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平成25年06月01日

情報公開・個人情報保護

三重県情報公開審査会 答申第412号

答申

1 審査会の結論

 実施機関は本件異議申立ての対象となった公文書のうち、本件米穀の産地偽装に関わった企業と契約している業者の名称を非開示とした部分については開示すべきである。

2 異議申立ての趣旨

 異議申立ての趣旨は、開示請求者が平成25年10月10日付けで三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号。以下「条例」という。)に基づき行った米穀の産地偽装に係る立入検査に関する公文書についての開示請求に対し、三重県知事(以下「実施機関」という。)が平成25年10月24日付けで行った公文書部分開示決定(以下「本決定」という。)について、取消しを求めるというものである。

3 対象公文書について

  本件異議申立ての対象となっている公文書(以下「本件対象公文書」という。)は、米穀の産地偽装(以下「本件偽装」という。)に係る立入検査に関して、平成25年9月4日から平成25年10月9日までに実施機関が作成および取得した食糧法立入検査結果である。

4 異議申立ての理由

 異議申立書及び意見陳述における異議申立人の主張を要約すると、概ね次のとおりである。
 本件対象公文書に記載された情報は、食品の安全に係る情報であり、非開示とされた偽装に関与した個人または企業についても、法令違反への関与の度合いや意図にかかわらず全面公開とすべきである。法令違反の構造的な偽装の手口や偽装の手法について明らかにすれば、模倣犯を増殖させるなどの危惧があるも、類似する犯罪事例の摘発に結びつく効果もあり、取引先の選択を巡る信用情報としても効果が期待できる。偽装に関わらなかったとされる業者は非開示となっているが、流通経路全体を公表し、偽装への関与をどこまで特定できたかを明らかにすべきである。

5 実施機関の説明要旨

 実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本決定が妥当というものである。
 役員以外の社員氏名、役員であってもその家族状況、役員個人の印影及び偽装に関わった社員の職名については、三重県情報公開条例第7条第2号の個人情報に該当し、公にすることによる当該個人の私生活上の権利利益を侵害するおそれがある情報であると判断した。
 偽装に関わった企業が契約している取引先業者名は、偽装に関与していない善意の第三者であり、また今回の事案では食用不適米穀の取り扱いはなく、健康被害の発生等に発展する可能性はなかったことから、三重県情報公開条例第7条第3号の法人情報に該当し、公にすることにより当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害する情報と判断した。また、本件偽装により、三重県産の米穀というだけで県外の業者から敬遠される事態も生じており、それらを踏まえると偽装に関わった企業と取引があったことを公表すると風評被害を受けるおそれがあり、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害する情報と判断した。
 農林水産省からの情報提供内容は、三重県情報公開条例第7条第2号の個人情報、第3号の法人情報及び第6号の事務事業情報に該当し、公にすることにより当該個人の私生活上の権利利益を侵害するおそれ、当該法人の競争上の地位その他正当な利益を害するおそれ、さらに今後県が業務を行っていくうえで、正確な事実の把握を困難にするおそれがあると判断した。

6 審査会の判断

(1)基本的な考え方

 条例の目的は、県民の知る権利を尊重し、公文書の開示を請求する権利につき定めること等により、県の保有する情報の一層の公開を図り、もって県の諸活動を県民に説明する責務が全うされるようにするとともに、県民による参加の下、県民と県との協働により、公正で民主的な県政の推進に資することを目的としている。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
 当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下のとおり判断する。

(2) 本件対象公文書及び非開示部分について

 本件対象公文書は、実施機関が平成25年9月4日から平成25年10月9日にかけて作成又は取得した食糧法立入検査結果である。
 そして、実施機関が本決定において非開示とした情報のうち、異議申立人が開示を求めている情報は、次のとおりである。
(a)役員以外の社員氏名
(b)役員以外の社員の職名
(c)役員個人の印影
(d)役員の家族状況
(e)本件偽装に関わった企業と契約している業者の名称
(f)調査に至った経緯(農林水産省からの情報提供内容)
 異議申立人が開示すべきとしている、上記非開示部分について、当審査会において本件対象公文書を見分した結果を踏まえ、以下、非開示情報該当性の妥当性を検討する。

(3)条例第7条第2号(個人情報)の意義について

 個人に関する情報であって特定の個人を識別し得るものについて、条例第7条第2号は、一定の場合を除き非開示情報としている。これは、個人に関するプライバシー等の人権保護を最大限に図ろうとする趣旨であり、プライバシー保護のために非開示とすることができる情報として、個人の識別が可能な情報(個人識別情報)を定めたものである。
 しかし、形式的に個人の識別が可能であれば全て非開示となるとすると、プライバシー保護という本来の趣旨を越えて非開示の範囲が広くなりすぎるおそれがある。
そこで、条例は、個人識別情報を原則非開示とした上で、本号ただし書により、個人の権利利益を侵害しても開示することの公益が優越するため開示すべきもの等については、開示しなければならないこととしている。

(4)条例第7条第2号(個人情報)の該当性について

 実施機関が本号に該当するとして非開示とした情報は、前記(a)、(b)、(c)、(d)の各情報である。
 以下においては、それぞれの情報ごとに本号への該当性を判断することとする。

 ア (a)、(c)、(d)の情報 (役員以外の社員氏名、役員個人の印影及び役員の家族状況)

 (a)の情報は、平成25年9月4日付け、9月13日付け、9月19日付け、9月20日付け、10月9日付けの食糧法立入検査結果に記載された役員以外の社員氏名である。
 (c)の情報は、平成25年9月13日付け、9月19日付け、9月20日付け、9月30日付け、10月2日付け、10月9日付け食糧法立入検査結果に記載された役員個人の印影である。
 (d)の情報は、平成25年9月4日付け、10月9日付け食糧法立入検査結果に記載された役員の家族状況である。
 役員以外の社員氏名、役員個人の印影及び役員の家族状況については、個人に関する情報であって、特定の個人を識別し得る情報であることは明らかである。
 また、本件偽装については新聞報道等で全国的に報道された事案であるが、当該情報は一般に公にされる情報ではなく、本号ただし書イに該当すると認められず、本号ただし書ロに定める「人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当するとも認められない。
 したがって、当該情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

 イ (b)の情報(役員以外の社員の職名)

 (b)の情報は、平成25年9月4日付け、9月13日付け、9月19日付け、9月20日付け、10月9日付け食糧法立入検査結果に記載された役員以外の社員の職名である。
 一般に社員の職名それ自体は同一の職名をもつ社員が複数存在する可能性もあるため、必ずしも個人を識別し得る情報に該当するとは限らない。しかし、本件については、実施機関が非開示とした部分に記載されている職名を有する社員が当該会社に1名しかおらず、開示することにより個人を特定される可能性があり、特定の個人を識別し得る情報であると認められる。
 また、当該情報は、報道等で一般に公にされた情報ではなく、本号ただし書イに該当すると認められず、本号ただし書ロに定める「人の生命、身体、健康、財産、生活又は環境を保護するため、公にすることが必要であると認められる情報」に該当するとも認められない。
 したがって、当該情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

(5) 条例第7条第3号(法人情報)の意義について 

 本号は、自由主義経済社会においては、法人等又は事業を営む個人の健全で適正な事業活動の自由を保障する必要があることから、事業活動に係る情報で、開示することにより、当該法人等又は当該個人の競争上の地位その他正当な利益が害されると認められるものが記録されている公文書は、非開示とすることができると定めたものである。
 しかしながら、法人等に関する情報又は事業を営む個人の当該事業に関する情報であっても、事業活動によって生ずる危害から人の生命、身体、健康又は財産を保護し、又は違法若しくは不当な事業活動によって生ずる影響から県民等の生活又は環境を保護するため公にすることが必要であると認められる情報及びこれらに準ずる情報で公益上公にすることが必要であると認められるものは、ただし書により、開示が義務づけられることになる。

(6) 条例第7条第3号(法人情報)の該当性について

  実施機関が本号に該当するとして非開示とした情報は、前記(e)の情報である。
(e)の情報は、平成25年9月6日付け、9月19日付け、9月30日付け、10月2日付け、10月9日付け食糧法立入検査結果に記載された、本件偽装に関わった企業と契約している業者(以下、「本件取引先事業者」という。)の名称である。
 一般的な商取引において、取引先情報は事業者にとって重要な営業情報であり、同業他社の努力次第で不利益を被る可能性が全くないと断言することはできない。このような取引先情報を開示することは当該事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
 しかし、本件取引先事業者と契約している本件偽装に関わった企業は既に解散及び清算手続きに入っており、本件取引先情報については、当該企業の競争上の地位その他正当な利益を害する情報であるとは認められない。
 一方、本件取引先事業者は、本件偽装を行っていた企業と契約し、米穀の保管や搬出入を行っていた倉庫業者、米穀を仕入れまたは卸していた業務店及び加工を委託された業者である。本件取引先事業者の名称を開示すると、あたかも本件取引先事業者が本件偽装に加担したのではないかとの疑いから他の事業者から取引を拒絶されることや、消費者の買い控え等の風評被害を受けるおそれがあり、本件取引先事業者の社会上の地位を損なうおそれを否定できないため、本件取引先事業者の競争上の地位その他正当な利益を害すると認められる。
 したがって、(e)の情報は本号本文に該当する。

(7)条例第7条第3号(法人情報)ただし書ハの該当性について

 次に、本号ただし書ハに該当するか否かについて検討する。本号ただし書ハは、法人等又は事業を営む個人に関する情報であっても、公益上公にすることが必要であると認められるものについては公開の対象となる旨規定している。これは、法人に関する情報には、当該法人の利害関係を超えて、県民生活に少なからざる影響を与え、又は与え得ることがあり、公益上公開するのが相当であると考えられるものがあるが、その場合には、公益と一方これを公開されることによる法人の不利益とを比較衡量した結果、なお公益の方が大きいとされたものを、本号の例外として公開の対象とする旨定めたものである。
 確かに、本件取引先事業者が本件偽装に関わった企業と取引をしていた事実が明らかになることにより、消費者や他の事業者に予断を与えてしまい、消費者が買控え不買運動等の行動をとったり、他の事業者が取引を打ち切ったりした場合、本件取引先事業者の社会的信用を失墜させるおそれが大きく、また仮に誤った情報であっても市場に一度広がってしまうとそれを訂正すること及び当該情報の拡散を止めることは困難であり、本件取引先事業者が被る不利益は小さくないかもしれない。
 しかし、健康被害が発生していないことや、現在では本件偽装に関わっていない事業者から購入した適正な産地表示をしている米穀を扱っていることを消費者や利用者に説明することで、本件取引先事業者への不利益を最小限にすることが可能であろう。
 また、米穀の販売や加工・調理を業とする事業者である以上、事業活動上、その仕入の際見抜けなかった産地偽装等、米穀の品質等に係る問題は、仮に健康被害も確認されず、消費者や利用者の不利益は小さかったとしても、消費者や利用者の犠牲のもとに事業者が扱う米穀の品質の虚偽表示を明らかにされず、保護される利益があるというものではない。
 さらに、本件米殻の取引に関しては、「米穀等に関し、食品としての安全性を欠くものの流通を防止し、表示の正当化を図り、及び適正かつ円滑な流通を確保するための措置の実施の基礎とするとともに、米穀等の産地情報の提供を促進し、もって国民の健康の保護、消費者の利益の増進並びに農業及びその他関連産業の健全な発展を図ること」を目的とする、米穀等の取引等に係る情報の記録及び産地情報の伝達に関する法律が制定されている。同法第3条及び同法第5条は、事業者間の取引等の記録の作成・保存を義務付けており、同法第4条において事業者間における産地情報の伝達義務を定め、同法第8条において一般消費者に対する産地情報の伝達義務が規定されているように、米穀を取り扱う事業者には、取引等の記録を作成する責任と産地を消費者等に適正に表示する責任があるといえる。
 したがって、本件取引先事業者が、全く本件偽装を知らず、また知らなかったことについて全く過失がなく、さらに偽装をしていない業者から購入する価格と全く異ならない価格で購入したものであったとしても、事業者が商品を仕入れて、不特定多数の者に販売及び提供することを前提とする以上、当該販売商品に関する情報は公益上開示するのが相当と判断せざるを得ない。
 よって、本号ただし書ハに該当し、当該情報を開示すべきである。

(8)条例第7条第6号の意義について

 本号は、県の説明責任や県民の県政参加の観点からは、本来、行政遂行に関わる情報は情報公開の対象にされなければならないが、情報の性格や事務・事業の性質によっては、公開することにより、当該事務・事業の適正な遂行に著しい支障を及ぼすおそれがあるものがある。これらについては、非公開とせざるを得ないので、その旨を規定している。
 なお、本規定は、実施機関の長に広範な裁量権限を与える趣旨ではなく、各規定の該当性を客観的に判断する必要があり、また、事務又は事業がその根拠となる規定・趣旨に照らし、公益的な開示の必要性等の種々の利益を衡量した上での「適正な遂行」といえるものであることが求められる。「支障」の程度は名目的なものでは足りず実質的なものが要求され、「おそれ」の程度も単なる抽象的な可能性ではなく、法的保護に値する程度の蓋然性が要求される。

(9)条例第7条第6号の該当性について

 実施機関が本号に該当するとして非開示とした情報は、前記(f)の情報である。(f)の情報は、平成25年10月9日付け食糧法立入検査結果に記載されている立入調査に至った経緯の部分であり、農林水産省から情報提供された内容である。
 これらの情報は本号に該当し、情報提供された内容を開示すると実施機関に情報提供がされなくなるおそれがあり、今後県が業務を行う上で正確な事実の把握を困難にするおそれがあると認められる。
 したがって、当該情報を非開示とした実施機関の判断は妥当である。

(10)結論

 よって、主文のとおり答申する。

7 審査会の意見

 当審査会の結論は以上のとおりであるが、本件事案については、実施機関の事務処理の一部に不適切な点が見受けられることから、審査会として次のとおり意見を述べる。
 当審査会が本件対象公文書を見分したところ、本件異議申立ての対象ではない部分について、開示すべき箇所に被覆処理をし、非開示とすべき箇所を開示するなど不適切な点が見受けられた。
 このような事務処理は慎重さを欠くものであったと言わざるを得ず、実施機関においては、今後同様のことが起こらないよう、開示・非開示部分の内容を十分精査する等慎重かつ丁寧な対応に努められたい。

8 審査会の処理経過

  当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。

 別紙1

審査会の処理経過

年 月 日 処理内容
25.11.29

・諮問書の受理

25.12. 2 ・実施機関に対して理由説明書の提出依頼
25.12.18 ・理由説明書の受理
25.12.19

・異議申立人に対して理由説明書(写)の送付、意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認

26. 1.14

・書面審理
・異議申立人の口頭意見陳述
・実施機関の補足説明
・審議

(平成25年度第8回A部会)

26. 2. 4

・審議

(平成25年度第9回A部会)

26. 3.11 ・審議
(平成25年度第10回A部会)
26. 4.15 ・審議
(平成26年度第1回A部会)
26. 5.13

・審議
・答申

(平成26年度第2回A部会)

 

三重県情報公開審査会委員

職名  氏名  役職等  
※会長

早川 忠宏

三重弁護士会推薦弁護士

※会長職務代理者 樹神 成 三重大学人文学部教授
会長職務代理者 丸山 康人 四日市看護医療大学学長

※委員

岩﨑 恭彦

三重大学人文学部准教授

委員 川村 隆子

名古屋学院大学経済学部准教授

※委員 竹添 敦子

三重短期大学教授

委員

藤本 真理

三重大学人文学部准教授

 なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において主に調査審議を行った。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 総務部 情報公開課 情報公開班 〒514-0004 
津市栄町1丁目954(栄町庁舎1階)
電話番号:059-224-2071 
ファクス番号:059-224-3039 
メールアドレス:koukai@pref.mie.lg.jp

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