現在位置:
  1. トップページ >
  2. 県政・お知らせ情報 >
  3. 県政情報 >
  4. 情報公開・個人情報保護 >
  5. 三重県情報公開・個人情報保護審査会 >
  6. 答申 >
  7.  三重県情報公開審査会 答申第385号
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2.  総務部  >
  3. 情報公開課  >
  4.  情報公開班 
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第385号                             

答申

1 審査会の結論

 実施機関は本件異議申立ての対象となった公文書のうち、当審査会が非開示妥当と判断した部分を除き、開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成24年4月10日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の事業者の廃棄物処理法等に関する全ての文書」の公文書開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が、平成24年5月24日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。

3 本件対象公文書について

 本決定のうち、本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、特定の事業者の産業廃棄物処理業許可、産業廃棄物収集運搬業許可及び産業廃棄物処理施設設置許可(以下「許可等」という。)に係る別表左欄に対象公文書1から6として示す各書類である。

4 異議申立ての理由

 異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、次のとおりである。
(1)本件対象公文書1及び2(欠格照会文書)について
 廃棄物処理法に規定された企業役員の欠格要件については、法の公正な適用を担保すべき内容であり、当該役員が欠格要件に当てはまらないとして許可しているならば、非開示とすることは法制度上許されない。刑事処分について係争中の者あるいは再審請求等の途上で刑が未確定な者以外は公表して何ら差し支えないとするのが現行法制であり、たとえ前歴があるとしても刑の執行を終えた者は法の下の平等が保障されるから個人情報として秘匿することは却って疑念を生じさせ、いわれなき差別につながる。

(2)本件対象公文書3(自動車検査証)について
 許可等に係る保有車両の自動車検査証については、全面開示とされなければならない。なぜなら、当該許可車両が個人所有でなく法人所有とすれば秘匿する理由は根拠がないからである。

(3)本件対象公文書4(決算報告書又は財務諸表)について
 決算報告等の財務諸表については、金融業、建設業、宅建業、運輸業及び産廃業については、その企業存立の過程から公開が義務づけられている業種であり全面開示すべきである。

(4)本件対象公文書5(収支計画書)について
 収支計画書に計上されるがれき類の引受処理単価については、県土整備部が独自に見積書を徴収した上で、公共工事の積算資料として、各事業所毎に公表しており、当該法人についても公表されている。知事部局内で情報共有することが必要であるにもかかわらずそれを怠り、売上額も含めた情報を非開示としたことは怠慢のそしりを免れない。

(5)本件対象公文書6(納税証明書)について
 納税証明書については、過去の審査会答申第374号において開示すべきとの判断が出ているため、同様の判断を行い開示すべきである。

5 実施機関の説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により本決定が妥当というものである。
(1)本件対象公文書1及び2(欠格照会文書)について
 当該情報は、許可等の申請のあった法人及び法人の役員の犯罪履歴に関するものであり、県で当該許可の審査の一環として、関係機関である警察、検察、役員の本籍地市町村に任意で照会した結果であって、一般の手続きでは知り得ることができない情報である。そして、照会に対する回答については、欠格事由に該当がある場合はもちろん、該当がない場合であっても、交通違反など欠格要件に関係のない事項等参考情報が記載されている場合もあるため、この欠格照会に係る文書の全てが、開示することにより個人又は法人の正当な利益を害すると認められる。よって、当該情報を条例第7条第2号又は第3号に該当するものとして非開示とした。

(2)本件対象公文書3(自動車検査証)について
 自動車検査証において非開示としたのは、所有者が申請者とは異なる場合の当該車両の所有者に係る部分である。これを開示することにより所有者の資産に関する情報を明らかにしてしまうことになるため、条例第7条第3号に該当するものとして非開示とした。

(3)本件対象公文書4(決算報告書又は財務諸表)について
 決算報告書又は財務諸表においては、貸借対照表及び損益計算書の大科目に対応する部分を除いた金額部分を非開示としている。これらの情報は、法人の内部管理情報として条例第7条第3号に該当するものとして非開示とした。

(4)本件対象公文書5(収支計画書)について
 収支計画書において、非開示とした売上高内訳書に記載される廃棄物処理単価は、経理的基礎単価として法人全体の売り上げにつながる予定単価であり、法人経営に多大な影響を与えるものである。そのため、県土整備部で公開している廃棄物処理単価とは同一に判断することは適切ではないと判断して、条例第7条第3号に該当するものとして非開示とした。

(5)本件対象公文書6(納税証明書)について
 納税証明書については、当該法人が納めた法人税の納税額に関する情報であり、法人活動と密接に関連するものとして、開示することにより、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するものであり、条例第7条第3号に該当するとして非開示とした。

6 審査会の判断

(1) 基本的な考え方

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2)非開示部分について

 産業廃棄物の収集、運搬、処分を業として行おうとする者は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下「廃棄物処理法」という。)第14条の規定により、都道府県知事の許可を受けなければならず、許可に際しては許可申請書及び添付書類を提出することとされている。そして、許可を受けた事業範囲を変更しようとするときは、廃棄物処理法第14条の2の規定により変更の届出書及び添付書類を、許可の更新を申請するときは、更新の許可申請書及び添付書類を提出しなければならないとされている。
 また、産業廃棄物処理施設を設置する者は、廃棄物処理法第15条第1項の規定により、都道府県知事の許可を受けなければならず、許可に際しては産業廃棄物処理施設設置許可申請書及び添付書類を提出することとされるとともに、産業廃棄物処理施設の設置許可を受けた者が当該許可に係る事項のうちで軽微な変更等をしたときは、廃棄物処理法第15条の2の5第3項の規定により変更等届出書及び添付書類を提出することとされている。
 本件対象公文書は、特定の事業者(以下「本件法人」という。)から実施機関に対し提出された上記の許可等に係る申請書及び届出書、これらの書類の添付書類並びに実施機関の許可等の手続に係る書類である。
 実施機関は、別表左欄の各対象公文書について、同表中欄に示す部分を同表右欄の理由により非開示とする部分開示決定を行っている。
 異議申立人が開示すべきとしている、これらの非開示部分について、当審査会において本件対象公文書を見分した結果を踏まえ、以下、非開示情報該当性を検討する。

(3) 条例第7条第2号(個人情報)の意義について

 個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
 しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。

(4) 条例第7条第2号(個人情報)の該当性について

 本件対象公文書1(個人に対する欠格照会文書)について、実施機関は、本件法人等の役員に関する欠格事由の該当の有無を関係機関に照会しており、この照会に係る文書全てを、本号に該当するとして非開示としている。
 当審査会において対象公文書1を見分したところ、次の書類に分類することができる。

・欠格照会文書
・回答様式及び参考資料
・照会の対象者一覧
・照会に対する回答
以下、各書類の本号該当性について検討する。

 ア 欠格照会文書
 当該文書は、欠格事由の該当の有無を県警察本部(以下「県警」という。)又は照会対象者の本籍地の市町村長(以下「本籍地市町村長」という。)に対して行った照会の鑑文であり、照会先に関する情報、照会対象者に関する情報、照会内容及び照会の根拠条文等が記載されている。
 これらの記載内容のうち、照会対象者に関する情報である当該照会対象者の氏名、生年月日及び本籍地については、本号本文に該当することは明らかである。さらに、照会先が本籍地市町村長である場合は、これを開示することにより、照会対象者の本籍地を明らかにすることになるため、当該照会先は、本号本文に該当すると認められる。
 ただし、照会対象者の氏名については、許可等の申請を行った法人の役員の氏名であって商業登記簿により公示される情報であること及び許可等を行う法人の役員の全てが欠格事由の該当の有無を確認される対象となることから、当該情報は本号ただし書きイの「法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」に該当すると認められる。
 他方、照会対象者の氏名、生年月日、本籍地及び本籍地市町村長名以外の記載部分については、個人を識別できる情報は含まれておらず、本号本文には該当するとは認められない。
 したがって、照会対象者の生年月日及び本籍地並びに照会先が照会対象者の本籍地の市町村長である場合の当該照会先について、それぞれ非開示とした実施機関の判断は、妥当であるが、その他の部分については、非開示とする理由はないことから、当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

 イ 回答様式及び参考資料
 これらは、上記アの照会文書に添付された回答様式及び回答に際し参考とするために添付された資料である。
 しかし、これらの書類は、欠格照会を行う際に定型的に添付される書類であって、照会対象者に関する情報は含まれていないため、本号本文に該当するとは認められない。
 したがって、これらの書類全てを非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

 ウ 照会の対象者一覧
 欠格事由の該当の有無についての照会対象者のリストであって、当該リストに記載される項目は、照会対象者の氏名、生年月日、本籍、性別、照会先、照会文書番号、照会対象者の所属する法人名及び当該法人の本店所在地に対応する県の機関の管轄番号である。
 これらの項目のうち、照会文書番号を除く項目は、いずれも個人に関する情報であって、個人を識別し得る情報であり、本号本文に該当すると認められる。
 そして、照会対象者の生年月日、本籍、性別及び本籍地市町村長である照会先については、本号ただし書きのいずれにも該当するとは認められないことから、非開示が妥当である。
 しかし、照会対象者の氏名、照会対象者の所属する法人名及び当該法人の本店所在地に対応する県の機関の管轄番号については、許可等を行った法人及びその役員に関する情報であって、上記アで検討したとおり、商業登記簿により公にされ若しくは公にされ得る情報であること等の理由により、本号ただし書きイに該当すると認められるため、いずれも開示すべきである。
 また、上記以外の記載部分である照会文書番号、リストの表題、リストの項目名については、個人を識別し得る情報は含まれておらず、本号本文には該当するとは認められない。
 したがって、照会対象者の生年月日、本籍、性別及び照会先について、それぞれ非開示とした実施機関の判断は、妥当であるが、その他の部分については、非開示とする理由はないことから、当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

 エ 照会に対する回答
 当該文書は、実施機関が照会を行った欠格事由の該当の有無について、県警又は本籍地市町村長からなされた回答文書である。
 このうち、県警からの回答文書には回答者に係る情報(文書番号、回答者名、同公印)及び該当の有無についての回答が記載されている。
 しかし、当該回答は複数の法人の役員についての包括的な照会に対する回答であることから、当該文書に特定の個人が識別できる情報は記載されておらず、本号本文に該当するとは認められない。
 一方、本籍地市町村長からの回答文書には、本籍地市町村長に係る情報(文書番号、本籍地市町村長名、同公印)、照会対象者に係る情報(氏名、生年月日、本籍地)及び個々の照会対象者に対する欠格事由への該当の有無についての回答部分が含まれている。これらは、個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得るものとして、本号本文に該当すると認められる。
 このうち、本籍地市町村長に係る情報(文書番号、本籍地市町村長名、同公印)については、本号ただし書きのいずれにも該当するとは認められないことから、非開示が妥当である。
 しかし、照会対象者の氏名については、上記アで検討したとおり、登記簿上公にされている情報であること等の理由により、本号ただし書きイに該当すると認められるため、開示すべきである。
 また、個々の照会対象者に対する欠格事由への該当の有無の本籍地市町村長からの回答部分について、異議申立人は、仮に欠格事由に該当した場合は許可等がなされないはずであり、許可等がされている時点で欠格事由に該当しないことは明らかであるから該当の有無は開示するべきであると主張している。他方、実施機関は、本籍地市町村長からの回答文書は、実施機関が作成した回答様式に直接記入するものであり、本籍地市町村長によっては欠格事由とは関係のない刑罰等も記載される場合があるため、当該部分を全て非開示にしたと説明している。
 確かに、許可等の可否により欠格事由への該当の有無も推測できるため、異議申立人の上記主張も理解できなくはない。しかし、定型様式への回答という性質上、実施機関の説明するように、当該部分に欠格事由の該当の有無以外の情報も記載されることは十分に想定されるため、そうした記載があった場合には、その記載部分のみを非開示としたとしても、当該個人に関して不利益な情報が記載されていることが推測され、結果として、対象となる個人の権利利益を害するおそれが生じることとなる。そのため、本籍地市町村長からの回答部分については、一体として個人識別情報であると認められ、かつ本号ただし書きのいずれにも該当するとは認められない。
 したがって、本籍地市町村長からの回答文書における本籍地市町村長に係る情報(文書番号、本籍地市町村長名、同公印)、照会対象者の生年月日及び本籍地、並びに個々の照会対象者に対する欠格事由への該当の有無についての回答部分を、それぞれ非開示とした実施機関の判断は、妥当であるが、県警からの回答文書を含むその他の部分については、非開示とする理由はないことから、当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

(5) 条例第7条第3号(法人情報)の意義について

 本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。
 しかしながら、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは不当な事業活動によって生ずる影響から県民等の生活又は環境を保護するため公にすることが必要であると認められる情報及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書により、開示が義務づけられることになる。

(6) 条例第7条第3号(法人情報)の該当性について

 ア 本件対象公文書2(法人に対する欠格照会文書)について
 実施機関は、法人の欠格事由の該当の有無についても地方検察庁に照会を行っており、照会文書、照会の対象法人の一覧、照会に対する回答文書の全てを本号の法人情報に該当するとして非開示としている。
 実施機関が非開示としたこれらの情報のうち、照会に対する回答部分については、本件法人が欠格事由に該当するかどうかが記載された部分であり、許可等の事実があれば、本件法人が欠格事由には該当しなかったことが推測可能であるとも考えられる。しかしながら、(4)エで検討した本籍地市町村長からの回答と同様に、地方検察庁からの回答についても、実施機関が送付した定型の回答様式への回答であり、実施機関によれば、場合によっては欠格事由には該当しない地方税法違反などの事実も記載されることがあるとのことである。このため、こうした記載があった場合には、当該記載部分のみを非開示としたとしても、当該法人の社会的評価に密接する情報が記載されていることが推測され、結果として、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害することとなる。よって、当該回答部分については、本号に該当すると認められる。
 他方、本件対象公文書2に記載される照会の対象法人の名称、本店所在地、本店所在地に対応する県の機関の管轄番号については、法人に関する情報であるが、照会の対象法人は許可等の名宛人である法人に他ならないことから、これらの情報は、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するものとは認められない。
 また、本件対象公文書2のその他の部分についても、法人に関する情報とは認められず本号には該当しないことは明らかであり、いずれも開示されるべきである。
 したがって、地方検察庁からの回答文書における本件法人の欠格事由への該当の有無に関する回答部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当であるが、その他の部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

 イ 本件対象公文書3(自動車検査証)について
 本件対象公文書3は、本件法人が産業廃棄物処理業を営む上で、運搬施設として使用する車両に関する書類として実施機関に提出したものである。
 実施機関は、本件法人と当該車両の所有者が異なるとして、その所有者に係る部分及び所有者を特定することが可能な部分(車台番号、二次元バーコード)を、当該所有者にとっての資産情報であるとして非開示としたと説明している。
 しかしながら、当該情報は、実施機関の主張するように所有者の資産情報ではあるが、単に一部の車両の所有状況に過ぎず、これを開示することにより当該所有者の競争上の地位その他正当な利益を害するものとまでは認められない。
 したがって、本件対象公文書3の当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

 ウ 本件対象公文書4(財務諸表又は決算報告書)について
 本件対象公文書4を構成する各書類のうち、実施機関がその一部を非開示としたのは、貸借対照表及び損益計算書の大科目を除く各項目に対応する金額部分、販売費・一般管理費の合計欄を除く各項目に対応する金額部分、(製造)原価報告書の各項目に対応する金額部分であることが認められる。
 貸借対照表の非開示とされた部分には、各決算期において本件法人が保有する資産と負債の状況が詳細に記載されている。これらの記載内容は本件法人の経理、財産に関する事業活動を行う上での内部管理に属する情報であり、また、各項目を分析することで、本件法人の収益力の測定も可能になる情報である。
 損益計算書の非開示とされた部分には、各事業年度に発生した収益とそれにかかる費用の状況が詳細に記載されており、また、販売費・一般管理費には損益計算書の一科目である「販売費及び一般管理費」よりもさらに詳細な内容が、(製造)原価報告書には同じく損益計算書の一科目である「当期製品製造原価」のさらに詳細な内容がそれぞれ記載されている。
 これらの記載内容は、各事業年度の成果が具体的に明らかになる情報であり、また、企業会計において最も重視される法人の経理、財産に関する事業活動を行う上での内部管理に属する情報である。よって、これらの情報を分析することによって、事業経営の健全性、事業経営効率、債務返済能力等、本件法人の経営状況をかなり明確に把握することが可能になると認められる。
 このような情報は、一般的には、専ら法人の内部管理情報として保護されるべきものと考えられる。この点、異議申立人は、産廃業については、その企業存立の過程から公開が義務づけられている業種であり全面開示すべきであると主張している。しかし、廃棄物処理法上は、当該情報に関し、閲覧等の公開制度が規定されている訳ではなく、異議申立人の主張するような事実は認められない。
 そして、これらの情報は、本件法人について会社法の規定に基づき義務づけられる決算公告においても明らかにされるものではなく、これらの内部管理情報を公にすることについては、本件法人が他の事業者等と産業廃棄物処理業に係る競争を行う地位にあることから、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
 したがって、本件対象公文書4の当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当である。

 エ 本件対象公文書5(収支計画書)について
 本件対象公文書5は、本件法人の経理的基礎を確認するための資料として提出されるものであり、実施機関が非開示としたのは、「今後5事業年度の収支計画書(以下「収支計画書」という。)」における売上高、経常利益、資本金等の各科目名に対応する各金額及び合計金額部分、「今後5事業年度の収支計画の売上高内訳(以下「売上高内訳」という。)」における単価、売上額に対応する各金額及び合計金額部分であることが認められる。
 収支計画書の非開示とされた部分には、今後5事業年度における収益とそれにかかる費用の予測ないしは目標金額が記載されている。これらの記載内容は、法人の収益力の予測が可能となる情報であり、また、企業会計においてもっとも重視される法人の経理、財産に関する事業活動を行う上での内部管理に属する情報である。
 また、売上高内訳の非開示とされた部分には、収支計画書における売上高の算出の積算根拠が記載されている。この点、異議申立人は、収支計画書において実施機関が非開示とした産業廃棄物収集運搬業の取扱い品目に対する単価について、県の公共工事積算資料として本件法人からも見積書を徴収した上で公開されているものであり、開示されるべきであると主張している。
 確かに、異議申立人の主張するように、実施機関においては、「建設廃棄物の再資源化施設及び受入料金」として、各事業者から受入料金を調査した上で工事積算資料としてとりまとめており、公文書開示請求がなされた場合には開示していることが確認できる。
 しかし、当該受入料金はあくまで実施機関が発注する公共工事の積算に使用する建設廃棄物の処理単価であり本件法人における実際の受入料金と一致する訳ではないこと、売上高内訳における単価は将来の計画上の単価であること、「建設廃棄物の再資源化施設及び受入料金」において開示される品目と売上高内訳における品目が一致する訳ではないことなどから、「建設廃棄物の再資源化施設及び受入料金」として開示されている事実をもって、売上高内訳の単価が公にされている情報であるとみなすことはできない。そして、本件においては、当該記載内容を明らかにすることで、収支計画書の一部分を明らかにしてしまうこととなる情報であることを踏まえると、当該記載内容は、法人の事業活動を行う上での内部管理に属する情報であると言わざるを得ない。
 よって、これらの情報を分析することで、本件法人の将来の事業経営の方針を把握し、一定の経営予測を行うことが可能になると認められる。
 このような情報は、一般的には、専ら法人の内部管理情報として保護されるべきものと考えられる。また、これらの情報は、本件法人に会社法の規定に基づき義務づけられる決算公告においても明らかにされるものではなく、これらの内部管理情報を公にすることについては、本件法人が他の事業者等と産業廃棄物処理業に係る競争を行う地位にあることから、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
 したがって、本件対象公文書5の当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当である。

 オ 本件対象公文書6(納税証明書)について
 本件対象公文書6は、国税通則法第123条の規定に基づき税務署長から交付された当該事業者の法人税に関する納税証明書(その1)であり、確定した税額並びにその納付した税額及び未納の税額、当該国税に係る法定納期限等を証明するものである。
 実施機関が非開示とした情報は、当該法人の税の区分や税額、その納付の状況等は財務状況に密接な関係を有する事項であり、当該法人の経営状況を推知することが可能となる性質を有する情報である。
 このような情報は、一般的には、専ら法人の内部管理情報として保護されるべきものと考えられる。また、これらの情報は、本件法人に会社法の規定に基づき義務づけられる決算公告においても明らかにされるものではなく、これらの内部管理情報を公にすることについては、本件法人が他の事業者等と産業廃棄物処理業に係る競争を行う地位にあることから、本件法人の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
 なお、異議申立人は、過去の当審査会における答申第374号と同様の判断をすべきであると主張している。しかしながら、同答申は、納税証明書の対象となる法人が有価証券報告書の提出会社であることから、同報告書により一定の財務、経営状況が公開されているという事情が認められる事案であったところ、本件法人については、そのような事情は認められないことから、答申第374号と同様の事例とみなすことはできず、異議申立人のかかる主張は受け入れられない。
 したがって、本件対象公文書6の納税状況や本税以外の課税状況を示す部分については、本号本文に該当するものであり、当該部分を非開示とした実施機関の判断は、妥当である。

(7)結論

 よって、主文のとおり答申する。

7 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

別表

対象公文書の種類及び内容

開示をしない部分 

開示をしない理由

【対象公文書1】

個人に対する欠格照会文書

全ての部分

条例第7条第2号

(個人情報)に該当  

【対象公文書2】

法人に対する欠格照会文書

全ての部分

条例第7条第3号 

(法人情報)に該当

【対象公文書3】

自動車検査証

車台番号、所有者・使用者の氏名

又は名称及び住所、使用の本拠の

位置、二次元バーコードの一部

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

【対象公文書4】

決算報告書又は財務諸表

 

 

・賃借対照表

 

大科目以外の項目に対応する金額

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

・損益計算書 大科目以外の項目に対応する金額

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

・販売費・一般管理費

合計欄を除く全ての項目に対応する 

金額

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

・(製造) 原価報告書 全ての項目に対応する金額

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

【対象公文書5】

収支計画書

   
・今後5事業年度の収支計画 全ての項目に対応する金額

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

・今後5事業年度の売上高の内訳 処理品目の単価、売上額

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

【対象公文書6】

納税証明書

納付すべき税額、納付済額、未納税

額、法定納期限等の各欄の記載部分

条例第7条第3号

(法人情報)に該当

別紙1

審査会の処理経過

年 月 日 処理内容
24.  6.26 ・諮問書の受理                                          
24.  6.27 ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼
24.  7.18 ・理由説明書の受理
24.  7.19

・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認

24.  9.21

・書面審理  
・異議申立人の口頭意見陳述
・実施機関の補足説明                       
・審議

     (平成24年度第5回B部会)

24. 10.26

・審議
・答申

(平成24年度第6回B部会)

 

三重県情報公開審査会委員

職名  氏名   役職等   
※会長

早川 忠宏  

三重弁護士会推薦弁護士          

会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
※会長職務代理者 丸山 康人 四日市看護医療大学副学長

委員     

岩﨑 恭彦

三重大学人文学部准教授

※委員 川村 隆子

名古屋学院大学経済学部准教授   

委員     竹添 敦子

三重短期大学教授

※委員  藤本 真理

三重大学人文学部准教授

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000031240