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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第228号

答申

1 審査会の結論

 実施機関は本件異議申立ての対象となった公文書のうち、当審査会が非開示妥当と判断した部分を除き、開示すべきである。また、非開示の理由付記について、この答申に従い整理し、改めて示すべきである。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成16年7月21日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県が起こしたすべての非訟事件および三重県に対して起こされた訴訟事件および非訟事件に関するすべての文書」の開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成16年8月3日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。

3 本件対象公文書について

 「弁護士報酬の支出負担行為について(伺い)」、「支出命令書」、「行政事件訴訟法に基づく判例について(送付)」及び「訴訟事件の処理について(伺い)」(以下「本件対象公文書」という。)

4 実施機関の非開示理由説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。

(1) 条例第7条第2号(個人情報)に該当

 個人の印影、原告の氏名、住所、年齢、印影、物件所在地、不動産の所在地、家屋住所、家屋にかかる情報等は、個人に関する情報であり、開示することにより、特定の個人が識別され、また、当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあると判断し非開示とした。

(2) 条例第7条第3号(法人情報)に該当

 原告の法人名、訴訟事件事案名称中の相手方法人名は、法人に関する情報であり、開示することにより、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められると判断し非開示とした。

5 異議申立て理由

 異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。

 日本国憲法は、裁判は公開で行われることを規定しているので、当事者に関する裁判上の情報は開示すべきであり、本決定は憲法に違反する。また、非開示とした理由につき、どのように該当するのか説明がない。

6 審査会の判断

(1) 基本的な考え方

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。

 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。

(2) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について

 個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。

 しかし、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、非開示にする必要のないもの及び個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきものについては、開示しなければならないこととしている。

(3) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について

 実施機関が本号に該当するとして非開示とした情報は、以下のとおり分類することができる。

(ア)「支出命令書」の請求書のうち弁護士の印影

(イ)「行政事件訴訟法に基づく判例について(送付)」の判決のうち原告の住所、氏名及び物件所在地、判決に添付されている非木造家屋調査書のうち個人の住所、氏名及び不動産の所在地

(ウ)「訴訟事件の処理について(伺い)」の起案文、期日呼出状および答弁書催告状及び訴状のうち原告の住所、氏名及び家屋の所在地

(エ)「訴訟事件の処理について(伺い)」の訴状のうち原告個人の印影、訴状に添付されている不動産取得申告書、不動産取得税納税通知書兼領収証書及び非木造家屋調査書のうち個人の住所、氏名、郵便番号、家屋の所在地、家屋番号、種類、構造、床面積、取得年月日、固定資産課税台帳登録の価格及び不動産の所在地、訴状に添付されている審査請求書及び裁決書のうち審査請求人の住所、氏名、年齢、家屋の所在地

 (ア)について、実施機関は、弁護士印であれば法人情報として判断すべきものであるが、本件対象公文書に押印されている印影は、明らかに私印であると判断されるので、本号本文に該当し、開示することにより、当該個人の私生活上の権利利益を害するおそれがあると主張している。

 しかしながら、本件対象公文書は、訴訟において弁護士が県側の代理人を務める際に支払われる弁護士報酬を当該弁護士から県に対して請求している書類であって、そこに押印されている印影は、弁護士業務を遂行する上で押印されている印影であると認められ、本号本文に規定する個人に関する情報に該当するとは認められず、非開示とする根拠として本号を適用した実施機関の判断は妥当ではない。

 なお、実施機関は非開示とした理由として条例第7条第3号(法人情報)の該当性を主張してはいないが、当該印影は、事業を営む個人に関する情報であることから、当審査会としては、後述において、条例第7条第3号(法人情報)の該当性について判断する。

 (イ)について、これらの情報は個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報であり、本号本文に該当することは明らかである。

 しかしながら、判決原本については、裁判所に確定後50年は保存されており、何人にも、閲覧の請求が認められている(民事訴訟法第91条第1項参照。)。

 したがって、(イ)に関する情報は、本号ただし書イの情報すなわち「法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当することから、開示すべきである。

 (ウ)について、これらの情報は個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報であり、本号本文に該当することは明らかである。また、実施機関は、本件訴訟は判決日から約20年を経過しており、裁判所において訴訟記録が廃棄されていると説明している。

 しかしながら、(ウ)に関する情報とともに、起案文等に事件名(事件番号)が記載されていることから、民事訴訟法第91条第1項により、当該訴訟事件の判決原本を閲覧することができるため、(イ)の場合と同様に、(ウ)に関する情報は、本号ただし書イに該当すると認められることから、開示すべきである。

 (エ)について、これらの情報は個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報であり、本号本文に該当することは明らかである。また、実施機関は、本件訴訟は判決日から約20年を経過しており、裁判所において訴訟記録が廃棄されていると説明している。

 確かに、本件訴訟の判決日から約20年を経過しており、判決原本を除く訴状や書証等の訴訟記録は、裁判所において保存されていない。

 したがって、(エ)に関する情報は、本号ただし書イに該当せず、また、本号ただし書ロの情報すなわち「人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当するとも認められないことから、本号本文に該当し非開示が妥当である。

(4) 条例第7条第3号(法人情報)の意義について

 本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。しかしながら、法人等に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは不当な事業活動によって生ずる支障から県民等の生活・環境を保護するため公にすることが必要であると認められる情報及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書により、常に公開が義務づけられることになる。

(5) 条例第7条第3号(法人情報)の該当性について

 実施機関が本号に該当するとして非開示としたのは、「原告の法人名」、「訴訟事件事案名称中の法人名」である。また、6(3)(ア)の「弁護士の印影」についても本号にて判断することとする。

 まず、「弁護士の印影」について、実施機関は個人に関する情報に該当するとして非開示としたため、本決定では本号の該当性を主張していないが、弁護士業務を遂行する上で押印された印影と認められ、事業を営む個人に関する情報であることから、本号の該当性を判断すべきである。

 当審査会としては、本件公文書の印影を開示することにより、直ちに印影偽造等を誘発するおそれがあるとは認められず、事業を営む個人のその事業活動の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれがあるとは言えないので、非開示とする理由はなく、開示すべきであると判断する。

 次に、「原告の法人名」及び「訴訟事件事案名称中の法人名」について検討する。

 異議申立人は、裁判は憲法上公開されているので、当事者に関する裁判上の情報は開示すべきであると主張している。

 他方、実施機関は、「原告の法人名」については、軽油引取税決定処分等取消等請求事件における法人名であって、当該法人に対して軽油引取税の決定処分が行われたという課税関係が明らかになることで取引先や融資元より取引条件の変更を求められたり、取引を停止されるなどの致命的な不利益をもたらす可能性があり、当該法人の名誉、社会的評価、社会活動の自由が損なわれ、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められると主張している。また、「訴訟事件事案名称中の法人名」については、延滞金にかかる住民訴訟における法人名であって、当該法人に地方団体の徴収金の滞納があると容易に推察でき、当該法人の名誉、社会的評価、社会活動の自由が損なわれ、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められると主張している。

 しかし、訴訟記録は、何人にも、閲覧の請求が認められていることから、実施機関が本決定において非開示とした情報は、すでに公にされている情報であると認められる(民事訴訟法第91条第1項参照。)。

 よって、すでに他の方法で公にされている情報を開示することで、実施機関が主張する当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するとまでは認められず、「原告の法人名」及び「訴訟事件事案名称中の法人名」は、本号本文に該当するとは言えないことから、開示すべきである。

(6) 条例第7条第6号(事務事業情報)の該当性について

 実施機関は、本決定で非開示とした情報(弁護士の印影を除く。)につき、開示することにより、税務行政の遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるとして、本号の該当性を主張する。

 しかし、実施機関は、本決定において、非開示の根拠規定として本号を示しておらず、また、非開示とした情報各々がどのように本号の事務事業情報に該当するのかの具体的な主張・立証を行っていない。

 したがって、本号の該当性を認めることはできない。

(7) 本決定の理由付記について

 条例第15条には、「実施機関は、第12条各項の規定により開示請求に係る公文書の全部又は一部を開示しないときは、開示請求者に対し、同条各項に規定する書面によりその理由を示さなければならない。この場合においては、開示しないこととする根拠規定を明らかにするとともに、当該規定を適用する根拠が当該書面の記載自体から理解され得るものでなければならない。」との規定があり、全然理由を付さなかったり、理由らしき理由を付さなかったときは、決定に形式上の瑕疵があるとされる。

 異議申立人は、異議申立ての理由として、非開示とする理由につき、どのように該当するかの説明がなされていないと主張している。

 条例第7条第2号は、非開示情報について、いわゆる個人識別情報型を採用しており、形式的に個人の識別が可能であればすべて非開示とすることができるのであって、理由の詳細な記載は省略することができると考えられる。

 本決定の通知書においては、「開示しない部分」欄のところに個人の氏名、住所、年齢、法人の名称の各情報が記載され、「上記部分を開示しない理由」欄に条例第7条第2号該当の理由が記述されているが、「開示しない部分」欄のどの情報が特定の個人が識別され、又は識別され得る情報かということは明示されていない。

 また、実施機関が条例第7条第2号に該当するとして非開示とした情報のうち、印影、物件(不動産又は家屋)所在地、郵便番号、家屋番号、種類、構造、床面積、取得年月日、固定資産課税台帳登録の価格が、本決定の通知書の「開示しない部分」欄の記載から漏れている。

 したがって、理由付記の趣旨に鑑みれば、本決定の通知書にどの情報が条例第7条第2号の根拠規定に該当するのかを明示すべきであり、条例第15条の要求する理由付記については十分ではないといわざるを得ない。

 次に、条例第7条第3号についても、実施機関は、「上記部分を開示しない理由」欄に条例第7条第3号該当の理由を記述しているが、「開示しない部分」欄のどの情報が競争上の地位その他正当な利益を害する情報かということは明示していない。

 また、条例第7条第3号の該当性について、実施機関は、本決定の通知書の「上記部分を開示しない理由」欄に「法人に関する情報であり、開示することにより、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる部分となるため」と条例第7条第3号の規定と同じ内容を示しているだけである。

 したがって、理由付記の趣旨に鑑みれば、本決定の通知書にどの情報が条例第7条第3号の根拠規定に該当するのか、また、非開示情報を開示することにより、法人の競争上の地位その他正当な利益を具体的にどのように害するのか明示すべきであって、条例第15条の要求する理由付記については十分ではないといわざるを得ない。

(8) 結論

 よって、主文のとおり答申する。

7 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

別紙1

審査会の処理経過

年月日 処理内容
16.10.28 ・諮問書の受理
16.11. 1 ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼
16.11.30 ・非開示理由説明書の受理
16.12. 3  ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、意見書の提 出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認
17.10.14  ・書面審理
・異議申立人の口頭意見陳述
・実施機関の補足説明
・審議                
(第231回審査会)
17.11.11 ・審議                
(第233回審査会)
17.12.16 ・審議                
(第236回審査会)
18. 1.31  ・審議
・答申                
(第238回審査会)

三重県情報公開審査会委員

職名 氏名 役職等
※会長 岡本 祐次 元三重短期大学長
※会長職務代理者 早川 忠宏 弁護士
※委員 丸山 康人 四日市大学総合政策学部教授
※委員 竹添 敦子 三重短期大学教授
委員 豊島 明子 三重大学人文学部助教授
委員 渡辺 澄子 三重中京大学短期大学部教授
委員 樹神 成 三重大学人文学部教授

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
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