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情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第408号

答申

1 審査会の結論

 実施機関は本件異議申立ての対象となった公文書のうち、当審査会が非開示妥当と判断した部分を除き、開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成25年10月25日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った「最近の教職員の不祥事について、また、その後の処分について分かる全ての文書」についての開示請求に対し、三重県教育委員会(以下「実施機関」という。)が平成25年11月8日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。

3 本件対象公文書について

 本件異議申立ての対象となっている公文書は、体罰を原因として公立学校職員に対して行われた特定の懲戒処分に関する一連の公文書であって、別表1の「対象公文書」欄及び「細文書名」欄に記載したとおりである。

4 異議申立ての理由

 異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
 被害生徒・保護者の特定につながるとして非開示にされた部分は、個人情報の一部であって、個人情報以外の教育行政に係る大部分は、開示してこそ、今後の再発防止や教育現場での教訓、事後の改善策、研修等の論議を深め公教育の向上に資する。暴力の廃絶が人類の至上命題とするなら、教育がその役割を果たす唯一の手段であり、今回の部分開示決定は、従来の「組織の論理」の範疇を踏襲したもので、「開かれた教育」とか「地域で子育て」とかは単なる空虚妄言にすぎない。情報公開は、広く国民に理解を深め、物事、事案の真理を追求して方向性を進めていく最も効果的な手段であり、それを妨げることは人類の進歩を妨げ、歴史上何度となく繰り返された過ちを今又再現しようとするもので許せない。公開するとどんな弊害があるのか、具体的に例示することなく、一律非開示としたことは、特定秘密保護法同様「いつか来た道」への再来につながる「教育」の根幹を問われる課題である。個人の尊厳と教育理念、公教育の資質の向上に資するという公益性との比較衡量の問題といえる。

5 実施機関の説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
 対象公文書の記載事項のうち、被処分職員の氏名、職歴、担当する職務内容、勤務の状況、過去における懲戒処分の状況等については、公務員の職務に関する情報を含むが、公にすることにより当該職員の私生活上の権利利益を害するおそれがある情報であり、また、法令等又は慣行により公にされ又は公にすることが予定されている情報や、人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するために公にすることが必要な情報であるとは認められないため、条例第7条第2号(個人情報)により非開示が妥当である。
 また、所属する学校名、その校長名と校長印印影、当該校を所管する教育委員会名、教育長名、教育長印印影等については、公務員としての職務に関する情報であり、特に、所属する学校については、実施機関では平成14年度より原則公表としているところであり、本来であれば開示すべき情報ではあるが、これらを明らかにすることで、他の情報を参考にすることによって当該生徒個人が特定される可能性があるため、当該生徒の個人の権利利益を侵害するおそれが大きいものであり、条例第7条第2号(個人情報)により非開示とすることが妥当である。
 なお、被害生徒の氏名、被害生徒の保護者の発言・心情等に関する記述、被害生徒及びその保護者の特定に繋がる情報や関連する情報及び被処分職員の生年月日、現住所、家族状況等については、個人に関する情報であって特定の個人が識別され得るものであり、また、法令等又は慣行により公にされ又は公にすることが予定されている情報や、人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するために公にすることが必要な情報であるとは認められない。
 上記以外で、「職員の規律違反の措置に係る合同会議 議事録」、「始末書」、「教育委員会職員懲戒審査委員会議事録」、「懲戒申立書」、「規律違反報告書」、「身上調査書」、「聴き取り」において非開示とした情報については、懲戒処分の詳細な量定判断とその内部的な審査の過程に係る情報であり、条例第7条第6号ニにおいて非開示情報として規定されている「人事管理に係る事務」に関する情報に該当する。特に懲戒処分については、個々の事案を詳細に検討し、非違行為の動機や対応、結果の程度、故意又は過失の有無やその程度、職責、社会に与えた影響、過去の非違行為歴等を総合的に考慮して量定を決定しているが、これらの情報が公になった場合、将来同種の事務を進める中で、当事者や関係者に対して誤解や予断を与える可能性がある。また、調査の過程で行った聴き取り調査については、非公開を前提として行っているものであり、それが公開された場合、関係者からの以後の協力が得られにくくなる可能性がある。さらに、「始末書」については、これが公開されると、今後の同種の事案において、内容を模倣され、「始末書」が形式化してしまう可能性がある。したがって、これらの情報は、公にすることで、今後、当事者や関係者に誤解や予断を与え、協力が得られなくなるおそれがあるものや、十分な意見や情報交換が制約され公正で適正な意思決定が妨げられるおそれがあるため、人事管理に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障をきたすおそれがある情報に該当する。

6 審査会の判断

(1)基本的な考え方

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれたりするなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2)本件対象公文書及び非開示部分について

 本件異議申立ての対象となっている公文書は、体罰を原因として公立学校職員に対して行われた特定の懲戒処分に関する一連の公文書であって、その詳細は、別表1の「対象公文書」欄及び「細文書名」欄に示すとおりである。実施機関は、これらの対象公文書について、同表の「実施機関が非開示とした部分」欄に示す部分を非開示とする部分開示決定を行っている。これら実施機関が本決定において非開示とした情報は、多岐にわたるが、その内容により以下のとおり分類することができる。

(a) 被害生徒に関する情報

(a)-1被害生徒の氏名
(a)-2 被害生徒の住所、年齢及び生年月日
(a)-3 保護者の勤務先
(a)-4 被害生徒の所属する部活動の名称及び活動場所
(a)-5 被害生徒を診察した医師の氏名並びに医院の名称及び所在地
(a)-6 学校名並びに学校長の氏名及び印影
(a)-7 当該学校を所管する市町教育委員会の市町名称及び印影、教育長の氏名及び印影、教育委員会内の組織名並びに職名、文書番号の一部並びに聴き取りを行った場所
(a)-8 被害生徒及び保護者の発言、行動記録、心身の状況並びに評価内容

(b) 加害教員に関する情報

(b)-1 加害教員の氏名
(b)-2 加害教員の職務内容、職歴及び印影
(b)-3 加害教員の年齢、生年月日、本籍、現住所、生活の本拠地、学歴、家庭状況及び処分歴
(b)-4 始末書の内容

(c) 人事管理に関する情報

(c)-1 「職員の規律違反の措置に係る合同会議議事録」及び「懲戒審査委員会議事録」における意見、質問及び回答部分
(c)-2 懲戒申立書及び規律違反報告書における処分についての意見並びに身上調査書における「部内または社会の反響」欄の記述
(c)-3 始末書の内容((b)-4と同一)
(c)-4 聴き取り内容における質問の一部及び回答部分の全て

 実施機関は、これらの情報のうち(a)及び(b)の各情報については条例第7条第2号の個人情報に、(c)の各情報については同条第6号の事務事業情報に、それぞれ該当するとして非開示としている。
 そこで、以下において、これらの非開示部分について、当審査会において本件対象公文書を見分した結果を踏まえ、以下、非開示情報該当性を検討する。

(3)条例第7条第2号(個人情報)の意義について

 個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
 しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
 そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。

(4)条例第7条第2号(個人情報)の該当性について

 ア (a)被害生徒に関する情報

 実施機関が非開示としたこれらの情報のうち、(a)-1、(a)-2及び(a)-3の各情報については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報であり、本号本文に該当することは明らかである。
 一方で、(a)-4、(a)-5及び(a)-6の各情報については、個人に関する情報であるものの、それだけでは特定の個人が識別され得るものではない。しかしながら、実施機関は本決定において、被害生徒に関する情報として、学年及びクラス名までを開示しており、これらの情報を開示した場合、他の入手し得る情報と照合することにより、特定の個人が識別され得る可能性は否定できないため、当該情報についても本号本文に該当すると認められる。
 これら(a)-1から(a)-6までの各情報については、法令や慣行により公にされ又は公にされることを予定しているとは認められず、また、人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、これらの情報を公にすることが必要であるとも認められない。したがって、本号ただし書イ及びロのいずれにも該当せず、これらの情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

 次に、(a)-7の情報について検討する。実施機関は、通常であれば、本件学校を所管する市町教育委員会の名称又は市町名を明らかにしても、学校が特定されるわけではないが、一つの町に学校が一校しかない場合もあり、その場合は市町名等を明らかにすることで学校名を明らかにしてしまうため、一律市町名等が把握可能な情報を非開示にしたと説明している。
 この実施機関の説明については、首肯できる部分もあるものの、本事案に関しては、懲戒処分の原因行為たる体罰の発生時及び懲戒処分の公表時の2回にわたり、本事案についての情報とともに当該市町名等に関する情報が複数の新聞報道により明らかにされていることが確認できる。したがって、当該情報は本号本文に該当するとしても、本号ただし書イの「慣行により公にされた情報」に該当するものであり、これらの情報を非開示とした実施機関の判断は妥当ではない。

 続いて、(a)-8の情報について検討する。当該情報は、被害生徒及び保護者の発言、行動記録、心身の状況及び評価内容等の情報であり、それらが含まれる各公文書単位においては、その全体として、特定の個人を識別し得るものである。しかし、 (a)-1から(a)-6までの情報を非開示とする限りにおいては、(a)-8の個々の情報自体は情報単位で直接又は通常入手し得る他の情報と照合しても特定の個人を識別し得るとまではいえないものである。
 ところで、条例第9条第2項は、公文書に特定の個人を識別することができる情報が記録されている場合において、当該情報のうち、氏名等特定の個人を識別することができることとなる記述等の部分を除くことにより、公にしても、個人の権利利益が害されるおそれがないと認められるときは、当該部分を除いた部分を開示しなければならないと規定している。このことから、当該規定の反対解釈として、特定の個人が識別されない情報であっても、当該情報を公にすることにより、個人の権利利益を害するおそれがあると認められる情報については、個人識別情報の一部として非開示となり得るものと解される。
 そして、一般に、特定の個人の思いや信条、評価等を記載した情報については、個人の人格と密接に関係する情報であり、当該個人がその流通をコントロールすることが可能であるべきであり、本人の同意なしに第三者に流通させることは適切でなく、また、それらの情報の内容次第では、それが開示されることによってさらに本人の心身等に重大な悪影響を及ぼす可能性もあることから、これらの情報については、開示されることによって当該個人の権利利益を害するおそれのある情報であると考えるのが相当である。
 この点につき、(a)-8の情報は、被害生徒及び保護者の発言、行動記録、心身の状況及び評価内容に関して様々な情報が記載されたものであるが、特定の個人の思いや信条、評価等の記載と認められる部分もある一方、単なる事実等若しくは他で明らかとなっている情報の記載であって、特定の個人の思いや信条、評価等を記載した情報とまでは認められない部分も存する。前者については、まさに公にすることにより個人の権利利益が害されるおそれがあると認められる情報であるため、個人識別情報の一部として非開示とすべきであるが、後者については、公にしても、個人の権利利益を害するおそれは認め難く、条例第9条第2項により、開示すべきものであると認められる。
 したがって、当該情報のうち、別表2に掲げる情報以外の部分について非開示とした実施機関の判断については妥当であるが、別表2に掲げる情報については、本号には該当するとはいえず、当該情報を非開示とした実施機関の判断は妥当ではない。

 イ (b)加害教員に関する情報

 まず、(b)-1の情報から検討する。当該情報は、体罰事案に係る懲戒処分を受けた職員の氏名であり、特定の個人が識別され得る情報であることは明らかである。
 しかし、条例は本号本文において特定の個人が識別され得るものであっても、公務員の職務に関する情報は除外していることからすれば、懲戒処分の原因行為たる体罰行為は、生徒に対する教育指導等の過程、すなわち職員の職務の遂行の過程で発生したものであり、かかる情報は公務員等の職務に関する情報として基本的には開示すべきものといえる。
 他方で、当該情報は職員が懲戒処分を受けたことを示す情報でもあり、この公務員が懲戒処分を受けたという情報は、公務遂行等に関して非違行為があったことを示すにとどまらず、公務員の立場を離れた個人としての評価をも低下させる性質を有する情報というべきであるから、その氏名を開示することにより、当該公務員の私生活上の権利利益を害するおそれがあるといわざるを得ない。
 したがって、職員の氏名は、本号本文の非開示情報に該当し、また、本号ただし書のいずれの情報にも該当しないと判断せざるを得ず、当該情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

 次に、(b)-2の情報についてであるが、当該情報も本来なら公務員の職務の遂行に係る情報にほかならないことから、開示すべきものである。しかし、職員の具体的な職務内容や過去の公務員としての職歴は、他の情報と照合することにより、当該職員が誰であるかを識別し得るものであり、その結果(b)-1の情報を明らかにするおそれがあるため、(b)-1の情報と同様の判断とせざるを得ない。
 ただし、実施機関が非開示としたこれら情報のうち、当該職員が担当する教科名については、同内容が懲戒審査申立書等の複数の公文書にも記載され、これを実施機関は開示と判断していることが確認できる。このことから、既に担当する教科名が公にされている以上、当該情報を非開示とする意味はなく開示すべきである。
 したがって、当該情報のうち、担当する教科名を除く部分について非開示とした実施機関の判断は妥当であるが、担当する教科名を非開示とした判断は妥当ではない。

 続いて、(b)-3の情報について検討する。当該情報は職員に関する情報ではあるが、いずれも私事に関する側面が強い情報であって、公務員の職務の遂行に係る情報とはいえない。したがって、本号本文に該当し、本号ただし書のいずれにも該当せず、当該情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

 次に、(b)-4の情報について検討する。実施機関は、当該情報については職員に関する情報であるとともに、人事管理に関する情報でもあるとして、本号及び条例第7条第6号の両号に該当するとしているため、ここでは、本号該当性のみ判断することとする。
 (b)-4の情報は当該職員から実施機関に提出された始末書の内容であるが、始末書自体は(b)-1の情報である職員の氏名とともに構成された公文書であり、この始末書全体が一つの個人識別情報であると認められる。
 そのため、(b)-4の情報が条例第9条第2項により部分開示が可能かどうかを見るに、当該情報は、「単なる事実関係又は既に実施機関により公表された事実の記述部分」、「被害生徒の評価又は心身の状況についての記述部分」及び「加害教員の思いや反省、謝罪等を示す記述部分」に区別することができる。そして、これらの情報は、いずれも直接又は通常入手し得る他の情報と照合することにより特定の個人を識別し得る情報とまではいえないものである。
 しかし、「被害生徒の評価又は心身の状況についての記述部分」は、前記(a)-8の情報のうち非開示を相当とする部分と同視できるものであり、同様に開示すべきではないと考えられる。また、「加害教員の思いや反省、謝罪等を示す記述部分」について、個人の人格と密接に関係する情報であり、公にすることにより個人の権利利益が害されるおそれがあると認められる情報であるため、個人識別情報の一部として非開示とすべきものと考えられる。他方、「単なる事実関係又は既に実施機関により公表された事実の記述部分」については、これを公にしても、個人の権利利益を害するおそれは認め難く、本号本文には該当しない。
 したがって、当該情報のうち、別表3に掲げる情報以外の部分について非開示とした実施機関の判断については妥当であるが、別表3に掲げる情報については、本号に該当するとした実施機関の判断は妥当ではない。

(5) 条例第7条第6号(事務事業情報)の意義について

 本号は、県の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象にされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非公開とせざるを得ないので、その旨を規定している。
 なお、本規定は、実施機関の長に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の該当性を客観的に判断する必要があり、また、事務又は事業がその根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での「適正な遂行」といえるものであることが求められる。「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる抽象的な可能性ではなく、法的保護に値する程度の蓋然性が要求される。

(6)条例第7条第6号(事務事業情報)の該当性について

 実施機関が非開示とした(c)-1から(c)-4までの情報は、規律違反を行った職員に対する処分に際し、実施機関が行った調査から懲戒処分に至るまでの量定判断とその内部的な審査の過程に関する情報である。
 一般に、これらの情報が公になった場合、実施機関が主張するように、今後、当事者や関係者に誤解や予断を与えることにより、正確な事実の把握や公正で適正な意思決定が妨げられるおそれがあることなどから、人事管理に係る事務に関し、公正かつ円滑な人事の確保に支障を及ぼすおそれがあることは十分に想定できる。
 そして、(c)-1及び(c)-2の各情報は、処分の量定判断を行うための内部審査における情報そのものであり、これを明らかにすることで、当事者や関係者に誤解や予断を与えることは否定し得ず、本号に該当すると認められる。
 したがって、(c)-1及び(c)-2の各情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

 続いて、(c)-3の始末書の内容について検討する。実施機関は、当該情報について、これを明らかにすることにより、今後の同種事案における当事者が当該内容を模倣するなどし、結果として始末書の内容が形式化され、人事管理に係る事務に支障が生じるおそれがあると主張する。
 しかし、実施機関の主張するように、始末書の模倣や形式化の可能性があるとしても、懲戒処分の原因行為たる非違行為の態様は多岐多様に分かれること、懲戒処分は当事者に対する聴き取り調査等を含めて総合的にその量定判断がなされることなどからすれば、その模倣や形式化のおそれが直ちに人事管理に係る事務に支障を生じるものとまではいえない。
 したがって、(c)-3の情報が本号に該当するとは認め難く、前掲(3)イで判断したとおり、当該情報のうち、別表3に掲げる情報について非開示とした実施機関の判断は妥当ではない。

 最後に、(c)-4の聴き取り内容について検討する。実施機関は、聴き取り内容については、質問の一部を非開示としたほか、回答部分については、全ての部分を一律非開示としている。しかし、実施機関が非開示とした情報のうち、別表4に掲げる情報については、同内容が懲戒審査申立書等にも記載され、これらを実施機関は開示と判断し、または、前掲(4)において、当審査会が開示妥当と判断している。このことから、聴き取り内容としての当該情報を明らかにしたとしても、今後の同種の事案において聴き取り調査に協力が得られなくなるとはいえず、人事管理に係る事務に支障を生じるものとまでは認められない。
 したがって、 (c)-4の情報のうち別表4に掲げる情報以外の部分について非開示とした実施機関の判断は妥当であるが、別表4に掲げる情報について本号に該当するとした実施機関の判断は妥当ではない。

(7)結論

 よって、主文のとおり答申する。

7 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

 別表1

対象公文書 細文書名 実施機関が非開示とした部分
危機管理統括監報告
(平成25年9月2日)
 - 学校名及び被処分職員の氏名、担当部活動名及び部活動に関する記述、該当教育委員会の市町名、保護者の発言・意見・心情等に関する記述、被害生徒に関する情報
危機管理統括監報告
(平成25年9月10日)
 - 学校名、担当部活動名、該当教育委員会の市町名、被害生徒に関する情報
合同会議議事録について
(平成25年10月11日)
起案文 なし
職員の規律違反の措置に係る合同会議 議事録 学校名、保護者の発言・意見・心情に関する記述、意見・質問
懲戒申立について
(平成25年10月15日)
起案文 該当教育委員会の市町名
懲戒申立書 被害生徒に関する情報、保護者の発言・意見・心情に関する記述、「処分についての意見」中の「理由」の一部
略歴書 「所属」、「氏名」、「職歴」、「担当する職務内容及び勤務の状況」の一部、「生年月日」、「現住所」、「学歴」、「家族状況」、「過去における懲戒処分の状況」、「その他」
職員の懲戒について(内申) 文書番号の一部、該当教育委員会の市町名及び教育委員会印印影、学校名、被処分職員の氏名
規律違反報告書(市町教育委員会教育長から発出されたもの) 文書番号の一部、該当教育委員会の市町名及び市町名に関する記述、教育長名、教育長印印影、学校名、被処分職員の氏名、担当部活動名及び部活動に関する記述、被害生徒に関する情報、保護者の発言・意見・心情に関する記述、被処分職員の生年月日、「処分についての意見」
身上調査書 所属、被処分職員の氏名、職歴、「担当する職務内容及び勤務の状況」、該当教育委員会の市町名、教育長名、教育長印印影、被処分職員の生年月日、「本籍」、「現住所」、「生活の本拠地」、「学歴」、「家庭の状況」、「過去における懲戒処分の状況」、「その他特記事項」、「部内または社会の反響」
規律違反報告書(学校長から発出されたもの) 文書番号の一部、該当教育委員会の市町名、教育長名、学校名、校長名、校長印印影、被処分職員の氏名、被処分職員の生年月日、被害生徒に関する情報、保護者の発言・意見・心情に関する記述、「処分についての意見」
診断書 被害生徒の住所、氏名、生年月日、診断内容、該当医療機関名、住所、電話番号、医師氏名、医師の押印印影
始末書 学校名、被処分職員の氏名及び押印、内容
聴き取りについて 学校名、被処分職員の氏名、聴き取りを行った場所、校長名、該当教育委員会の市町及び市町名に関する記述、質問の一部、聴き取り内容
職員懲戒審査委員会議事録について
(平成25年10月21日)
 - 学校名、「意見・質問」
職員の懲戒処分について
(平成25年10月21日)
起案文 なし
議案第29号(現職・氏名・処分内容) 学校名及び被処分職員の氏名
略歴書 「所属」、「氏名」、「職歴」、「担当する職務内容及び勤務の状況」の一部、「生年月日」、「現住所」、「学歴」、「家族状況」、「過去における懲戒処分の状況」、「その他」
議案第29号資料1 職員の規律違反について 被害生徒に関する情報、保護者の発言・意見・心情に関する記述、学校名、被処分職員の氏名、担当部活動名及び部活動に関する記述、該当教育委員会の市町名及び市町名に関する記述
議案第29号資料2 なし
懲戒処分書 被処分職員の氏名、学校名
処分事由説明書 被処分職員の氏名、学校名
公立学校職員の懲戒処分について
(平成25年10月21日)
起案文 なし
公立学校職員の懲戒処分について(報告) なし
危機管理統括監報告について
(平成25年10月21日)
起案文 なし
危機管理統括監報告 学校名及び被処分職員の氏名
公立学校職員の懲戒処分について(報道発表資料)
(平成25年10月21日)
起案文 なし
公立学校職員の懲戒処分について なし
職員の規律違反に係る事後処理について
(平成25年10月23日)
 - 文書番号の一部、該当教育委員会の市町名、教育長名及び教育長印印影、「実施場所」、学校名、校長名

 

 別表2 (a)-8の情報のうち、審査会が開示すべきと判断する部分

対象公文書 頁番号 行番号 備考
危機管理統括監報告
(平成25年9月2日)
61頁 11行目 20~28文字目のみ
23行目 7~15文字目及び28~33文字目のみ
38行目 24~32文字目のみ
危機管理統括監報告
(平成25年9月10日)
63頁 12~13行目 12行目15~35文字目及び13行目20~28文字目のみ
38~39行目 38行目10~30文字目及び39行目14~22文字目のみ
懲戒申立について(平成25年10月15日)
  懲戒申立書 33頁 14~16行目 14行目5~12文字目、14行目20文字目~15行目15文字目及び15行目30文字目~16行目6文字目のみ
31行目 4~21文字目のみ
33行目 17~27文字目のみ
37行目 9~19文字目のみ
39行目 25~35文字目のみ
34頁 1行目 12~20文字目のみ
31行目 8~14文字目のみ
35頁 14行目 11~28文字目のみ
17行目 30~33文字目のみ
22~23行目 22行目12~28文字目及び23行目15~19文字目のみ
25行目 9~28文字目のみ
30~31行目 30行目20~33文字目、31行目15~17文字目及び31行目26~31文字目のみ
規律違反報告書(市町教育委員会教育長から発出されたもの) 41頁 23~25行目 23行目27~33文字目、24行目5~13文字目及び24行目21文字目~25行目7文字目のみ
26行目 4~20文字目のみ
29行目 12~27文字目のみ
42頁 16行目 11~25文字目のみ
18行目 18~27文字目のみ
24行目 16~17文字目のみ
26~27行目 26行目36文字目~27行目10文字目及び27行目18~35文字目のみ
43頁 22行目 22~28文字目のみ
44頁 21~24行目 21行目14~39文字目、22行目6文字目~24行目12文字目のみ
27~28行目 27行目31文字目~28行目7文字目、28行目12~15文字目及び28行目26~33文字目のみ
32~33行目 32行目15~31文字目及び33行目16~17文字目のみ
35~36行目 35行目37文字目~36行目19文字目のみ
45頁 5~6行目 5行目7~18文字目、5行目36文字目~6行目2文字目及び6行目12~16文字目のみ
規律違反報告書(学校長から発出されたもの) 47頁 23~24行目 23行目11~14文字目、23行目33~41文字目及び24行目3~31文字目のみ
26行目 22~40文字目のみ
29~30行目 29行目32文字目~30行目5文字目のみ
48頁 7~8行目 7行目42文字目~8行目14文字目のみ
11行目 13~22文字目のみ
17行目 25~36文字目のみ
19~20行目 19行目42文字目~20行目10文字目及び20行目18~35文字目のみ
41行目 9~15文字目のみ
職員の懲戒処分について(平成25年10月21日)
  議案第29号資料1 職員の規律違反について 20頁 11~13行目 11行目3~10文字目、11行目18~12行目12文字目及び12行目27文字目~13行目2文字目のみ
28行目 2~19文字目のみ
30行目 16~25文字目のみ
34行目 8~18文字目のみ
36行目 22~32文字目のみ
37行目 7~15文字目のみ
21頁 22行目 8~14文字目のみ
22頁 1行目 11~28文字目のみ
4行目 27~30文字目のみ
9~10行目 9行目12~28文字目及び10行目14~18文字目のみ
12行目 8~28文字目のみ
16~17行目 16行目20~33文字目、17行目14~16文字目及び17行目25~30文字目のみ

 

 別表3 (b)-4及び(c)-3の情報のうち、審査会が開示すべきと判断する部分

対象公文書 頁番号 行番号 備考
懲戒申立について(平成25年10月15日)
  始末書 51頁 5~14行目  

 

 別表4 (c)-4の情報のうち、審査会が開示すべきと判断する部分

対象公文書 頁番号 行番号 備考
懲戒申立について(平成25年10月15日)
  聴き取りについて 52頁 22~31行目 22行目29~30文字目、25行目25~32文字目及び28行目30文字目~30行目11文字目を除く
32行目 25行目4~13文字目のみ
33行目  
53頁 2~5行目  
10行目  
12~13行目  
20、22行目  
24~26行目  
28~32行目 30行目34~36文字目及び31行目15~17文字目を除く
54頁 2~8行目 2行目1~3文字目、4行目35~37文字目及び6行目30~31文字目を除く
10~19行目 17行目23文字目~18行目4文字目を除く
20行目 9~21文字目のみ
21~23行目 21行目8~18文字目及び21行目35文字目~23行目14文字目を除く
26~38行目 36行目6~7文字目及び36行目35文字目~37行目31文字目を除く
55頁 1~2行目  
5~11行目 7行目42文字目~8行目9文字目を除く
56頁 2行目 1~7文字目及び30~36文字目のみ
6行目  

 

 別紙1

審査会の処理経過

年 月 日 処理内容
25.12. 4

・諮問書の受理
・実施機関に対して理由説明書の提出依頼

25.12.25

・理由説明書の受理
・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認

26. 1.24

・書面審理  
・異議申立人の口頭意見陳述
・実施機関の補足説明
・審議

(平成25年度第8回B部会)

26. 2.21

・審議

(平成25年度第9回B部会)

26. 3. 7

・審議
・答申

(平成25年度10回B部会)

 

三重県情報公開審査会委員

職名  氏名   役職等   
※会長

早川 忠宏

三重弁護士会推薦弁護士

会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
※会長職務代理者 丸山 康人 四日市看護医療大学学長

委員    

岩﨑 恭彦

三重大学人文学部准教授

※委員 川村 隆子

名古屋学院大学経済学部准教授

委員 竹添 敦子

三重短期大学教授

※委員 藤本 真理

三重大学人文学部准教授

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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