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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第13号

答申

1 審査会の結論

 「(平成4年度)平成5年度三重県公立学校教員採用選考試験第1次合格者の決定について(○○○○・○○○○にかかるもの)」について、実施機関が部分開示にしたことは妥当である。

2異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、異議申立人(以下「申立人」という。)が平成4年9月4日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「(平成4年度)平成5年度三重県公立学校教員採用選考試験第1次合格者の決定について(○○○○・○○○○にかかるもの)」(以下「本件対象公文書」という。)の開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成4年9月18日付けで行った部分開示決定処分の取消しを求めるというものである。

3 実施機関の部分開示理由説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件対象公文書を部分開示にしたというものである。

(1)教員採用選考試験について

 公立学校教員は、全体の奉仕者たる教育公務員として、県民の教育に関する信託に応えられる多様な資質・能力を必要としている。したがって、採用に当たっては、これらの資質・能力をできるだけ正確に把握する必要があることから、筆答試験はもとより、技能・実技試験、適性検査、小論文、体力測定、個人面接、レントゲン検診などの多岐にわたる試験・検査等を実施し、それら個々の成績と受験者に提出させた各種資料を総合的に判定し、教師としての十分な指導力を持ち、使命感にあふれ、人格的にも優れた人材を採用しているところである。
 こうした観点から、三重県公立学校教員採用選考試験(以下「選考試験」という。)の第1次選考試験においては、専門科目筆答試験(以下「専門試験」という。)、クレペリン検査(以下「適性検査」という。)及び提出資料による書類審査を行うとともに、一部の校種・教科・科目にあっては技能・実技試験を実施し、これらの総合判定をもとに、採用予定数等を踏まえ適切な人数の第一次合格者を決定している。

(2)本件対象公文書について

 本件対象公文書は、平成4年度に実施した平成5年度選考試験合否判定資料であり、受験番号、氏名、性別、年齢、生年月日、本拠地、職業、大学・学科、卒業年月、学歴、所有免許状、大学・高校クラブ成績、専門・実技の各素点及び合計点、適性検査の評定、一次試験の判定・合否を記載した文書である。

(3)条例第9条第1項第1号(条例第8条第5号(行政運営情報))の該当性について

 本件対象公文書の専門試験素点及び適性検査の評定の部分は、これを開示すると、以下で説明するように、当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあることから、条例第8条第5号に該当し、非開示が妥当である。

ア 専門試験及び適性検査における共通の支障について
(ア)第一次選考の合格者は、専門試験、適性検査及び成績証明書や志願書のクラブ活動歴等も合わせて総合的に選考を行い決定されている。
 このため、第1次選考の合否結果と試験の一部である専門試験や適性検査の結果とは必ずしも一致しないにもかかわらず、受験者は開示された試験・検査結果と合否結果とを短絡的に結び付けてしまい、その結果、試験の合否結果そのものにも不平や不信を抱くことが懸念され、本選考試験の社会的評価を低落させ、ひいては県民の教育への信頼を損ねる。
(イ)一定人数の試験結果を分析すれば、何点満点とか評価方法が推測され、選考基準についてもある程度の推測が可能となり、特に受験者の少ない校種・教科では、何人かがグル-プで請求を行い、情報を収集し分析すれば選考基準を推測することは十分可能である。この結果、受験者の中には、ある教科は専門試験結果がかなり低くても総合選考ではあまり影響がないとか、適性検査結果の評価が低い場合専門試験がかなり高得点でも不合格になるといった短絡的な解釈をする者が出てきて、評価方法・配点・選考基準について誤った認識を持ったり、歪んだ受験対策をとるなどの弊害が起こり、受験者のありのままの姿をみようとする選考試験本来の目的に著しい支障を生じる。
(ウ)第一次選考試験結果を開示すれば、第二次選考試験の教職・一般教養筆答試験や別の性格検査の結果も開示を求められれば開示せざるを得なくなる。その結果、開示情報を収集・分析することにより、専門試験と教職・一般教養試験の比重の置き方がおかしいとか、専門試験が高得点なのに適性検査の評価が低いことを理由に不合格とするのは問題である等、選考基準に対する議論が起こり選考試験に対する不信感を高め、選考試験業務に支障を生じる。

イ 専門試験における支障について
 専門試験の中心は論述式と記述式であり、その採点において採点基準はあるものの採点者の裁量の入る余地がある。公開された得点結果と受験者の自己採点結果との間に大きな差が出た場合、受験者が採点基準、採点方法、ひいては選考試験全体に対して不信感を持つこととなる。
(ア)同一の試験問題を使用する校種・教科の場合、校種・教科ごとに受験者数、倍率が異なることから平均点や合格最低点が異なる場合がある。これらが公開されれば、それを校種・教科間の合格難易度の差としてとらえられたり、各校種間における教員の質の差としてとらえられたりする弊害が起こる。
(イ)県下に一校しかない特殊な専門科目においては、問題作成委員や採点委員が特定の人に限られ、これら委員の身近にいる実習助手や講師等が受験しているケ-スの場合、得点結果が開示されるとなれば、問題作成委員や採点委員はこうした受験者を意識せざるを得なくなり、その結果、採点の公正さを保てなくなったり、何らかの圧力を感じる状況となり、今後その任務を受ける者がいなくなる。
(ウ)第一次選考試験では選考の要素が少ないため、専門試験が同点で合否が分かれた場合、適性検査で合否が決められたと考えて、次年度に適性検査の意図的な練習を行い、本検査の適正な資料が得られなくなる。
 また、適性検査の第一次選考に占める比重が大きすぎるとか、その判定方法に問題があるとの疑問が出ると、教育長の裁量による選考事務事業に支障をきたすこととなる。

ウ 適性検査における支障について
(ア)校種・教科によって、判定区分の許容範囲が異なっていることが判明することから、選考基準への疑問や不公平感を抱かせる。
(イ)一般の市販書で望ましい曲線類型を容易に知り得ることができるので、意図的な受験態度をとる者が現れ、受験者本来の姿がつかめなくなる。(4)条例第9条第1項第2号の該当性について
 本件対象公文書の適性検査の評価の部分については、前記(3)で述べた他、以下のようなことから本人に知らせないことが正当と認められるので、条例第9条第1項第2号に該当し、非開示が妥当である。
 適性検査結果の中には、本人の人格に関わると考えられる要素が含まれていたり、その評価が時には本人の自尊心を傷つけるおそれもあり、たとえ本人の個人情報といえども本人のためになるとは限らないため、社会通念上開示しないことがふさわしい。

4 異議申立ての理由

 申立人が、異議申立書、実施機関の部分開示理由説明書に対する意見書及び口頭による意見陳述で主張している異議申立ての主たる理由は、次のように要約される。

(1)実施機関は、筆答試験の素点を開示すれば、試験の配点や評価方法が明らかになったり類推できる可能性があると主張するが、以下のとおり反論する。

ア 一般に素点を以て、筆答試験の配点が類推できるとしたらどのようになされるのか、実施機関はそのような具体例を実証していない。
 まして、教員採用選考試験問題は完全に非公開であり、問題内容や問題数に関する曖昧な記憶に符号させて配点を推測したり、明らかにすることはできない。
イ 実施機関の言う「評価方法」とは、解答が正解か誤答かを判定する基準と思われるが、専門筆答試験問題は、一問一問について「明瞭な答え」が用意されており、曖昧な解釈や学説が二分しているようなものはない。
 これは、教師としての必要な知識は既に広く明らかであることを意味し、判定基準もそれと同様なくらい公知である。
 この判定基準を以て、実施機関の「評価方法」とするなら、既に明らかなものが明らかになる可能性だけを以て、本件文書を非開示とするのは遺憾である。
 「評価方法」が専門試験問題の出題傾向が特定されることを指しているのであれば、実態と異なっている。受験者はおおよその問題傾向は覚えているものの、開示された素点をもとに、自分が見た問題以上の出題傾向を推測することはできない。
ウ 仮に、「配点」、「評価方法」を受験者が推測できたとしても、その推測の正しさを誰が証明するのか。また、そんな曖昧なものを受験者が拠り所として受験準備をすることは到底考えられない。
 受験者が有利になる情報とは、例えば、理科の問題で「物理の電気の問題の配点が高く、そこは計算ミスをしても部分点が加算されるという評価方法がある」ことを、昨年の素点から受験者が推測できたときなどであるが、このようなことは素点公開によっては判明しない。

(2)「平成4年度三重県公立学校教員採用選考試験第一次選考試験専門科目筆答試験問題」に関しての答申に示されたものと次の点で整合性がとれていない。

ア 「素点」の開示によって、「個々の試験や検査の結果が客観性を持たなくなる」可能性は発生しない。
イ 「試験問題」という影響の大きい公文書ですら非開示理由として「対症療法的な学習をした者と地道に学習した者との間で区別がつかなくなる」ことを前回答申で退けている。それにもかかわらず、「試験問題」と比較して格段に影響が小さいと考えられる「素点」開示について、試験問題と同じ非開示理由を上げていることは前回答申の精神を生かしていない。

(3)実施機関は筆答試験の素点を開示すれば、「個々の試験結果と合否の関係が明らかになる」ことから「選考内容に関するさまざまな憶測や誤解を生ずる」とするが、以下のとおり反論する。

ア 「個々の試験結果と合否の関係が明らかになる」には、相当数の情報を特定の人物が分析しなければ不可能である。普通に考えて個人ではできない。また、合格者は素点開示を求めたりしないので合否の関係は明らかにされない。
イ 仮に、「個々の試験結果と合否の関係が明らかになる」とどのような理由で「選考内容に関するさまざまな憶測や誤解を生ずる」のか理解できない。
 一次試験は、筆答試験と性格検査だけであり、面接・経歴評定・教職教養・一般教養など、総合判定の試験は二次試験で行われる。
 一次試験では専門性を重視して、他の能力は評価していないのであるから、これを正当に評価しているならば、性格検査の結果は別として、憶測を呼ぶような「試験結果と合否の関係」はあるはずがない。
ウ 仮に、試験結果と合否の関係を組織的、営利的に明らかにしようとする者が現れることを恐れるなら、数年間の開示凍結期間を設ければ解決する。
 すなわち、合否関係を明らかにするため、数年前の受験者を多数組織しようにも、当時の誰が受験者だったのかの情報もなく、また、マスメディアを利用して当時の受験者を集めても採算が合わない。さらに、古くなった情報の価値などなく、誰もそれを探ろうとはしない。

(4)申立人が受験した際に「適性検査」を受けたが、この検査の目的が明確でない以上、実施機関の言う「社会通念上本人のためにならない」とする説明は具体的でなく、どのように本人のためにならないのか理解できない。
 本検査が受験者の性格の何を評価しているのか、どのような人物(例えば医師)が評価しているのかが明らかにされなければ、「社会通念上本人のためにならない」とする説明は、何ら根拠がない。
 本検査は、精神疾患の有無の検査ではなく、教員採用のための適性検査であり、教師に向いているか否かを判定しているものと推測されるが、この程度の判定結果は、本人が知っても差し障りがなく、かえって、教師に向いていないという結果がわかれば進路変更などの重要な手がかりになり、本人にとってよい結果をもたらすことになる。

5 審査会の判断

(1)本件対象公文書の内容について

 本件対象公文書は、平成4年度に実施した平成5年度第1次選考試験の合否判定資料であり、受験番号、氏名、性別、年齢、生年月日、本拠地、職業、大学・学科、卒業年月、学歴、所有免許状、大学・高校クラブ成績、専門・実技の各素点及び合計点、適性検査の評定、一次試験の判定・合否を記載した文書であることが認められる。

(2)基本的な考え方について

 条例の制定目的は、県民の公文書の開示を求める権利を保障するとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進するというものである。条例は、原則公開を原則としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示規定を定めている。
 しかし、条例第9条は、原則非開示とされる個人情報について、本人から開示請求があった場合には、当該公文書の本人に係る部分を原則開示しなければならないと定めている。当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。

(3)本件審査の判断基準について

 申立人は、実施機関が部分開示とした理由について、具体性がないこと、例外的・間接的な事情を取り上げていることの不当性を主張しているが、こうした点を判断するに当たり、本件対象公文書を開示した場合の行政上の支障について、将来の予測の範囲をどこまでとすることが適切か、これを判断することが重要と考える。
 当審査会としては、将来の予測を判断する範囲として、当該申立人のみへの開示による支障のみとらえず、第1次試験受験者の多くが開示請求する可能性をも含めて考え、その場合において予測され得る支障について判断することが適当であると考え、以下実施機関の主張する支障についてその妥当性を判断する。

(4)条例第9条第1項第1号(条例第8条第5号(行政運営情報))の該当性の有無について

 条例は、第8条第5号において、「検査、監査、取締り、入札、試験、交渉、渉外、爭訟等の事務事業に関する情報であって、開示することにより、当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがある」情報について、非開示とすることを定めている。 本号は、事務事業の内容及び性質からみて、開示をすることにより当該事務事業の目的を失い、又は公正若しくは適正な執行ができなくなるおそれのある情報は非開示とすることを定めたものである。
 また、反復的又は継続的な事務事業については、当該事務事業執行後であっても、当該情報を開示することにより、将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなるもの又は将来の同種の事務事業の公正若しくは適正な執行に著しい支障を及ぼすものがあるので、これらに係る情報が記録されている公文書も非開示とすることとするものである。
 そこで、本件対象公文書を開示した場合、当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあるかどうかについて判断する。
 まず、教員の採用はその職務の特殊性から、教育公務員特例法第13条による選考によること、そしてその選考は任命権者である実施機関の教育長が行うことについては疑義のないところである。
 したがって、どのような選考基準を設けて選考するかは、各都道府県の実情・特殊性に応じた教育長の裁量権に属することがらであるが、その選考制度が公正・適正に運用されなければならないことは言うまでもないことである。
 実施機関は、本件対象公文書の専門試験結果、適性検査結果の部分を非開示とした理由についていくつかの点を主張しているが、当審査会では実施機関の次のような主張について判断する。
 すなわち、実施機関は本件対象公文書を開示することにより、第1に受験者が個々の試験結果と総合選考の結果とを短絡的に結び付けて考え、専門試験が高得点なのに不合格になるとか、適性検査の評価が低くても合格するといった選考試験に対する不信・不満を抱き、ひいては県民の教育への信頼低下を招き、当該選考事務に著しい支障を生じるおそれがあること、第2に専門試験及び適性検査結果を一定人数分集めて分析すれば、満点点数や評価方法・選考基準が推測される可能性があり、この結果、受験者が評価方法・配点・選考基準に誤った認識を持ち、扱いが軽いと思われる試験・検査は軽視するなどの弊害が生じ、適正な選考事務の執行に著しい支障を生じるおそれがあることを主張しているため、これらの点について以下に判断する。
 まず、第1の点について判断するに、選考試験制度は、受験者の真の姿を見るために各種の試験・検査を受験者に課し、かつ、学生時代の成績証明書等の資料の提出を求め、これらを総合的に評価・審査することにより、受験者が持っているいろいろな資質・能力の評価・判断を行うものである。
 この選考試験制度の本来の意味が十分に理解されているとは言いがたい現在の社会状況の中で、本件対象公文書が開示されると、個々の試験結果と合否結果が短絡的に結び付けられて解釈され、このことが受験者に不信・不満を抱かせることは予想されるところであるが、これは選考試験制度が本来持っている特性に起因することである。
 本県においては、第1次選考試験は得点化される試験項目と得点化になじまない試験項目を併用しており、実施機関はこれら試験項目を個々に評価するだけではなく成績証明書等の資料も含めて総合的に評価し、合否を判定していることが認められる。
得点化になじまない試験項目は、その評価に当たって、実施機関のある種の裁量性が入ることは否定できず、また、その評価に至る過程及び結果を逐一個々の受験者に納得のいく説明をすることは現実問題として困難であると思われる。
 このように、画一的ではなく総合的な評価を行なっている実態を考慮すると、一部の試験結果といえどもこれを開示すると、教育長の裁量権に係る評価・選考基準等に対して様々な不平・不満が向けられることにより、本県にとって望ましい教員を採用するという選考業務の適正な執行に著しい支障を生ずることが認められる。
 次に、第2の点について判断するに、試験結果を一定人数分集めることは通常考えにくいことではあるが、受験者の多くが開示請求することの可能性は否定できないところであり、特に、受験者が少数の教科・科目にあっては一定人数分の試験結果を集めることは比較的容易になし得ると認められる。そして、一定人数分の試験結果を比較・分析することにより、試験・検査の満点点数や評価方法が推測され、この結果、受験者の中には、この推測に基づいて扱いが軽いと思われる試験・検査を軽視したり、意図的な受験態度をとるなどの弊害が生じ、受験者のありのままの姿を様々な角度から把握し、受験者の教員としての資質・能力を見極めようとする選考試験制度本来の目的を達成することに支障を生じることが予測される。
 また、本件対象公文書が開示されることによって、同一の試験問題を使用する校種・教科間での専門試験素点と合否結果の差異が比較され、これらの差異が教科間の合格難易度の差あるいは教員の質の差としてとらえられる可能性もあるなど、様々な支障が生じることが予想される。
 以上のことから、本件対象公文書の開示は、当該又は将来の同種の事務事業の公正又は適正な執行に著しい支障を生ずるおそれがあると考えられる。

(5)条例第9条第1項第2号(本人評価等情報)の該当性について

 条例は、第9条第1項本文において、条例第8条第1号に該当する情報が記録されている公文書について、本人から開示請求があった場合には、当該公文書の本人に係る部分を開示しなければならないと定めている。
 しかし、本条本文但し書において、本条第1項第1号又は同第2号のいずれかに該当するときは、当該該当する部分を開示しないことができると定めており、本号において「個人の指導、診断、判定、評価等に関する情報であって、本人に知らせないことが正当と認められる」情報について非開示とすることを定めている。
 本号は、公文書開示制度において、開示してはならない個人のプライバシ-に関する情報を本人に限り、開示請求することができるとの原則の例外として社会通念上、本人に知らせないことが正当と認められるものについては、非開示とすることを定めたものである。
 そこで、本件対象公文書の適性検査結果の部分が、社会通念上、本人に知らせないことが正当と認められる情報かどうかについて判断する。
 実施機関は、本件対象公文書の適性検査結果の部分を非開示とした理由については、前述の条例第8条第5号に該当する理由の外、本号に該当する理由として、本検査結果は本人の人格に関する情報であり、その評価は時には本人の自尊心を傷つけるおそれもあり、本人情報といえども開示することは本人のためにならないと主張しているので、この点について以下判断する。
 適性検査は、多くの自治体で採用されており、かつ、長年の経験の中で裏打ちされて一定の信頼を得た性格検査の一種であり、教師としての適性を見るひとつの資料になっており、多数の受験者の中から合格者を選定しなければならないという試験業務の実務上採用されているものである。
 検査結果は、定型・非定型の区分が類型化されており、この判定に当たっては判定者の個人的主観に傾かないよう複数の者が評価を行っているところであり、客観性の確保のため最大限の努力が図られていることが認められる。 この検査結果は、本人の人格に関する情報であり、多数の検査結果の中にはプラス面の評価ばかりでなく、マイナス面での評価もなされており、このため公開することによる本人への影響を考慮することも止むを得ないと判断される。
 また、一方では、本検査は教師としての適性を判断するひとつの資料でもあることから、受験者の中にはこの結果を将来の進路変更などの手ががりにする場合があり得ることも否定できず、その意味において本人のためになる情報であるとも考えられる。
 このようなことを考慮すると、本検査結果の開示・非開示については、本号の適用が妥当かどうかは一概に言えない。

(注) もっとも既に述べたように、本件検査結果も含めて本件対象公文書の非開示部分は、条例第8条第5号に該当するので、非公開は妥当との結論に変わりはない。

(6)結論

 総合して判断すると、本件対象公文書について、実施機関が行った部分開示決定処分は妥当である。

6 審査会の処理経過

 当審査会の処理経過は、別紙のとおりである。
 

7 実施機関に対する要望

 当審査会の結論は以上のとおりであるが、教員の採用が競争試験ではなく選考試験により行われていることから、受験者においては現行の選考試験の選考方法は複雑で理解しにくい点が多いこと、また、この点ついて実施機関の説明が必ずしも十分行われているとは言い難いことから、この選考方法がいかに複雑であろうとも、受験者に対してこの選考方法の公正さについて、更に認識させることが重要である。
 このため、実施機関は今後、選考試験における「選考」の意味や方法について可能な限り具体的に説明をするとともに、少しでも選考結果の開示する範囲を拡大するよう努力されたい。

別紙


審査会の処理経過

年月日 処理内容
4.12. 1 ・諮問書受理
4.12. 3 ・実施機関(教職員課)に対して部分開示理由説明書の提出要求
5. 1. 7 ・部分開示理由説明書受理
5. 1.12 ・異議申立人に対して部分開示理由説明書(写)の送付及び意見書の提出要求
5. 1.18 ・異議申立人より、口頭意見陳述申出書受理
5. 2. 1 ・異議申立人より、意見書受理
5.11.12
(第33回審査会)
・書面審理
6. 1.31
(第34回審査会)
・実施機関からの部分開示理由説明等の聴取
・異議申立人からの口頭意見陳述の聴取
・審議
6. 3. 1
(第35回審査会)
・実施機関からの部分開示理由説明等の再聴取
・審議
6. 3.29
(第36回審査会)
・審議
6. 5.16
(第37回審査会)
・審議
6. 5.26 ・答申

三重県情報公開審査会員名簿

職名 氏名 備考
会長 武田 進 前三重大学学長
会長職務代理者 夏秋 幹 三重テレビ放送(株)代表取締役社長
委員 梅村郁子 松阪大学女子短期大学部教授
委員 今井 正彦 弁護士
委員 曽和 俊文 三重大学教授

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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