現在位置:
  1. トップページ >
  2. 観光・産業・しごと >
  3. 農業 >
  4. 農業研究所 >
  5. 成果情報 >
  6. 研究所報告 >
  7.  研究報告第5号
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2.  農林水産部  >
  3. 農業研究所
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line

研究報告第5号

1.水稲の品質、食味の向上に関する研究 第1報水稲の品質、食味におよぼす作期の影響について

伊藤敏一・川口連

  1. 作柄が早くなっても外観の品質は必らずしも不良にならない。とくに、早期品種は良質になることが多い。しかし、玄米千粒重・容積重・とう精歩合は、普通植にくらべると低下することが多い。
  2. 作期が早くなると、食味はやゝ低下するが、この差は早期品種で大きく、早生以降の品種では小さい。
  3. 作期が早くなると、粘着度が低下することが多く、ヨード呈色度は淡くなる。
  4. 作期による貯蔵性の差は少なく、品種間差の方が大きい。とくに、大粒の早期品種は食味の低下が大きい。トドロキワセ・コシヒカリは、貯蔵による食味の低下が少ない。心白・乳白米は、新米では食味の低下が少ないが、古米での低下が大きい。
  5. 以上、作期が水稲の品質・食味におよぽす影響を明らかにしたが、時期を遅くしなくても、コシヒカリのような良質品種を作付けすれは良質、良味の産米が可能である。
  6. 良質・良味品種の選定の簡易検定方法として、炊飯の粘着度・古米の発芽率が利用できると考えられる。

2.雲出川流域における乾田直播栽培の実態調査

原英雄・片岡一男

  1. 県下13か所の水田において、ウリカワの発生生態を明らかにするため、ウリカワ発生消長の実態調査を行った。
  2. 本田におけるウリカワの発生は移植後6~7日目、おそくとも移植後10日目であり、地域、作期に関係しない。
  3. 塊茎の形成時期は移植後50~60日日頃であった。
  4. 塊茎が形成される深度は、田面下0~4cmの浅いところであり、田面下10cmより深いところに塊茎は形成されなかった。
  5. 移植後日数とウリカワの葉期ならびに葉数別分布割合の関係は次のように推定することができる。
    初生葉期:移植後10日目まで初生葉100%
    1~2葉期:移植後15日日頃、初生薬40%、1~2葉55%、3~4葉15%、
    3~4葉期:移植後25日目頃、初生葉15%、1~2葉25%、3~4葉35%、5~6葉15%
    5~6葉期:移植後35日日頃、初生葉10%、1~2葉15%、3~4菓40%、5~6葉30%、7葉以上5%

3.南勢水田単作地帯への露路やさい導入についての検討

小河内一司・伊達一郎・村田隆雄・山中種郎

  1. 南勢畑作地帯の露地やさい産地は、用水が確保されてから、水田化が進行して「水稲+兼業」の方向をとる農家が多い。しかしこの地帯は古くから露地やさい、とくに秋冬作やさい産地として存続してきたところである。そこで現在の水稲単作方式に代る「水稲+露地やさい方式」の定着の可能性について、その方向と成立条件とを明らかにしようとするものである。
  2. 研究対象地は、大都市圏内にあり、暖地平坦地帯で、畑地の水田化がすゝみ、水田率は40~80%である。こゝでの農業は、畑地の水田化、したがって「いね作+兼業」の方向をとり、専業経営では、施設やさい(いちご・トマト)およびたばこ作が主要作目である。露地やさいは水稲と複合する作目として、秋冬作やさいであるだいこん、はくさいを作付けている。このだいこんはたばこ作の跡作として、はくさいは出あきない商品である浅漬用原料として生産している。
  3. したがって、こゝでの露地やさいの選択は、水稲中心経営の育成展開とあわせ考える必要がある。この水稲中心経営の複合作目として、露地やさいを選択し、この「いね+露地やさい」経営を核として兼業いね作経営に波及させるという展開である。
  4. これらのことにつき、玉城町を対象に露地やさい作付の可能性を検討した。この地区は、南勢畑作地帯にあって、用水を確保して、水稲単作化の方向をとっている。すなわち、基盤整備をおこない、高性能機械を導入し、いね作近代化の基盤を完了している。しかし、この基盤の上に新しいいね作経営の方式は生まれていない。こゝでの新しいいね作経営の主要形態としては、全面受託による借地経営、賃作業を主としたいね作経営、および「水稲+露地やさい」複合経営の3形態があげられる。そして当面の地区農業のいね作の中核となる経営方式は「水稲+露地やさい」経営方式に求められる。
  5. この地域農業の展開方向として「水稲+露地やさい」による新いね作経営の成立をはかる場合、農協は次の役割を強力に荷う必要がある。一つは受委託方式の推進であり、二つはやさいについて、出荷販売機能の強化であり、三つは「水稲+露地やさい」複合経営を中核とし、いね作兼業経営に対し、露地やさいの導入を進めること。この方法には賃作業を主としたいね作経営を含めて、露地やさい生産における定植或いは播種前耕起・育苗の行程につき、分業・協業の方式をとり入れることである。
  6. さて、こゝでとり入れられるやさいは、価格保証の有無と、指定産地化への展開の難易とから、一つはレタスを選定する。二つはたばこ専作経営のたばこ作の跡作として漬物用加工原料だいこんを選定する。これは潰物業者との契約栽培とし、契約については農協が仲介にあたるシステムとする。
  7. この地域において露地やさいを選択することの可能な経営は、(1)自作地中心のいね作経営、(2)水稲十施設園芸経営、(3)いね作兼業経営、(4)たばこ作経営であり、(1)(2)(3)の3形態ではレタスを、(4)形態ではだいこんを作付けることができる。これらの露地やさいの作付規模は、レタスで20~30a、だいこんでは100aとなる。これをとり入れた経営の農業所得は、(1)形態で230万円、(4)形態で300万円を推定することができる。

4.水稲乾田直播の作業性向上に関する研究

田中正美

  1. 水稲乾田直播における整地は、は種作業を能率化し、またその作業可能日数を増大して整地は種作業面積を拡大するために、砕土均平作業の能率向上、は種機の耐湿性向上、畦崩し(又は耕転)同時播種法、ロータリ覆土性能向上についての試験を行なった。
  2. 均平については、乗用トラクタのロータリ後部に装着した二連式の乾田均平機を試作し、ロータリで土を削りながら均平する方式とした。この均平機は、土壌水分37%以下の場合には作業精度も良好であり、ほ場の小範囲な凹凸の均平作業には実用に供し得ると考える。
  3. 砕土については、ロータリ爪軸に切削幅3cmの3本爪車を試作し、爪ピッチ2.7cmこすれば含水比43%の土壌においてもー行程で覆土に適した砕土程度にすることが可能であり、爪の作用深さの増加と共に砕土率が低下した。
  4. は種機の耐湿性向上については、牽引型は作溝部の作用幅を狭くし、わらなどがからまないような曲線の作溝部を試作した。またロータリ型については、ロータリカバーの作用高さを調節できるようにして飛散土の放出が容易になるように加工した。その結果、不耕起用では超湿潤状態(含水比50%以上の土壌)においても、いずれの作溝部もは種作業が可能であり、苗立率60%を確保した。浅耕区のは種作業の限界水分は45%程度と推定された。
  5. 乗用トラクタのロータリの後部に試作した8条のは種機を装着し、ロータリで畦崩し(又は平畦の砕土)と同時には種した。この方式は、ロータリの耕深に関係なく覆土深を調節できる。畦崩し同時播種は畦幅とロータリ幅を同じにしその高さを15~20cmにすれば作業能率精度を高めることができた。畦立区は平畦区に比し整地は種の作業可能日数を1.3~1.7倍に増加することが確認された。
  6. ロータリ覆土の性能については、ロータリ前部は種法は、ロータリ後部は種法に比し、上(表)層部の種子量が少なく下層部の落下量が多くなることが認められる。ロータリ後部は種法はそのは種位置を後方に移動すればロータリの作用深さを高めても覆土厚さは浅くすることができ、苗立率はロータリ前部播より高まった。
    落下籾の水平分布については、ナタ爪の配列をロータリ後ほ場面が平坦になるように装着した場合はその籾の分布は殆ど均一であった。

5.果菜類の水耕栽培に関する研究(第2報)根圏環境がキュウリの生育、収量におよほす影響

西口郁夫・今泉寛・稲垣悟

  1. 1972年2月から73年7月までビニールハウスでキュウリの久留米落合H型を用い、根をとりまく環境要因が生育、収量におよぽす影響を調査した。
  2. 培養液中の溶存酸素に関する要因の液の循環や多通気が最も影響をおよぼし多収となった。
  3. 培養液濃度は循環、通気度と関係が深く、収量は高液濃度・高溶存酸素条件、低液濃度・高溶存酸素条件、低液濃度・低溶存酸素条件、高液濃度・低溶存酸素条件の順に少なくなった。
  4. 液温は本試験で設定した18~21℃の範囲では顕著な差がなかった。

6.果菜類の水耕栽培に関する研究(第3報)水耕メロンに対する液温制御効果

中村正明・稲垣悟・西口郁夫

  1. 春メロン(加温)、夏メロン(冷却)、秋メロン(冷却)の液温制御効果について、M式ミニベッド方式で検討した。液温と関係の大きいと思われる。通気度、濃度を組合せて試験した。
  2. 春メロンの液加温効果は自然放任の液温が16~21℃であった生育前半で高かった。ネット発生程度は初期生育のよい加温区でよく、草勢の確保などから20~23℃の液温は保つ必要がある。
  3. 夏メロンでは摘芯以後の生育後半に液温を25℃前後に冷却したが、根の発生、果実の肥大、ネット発生に効果があった。
  4. 秋メロンでは多通気の場合、果実の肥大、ネット発生に冷却の効果がみられた。
  5. メロンでは加温、冷却によって20~25℃に液温を制御することが、生育、果実の肥大に有効である。
  6. 通気度、濃度の影響も大きく、多通気で生育がおう盛になり、濃度は2mmhoが1mmhoより生育、ネット発生によい。品質の確保の上から溶存酸素量の制御が液の加温、冷却による制御と共に重要と思われる。

7.温度条件とトマトの生育に関する研究 第2報生育期別の夜温の影響について

豊富康弘・今泉寛・吉川重彦

  1. 生育期別の夜温の組合せ(10℃区、10℃-5℃区、5℃-10℃区)に苗令(50日苗、67日苗)とN施肥量(N多肥区(3.OKg/a)、N少肥区(1.5Kg/a)を組込んだ試験区を設定し、トマトの生育に与える影響を検討した。
  2. 夜温10℃区は生育順調で、開花期早く、収穫始期も早くなり、初期収量はもっとも高く、総収量も高く、トマトの生育にもっともよい夜温であった。
  3. 夜温10℃-5℃区は生育よく、開花期、収穫始期は早く、初期収量、総収量は夜温10℃区に近い収量を示し、夜温10℃区に相当する夜温の組合せであった。
  4. 夜温5℃-10℃区は初期生育が抑えられ、草姿は下葉小さく、上葉は大きく不均衡な草姿を示し、開花期、収穫始期は遅れ、初期収量少なく、総収量もっとも低く、組合せとしては不適当であった。

8.ハウストマト萎ちよう病J3防除対策について 耐病性台木KNVFの利用とその効果

宮川喬・稲垣悟・今泉寛・河瀬住雄

最近とくに問題となっている萎ちょう病J3の防除法について、耐病性台木の実用性およびその問題点を中心に現地で検討を加えてきた。

  1. 耐病性台木トマトKNVFは、一般のトマト品種を接いだ場合、親和性が認められる。
  2. この台木は萎ちょう病J3に対して、高い耐病性が謎められ、現在のところ最も実用的な防除法と考えられる。
  3. 本病の発生は、8月中旬から9月下旬までの間には挿されたトマトでみると、早くまかれたもの程多い。したがって、接ぎ木は8月中旬から9月上旬まきのものに重点的におこなうべきであろう。

9.温州ミカンのチッ素施用量に関する研究

森本拓也・田端市郎

  1. 1961~'73年まで13年間普通温州阿田和16号の成木を用いてチッ素施用量について試験を行った。
  2. 樹勢および総収量とも10a当たりチッ素15kg施用で増大するが、隔年結果性が現われる。
  3. チッ素の施用量が増加すると果皮の着色不良が多くなり、多肥では浮皮果の発生割合も増加し、また果肉歩合も低下した。
  4. 果形指数は施肥量が増加すると数値が低下し、腰高の果実になりやすいことが認められた。
    果汁中の可溶性固形物はチッ素施用量による影響が少ないが、、クエン酸含量は少肥で高くなった。これは収量と果実品質に密接な関係があり、少肥では隔年結果性が強く、裏年の結果量の少ない場合にクエン酸含量が高く現われた結果である。
  5. 貯蔵後の果実形質について果実比重は施肥量が少ないと高く、クエン酸含量もチッ素施用量が少なくなると多く、また酸の減少程度も少なかった。
  6. チッ素施用量が多いと根群の分布は上層土に集中し、施用量が少ないほど下層土までよく分布する。また、樹冠の北側は南側に比較して根群が多く、下層土までよく分布していることが認められた。
  7. 土壌中のPH値は施用量が多くなると低下し、置換性カリ、石灰、苦土の減少の程度も著しく大きい。また多肥では塩基置換容量が低下する。したがって、塩基飽和度も低い。
  8. 葉中のチッ素含量は施肥畳が増加するといずれの時期とも高くなり、リンおよびカリウム、カルシウムの吸収に影響を与える。すなわち、チッ素施用量が多くなると葉中のリンおよびカリウム含量が低下し、カルシウム含量が増加することが認められる。また、チッ素とカルシウム含量は年次間の変動差が大きく、隔年に増減することが認められた。
  9. 葉中成分と収量との相関関係は、7~11月の葉中チッ素とは(正)であるが、翌年の収量との間には(負)の関係がみられ、カリウムは前年末から本年7月の値と(正)で、9月、11月では(負)の相関を示し、カルシウムでは前年7月から本年5月まで(負)、7月以降は(正)の相関関係が認められた。全休に7月の各葉分析値と収量に(正)相関が認められる。
  10. 葉中成分と果実品質との相関関係は、果実比重クエン酸と葉中成分の関係は7月以降のチッ素の値とは(負)、リン含量では7月と(負)の関係、力リウムは9月、11月の値と(正)の相関を示し、カルシウムはチッ素と同様な傾向が認められた。
  11. 適正なチッ素の年間施用量は収量および果実形質、あるいは土壌の化学性におよばす影響から判断して、15~30kgの範囲にあると思われ、一般のミカン園土壌では23kgが当面の施肥基準である。

10.ミカン果実品質に対する栽培条件の寄与度について

橋本敏幸・玉村浩司・坂口生・真弓斉・深田康通・二井茂夫・小林昇・中村紀久男・古崎和義

果実内容(酸含量、糖含量)を均一にするための区分出荷法を検討するに当り、酸含量および糖含量を目的変数にし、栽培条件を説明変数にした多変量解析法を用いた。

  1. 早生温州、海岸部では酸含量の相対寄与度が3か年を通じ高かったのは、土壌管理、海岸からの距離の順であった。糖含量では地形、海岸からの距離、土壌管理、土性であった。
    重相関係数は、1974年が0.6で、他の年次は0.7~0.8であった。したがって、土壌管理を主としたパラメーターにし、海岸からの距離、地形を従にして区分出荷が可能と思われる。
  2. 早生温州、山間部では酸含量の相対寄与度が3か年を通じ高かったのは、土壌管理、地形の順であった。糖含量では、地形、土壌管理の順であった。
    重相関係数は、1972年の酸含量が0.6で他は0.7~0.9であった。したがって、土壌管理を主としたパラメーターにし地形を従として区分出荷が可能と思われる。
  3. 普通温州、海岸部では糖含量の相対寄与度が3か年通じ高かったのは、地形、海岸からの距離、樹令の順であった。酸含量では、海岸からの距敵地形、傾斜方位、土壌管理、樹令の傾であったがいづれも年次間の変動が大きかった。
    重相関係数は、1972年の糖含量が0.4で、他は0.7~0.8であった。相対寄与度、重相関係数の年次聞変動が大きいので上記のパラメーターでは区分出荷が困難と思われる。
  4. 普通温州、山間部では、糖含量の相対寄与度が3か年を通じ高かったのは土性、地形、傾斜方位、標高の順であった。酸含量では土性、地形、標高の順であつた。
    重相関係数は0.7~0.8であった。したがって、土性を主としたパラメーターにし、地形、標高を従として区分集荷が可能と思われる。

11.早生温州の出荷地域区分に関する研究 熊野灘沿岸地帯における早期出荷早生温州の果実品質について

渋谷久治・田端市郎・大畑繁・家崎敬一・中村紀久男・古崎和義・小林昇

本県の熊野灘沿岸地帯における早期出荷を対象とした早生温州ミカン園61園地について、その果実品質の実態を調査し立地条件と果実品質との関係、ならびに、選果場における果実品質について検討した。

  1. 熊野灘沿岸地帯の早期早生温州の果実品質は、北緯度の最も低く海岸線からの距離が近い紀南南部海岸地域がすぐれ減酸時期も最も早かった。次いで紀南中間丘陵地、紀南北郡海岸、南勢地域がほぼ同程度で、紀南山間地がやや劣り、南島地域が最も劣った。
  2. 早生温州の早期出荷の適地区分について検討すると、9月中旬以前に酸含量1.7%以下となり出荷可能な地域は、紀南南部海岸地域のみとなる。早期出荷期間の10月上旬までに酸含量1.3%以下となり出荷可能と考えられる地域は、紀南地域においては海岸線から3~4kmまでの地帯であり、南部海岸地域、北部海岸地域、中間丘陵地域がこれに該当し他の熊野灘沿岸地域においては海岸線から1km以内で標高50m以下のところで、南島地域を除く、海岸線の産地がこれに該当すると考えられる。
  3. 地形と果実品質の関係は、地域差が大きく顕著でなかったが、水田転作地、凹地が南面傾斜地や台地の品質より劣る傾向がみられた。
  4. 樹体における着果位置と果実品質については、樹間赤道面より上部に着生する果実の品質がすぐれ、樹体下部の果実は糖含量少く、クエン酸が多く劣っていることを示した。また糖、酸含量の変動係数は、糖分の変動に比し酸含量の変動が大きく糖分の3倍を示した。
  5. 紀南地域の4選果場について果実品質を調査した結果、共選場間、等級間ともに糖分含量の差は比較的少く、変動係数も平均8.7%で低いのに比し、酸含量はその差が糖分に比し大きく、変動係数も平均25.7%と糖分の3倍近い変動を示した。
  6. 以上の結果から、出荷果実の均質化を図るためには、地域区分を行うとともに適期分割採収の徹底、選果場内での区分選果、区分販売を行ない。さらに栽培管理技術との有機的な結びつきを考える必要があろう。

12.三重県における温州ミカン園土壌に関する研究(第1報)土壌の種類と特性について

安田典夫・米野泰滋・大森螢一・戸田鉱一

三重県の北勢、中勢南部、紀州地域における主要な産地のミカン園土壌について調査を実施し、土壌の理化学性について明らかにし、土壌統ごとに比較検討を行なった。

  1. ミカン園土壌を分類すると主要な土壌は13土壌統となり、地質、母材別には花崗岩4土壌統、洪積層4土壌統、第三紀層3土壌統および古生層、ミロナイト各1土壌統である。
  2. 土壌の理学性のうち三相分布は大部分の土壌でほぼ良好な状態となっているが、上深谷統(第三紀層)では表層、下層とも固相率が高く、蓮花寺(第三紀層)長深統(洪積層)では下層の固相率が高かった。また西山統(花崗岩)、小島統(洪積層)、上深谷統、蓮花寺統では粗孔隙が小さく不良であった。
  3. 土壌の化学性のうちpH(KCl)は大部分の園で表層が微酸性~中性とほぼ適正な状態であったが、下層では強酸性の園が多くみられた。置換性塩基類は表層に多く、下層ではかなり少なかった。有効態リン酸は表層に過剰に著積している傾向がみられた。微量要素のうち銅は小島統(洪積層)でかなり少なく、花崗岩土壌(西山、神坂、美旗統)でもやや少ない傾向がみられた。
  4. 主成分分析の結果、土壌の化学性12成分(表層)の情報は第1主成分から第3主成分までに約70%程度要約された。地質、母材別の土壌の特徴は花崗岩土壌では全チッ素、塩基置換容量、カリ、マンガンなどの要因が強く、第三紀層土壌ではpH、塩基飽和度、ミロナイト土壌では鉄などの要因がそれぞれ強かった。

13.スプリンクラによるブドウ病害虫防除に関する研究

西澤勇男・田中正美・深田康通・輪田竜治・玉村浩司

  1. ブドウに対するスプリンクラ利用による病害虫防除試験を1973~1975年にわたり、散布性能、薬液の付着状況、病害虫防除効果の面から検討した。
  2. 葉裏への薬液付着を高めるためには、スプリンクラノズルの高さは、棚面上10~20cmで葉層上面~やゝ下の位置に設置するのがよく、角度は中間圧スプリンクラの場合7~10度がよい、また圧力は、中間圧スプリンクラは3kg/cm3が、高圧スプリンクラでは10kg/cm3位がよいと思われる。散水量は、生育中期~収穫期で中間圧スプリンクラの場合は500~600リットル/10a、高圧スプリンクラの場合は、400リットル/10a前後が適当と思われる。
  3. 薬液の付着度調査では、葉表への付着程度は良好であったが葉裏への付着程度は少なく、中間圧スプリンクラより、、高圧スプリンクラはさらに付着程度が低かった。葉裏への付着は、散布量が増加してもあまり増加はしなかった。果房でほその付着に多量付着、少量付着の差が大きく、付着程度は均一性に欠けていた。
    休眠期の枝に対する付着は、結果枝、側枝では生育期より散布量を減少させてもある程度の付着があった。幹、主枝では散布死角となるところが多く、散布量の増加のみでは、付着は増加しなかった。
  4. 防除効果の得られたと思われる病害虫は、晩腐病、黒とう病、ブドウトウカミキリであったが、防除効果の劣ったと思われるものとしてはべと病、褐斑病、うどんこ病、さび病であった。棚下からの動噴による補助散布は、べと病、うどんこ病、さび病等に有効的であった。
  5. 欧州系品種と米国系品種では、各種病害虫の発生程度が異なり、防除効果に差があり、防除策は両者を区別して考慮されるべきであろう。
  6. 病害虫の発生の多少、未検討の病害虫もあるが、棚下からの補助散布を加えることによってブドウでのスプリンクラによる病虫害防徐は可能と考えられる。
  7. スプリンクラ利用による薬液散布の均一性を高めるには、ヘッドの散水線図を直線に近付け、その有効半径をライザー間隔にする正三角形および正方形配列とし、前者の場合のヘッドの散水線図はM-0.67M/(0.6R)×X、後者の場合はM一0.75M/0.7R×Xで表される。ただし、Mはヘッド近くの散水量、Rはライザー間隔=散水半径、Xはライザーからの距離とする。

14.製茶機風量の簡易測定法 粗揉機、中揉機の風量について

庄山孝義・木下鉄・吉田元丈

粗揉機、中揉機の操作方法は製茶品質、加工能率に大きく影響するが、そのなかで重要でありながら、あまり測定されていなかった風量の測定法について調査した。その結果、次の簡易測定法が得られたが、この方法は製茶機の空転時における大凡の風量を知るための一方法として利用しうるものと考えられる。

  1. 粗揉機の風量
    現在、市販されている強制吹込み型機では、本機内の熱風吹込みロの風速を測定し、その平均値に吹込み口面積を乗じて風量を求める。この場合、風速の測定場所は各吹込み口の中央部とし、10か所程度測定して平均風速を求めるのが望ましい。
  2. 中揉機の風量
    一定の形状をした排気口をもつ中揉機に限定されるが、排気口の平均風速と面積から風量を求めることかできる。この場合、排気口風速は非常にバラツキが大きいので、なるべく多くの測定点をとる必要がある。本法により測定した中揉機の風量は、実際の風量よりもやや高い値を示す。これは中揉機の構造上、機械各部の隙間から空気が吸入されるためと考えられる。

15.凍結した牛精子の受胎能力に及ぼす長期保存(5~10年)の影響

白山勝彦

黒毛和種雄牛から得た精液を「基本凍結法」で凍結し、-196℃で5~10年間保存したものを用いて受胎試験を行い、その成績を液状精液および「窒素ガス急速凍結法」で凍結して1~6カ月保存した精液のそれと比較した。
主なる結果はつぎのとおりであった。

  1. 5年間保存した精液を授精した63頭の受胎率は63.5%であり、6年、7年、8年および10年保存した精液を授精した27頭、39頭、25頭およぴ58頭の受胎率はそれぞれ55.6、48.7、48.0およぴ50.0%であった。
  2. 7~10年保存した精液による受胎率(60/122、49.4%)は、5~6年保存のそれ(55/90、61.1%)よりも低くその差は有意のものと認められた(P<0.05)。
  3. 5~10年保存後の生存精子数を2,000万以上、5,000万以上および1億以上の3者に区分してその受胎率を比較したが、統計的に有意の差は認められなかった。
  4. 5~10年保存した精液を授精して分娩を確認した75頭の産子の在胎日数の平均は287.0日であり、雄の子の平均は286.6日、雌の子のそれは287.4日であった。
  5. 75頭の産子の性別は、雄の子が29頭、雌の子が46頭であって雌の子が多い傾向がみられたが、過去における同一地域の産子成績と比較して統計的に有意の差は認められなかった。

16.屋外群飼による去勢牛理想肥育試験

佐久間一夫・横山勇・鈴木波太夫・善多英治・林信一

  1. 増体性は、濃厚飼料を肥育前期6か月間制限することでそれ以後の増体は対照区にくらベ5%水準で有意の差が認められた。又肥育後期に大麦を30%配合した区が無配合区よりややすぐれた傾向があった。
  2. 体重のバラツキは試験区でCV値4.5~5.9、対照区4.1~5.2と試験区がやや高い傾向がみられたものの特に問題となる程度ではなかった。
  3. 飼料の摂取量は、肥育前期において濃厚飼料は試験区が対照区に比べ約19%摂取量が少なかったが、サイレージは約36%多く摂取した。肥育後期は試験区が大巾に濃厚飼料の摂取量が上廻わり、全期間通算では、肥育期の長い26か月令仕上げ区では、肥育前期濃厚飼料を制限した試験区がむしろ多く摂取した。又、大麦を配合した区の濃厚飼料の摂取量は約15%対照区に比べ多く摂取した。
  4. 飼料要求率は、濃厚飼料についてみると制限により、よい傾向がみられるが、肥育後期の大麦の配合は、むしろ対照区より悪い結果であった。
  5. 仕上げ月令による肉質については、皮下脂肪の厚さは26か月令でやや厚くなる事が認められた。又、脂肪交雑も26か月令区で高い傾向がみられたが種牡牛別にみるとサシのよく入った牛とそうでないものと明らかな差が認められ、ただ単に仕上げ月令を伸ばすことが肉質をよくする事につながらなかった。大麦の配合及びサイレージの飽食による肉質への影響は認められなかった。
  6. 尿石症は濃厚飼料の制限期間中は発生が少なかったが、飽食させてからは当初から飽食の区と同様の発生となった。尚、大麦配合区では肥育後期においても発生は少なかった。
  7. 血液性状は正常範囲であった。
  8. 第一胃内容の性状
    イ) T一VFA量は第1回目は前半は5.1~8.9mM/dl、後半は1.0~1.6mM/dl、第2回目は3.5~9.6mM/dlで両区の差はなかった。
    ロ)NH3一N量は17.5~51.2mg/dlで正常範囲で両区の差はなかった。
    ハ)プロトゾア、pHは正常範囲で両区の差はなかった。
  9. 体重と相関の高いものは血清総蛋白質量であった。
  10. DGと相関の高いものは血清無機P量、T一VFAであった。
  11. 増体量に関与する要因を分散分析するとT-VFA、VFA組成割合ではプロピオン酸、イソ吉草酸が高かった。
  12. 増体に関する相対寄与率をみると血清無機P量、VFA組成割合でイソ酪酸、酪酸、プロピオン酸は高かった。T-VFA量は低いものであった。

17.豚の諸形質に関する研究 第1報形質の総合的評価による分類

久松敬和・坂本登・杉沢義民・岡本三樹

豚の産肉能力に関与する諸形質に主成分分析をほどこして、少数個の総合形質であらわし、当部で調査した試験豚を分類、評価した。その結果を要約すると次のようである。

  1. ランジル脂肪の厚さ、背脂肪の厚さ、肉色などのバラッキがとくに大きかった(C.V.=30~40%)。
  2. 各形質の間の高い相関は、各重量間(正)、脂肪の厚きと赤肉の厚き(負)、生後日令、飼料要求率と1日平均増体重(負)において見られた。
  3. 20形質を6個の総合特性値に要約した結果、情報のロスは30%であった。
  4. 絶食体重と枝肉重量と左半丸重量(ロース、バラ)と屠体幅、背脂肪の厚さとランジル脂肪の厚さ、ロース断面横と赤肉の厚さ(セ、コシ)、生後日令と1日平均増体重と飼料要求率などは同じ動きをする形質であった。
  5. 第1主成分は重さの因子、第2主成分は脂肪と赤肉のバランスの因子、第3主成分は発育の因子であった。
  6. これらの主成分を用いて、各豚の分類、動向を見ると、H種は重さに関係なく脂肪がうすく、赤肉が多い傾向にあり、W種は発育は良い傾向を示した。LD種は体重の重いほど脂肪が厚くなる傾向があり、発育はよかった。LH種は試験区の関係から、脂肪の割合、発育にバラッキが見られた。

18.豚の諸形質に関する研究 第2報屠体における諸形質と枝肉重量との関係

久松敬和・坂本登・杉沢義民・岡本三樹・佐土原功

一般養豚農家から出荷される肉豚の産肉能力に関与する諸形質に重回帰分析をほどこし、各形質間の相互の関係と枝肉重量に及ばす諸要因について解析を行った。その結果を要約すると次のとおりである。

  1. ロース断面積、脂肪の厚さ(背、肩、腰)、枝肉重量などのバラツキがとくに大きかった。(C.V.=10%以上)。
  2. 各形質間の高い相関は、枝肉重量が背腰長II、ロース断面積、生後日令(正)、脂肪の厚さの間に(正)、脂肪の厚さは、ハム・ロースの割合(負)、審査等級は脂肪の厚さ(負)、ロース断面積、ロース・ハムの割合(正)、生後日令は、脂肪の厚さ(正)、去勢豚は、ロース断面積、ハムの割合(負)において見られた。
  3. 重回帰分析の結果、このモデルの重相関係数は、0.884、寄与率は78.2%であった。11説明変数のうち枝肉重量に与える相対寄与率は、背腰長II64%、ロース断面積16%、交配組合せ11%等高い割合を示した。
  4. 各形質を変化させた場合の枝肉重量の変化を推定した結果は、背腰長Ⅰが2cm増えると枝肉重量は3.08kg増加し、ロース断面積が4cm増加すると3.52kg増加し、背脂肪が0.5cm薄くなると3kg減少することが推定される。
  5. 枝肉重量に関する分散分析の結果は、背腰長II、ロース断面、交配組合せのF値がそれぞれ1%水準で有意であり、脂肪は頗、背の順に枝肉重量に影響を与える傾向を示した。

19.ふん尿の多量施用が飼料作物の硝酸態チッソ含量におよぽす影響

坂本登・辻久郎・鴻江政雄

ふん尿の多量連続施用と飼料作物中の硝酸態チッソ含量との関係について調べ、さらに、家畜が硝酸中毒をおこさないNO3-N含量でのふん尿連続施用、施用量について検討し、以下の結果を得た。

  1. イタリアンライグラス、ヒエ、ローズグラス、エンバクなどはソルガム、トウモロコシよりもNO3一Nがの蓄積しやすい草種であり、生育ステージが若いほど、ふん尿施用量が多いほどNO3-N含量が高い傾向が見られた。
  2. 単作施用の場合、出穂から乳熟期刈りのソルガム、乳熟から湖熟期刈りのトウモロコシでは20トン/10アール、出穂期刈りのヒエ、ローズグラスでは10トン/10アールがふん尿施用限界であろうと思われる。
  3. 本研究におけるような施用法で連続施用する場合、施用量は10トン/10アール程度であろう。ふん尿を多量に施用しても、その後無施用の場合、2作目にはほとんど残効がなくなった。

20.年4回等量飼育を前提とした機械収穫桑園の設定試験

下村光男・館克之・田野兼吉・大辻英敏・岡山裕

  1. 栽桑労働時間は、機械力作業は減少したが人力作業は増加した。作業別労働時間においては株直しと株間除草に多くの時間を要した。
  2. 桑収穫量は、晩秋蚕期(48・49年)については概ね収穫量を確保し得たが、他蚕期は何れも少なく、就中初秋蚕期は少なかった。
  3. 施用量の多さと桑収穫の関係は肥料を増施することにより収量の増加は認められるものの、その増施効果は小さい。
  4. 収穫時期別収量(新しよう・葉)は年間では残条法が多く、次いで夏切法、春切法の順であり、夏切法と残条法は伐採時期の遅いはど年間収量が多く、春切法は初秋蚕期収量が早いほど多かった。
  5. 晩秋蚕期収穫前の枝条の発育(49年)は残条法が総条長が長く枝条数も多かった。
  6. 故障称の発生状況は残条法が萎縮病(軽症)が多発した。
  7. 飼育経過日数は各蚕胡とも計画と大差なかった。給桑量については各蚕期とも計画より多く用いたが、上繭収量は計画にとどまった。特に春2蚕期に玉屑繭が増加し上繭結繭割合が低く、併せて繭の解じょ率が低かった。
  8. 育蚕作業時間は4蚕期計539時間、上繭収量647kg、上繭100kg当り83時間となり概ね計画どおりであった。
  9. 桑とり作業で春2蚕期の条桑収穫は収穫条桑の直径が3cm以上のものが多く、耕うん機用条桑刈取機による収穫は不可能であった。
  10. 1日1人8時間(実働)以上を必要とする日は年間6日あり、上蕨当日lこ多く現れた。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 農業研究所 〒515-2316 
松阪市嬉野川北町530
電話番号:0598-42-6354 
ファクス番号:0598-42-1644 
メールアドレス:nougi@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000051686