベースでも、わざわざ見に来てもらわなくて、最初だけ登録してくれれば自動的に配信できるというやり方というのは可能になると思います。
 一方で、そうはいってもインターネットはインターネットで、幾らパソコンであろうとスマートフォンであろうと、やっぱりこれを使えない方というのは高齢者とか、まだまだ日本の場合たくさんおられると思います。そういう方に対してインターネットを使えというのは、これはもうできない、やるべきじゃないと思います。ということから、今は過渡期ですけども、やっぱり紙とインターネットというのを併存させてやらないとだめじゃないかと思います。ただし、どちらがどちらなのかというのはわからないので、今、都道府県はどうなのかわからないですけども、基礎自治体というのは自治会を通して配ったりしていますよね。自治会を通して、あなたの家庭については紙でいいかインターネットでいいかと、とりあえず最初にお伺いを立てて、絶対に紙で欲しいという方だけに配るとか、そうしてはいかがでしょうか、というようなことを札幌市にはお話ししたことがあります。
 だから、ゼロか1かじゃないと思うんですよ、やっぱりまだ過渡期なので。エブリシング・イズ・オン・ザ・ウエブの流れで、インターネット型がどんどん増えていくのは確実です。私も50代ですけども、恐らく今の50代より下はもうほとんど抵抗なくインターネットをできますよね。50代以上になると、ちょっと怪しくなってくるかなということですが、だんだん高齢化が進むと、今の40代以下がどんどん増えていくので、それに伴ってインターネット系の媒体での広報のウエートが必然的に高くなってくると思います。
 それから、PIOの話についてお答えします。どんな知識、経験かということですが、基本的には民間ベースで広報に携わった方というのがベースだと思うのですけれど、プラス自治体の仕事をやったとか、自治体の業務をある程度知っておられるような方のほうがやっぱりいいと思います。民間のやる広報と自治体の広報というのは、広報という、ざっくりした意味では同じですけども、内容はやっぱり相当違うなと思います。コンテンツのつくり方とか、住民に対する、要するに民間企業が顧客と言っているのと、自治体が住民の方々を顧客と言うのとはやっぱり全然意味が違っていて、いわゆる自治体としては公平性の原則とか、公益的に資するとかというのが入ってきますので、そこはやっぱり自治体業務が何たるかをある程度わかっている方のほうがいいかなとは思います。

〇津田委員長 ほかにございますか。

〇三谷委員 どうも今日はありがとうございました。お話を伺って、三重県が今考えてる広聴広報アクションプランもかなりいいかげんだなというのはよくわかったんですが、前にこの委員会で、その広聴広報アクションプランの議論をしたときに一番争点となったのは、顧客が求める情報というものを県としては提供しますよというお話と、それから、今、中嶋委員からも少しお話があったんですが、行政としてどうしてもお伝えしなければいけない情報は必ずしも顧客が求めてる情報ではないんじゃないですかということです。ところが、やっぱり行政がやるべき広報ということは、まずどうしてもお伝えしなければいけない情報というのをきちっと提供するということが基本だろうと思ってまして、そういう意味では、先ほどの特にリスク・コミュニケーション、こういう部分というのが今の県の広聴広報アクションプランの中ではかなり欠けていて、やっぱりこういうものがきちっと位置づけられなきゃいけないんじゃないのかなと思ってるのが1点です。
 それから、これは大事なんですけど、分野別にいろいろ、この分野でも、行政としては一定のプライオリティーを、一定の自分たちの戦略なり視点なりをもとにつけるべきだろうと思ってるんですが、そういうものも今の三重県の広聴広報アクションプランの中にはないのかなと思ってます。
 最大の問題は、きちっと責任のあるところがない。知事直結というところまでは三重県の場合でもなかなか行かないんですが、一応三重県の場合は戦略企画部というところがそれを担当してます。名前は戦略企画なんですが、なかなか戦略企画になっていなくて、各部局の調整はやるんですけれども司令塔にはなり得ていないというのが現状だろうと思ってまして、そのもとでのこういう広聴広報アクションプランをつくっていくというのはなかなか無理があるんじゃないかなと思うんですが、そのあたりのところで、参考人の御意見をお伺いしたいなと思うんです。

〇北村参考人 今、お答えするのはその3番目ですか。

〇三谷委員 はい。

〇北村参考人 広聴広報課の話ですね。これを、今の自治体の組織の名称から始まって、ドラスチックに変えるというのは、やっぱり三重県であっても非常に難しいと思います。ただ、一緒にやるというのはできるのではないかと思っています。特に、広島県の「おしい!広島県」というのは、広報課と観光課が本当に一緒になってやった、成果としてああいうのが出ている、ということですね。ということから、何も広聴広報課が全部をコントロールすることは絶対に無理なので、そこは、広聴広報課がそこまでの役割を担うということではなくて、いろんな分野については、それぞれの担当をやっている課があり、観光だと観光振興課的なところとか、産業だと企業誘致課とか、それは県としてもあると思うのですけれども、そこと個別の広報テーマについては密接に、一緒にやっていくということをやっていけば、ある程度は、多分今もやっているのかもしれないですけれども、解決できる部分があるのではないかと思います。
 ただし、個別のテーマはその担当課と一緒にやるのですけれども、広聴広報課が一番コントロールしなきゃならないのは、それを広報として流すときのデザインや、やり方というのをきちっと統一感を持たせてやることです。また、一番重要なのは、広報の一番根幹となるウエブページですね。ウエブページのガバナンスというのは、今よりももう少しだけ広聴広報課に権限を与えるとか。要するに、例えば、観光広報、産業広報といったときに、各論の具体のコンテンツは一緒になって、基本的にはその原課が主導でつくるのですが、そのコンテンツをきちっとウエブページの中で位置づけて、情報のタイトルのつけ方、色の使い方、デザイン、ロゴの使い方も含め、全部そういうところを統一して、ウエブページのこの階層のここに埋め込みますとか、そういうことのガバナンスをやるのは、戦略企画部の中の広聴広報課の役割になると思います。

〇三谷委員 課はあります。

〇北村参考人 その際に、ウエブページのガバナンスというのは、企画系の部門がやったり、情報政策課的なところがやったりと、結構自治体によって違うんですが、三重県の広聴広報セクションが、今の自治体の公式のページのガバナンスを今よりはもっとよくするほうがよい。具体的に言うと、大体ホームページの第1層であるトップページと第2層ぐらいまでは広報広聴課がきちっと管理できるのですけども、第3層以下となると途端に各担当課になるというのが現状で、三重県の場合も多分そういう感じかなと思うのですけれども、それをもう少し、第3層ぐらいまでも広聴広報課がきちっと管理するというようなことをやるだけでも、今よりは相当よくなるのではないかと思います。

〇三谷委員 そうだと思います。三重県の場合は、第3層どころか第1層あたりから各原課任せでばらばらになってるのが現状で、この辺をひとつどうするのかというのが大きな課題なんですよね。
 このウエブページは非常に大事だと思うんですが、先ほどの「県政だより みえ」を紙媒体から変えたよという話なんですけど、それがインターネット型に変わってるのならまた別の展開があると思うんですが、三重県の場合は、テレビのデータ放送に変わってしまって、リモコンのdボタンを押して、自分で探して探して行きなさいよというやり方になっていって、途端に県民の関心とアクセスが減ってしまったんですよね。つまり、欲しい情報を得ようと思うと、探して探して行かないと、なかなかそこまでたどり着かない。インターネットですと、まだ、キーワードを入れて、一発検索で出てくる可能性もありますが、このデータ放送ですとまずそういうことも不可能なんで、非常に間違った選択を今、三重県はしてるんではないかなと、そんな気持ちがしてるんですが、データ放送に関して参考人の御意見があればお聞かせいただきたいんですが。

〇北村参考人 技術的にはよく私もわからないですけれども、今のお話をお伺いする限りにおいては、それはちょっと問題じゃないかと私的にも思いますね。データ放送というのは、NHKのデータ放送みたいなあれですよね、ボタンを押して、知りたい情報を探していくというやり方。それはもう完全に超能動型ですよね。それはよっぽど、もうこれだけは知りたいという意識と時間と根気のある方じゃないと見ないですよね。私は今まで、データ放送というと、ちょっとCATVの番組のように、番組的に流れてくるのかなとも思っていたのですけれど、それとは違うんですよね。

〇三谷委員 自分で探してくるんです。

〇北村参考人 それは、問題があるかなと思います。

〇三谷委員 参考人のそのお話だけで結構です。

〇北村参考人 そうですか。デジタル化されているのだったら、インターネットで配信すればいいのですよね。

〇三谷委員 ホームページはホームページで持ってまして、それは、余りいい出来ではありませんけども、あります。それも定期的に更新されていきますので、例えば、iPadにはRSSで自動的に入ってくるんですよね。僕なんか、それはそれで便利だなとは思ってるんですけど、データ放送のほうは全く違う生き物だと思ってまして、扱いの仕方も全然違う感じだと理解してるんですが、もう十分です。

〇津田委員長 ほかにございますか。

〇田中副委員長 参考までに、北村参考人の三重県というイメージからすると、どのあたりまで御存じかどうかはわかりませんけれども、今持ち得ている情報の中で、もし三重県が、自虐型でいくのかとか、エープリルフール型でいくのとかというのであれば、先生の私見で結構なんですけど、どんな売り出し方が合いそうですか。

〇北村参考人 あの流れだと、もう三番煎じ、四番煎じになるので、あれとは全く違う取組をしたほうがいいのではないかなと思います。高知県を入れるかどうかは別ですけれども、結局、「おしい!広島県」も、その前の香川県の「うどん県」にしても、キャッチコピーで何となく全てが、そのよしあしが決まるような風潮ではないですか。それはそれで重要だとは思うのですけれども、そろそろ、あっ、またかみたいな、「またか感」も結構出ている感じがあるので、もう少し、全く違う切り口での戦略的広報プロモーションをやっていくべきではないかなと思っています。
 では具体的なアイデアとなるとないのですが、例えば、さっきの三重県広聴広報アクションプランへの私的コメントの中で、何か、豊かさ広報みたいなことやってはということをちらっと言いましたけども、三重県では、今も日本一幸福が実感できる県と標榜されている、知事も、それからビジョンもそうですよね。だから、本当に日本の中の自治体住民として幸福というのがどういう指標とどういう状況になれば幸福なのかということについて、しっかりと研究みたいなのが入ると思いますが、それを広報するということですね。日本一幸福な広報とか、何か、そちらに絡ませる。単なるキャッチコピーではなくて、本当に三重県が幸福な県であるということを対外的にも県民にもきちっと証明するみたいな、そういうコンテンツの内容を広報すると、それは迫力があるんじゃないかなと思います。単に名前の言いかえとかイメージだけで広報するのではなくて、日本における住民にとっての幸福とはこういうことで、今、三重県は確実に県民の方にそれを実感していただけるようなことをやっており、結果はこうです、とかですね。やっぱりそれができれば、本当にすごい広報になるんじゃないかと思うのですけれど。

〇田中副委員長 私も参考人のお話を聞いて、それはすごくよくわかったし、そうあるべきかなと思ったんですけど、ただ、そこへ行く前には、まず、訴求対象者を県民にし、まずしっかりと捉える。今、県民の方が比較的三重県は住みやすい県だというふうに言われてるとは思うんです、最高ではないですけれども。だけど、どのあたりが住みやすさなのかというところを県民自身がしっかりと実感し切れてないような気がしてるもんですから、訴求対象者を県民として、まずは内向きにというか、県民向けに様々なコンテンツを持って、しっかりと伝えて、あ、このことなんだというふうに再度認識してもらうというか、それがだんだん広まっていけば外への売り出しになるのかなと思ってるんです。今の広聴広報アクションプランではいかがなものかと私も思っております。また新たに執行部の方が、戦略企画部が考え直したときには、ぜひそうなるように頑張らせていただきたいなと思ってますので、どうぞ見守っていただければと思います。

〇北村参考人 御協力できる範囲であれば幾らでもいたします。

〇田中副委員長 ありがとうございます。

〇中嶋委員 今日のスライドの35枚目になるんですが。お時間の都合で割愛された部分ですが、日本の自治体広報における媒体(メディア)の問題・課題の中で、2つ目の「『広報』の『広報』をしなければならないことをどう改善するか」というところについて、ちょっと御説明を補足いただければありがたいんですが。お願いいたします。

〇北村参考人 これは、先ほども触れましたとおり、今、広報広聴課は広報媒体を全部コントロールできていないということです、日本の自治体の場合。そうすると、各原課が、自分たちの予算の中ですけれども、自分たちで事業とか政策の広報媒体、パンフレットとかをつくるわけです。それはもう、数多くあるわけです。だから、別に三重県だけの話ではないですが、住民からすると県庁がつくって公表している広報媒体というのはもう無数にあるわけです。ところが、広報する各原課というのは、この無数の中に本当に自分たちが広報したい媒体が埋もれてしまい、埋もれているがために、こんな広報をやっていますということを新たに広報しないと、なかなか県民までというか、住民まで届かない、ということを言っています。すなわち、ガバナンスができてないがために広報媒体が乱立していて、どういう広報が自治体からされているのかというのは誰もわからない、自治体の中でもわからない、その中で、本当に広報したい側はその広報を、こんな広報をやっていますということを新たに広報しないとわからない、そういう問題が多々発生していますということを申し上げたかったということです。

〇中嶋委員 ありがとうございました。

〇水谷委員 先ほど参考人がおっしゃった中嶋委員の御質問に対してなんですけども、こんな広報をやっていますというマネジメントの話で。
 PDCAの話をされましたよね。40ページなんですけども、どうチェックするかを。我々は税金の使い方のチェックもしてるもんですから教えてほしいんですが、広報の市民に対する効果の測定ですとか、認知度、好感度、利用度等が高まったか否かのチェックの部分をどうやってするか。マネジメントできてないこと自体がまず問題かもわかりませんけれども、その分析についての学術的な見解というのは何かあるんですか。

〇北村参考人 実はその話については、お手元のプレゼン資料の44ページ、45ページをご覧ください。これは政策広報の中での話ですけれども、PDCAの中で、最終的に住民、企業等が広報したものに対してどう反応したか、何をモニタリングしなきゃならないかということを図解したのが44、45ページです。44ページは、広告型政策広報なので、いわゆるマスメディアを通さない、県庁が直接やったものに対して、住民、企業等がどう反応したかのモニタリングの構図を示しています。それから、45ページは、パブリシティ型政策広報なので、とりあえずマスメディアが中に入り、県庁、行政側が広報したものが一度マスメディアのフィルターを通して住民なり企業なりに届けられますということを示しています。そうしたときには、最初の行政側の意図とした内容、コンテンツ、情報、データなりがきちっと住民・企業等に届いたかどうかというのをモニタリングしないとだめです。
 44ページ、45ページではそういう大きな違いがあります。かつ、モニタリングをするときに、パブリシティ型政策広報では、マスメディアに流れたそれのモニタリングというのも必要ですし、マスメディアによって翻訳されたものが最終的に住民、企業等に到達したときに、その反応もモニタリングするべきという、2つ構えになっています。結局、モニタリングという行為が重要で、それをきちっとすることによって、その政策広報としてやった効果というのがきちっと捉えられますということを言っています。だから、行為としては、モニタリングということですね。
 では、モニタリングの方法ということになりますと、これはもう、アンケートをする、ヒアリングをするなど、伝統的な手段でいいかなと思いますし、先ほどのインターネットでやると、もし仮に登録した場合に、末端のユーザーが、「いいね!」ボタンじゃないですけども、評価してくれたりするではないですか、ボタンで。そういう形での意見の集約というのも方法論としてはあると思います。

〇水谷委員 「実はそれ、ぜんぶ三重なんです!」というのを、三重県はやっているんです。香川県の「うどん県」のあのインパクトは完全に超えてないですよね。香川県の「うどん県」というのは、参考人のおっしゃるモニタリングで、どういう効果をもたらしたかを先進事例として分析されていますか。

〇北村参考人 済みません、ちょっとそこまでは。私も、どういう分析をされているのかというのは調べてないのでわからないです。

〇水谷委員 広島県の場合もそうなんですね。

〇北村参考人 はい。

〇水谷委員 わかりました。

〇津田委員長 よろしいですか。
 なければ、質疑を終了いたしたいと思います。

(休  憩)

 2 委員間討議    なし

 

〔閉会の宣言〕

 

三重県議会委員会条例第28条第1項の規定により記名押印する。

戦略企画雇用経済常任委員長  

津田 健児

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