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平成21年01月27日

研究報告第2号

1.ナスのハウス栽培における光線 とくに紫外線の影響について

今泉寛

紫外線透過量の異なるフイルムを用いてビニールハウスをつくり、ナスを栽培してその生育、品質について調査した。

  1. 紫外線のカット量の多いフイルムはど地上部の生育は旺盛で、ナス特有の紫色が少なく、緑色に近い葉、茎となり、葉身も大きかった。開花した花の花べんも紫外線の少ないフイルムは花色が薄く、白っぽい色を呈していた。
  2. 紫外線透過量の少ないフイルムにより生産されたナスの果実は、ナス特有の黒紫色でなく、紫赤色の果実が収穫された。すなわち340mμ以下の紫外線を透きないフイルムのハウスで生産されるナスは、販売に適さない果実ができることがわかった。
    ビニールハウスは近年大型化され、換気扇による換気が一般化されるようになってきたが、天窓や側方をあけないで、換気扇によるビ二一ルハウスでのナス栽培では340mμ以下の光線が透るフイルムを使用する必要が認められた。

2.水田施設園芸経営の展開に関する出荷組織の消長 水田ハウス経営成立に関する調査研究

小河内ー司・伊達一郎

三重県の伊勢湾沿海部は、大都市遠郊の水田地帯であり、米作を中心とした大規模水田経営として経過してきた。現在は兼業を中心に水稲単作の経営を実施している。その中で、水田利用を中心とした農業による自立化の方向を模索しているが、可能性として次の2方向の検討をおこなっている。
1つは、兼業化の進展と、高性能田植機、収穫機、乾燥機の開発とから、借地による大型機械化一貫稲作経営の方向。いま1つは集約部門を中心とした経営方式への展開の方向である。しかしながら、いづれの方向も展開の手順が問題となる。こゝでは水稲主業の経営から集約部門主業経営への展開の方向についてとりあげる。

3.ネギコガの生育におよぽす温度の影響

坂下敏・粥見惇ー

ネギコガの発生生態を明らかにするため、生育におよほす温度の影響、成虫の温度反応について試験を行なった。

  1. 卵期間は15℃で8.6日、20℃で5.0日、25℃で3.1日、80℃で3.3日で、ふ化は各温度とも良好であった。
  2. 幼虫は4回の脱皮を重ね、5令を経過した。1令幼虫は葉肉内に潜入し、2令以後は葉裏で表皮を残して食害し、5令後半に葉表に出て粗繭を作り、蠣化した。
    幼虫期間は15℃で18.9日、20℃で13.8日、25℃で9.9日、30℃で8.5日であった。
  3. 蛹期間は15℃で14.9日、20℃で11.1日、25℃で6.8日、30℃で7.0日で、羽化は各温度とも、正常であった。
  4. 卵期、蛹期では30℃で、発育速度の低下が認められたが、幼虫全期では温度と比較発育速度との間に、ほぼ直線関係を認めることができた。
  5. 幼虫は25℃において、もつとも順調な発育をし、80℃では発育速度がやゝ緩慢となった点から、発育好適温度は25℃~30℃の間と推定きれた。
  6. 発育零点は卵が高く、次いで繭、幼虫の順に低くなり、幼虫の令期別では、4令、5令がもっとも低かつた。有効積算温度の理論より、三重県下における年間の発生回数を推定すると8.6回となった。
  7. 日長の変化にともなう休眠は認められず、越冬は一部老令幼虫を交え、主として蛹で、発育の進んだ場合には成虫の羽化するのを認めている。
  8. 成虫の温度反応を仮死、微動、正位、歩行開始、飛しよう開始、興奮、熱死の7段階にわけて観察した。歩行開始から興奮までを正常活動範囲とすると、歩行開始が4℃~12℃、興奮が38℃~40℃で、非常に低温から活動し、広範囲の温度環境に適応しているものと考えられる。

4.温州ミカンの銅欠乏症に関する研究 第1報温州ミカン銅欠乏症の発生調査

上野武夫・西場静雄・森本拓也・辻本敬一・柳瀬騰

1969年に三重県松阪市の温州ミカンに銅欠乏症が発生したので、松阪市を中心に実態調査を行い、次の結果が得られた。

  1. 欠乏症状
    1. 軽症の場合は、長い夏枝が8字状にねん曲するとともに果実の着色がやや不良となる。
    2. 中症の場合は、果実の果梗の周辺に褐色のサビを生じ、夏秋梢はやや短かく全体に、生育が劣るが葉色は濃緑色を呈する。
    3. 欠乏程度が更に進むと、夏秋梢にゴムポケットを生じ、果実のサビ症状は広がり、裂果する場合が見られ、結果量も少なる。
    4. 欠乏程度のもっとも顕著なものは樹がわい化し特に樹高が低い、6月頃より落果し極端に結果量が劣り、夏秋梢の発生数は増すが生育悪くゴムポケットの出現割合も多くなる。秋枝は先端が枯死するか、枯死しなくても枝皮が褐色になり、葉にクロロシスを生じる。
  2. 分析結果
    Cuの含量は春葉、夏葉とも欠乏樹は低く、果実では明確に現われにくかった。N.P.Kは欠乏樹が高い傾向を葉、果実とも示した。
  3. 発生園の状況
    1. 土壌ま第4紀古層、花崗岩の砂壌土に多かった。
    2. 樹令は3~9年生で10年生以上のものには認められなかった。
    3. 品種系統間の差異ははっきりしなかった。
    4. 年により発生程度に差異を生じる。
    5. 銅剤使用中止後2~3年目で発生がみられる

5.温州ミカンの銅欠乏症に関する研究 第2報温州ミカンに対する銅欠乏対策試験

上野武夫・森本拓也・西場静雄・下迫勇助・渋谷久治・辻本敬一・中村紀久男

三重県の松阪地方に温州みかんの銅欠乏症が発生したので、実態調査(第1報)を行なった結果、今後増加の傾向が予想きれたため、銅剤の葉面散布を中心に対策試験を行なった。

  1. 各種銅剤処理試験では石灰ボルドー液の効果が高く、3月散布より5月散布の方が葉中含量は高まっていた。有機銅剤は欠乏症の顕著な場合は3回散布しても症状は回復しなかった。銅剤を殺菌剤として3回使用すると、一般に行なわれているデラン水和剤よりそうか病の防除効果は劣った。
  2. 石灰ホルドー液に変る葉面散布剤の利用試験では、硝酸銅10%を含有する製剤を2000倍で殺菌剤に混用し3回散布した場合は、石灰ホルドー液に近い効果が認められた。また亜鉛を混合した場合はやや銅の葉中含量が増す傾向が見られた。
  3. 銅剤の隔年散布の結果は、石灰ホルドー液は散布中止年でも樹体内の銅の蓄積が、銅剤無散布の約倍量あり、欠乏症も発生していないので2年に1度の散布で十分と思われるが、有機銅剤では連年散布が必要である。
  4. 土壌処理試験の結果は、硫酸銅の土壌施用は処理1年目では、明らかな効果は認められなかったが、土壌表層に含量が多くなっているので、2~3年目で効果が表われるものと思われる。燐酸倍量施用および石灰倍量施用では石灰倍量施用にやや欠乏症が多く認められた。

6.配桑機の性能と利用に関する研究

服部保・舘克之・岡山裕

台車、ワゴン、リフトの3種配桑機の性能比較やその利用改善について研究した。その結果を要約すると次のとおりである。

  1. 配乗積の特性比較
    1. 配桑機の負荷は、ワゴン>リフト>台車の順に小さかった。
    2. 作業強度は、負荷と関係を有するが作業姿勢も大きな影警力を示した。
    3. 配桑機の配桑性能は、リフト>ワゴン>台車の順に高かった。
    4. 人力配桑による給桑作業は、相当大きな体力を必要とするが、配桑機による給桑作業は、作業者が作業から受ける負担は小さかった。
    5. 以上から、3機種間では概して台車が優れていることが判明した。
  2. 配桑機の利用改善
    1. 配桑機利用時の給桑能率は、桑条長の長いもの(1.Om~1.3m)は短いもの(0.7m~1.O m)より高かった。
    2. 配桑機利用時の給桑能率は、後退川字型給桑が後退横列給桑より高かった。
    3. 配桑機の隣接蚕座に対する後退川字型の給桑能率は同真下蚕座より高かった。
    4. 給桑作業を、配桑機を利用することによって、(1)楽に、(2)速く、(3)良く、(4)安くなしとげるために若干の考察を行なうとともに、技術実施上の留意点を示した。

7.シヤロレーとホルスタインの交雑が母牛に及ぼす影響とその子牛の体格について

佐々木敏碓伊藤雄一

  1. ホルスタイン雌にシヤロレ一雄を交配した場合の在胎日数は280±6.2日であった。
  2. 分娩は、胎児が大きいので難産が多いと予想されていたが、ホルスタインを交配した場合と変りはないようであった。
  3. 分娩後の母牛の泌乳量は、減少すると言う農家の意向が強かったが確証が得られなかった。
  4. F1子牛の15日令における体格測定値は、ホルスタインに比しとくに後が大きいことを認めた。
  5. F1子牛の肥育育成牛の体格測定を行なった結果、増体量ほ限っては肥育素牛としてすぐれているものと推察することができた。

8.大規模畑作酪農における粗飼料の生産利用技術体系の確立に関する研究

鴻江政雄

試行錯誤的手法により、粗飼料の生産から貯蔵給与まで一貫した体系化試験を実施し、西南暖地における大規模集約畑作酪農経営形態のーつのパターンを示した。

  1. 大型機械化一貫作業による飼料作物生産体系の確立
    1. 本格的輪作体系の実証
      4年4圃式輪作体系で、14,168kg/10a(水分81.1%)の年間平均坪刈り収量がえられた。実収歩止りは全体で82%となり、また、総生産量の利用区分は、青刈り利用58.1%、サイレージ利用31.0%、乾草利用10.9%となった。より高位生産を望む場合は、1年利用混播牧草を除く、8年3圃式輪作体系が考えられ、この場合の年間平均坪刈り収量は、15,573ha/10a(水分80.7%)となる。
    2. 機械化一貫作業体系の実証
      1. 各草種別標準耕種法、作業体系、収量・所要労力をまとめて表29~36に示す。
      2. 作付体系別収量と所要労力は表37に示す。
      3. 作業別標準作業時間は表38に示す。
      4. この生産体系に要する作業時間は、機械作業のみが410.1時間、整備時間を含まない装着および圃場までの往復時間などの準備時間51.3時間、補助労力94.5時間で合計555.9時間となる。降雨条件などによる年間の月別、旬別のトラクター1台の作業可能時間と、実際のトラクター所要稼動時間を検討した結果は、40psトラクター1台で余裕をもってこの作業体系を消化できることが判明した。
    3. 生産費の試算
      年間の合計経費は、機械類572,255円、建物および施設関係118,666円、種子、肥料、燃料などの消耗資材関係673,365円、労働費およびトラクター借上料161,475円で、地代、資本利子などを除く第一次生産費で1,525,761円となる。
      一方、年間総生産量は、実収で生草707,250kg、DM133,670kgであるから、その1kg当たり生産費は、生草で2.16円、DMで11.41円となった(貯蔵諸経費を含む)。参考までに、坪刈り収量では、1.77円、9.36円となる。
      作物別の生産費は、表46に示すとおりである。
      また、機械類の投資限界についてであるが、本生産体系で使用した農作業機については、農業所得に見合う機械投資率として、欧米諸国で経験的に安定経営の標準とされている6~10%の範囲にかろうじて納まることができるようで、まずは安定経営といえよう。すなわち、6haの耕地による生産体系に要する40PSトラクター1台および11点の作業機などの大型機械類の償却は可能で、いわゆる機械化貧乏からまぬがれることができそうである。
  2. 夏季乾草の機械化調製体系の確立
    1. 大型機械化調製体系の実証
      約4t/10aのスーダングラスとヒエを供用し、国産フレール型ハーベスターを中核としに次のごとき省力体系を実証した。
      刈り落し・破砕→反転・集草→
      (フレール型ハーベスター)(へイメーカー)
      拾い上げ・運搬→
      (フレール型ハーベスター+ダンプトレーラー)
      梱包
      (ヘイブレス)
    2. 乾燥工程の標準的作業時間(梱包作業を除く)
      表55に示すとおりである。
    3. 機械作業のみによる作物別の生産性
      表56に示すとおりで、DM歩止りの向上が今後の重要課題で、とくに、スーダングラスにおける調製ロスの減少技術と、ヒエ類の2回刈り利用による多収技術の確立が急がれる。
  3. サイレージの機械化調製体系の確立
    1. 低水分サイレージの機械化調製体系の実証
      主として、2.5~3.O t/10aのイタリアンライグラスを対象作物として、国産フレール型ハーベスター中心の次のごとき体系を実証した。
      予乾刈り→集草 (フレール型ハーベスター)(へイメーカー)
      →拾い上げ・運搬→ (フレール型ハーヘスター+ダンプトレーラー)
      均し→跨圧(人力)(トラクター)
    2. 低水分サイレージ調製工程の標準的作業時間
      表66に示すとおりである。
    3. 各種サイレージ調製の生産性
      表67に示すとおりである。
    4. バキュームサイレージの調製技術体系の実証
      ニュージーランド製の50t容ポリエチレンバキュームサイレージパックー式を供用して、トウモロコシサイレージを調製した結果、開封後の二次発酵についての問題をはらみながらも、省力安全調製技術としてあかるい見通しがえられた。

9.洋らん(シンビジューム)の開花調節に関する試験(第2報)施肥および灌水が生育・開花におよぽす影響

片岡虎夫・山口省吾・中野直

  1. 中型シンビジュームの生育、開花におよほす施肥量施肥成分および灌水の頻度の影響について試験を行った。
  2. 施肥量については、少肥区は第1リードバルブの開花率は高かったが、第2リードバルブの生育が劣り開花率も低かった。中肥区は第1リードバルブと第2リードバルブの生育が促進され開花率も高かった。多肥区では第1リードバルブの生育が旺盛で第2リードバルブの発生数も多かったが開花率はきわめて低かった。
  3. 施肥成分からみれば、チッ素多用期間の長いほどリードの生育が促進され次のリード数の発生も多く開花率は高かった。とくに6月までにチッ素施取量を減じた場合影響が大きく開花率が低くなる傾向がみられた。花の品質についてもチッ素多用の効果が認められた。
  4. 灌水の頻度については、第1リードバルブ、第2リードバルブとも生育および花らいの発生数は、全期間毎日潜水区、7日まで毎日灌水区が多く、生育ならびに花成に対して灌水の効果の高いことが認められた。

本ページに関する問い合わせ先

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