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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第1号

答申

1 審査会の結論

 「平成元年度 ゴルフ場の維持管理に関する指導要綱に基づく報告書〔様式2-2平成元年農薬使用状況等記録簿(年報)〕」については、ゴルフ場の名称、所在地及び個人の印影の部分を非開示としたことは妥当であるが、防除対象面積、農薬の年間総使用量等ゴルフ場が特定され得るとして非開示とした部分は開示すべきである。

2 異議申立ての内容

1 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、平成2年7月26日、三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「平成元年度ゴルフ場の維持管理に関する指導要綱に基づく報告書〔様式2-2平成元年農薬使用状況等記録簿(年報)〕」(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県知事が平成2年8月6日付けで行った部分開示決定の取消しを求めるというものである。

2 異議申立ての理由

 異議申立人が、異議申立書、実施機関の部分開示理由説明書に対する意見書及び口頭による意見陳述で主張している異議申立ての主たる理由は、次のように要約される。

  1.  昭和63年調査表の開示請求(平成2年4月17日)においては、非開示を前提にゴルフ場事業者に任意に報告させたものであり、部分開示も止むを得ないと思った。しかし、今回請求した平成元年の報告書は、「ゴルフ場の維持管理に関する指導要綱」(以下「指導要綱」という。)によりゴルフ場事業者に報告を義務づけたもので、昭和63年調査表と同様非開示とするのでは納得できない。
  2.  最近ゴルフ場に関する自然破壊、環境汚染を心配する住民の声が高まっており、特に既存のゴルフ場では環境に対する配慮はどうなっているかは、広く住民が注視、監視の目を向ける必要がある。
  3.  県には、既設のゴルフ場事業者全体の利益を擁護する姿勢があるように感じられる。住民からもゴルフ場事業者に対し適切でないものがあれば、指摘できるような配慮がなされるべきである。
  4.  県は、現在進めている農薬使用の基準づくりや、排水基準づくりの基礎となるゴルフ場事業者からの報告の重要な部分を、県民に公表しないまま作業を進め、基準ができあがってから発表しても、広く県民の理解、納得を得るのは困難である。よって、デ-タを開示して住民の声を反映すべきである。
  5.  自然環境に対する住民意識が変化し、これまでの「行政にまかせておけばよい」という姿勢から、自分達のまわりの環境は自分達で考え、自分達で守るという姿勢へと意識が高まってきており、行政が住民とともに考え、対話していく姿勢が望まれている。そのためにも、まず上記のデ-タの全面開示が必要である。
  6.  「ゴルフ場における病害虫、雑草安全防除暫定指針」(以下「暫定指針という。)の策定がなされたのだから、ゴルフ場名も農薬使用量も明らかにすべきである。

条例第8条第2号(法人情報)に該当しないことについて
 県は、ゴルフ場名を開示することによるデメリットを主張するが、現状では、概して各ゴルフ場事業者の指導要綱に対する理解は十分とは言えない。また、県自身にも、ゴルフ場事業者に対する断固たる指導姿勢は見えない。したがって、ゴルフ場名を開示することによる県のいうデメリットは、消極的な県の姿勢からくる、ゴルフ場事業者側を擁護する理由にさえ思える。

条例第8条第2号ただし書きイに該当することについて
 条例では、第8条第2号に該当する場合でも、「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、身体及び健康を保護するため開示することが必要であると認められる情報」は開示することとなっており、今回の異議申立ての根拠もここにある。
 大阪府の審査会答申の中で、「ゴルフ場の開発について、開発計画の内容、地域の状況、進捗状況等によっては、生命、身体、健康等に対する危害の発生の蓋然性が生じ、あるいは高まっていく。」と述べ、開発段階のゴルフ場についても、住民の生命、身体等に対する危害が生じる可能性を認める見解を出している。
 今回の異議申立ては、既設のゴルフ場の報告書に関するものである。各ゴルフ場ではほぼ毎日何らかの農薬を撒いており、その場所と量を隠すことの方がフェア-でなく、開示することこそ、県民側の立場に立った県の取るべき態度であり、県は県民の生活と健康を守る義務がある。
 農薬使用に係る見解について、県とは考え方に相違があることは認めるが、県下のどのゴルフ場で、どのような農薬が、どのように、どれくらい使用されているかの正確なデ-タを明らかにしてほしいのであって、その適、不適を今、問題にしているのではない。現在、生態系、人体に影響を与え、危害を与える農薬が存在していることがわかっており、部分開示で示されたデ-タによれば、当該農薬が三重県内のゴルフ場においても使用されている事実が明らかになった。しかし、その量と場所が示されることなく不安が増しているのが現状である。正確なデ-タを把握したうえで、行政と議論したいのが異議申立ての趣旨である。

条例第8条第4号(意思形成過程情報)及び第5号(行政運営情報)に該当しないことについて
 県は、指導要綱をつくり、説明会を開き、ゴルフ場事業者を指導している立場であるが、報告書を開示すれば事業者との信頼関係が損なわれ、指導できなくなる、あるいは報告書が提出されなくなるというのは、ゴルフ場事業者の認識の低さの問題もあるが、むしろ県の指導姿勢や指導力が問題で、到底承服できない。県が指導姿勢の徹底を明確化する意味からも農薬使用の総量、面積、ゴルフ場名の開示は、最も端的な方法の一つであると考える。

3 実施機関の説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、個人の印影及びゴルフ場が特定され得る部分を非開示としたというものである。

1 条例第8条第1号(個人情報)の該当性について

 個人の印影の部分は、開示すると特定の個人が識別され得るので、条例第8条第1号に該当する。

2 条例第8条第2号(法人情報)の該当性について

 現段階では、各ゴルフ場ごとに、その立地条件、気象条件及び芝の管理方法、病害虫の発生状況等に差異があり、しかも病害虫等防除の基準がないために、各ゴルフ場とも模索しながら種々の防除方法がとられているのが実態である。
 このため、県では、「ゴルフ場における芝等の病害虫雑草防除指針」(以下「本指針」という。)の策定作業中である。現時点では、農薬の必要性や、適正使用による適正管理よりも、農薬のもつ毒性の一面だけが強く意識され、農薬は悪という風潮が強い。このような状況の中で、ゴルフ場が特定され得る部分を開示すると、農薬使用状況、例えば、使用量の多少等が評価の一方的な判断材料となり、ゴルフ場事業者の社会的評価、社会活動の自由が損なわれ、競争上の地位その他正当な利益を害すると認められ、条例第8条第2号に該当する。

3 条例第8条第2号ただし書きイの該当性について

 県としては、県民の健康を保護するため、ゴルフ場における農薬の使用について、指導要綱に基づき、ゴルフ場事業者に対し、適正使用を指導しているところであり、ゴルフ場における農薬使用をもって直ちに住民の生命、身体等に危害を及ぼすおそれがあるとはいえない。
 また、現在のところ、ゴルフ場の事業活動に起因して人への危害が現に発生しているか、又は将来発生するであろうことが確実であるとはいえず、同号ただし書きイの情報に該当するものではない。 

4 条例第8条第4号(意思形成過程情報)及び第5号(行政運営情報)の該当性について

 ゴルフ場における芝等の病害虫雑草に対する安全防除対策を確立するため、県では、平成2年度から3年間「農薬適正使用緊急対策事業」(国庫補助事業)を実施し、周辺環境に対する影響を十分考慮した本指針を策定することとしている。
 このため、現在、県下ゴルフ場の協力を得て、病害虫の発生生態、土壌条件等の調査を実施中であり、この調査結果と指導要綱に基づく報告の内容及び学識経験者の意見等をもとに、平成2年中に暫定措置として暫定指針を策定し、ゴルフ場事業者に対し、農薬の減量、適正使用を指導することとしている。
 本件対象公文書は、指導要綱に基づく事業者からの報告であるが、本指針策定の検討資料として重要な情報で・り、このデ-タを得るためには、ゴルフ場事業者の協力を得て、病害虫の発生生態等の調査を実施しなればならない。
 このような状況にあって、ゴルフ場が特定され得る部分を開示すると、県と各ゴルフ場事業者との信頼関係が損なわれ、本指針策定に必要かつ正確な資料等を得ることが困難となることが予想される。
 また、毎年行っているゴルフ場の点検パトロ-ル等その他各種事務事業についても、ゴルフ場事業者の協力に負うところが大きく、その協力関係、信頼関係を損なうと、ゴルフ場事業者に対する指導など行政の公正又は円滑な執行に著しい支障を生ずるおそれがある。ゆえに、条例第8条第4号及び第5号に該当するものである。

4 審査会の判断

1 本件対象公文書の性格及び本件審査の中心争点について

 ゴルフ場事業者は、指導要綱第8の規定により、前年のゴルフ場維持管理状況について、毎年2月末日までに、関係市町村を経由して県に報告することが義務づけられている。
 本件対象公文書は、平成元年分のゴルフ場事業者からの報告書(様式1~6)のうち、「様式2ー2農薬使用状況等記録簿(年報)」のみである。
 本件対象公文書の内容は、各ゴルフ場のグリーン、ティーグランド、フェアウェイ、ラフ等の施薬場所ごと及び殺菌剤、殺虫剤、除草剤の農薬の用途ごとの防除面積、目的(対象病害虫名、雑草名)、薬品名、月別施農薬回数、施薬方法、年間施薬量合計等の記載項目からなっている。
 実施機関の部分開示決定は、ゴルフ場が特定される部分としてゴルフ場の名称及び所在地を、ゴルフ場が特定され得る部分として、全面散布の場合の防除対象面積、一部のゴルフ場に記載のあった年間施薬量合計(1m2当たりの年間施薬量合計は開示)等を非開示とし、施薬場所、薬品名、1m2当たりの施薬量、スポット散布の場合の防除対象面積等は開示する、というものであった。また、特定の個人が識別され、又は識別され得る情報として個人の印影(1ゴルフ場)を非開示とした。
 これに対し、異議申立人は全部開示すべきだとしている。
 当審査会は、ゴルフ場が特定される部分だけでなく、特定され得る部分までも非開示としたことを中心に、実施機関の本決定の妥当性について、以下検討する。

2 基本的考え方について

 条例の制定目的は、県民の公文書の開示を求める権利を保障するとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。
 条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外のものの権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適切な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として、限定列挙した非開示規定を定めている。
 本件では、実施機関は、条例第8条第1号(個人情報)、第2号(法人情報)、第4号(意思形成過程情報)及び第5号(行政運営情報)に該当することを理由に非開示の決定をなし、異議申立人は全面開示を求めている。当審査会は、情報公開の理念を尊重して条例を解釈し、以下において、個々の非開示規定に即して、その妥当性を判断する。

3 条例第8条第1号(個人情報)の該当性の有無について

 条例第3条において、実施機関は個人に関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならないと規定している。また、個人のプライバシ-を最大限保護する必要があるため、条例第8条第1号において特定の個人が識別され、又は識別され得る情報は、非開示とするとしている。
 ところで、本件対象公文書の中で、個人の印影の部分(1ゴルフ場のみで、当該ゴルフ場の職員と推定される。)は、特定の個人が識別され得る情報であるから、本号に該当するとの理由で非開示とすることは妥当である。
 なお、当該情報は、本号ただし書きイ、ロ、ハで規定するいずれの情報にも該当しないものと判断する。

4 条例第8条第2号(法人情報)の該当性の有無について

  1.  本号は、事業を営む個人又は法人等の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要上設けられた規定であり、開示することにより、当該個人又は法人等の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものは非開示とすることを定めたものである。
     競争上の地位その他正当な利益が害されると認められる情報とは、例えば、生産、技術、販売、営業上のノウハウに関する情報、経理、人事等の内部管理に関する情報のほか、開示することにより、社会的評価、社会活動の自由等が不当に損なわれる情報をいう。
     ところで、本件対象公文書の内容は、ゴルフ場における農薬使用状況であるが、ゴルフ場による環境汚染等が社会問題化している中でゴルフ場が特定され、又は特定され得る部分を開示すると、農薬使用量の多少等によって一面的に、あるいは不適切な評価がなされることになり、ゴルフ場事業者の社会的評価が損なわれる可能性がある。もっとも、各ゴルフ場において、いかなる農薬をどの程度使用しているかは、元来秘密にすべき情報(企業秘密)といえるか疑問もあり、ゴルフ場の農薬使用に対する住民の不安を取り除く上でも、積極的に開示すべきであるとも考えられる。したがって、本件情報が条例第8条第2号本文に該当するものであるか否か、にわかに即断できないうえ、仮に条例第8条第2号本文に該当するとしても、以下で述べるように、本号ただし書きハに該当する可能性は十分あり、本号をもって非開示の理由とした原処分は妥当とはいえない。
  2.  条例第8条第2号ただし書きイは、「事業活動によって生じ、又は生ずるおそれのある危害から人の生命、身体及び健康を保護するため、開示することが必要であると認められる情報」は、条例第8条第2号本文に該当する場合であっても開示とすることを定めており、また、条例第8条第2号ただし書きハは、「イ又はロに掲げる情報に準ずる情報であって、公益上開示することが必要であると認められるもの」は、同様に開示とすることを定めている。
     異議申立人は、本件対象公文書の内容であるゴルフ場の農薬使用状況は、ただし書きイに該当すると主張する。しかし、ただし書きイでいう危害は、事業活動に起因して現に発生しているか、又は将来発生するであろうことが確実であるものを指しているところ、ゴルフ場における農薬使用をもって直ちに人の生命、身体等に危害を及ぼすおそれがあるとまではいえないから、同ただし書きには該当しない。もっとも、ただし書きイに直接該当しなくても、開示することが、公益上ただし書きイと同程度必要であると認められるものは、ただし書きハに該当するので検討するに、ゴルフ場の農薬使用が社会問題化している昨今の状況を考慮すると、本件対象公文書を開示することの公益上の必要性も認められるので、本号ただし書きハに該当する可能性は十分にあるものと判断する。
     以上のとおり、本号をもって本件対象公文書のゴルフ場が特定され、又は特定され得る部分を非開示とした原処分は妥当とはいえない。

5 条例第8条第4号(意思形成過程情報)及び第5号(行政運営情報)の該当性の有無について

 第4号は、行政における内部的な審議、検討、調査研究等が円滑に行われることを確保する観点から定めたものである。
 具体的には、例えば、最終的な意思決定に至らない段階で、開示することにより、県民に誤解を与え、又は無用の混乱を招くおそれのあるもの、あるいは事務事業の企画、検討等のために収集した資料等で、今後の企画、検討等に必要な資料を得ることが困難になるおそれのあるもの等は非開示とすることを定めたものである。
 第5号は、事務事業の内容及び性質からみて、開示することにより当該事務事業の目的を失い、又は公正若しくは適正な執行ができなくなるおそれのある情報は非開示とすることを定めたものである。
 具体的には、例えば、開示することにより、関係当事者との信頼関係が損なわれ、事務事業の実施に必要な理解、協力を得ることができなくなったり、今後、必要な情報を収集することができなくなるおそれのある情報等である。
 本件対象公文書は、指導要綱により報告を徴したものである。また、実施機関の説明要旨にもあるように、県は、平成2年度から3年間「農薬適正使用緊急対策事業」を実施し、平成4年度をめどに本指針を策定することとしており、そのための重要な基礎資料を得るために病害虫の発生生態、土壌条件等の調査を県下ゴルフ場事業者の協力のもとに実施しているものである。

 ところで、本指針の策定には、まだなお年月を要するうえ、ゴルフ場に係る環境汚染が社会問題化していることに鑑み、平成2年12月暫定指針が策定され、県では、これをもとに、ゴルフ場事業者に対し、農薬の減量、適正使用を指導するべく、平成3年3月からの適用に向けて準備が進められている。
 以上のごとく、本件対象公文書は、指導要綱に基づくものではあるが、一方では、暫定指針策定における参考資料となり、更に策定予定の本指針にも生かされることは、事実である。なお、暫定指針が、平成3年3月から実施となれば、平成4年2月に報告される平成3年の報告書から適用されるものである。
 しかるに、本件対象公文書である報告書は、平成元年分であり、まだ具体的な病害虫等防除の基準のない中で、各ゴルフ場とも模索しながら種々の防除方法がとられてきた実績、実態を示すものであり、本指針策定途中での未成熟な情報であるといえる。もっとも、過渡的、未成熟な・﨣ナあっても、本件で問題となっているのは単なる事実の記録であって、意見の表明ではなく、また、農薬の使用状況に対する住民の関心も高いことなどからすれば、農薬の年間総使用量や防除対象面積等までを非開示にすることが妥当か否か疑問もある。
 そこで、以下では、ゴルフ場の名称、所在地のようにゴルフ場が直接特定される部分と、特定され得るに過ぎない部分に分けて検討する。

【ゴルフ場が直接特定される部分について】

 まず、第4号について検討する。
 本件報告書は、ゴルフ場における農薬の適正使用のための指針を策定するためのものであって、個々のゴルフ場の使用状況の適否を判断するためのものではない。また、報告書の内容も各ゴルフ場ごとにまちまちであり、これは具体的な基準のない中で各ゴルフ場とも模索しながら種々の防除方法をとってきたことを示している。このような中で、ゴルフ場が直接特定される部分を開示することは、ゴルフ場事業者との信頼関係、協力関係を損ない、今後、本指針策定の検討に必要な資料を得ることが困難になることが予想され、また正確な資料の入手についても、同様に危惧される。
 農薬取締法に基づく調査によって、資料を得る方法もないではないが、迅速、適切に資料を得るためには、指導要綱に基づく報告書による方法が効率的であり、そのためにはゴルフ場事業者との信頼関係、協力関係が必要であると考えられる。
 なお、異議申立人も、個々のゴルフ場名よりは、農薬の年間総使用量や防除対象面積の開示をこそ求める旨の意見を述べている。
 以上の点から、本指針策定までの過渡的段階で、各ゴルフ場の協力を得て進めてきた調査結果報告書の開示において、ゴルフ場が直接特定される部分を開示することは、ゴルフ場事業者との信頼関係、協力関係を損ない、本指針の策定に著しい支障を生ずるおそれがあるものと認められる。よって、第4号の意思形成過程情報に該当するとの理由で非開示とすることは妥当である。

 次に、第5号について検討する。
 異議申立人は、本件対象公文書は、本号の規定に列挙された「検査、監査、取締り、入札、試験、交渉、渉外、争訟等の事務事業」のどの情報にあたるのかとしているが、「検査、監査、取締り」には、類似の事業として「監視指導等」も含まれ、また「争訟等」の「等」には、上記に例示された事務事業のほか、県が行う一切の事務事業に関する情報を含むものと解釈される。
 よって、本件対象公文書は本号でいう事務事業に含まれるものと判断する。

 なお、異議申立人は、報告書が出なくなるなどの危惧は、むしろ県の指導姿勢、指導力も問題であり、事業者に対する県の指導姿勢をより明確化するうえでも、すべて開示すべきであると主張する。

 異議申立人のこの主張について検討するに、まず本件対象公文書が、法律や条例に基づくものではなく、指導要綱に基づくものであること、第2は、本件対象公文書は、近く適用される暫定指針及び今後策定が予定されている本指針にとって重要な資料の一つであること、更に、第4号の検討でも述べているように、現在、県が進めている本指針策定のための「農薬適正使用緊急対策事業」及び県が毎年行っているゴルフ場の点検パトロ-ル等その他各種事務事業の執行面等を考慮すると、ゴルフ場事業者との信頼関係、協力関係を堅持する必要があり、ゴルフ場が特定される部分を開示すれば「当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがある」ものと認められる。
 以上のことから、本件対象公文書のうちゴルフ場が直接特定される部分を開示すれば、ゴルフ場事業者に対する指導など県の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあり、第5号の行政運営情報に該当するとの理由で非開示とすることは妥当である。

【ゴルフ場が特定され得るに過ぎない部分について】

 本件対象公文書のうち、防除面積、年間総使用量等、ゴルフ場が直接明らかにならない情報は、農薬の適正な使用方法について住民も含めて討論する上で必要な基本データであり開示すべきである。なお、これらの情報は、仮に、他の資料との突合等により、かなりの可能性でゴルフ場が特定され得るとしても、それはあくまでも推定に過ぎず、ゴルフ場名を開示した場合と比較して、ゴルフ場事業者との信頼関係、協力関係を損ない、行政運営に著しい支障を生ずるおそれがあるとまでは認められない。
 したがって、当該情報は先に述べた非開示理由には該当せず、開示すべきである。

6 結論

 3~5において具体的に検討してきたところをまとめると、本件対象公文書については、ゴルフ場の名称、所在地及び個人の印影の部分を非開示としたことは妥当であるが、防除対象面積、農薬の年間総使用量等ゴルフ場が特定され得るとして非開示とした部分は開示すべきである。

5 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。

6 実施機関に対する要望・提言

 ゴルフ場名の開示に代えて、記号等で表示した個別のゴルフ場ごとの農薬使用状況が明らかにされる資料を提示されるよう、また、本件報告書の分析結果の情報提供についても配慮されるよう、審査会として要望・提言する。


別紙

審査会の処理経過

年 月 日 処理内容
2.10.1 ・諮問書受理
・実施機関(土木部開発指導課)に対して部分開示理由理由説
明書の提出要求
2.10.16 ・部分開示理由説明書受理
・異議申立人に対して部分開示理由説明書(写)の送付及び意
見書の提出要求
2.10.22 ・意見書及び口頭での意見陳述申出書受理
2.10.29
(第1回審査会)
・審 議
・実施機関に対して部分開示理由説明書の再提出要求
2.11.6 ・異議申立人に対して意見書の再提出要求
2.11.17 ・意見書(続)受理
2.11.19 ・部分開示理由説明書(続)受理
2.11.20
(第2回審査会)
・実施機関からの部分開示理由説明の聴取
2.12.25
(第3回審査会)
・異議申立人からの口頭意見陳述の聴取
3.2.6
(第4回審査会)
・審議
3.3.1
(第5回審査会)
・審議
3.3.29 ・答申

本ページに関する問い合わせ先

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津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
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