現在位置:
  1. トップページ >
  2. 県政・お知らせ情報 >
  3. 県政情報 >
  4. 情報公開・個人情報保護 >
  5. 三重県情報公開・個人情報保護審査会 >
  6. 答申 >
  7.  三重県情報公開審査会 答申第407号
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2.  総務部  >
  3. 情報公開課  >
  4.  情報公開班 
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第407号                               

答申

1 審査会の結論

 実施機関は本件審査請求に係る本件部分開示決定において非開示とした部分を取り消し、開示すべきである。

2 審査請求の趣旨

 審査請求の趣旨は、開示請求者が平成25年7月4日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「特定の交通事故2件について報道発表した事実について分かる文書」についての開示請求に対し、三重県警察本部長(以下「実施機関」という。)が平成25年7月18日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを、実施機関の上級庁である三重県公安委員会(以下「諮問庁」という。)に求めるというものである。

3 本件対象公文書について

 本件審査請求の対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、特定の交通死亡事故2件に関して実施機関が三重県警記者クラブに対して提供した2件の報道発表資料である。

4 審査請求の理由

 審査請求書及び意見陳述における審査請求人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
 本件開示請求は、特定の2件の交通事故について報道発表した事実を明らかにするよう求めたものであるが、対象公文書である「報道発表資料」の記載内容は県警記者クラブ加入の報道各社に対して公表されたものであり、実際に新聞報道がなされていることから、これらの情報は条例第7条第2号ただし書イに該当し、非開示処分とすることは許されない。

5 諮問庁の説明要旨

 諮問庁の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。

(1)条例第3条について

 条例第3条は、実施機関の責務として、「実施機関は、県民の公文書の開示を請求する権利が十分に尊重されるようにこの条例を解釈し、運用するものとする。この場合において、実施機関は、個人のプライバシーに関する情報がみだりに公にされることがないよう最大限の配慮をしなければならない。」と定めており、本条例の基本的な考え方を定めたものである。

(2)報道発表資料について

 三重県警察の広報に関する訓令(平成14年6月20日県本部訓令第6号)第13条第1項は、「報道機関に対する広報については、相互の理解と信頼に立ってその推進を図るように努めなければならない。また、発表に当たっては、人権尊重、プライバシーの保護等についての配意と捜査上の秘密保持に留意しなければならない。」と規定している。

(3)条例第7条第2号について

 条例第7条第2号は、個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るものについては、個人情報である旨規定している。なお、本件対象公文書において非開示とした情報は、個人の住所、氏名及び年齢であり、個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るものであることに疑いの余地はないものである。
 通常、報道を通じて行う警察広報は、被疑事件、事故等の発生による場合が多く、他の行政機関が行う広報とは異なり、被害者の情報を含むセンシティブ(機微)な情報であるといえる。本件対象公文書は、交通事故で死亡した個人及び事故当事者の人定事項並びに事故概要が記載されたものであり、被害者等の「忘れられる権利」にも配意しなければならないため、継続して行政機関からこのような個人情報を提供することはできない。
 さらに、近年、犯罪及び交通事故の被害者支援の重要性は益々高まるところであり、被害者の二次的被害を少しでも軽減する被害者支援の観点からも、継続して実施機関から個人情報を提供することは、二次的被害の拡大につながりかねないため、個人情報を開示することは妥当でない。

(4)条例第7条第2号ただし書イについて

 条例第7条第2号ただし書イにおいて、「法令若しくは他の条例の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」については、条例第7条第2号の規定から除くとされている。
 本件対象公文書は、交通死亡事故が発生したことにより、事故当事者、事案概要等が記載されたものであるが、事故当事者に係る情報は、自動車運転過失致死傷罪等の被疑者又は被害者に関する情報であるともいえるものである。
 そして、本件対象公文書が、報道機関に提供され、これを基に新聞報道等がなされているが、警察が一旦公にした被疑者、被害者等に関する情報について、その後いつまで慣行公情報に該当すると捉えるべきかが問題となるが、そもそも論として、被害者等は、本来社会的制裁を受けるような立場にはなく、その意味では被疑者と比較にならないほど個人情報保護上配慮が必要であると解される。
 また、被疑者の場合であっても、行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律第45条第1項では、前科、逮捕歴等の高度のプライバシーに係る情報については、開示請求の対象とすると、就職の際に本人の前科等の個人情報ファイルの開示請求結果を提出させる等の方法で前科等を審査するために用いられるおそれがあり、本人の社会復帰を妨げる等の弊害が生ずる可能性があるとして、第4章(開示、訂正及び利用停止)の規定から適用除外としており、たとえ自己を本人とする保有個人情報の開示請求であっても開示されないものである。
 つまり、報道機関に対する広報は、あくまでも個々の事案ごとに検討を加え、公益上の必要がある時点において、必要最小限の範囲で行っているにすぎないものであって、慣行公情報と捉えること自体が妥当ではないと考える。仮に警察が公にした時点で慣行公情報であったとしても、警察において報道発表をするに至ったゆえんたる「発表すること等が公益上必要な場合」でなくなったと認められる時点を過ぎており、もはや慣行公情報たり得ないと考える。

(5)三重県個人情報保護条例との関係について

 三重県個人情報保護条例(平成14年三重県条例第1号。以下「保護条例」という。)第8条第1項は、同項第1号から第7号のいずれかに該当する場合を除き、「保護条例の実施機関は、個人情報取扱事務の目的以外の目的のために、個人情報を当該実施機関の内部で利用し、又は当該実施機関以外のものに提供してはならない。」として個人情報の目的外利用及び提供の制限を規定している。
 このため、報道機関に対する広報は、保護条例第8条第1項第7号の規定により、三重県個人情報保護審査会に諮問をして、平成18年2月7日付け答申第18号で「報道機関への発表や報道機関からの取材、要請に応じるため、個人情報を当該事務の目的以外の目的に提供する場合。ただし、県民等に知らせる公益上の必要性があり、かつ、本人の権利利益を不当に侵害するおそれがないと認められる場合に限る。」という類型については、目的外利用及び提供の制限の原則の適用を除外することが適当であるとの答申を得ている。
 つまり、報道機関に対する広報は、当該事務の目的以外の目的で提供がなされるものであり、その取扱いに関しては、厳格な要件が定められている。
 本件対象公文書は、交通死亡事故発生当時においては、報道機関に対する広報が公益上必要であると判断され、作成されたものであるが、本件開示請求がなされた時点においては、既に公益上の必要性は認められなかったものである。

(6)実施機関の判断

 以上のことから、実施機関が条例第7条第2号の規定により個人の住所、氏名及び年齢を非開示とした判断は、妥当なものであると認められる。

6 審査会の判断

(1)基本的な考え方

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2)本件対象公文書及び非開示部分について

 本件対象公文書は、特定の交通死亡事故2件に関して実施機関が三重県警記者クラブに対して提供した2件の報道発表資料である。
 そして、実施機関が本決定において非開示とした情報(以下「本件非開示部分」という。)は、交通死亡事故の当事者の住所の一部(行政区又は町・字に係る部分)、氏名及び年齢である。そこで、審査請求人が開示すべきとしている、本件非開示部分について、当審査会において本件対象公文書を見分した結果を踏まえ、以下、非開示情報該当性を検討する。

(3)条例第7条第2号(個人情報)の意義について

 個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
 しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。

(4)本件条例第7条第2号(個人情報)の該当性について

 本件非開示部分は、特定の個人の住所の一部、氏名及び年齢であるが、これらの情報は、個人に関する情報であって、直接あるいは他の情報と組み合わせることにより、特定の個人が識別され得る情報であり、本号本文に該当することは明らかである。
 そこで、次に当該情報が本号ただし書に該当するかどうかを検討する。

 ア 本号ただし書イの趣旨

 本号ただし書イは、本号本文で非開示情報とされている個人識別情報について、法令等の規定により又は慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報については非開示から除くものとしている。その趣旨は、個人識別情報であっても、一般に公にされ、又は公にすることが予定されている情報であれば、非開示とすることにより保護すべき利益が存するとは考えがたいことや、たとえ個人のプライバシーを侵害する可能性のある情報が含まれたとしても受忍限度内にとどまるものと考えられることによるものと解される。
 そして、本号ただし書イに定める「公にされている情報」とは、現在、何人も知り得る状態に置かれている情報をいい、「公にすることが予定されている情報」とは、請求時点では公にされていないが、将来、公にすることが予定されている情報又は当該情報の性質上通例公にされるものを意味すると解するのが相当である。

 イ 本件報道発表資料の取扱い及び報道等の状況

 諮問庁によれば、実施機関が本件対象公文書を県警記者クラブに報道発表を行ったのは、交通死亡事故という、報道機関に対する広報が公益上必要であると判断される事案であったためであるとのことである。そして、当該報道発表は、県警記者クラブに加盟する報道機関に対してのみ行ったものであり、実際に本件報道発表内容が広く一般に公表されているという事実は確認できない。
 一方、本件報道発表による報道機関の報道状況については、新聞1紙が本件非開示部分の全ての情報を報道し、同5紙が本件非開示部分の一部の情報を報道していることが認められる。また、上記5紙のうち1紙については、同様の情報が当該新聞社のウェブサイト上においても閲覧可能な状態であることが認められる。

 ウ 本件非開示部分は本号ただし書イに該当するか

 以上から本件についてみるに、諮問庁は、本号ただし書イの適用に関し、事故当事者に係る情報は個人情報保護の観点から配慮が必要であり、実施機関において報道発表をするに至ったゆえんたる「発表すること等が公益上必要な場合」でなくなったと認められる時点を過ぎていることから、もはや本号ただし書イには該当しない旨主張している。
 確かに、諮問庁がその主張において引用する条例第3条及び三重県警察の広報に関する訓令の趣旨からすれば、本件非開示部分は交通死亡事故の当事者情報という個人情報の中でも特にプライバシー保護のための配慮が必要であるとする主張も理解できなくはない。
 しかしながら、実施機関が報道発表を行った以上は、その発表内容がどの程度まで報道されるかについて各報道機関の判断に委ねられるという前提を考慮しても、報道発表資料の性質上、当該発表内容の報道がなされ、広く一般への周知に至る可能性があることは否定し得ない。
 さらに、過去の新聞記事については三重県立図書館等の公立図書館において県内における主要な新聞紙を過去10年以上にわたって所蔵し利用者に対し閲覧に供していること、本件交通死亡事故については事故発生日が特定されており新聞報道日を推測することが可能であること、さらに、事故発生日から開示請求日まで1ヶ月程度の期間しか経過していないこと等を踏まえれば、本件非開示部分が何人も知り得る状態にはないとはいえず、当該情報を開示することについては、今なお受忍限度内にとどまるものというべきである。
 したがって、本件非開示部分は、本号ただし書イの「慣行として公にされ、又は公にすることが予定されている情報」であると認められ、当該情報を非開示とした実施機関の判断は、妥当ではない。

(5)諮問庁のその他の主張について

 諮問庁は、報道機関に対する広報は、三重県個人情報保護審査会の答申に基づき、公益上の必要性など厳格な要件の下、当該事務の目的以外の目的で提供がなされるものであり、本件開示請求がなされた時点においては、既に公益上の必要性は認められなかったものであるから、開示することはできない旨主張している。
 しかし、当該答申は、報道機関への発表等に対して、個人情報の目的外利用及び提供の制限の原則の適用を除外することに関しての答申である。そもそも、条例による公文書開示請求に対して開示を行う場合については、保護条例第8条第1項第2号により個人情報の利用及び提供の制限から除外されていることが明白である。
 したがって、当該個人情報の非開示情報該当性の判断は、あくまで条例に基づき行われるべきであって、条例に基づく判断は上記のとおりであることからすれば、かかる諮問庁の主張は受け入れることができない。

(6)結論

 よって、主文のとおり答申する。 

7 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

_別紙1

審査会の処理経過

年 月 日 処理内容
25. 8.12

・諮問書の受理                           

25. 8.13 ・諮問庁に対して理由説明書の提出依頼  
25. 9. 3 ・理由説明書の受理
25. 9. 4

・審査請求人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認

25. 9.20

・書面審理  
・審査請求人の口頭意見陳述
・諮問庁の補足説明                       
・審議                                                                      (平成25年度第6回B部会)

25.10.25

・審議
・答申                                                                                                                        (平成25年度第7回B部会)

 

三重県情報公開審査会委員

職名  氏名   役職等   
※会長

早川 忠宏  

三重弁護士会推薦弁護士          

会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
※会長職務代理者 丸山 康人 四日市看護医療大学学長

委員     

岩﨑 恭彦

三重大学人文学部准教授

※委員 川村 隆子

名古屋学院大学経済学部准教授   

委員 竹添 敦子

三重短期大学教授

※委員  

藤本 真理

三重大学人文学部准教授

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000031273