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平成21年01月27日

研究報告第9号

1.イネミズゾウムシの生態と防除に関する研究 第1報三重県におけるイネミズゾウムシ初発見の経緯と早期栽培における発生消長

粥見惇ー・坂下敏

  1. 三重具におけるイネミズゾウムシの初発見は、昭和53年5月16日、桑名郡木曽岬村、および四日市市赤水町の2カ所において同時であった。発生範囲はきわめて広く、北勢地方全域および中勢、南勢地方の一部にも発生を確認した。
  2. 初発年における広範囲な発生は飛翔によるものと推定されたが、53年8月名古屋植物防疫所の調査により伊勢湾上での飛翔が立証された。
  3. 早期栽培地帯において4月25日、5月10日、5月25日に田植を行ない、発生消長を調査した。越冬成虫の消長は4月25日植、5月10日植でははとんど差異がなかったが、5月25日植では異なり、最多発生期は約1カ月遅れた。これは周辺のイネにくらべ生育が遅いため、軟らかいイネに集中したものと考えられた。
  4. 株当たり越冬成虫の生息数は1~2頭が大部分で、多発時で最高6頭であった。
  5. 幼虫の消長は田植時期による変動は見られず、最多発生期は6月下旬から7月初旬であった。幼虫期間は田植時期が早い程長くなった。蛸の最多発生期は7月4~5半旬で、田植時期による差は認められなかった。
  6. 新成虫は7月初旬から出現し、7月末に最多発生期となった。新成虫はイネよりも畦畔のヒエ等軟らかい葉を好んで食害するのが認められた。

2.イネミズゾウムシの生態と防除に関する研究 第2報採集時期を異にした越冬成虫の卵巣の発育

坂下敏・粥見惇一

イネミズゾウムシの発生生態の解明と防除法確立のため、採集時期別に定温飼育し、平均寿命日数及び卵巣の発育状況調査を行なった。

  1. 採集時期別にすべて死亡するまで飼育した越冬成虫の平均寿命日数は、昭和54年8月1日から起算して2月採集区で307日(イネ)と293日(シコクビエ)、3月採集区で308日(イネ)と268日(シコクビエ)、4月採集区で300日(イネ)と310日(シコクビエ)となり、平均して297.7日と推定した。
  2. 平均寿命(297.7日)を暦日に換算すると、昭和54年8月1日から5月24日迄となり、河芸町久知野における発生消長調査(第1報)での成虫最多発生期(5月23日)に近い日となった。
    したがって、本虫を3月頃に越冬地から採集して定温(25℃)飼育して得られる平均寿命日数で越冬成虫の最多発生期が予測できると考えられる。
  3. 採集時期別に卵巣の発育状況調査を行なった結果、本虫にイネ科植物を摂食させ、定温(25℃)飼育すると、2週間後調査で、2月及び3月採集区に卵巣の初期発育が認められ、4月及び5月採集区では、卵巣小菅と輸卵管に完成卵を交えるかなり進んだ卵巣の発育が認められた。
  4. 卵巣の発育過程における50%完成卵日(卵巣発育段階基準Ⅲ以上が50%となる日)の推定日を暦日温度下の推定日に換算すると、2月採集区で5月4日(イネ)と5月14日(シコクビエ)、3月採集区で5月20日(イネ〉と5月22日(シコクビエ)、4月採集区で5月19日(イネ)と5月22日(シコクビエ)、5月採集区で5月21日(イネ)と5月18日(シコクビエ)となり、平均して5月19日と推定され産卵最盛期は5月25日前後と考えられる。この産卵最盛期は、第1報で若令幼虫の最多日が6月13日であることからも推定される。
  5. 産卵最盛期のすすむ5月下旬~6月上旬にかけて、成虫の体内蔵卵がいちじるしく高まり死亡虫が目立ってくる。すなわち、産卵能力の低下にともない体内蔵卵は増加し、やがて越冬成虫は死亡する。

3.三重県における水田農業の受委託について実態と分析

小河内一司

  1. この調査研究の目的は、耕地について、受託者の有利な買い手市場のもとでは、受託により規模の拡大をはかり、土地利用型の経営が方向づけられる。しかし乍ら、県下では水稲作の受委託は、機械作業の受委託が多く、全面受託への発展は少ない。そこで全面受託をおこなっている組織および経営体を対象に成立の条件を明らかにする。
  2. 研究方法として3つの細目課題、(1)稲作の受託方法と採択条件(2)稲作の全面受託方式と成立条件(3)稲作の全面受託方式の適用、について検討した。
  3. 調査対象は(1)度会郡玉城町勝田実行組合、(2)三重郡菰野町鵜川原地区、有限会社AMC、松阪市花岡町受託者グループ(通称・松阪農耕)、の受託経営体を対象とした。なお調査は昭51~53の3ケ年、方法は記帳、きゝとり、資料集収によった。
  4. 委託を選択する条件として、(1)50a以下層の階層では、コストのかゝった収益メリットの少ない水稲作がおこなわれている。(2)労働力の有無に大きく影響されるものであって、労働力の不足が自作による生産のとりやめを決定することになる。
  5. 受委託方法の類型は、受委託方式の事例から、2兼化のすゝむ中で、この階層を対象に機械による賃作業を実施した類型と、いま1つは水田生産の構造改善の狙いのもとに、積極的に基盤整備と生産力を上げるべく、耕作の機械化を指向してきた地縁的な集団組織に類別できる。
  6. 作業受託組織については、問題は受託作業量の確保にあるが、そのためには同業者が連合をおこない、互に作業の欠落部分をおぎない、受託量の拡大をはたしている。またこのシステムの編成は全面受託を可能にしている。いま1つの条件として、地代の低い点があげられる。問題は耕地の地縁的に集団化できにくい点であり、耕地の集団化程度が生産力の向上を規制するという問題をのこしている。
  7. 地縁的な集団組織については、(1)協業経営の形態をとっているが、専従者を析出し、組合員はこの専従者に委任する全面委任型の協業経営に発展している。この形態は耕地の集団化が可能であり、土地利用の向上をめぎすことができる。(2)これが成立するためには、高い生産性と専従者の経営主体としての独立にあるが、この点ア.水稲作技術の機械一貫化とイ.析出された専従者に対する専従者報酬がえられる分配システムを作っていることが、この組織の存続発展の要因になっている。
  8. 稲作の全面受託方式の適用については、土地利用の地縁的な集積を指向する場合、水田所得に対する期待の大きい農家の要求を満たす生産技術の選択が必要である。これに対して、分散耕地を対象とする場合では、地代要求の低い農家を対象とすることになる。
  9. 今後の問題として、耕地の集団的利用をはかるため、土地集積をすゝめる上で、土地流動化を阻害する事項の解明と対策の確立が必要となる。

4.ナタネ根こぶ病の防除

長江春季・石川裕一・富川章・田上征夫・松井正夫

三重県桑名郡長島町一帯で、水田裏作として栽培されているナタネ(なばな)に数年前から根こぶ病の被害が増大し、一時は産地絶滅の懸念すらもたれた。そこで、1977~1979年に本病防除試験、農薬残留量調査を行なった。

  1. ナタネ根こぶ病の苗床に於ける防除法を検討した結果、バスアミド粒剤30kg/10a処理の効果は顕著で、苗床での発病は完全に抑制された。次いでPCN8粉剤20~25kg/10a、PCNB油剤400倍3リットル/m2、の効果が高く、PCNB剤は石灰窒素と併用することにより効果の高まる傾向がみられた。また石灰窒素100kg/10a、NK510粉剤10 50kg/10a、ダコソイル粉剤40kg/10aの効果も高かった。
  2. 苗床処理の各薬剤区について、それに引続く本田でも薬剤処理を行なった場合は、本田で無処理の場合に比べて各薬剤処理区とも発病を若干抑制する傾向がみられたが、ナタネの生育には殆ど差がみられなかった。
  3. 本田に於けるナタネの生育は、苗床処理の効果と関連性が高く、その効果が高かった区ほど、本田での生育も良好であった。
  4. 長島町での作型に於いて、なばな生産の見地から考えると本病防除対策として最も重要なのは、苗床に於ける防除であり、これが完全に効果を発揮した場合は本田での発病被害が少なく、本田に於ける防除が困難な場合でも、なばな生産には大きな影響がないことが認められた。
  5. 本田に於ける防除は省略しても、大きな被害はないが連作条件下においては長期的展望の観点からすると、病株数を少しでも抑制する意味に於いて、本田防除も必要と考えられる。
  6. 防除薬剤としてはバスアミド等、有効な薬剤についてはいずれもナタネに農薬登録がないので、現状では直ちに実用化には至らない。しかし、石灰窒素は肥料なので即実用化でき、その100kg/10a処理は、苗床、本田の何れに於いても有効で、使用法を誤らなければ薬害もなく有効な実用的防除手段である。したがって連作条件下では苗床、本田とも石灰窒素の施用による防除法を当面採用するのが妥当と考えられる。ただし、連作施用によるイネ作への影響については十分な考慮が望まれる。
  7. PCNB粉剤、ダコソイル粉剤の処理区でナタネの可食部(なばな)に於ける農薬残留量分析の結果はPCNB0.00004~0.00032ppm、ダコソイル0.00000(検出限界以下)でいずれも登録保留基準以下であった。

5.三重県における温州ミカン園土壌に関する研究(第2報)土壌および葉成分と果汁成分との関係について

安田典夫・米野泰滋・大森螢一

温州ミカン園における栄養診断の基礎資料とするため、土壌の種類別に土壌、葉および果汁成分について分析調査を行ない、つぎのような結果が得られた。

  1. 葉成分は地区および土壌の種類によって差がみられ、とくに窒素が顕著であった。
  2. 診断基準からみると、北勢地区は窒素、燐酸、カリともほば基準値付近の園が多かったのに対し、南勢地区および紀州地区は窒素、燐酸の低い園の割合が高かった。
  3. 葉中マンガンと土壌中置換性マンガンとの関係は南勢地区の花崗岩粘質土壌で高い相関が認められた。一方、土壌中にマンガンが適量以上含まれていても、葉中含量が少ない園があり、pHの影響と思われる。
  4. 果汁成分については土壌間に差があり、果汁中クエン酸は北勢地区の洪積層土壌および古生層土壌、南勢地区の洪積層土壌および花崗岩枯質土壌がそれぞれ高く、一方、紀州地区は土壌間にあまり差はみられなかった。糖は北勢地区の古生層土壌、南勢地区の洪積層土壌、紀州地区の花樹岩土壌がそれぞれ高かった。
  5. 葉成分の相互関係のうち、とくにカリ、カルシウムおよびマグネシウムの間に負の相関があり、きっ抗作用がみられた。
  6. 果汁中クエン酸を目的変数として重回帰分析を行った結果、重回帰式は
    y=0.939-0.471X2(地域差)+0.033X4(pH(KCl))
    +0.114X20(葉カリ)-0.051X21(糞力ルシウム)
    +0.324X22(葉マグネシウム)+0.001X23(葉マンガン)
    が得られた。これは重相関係数が0.806であり、必ずしも満足できる式ではないが、今後、説明変数の選択などさらに検討が必要であると思われる。

6.みかんジュース粕の乳牛への給与に関する研究

東原信幸・伊藤雄一・白山勝彦・横山勇

乳牛に対して乾燥みかんジュース粕を配合飼料に最高20%までと、40%まで混入した試験、ならびに現地試験を実施したところ、次のような結果を得た。

  1. 飼料摂取状況と噂嗜好性について検討した。給与当初の食い付きの悪さがみられたが、その嗜好性は乳牛個々の差と思われ、全体的にみて僅かながら混入率の高い区ほど採食率は低下する傾向を示した。
    全飼料から摂取した粗繊維の摂取乾物量に対する割合は、給与水準に比例して高くなり、その値は20%から17.6%と適正なものであった。
  2. 温州みかんのジューズ粕について飼料分析をしたところ、その成分は原物中粗蛋白として5%前後、粗脂肪1.2%前後、可溶無窒素物55%前後、粗繊維9%前後および粗灰分は12%余で、日本標準飼料成分表に示す成分値とほぼ類似していた。その特徴は、炭水化物と粗繊維が多く、低蛋白質で、乾物中可消化養分総量は80%内外と推算された。
  3. 乳量およびFCMにおいては、20%まで混入した場合は各水準間で差は認められなかったが、40%混入によりわずかながら低下する傾向を示した。
  4. 乳質において、乳脂率はいずれの試験においても有意な差はみられず、無脂固形分率についても混入率が高くなるにつれてわずかに低下する傾向があったが、有意差ほなかった。牛乳の色に着色変化は認められず、また臭気についての異常は認められなかった。
  5. 粗効率は、いずれの試験においても差異は認めなかった。
  6. ルーメン液の性状について検討したところ、VFAの組成モル比において、酢酸、プロピオン酸、酪酸は各水準間で差はなかった。酢酸とプロピオン酸との比率は4.3~4.1%の範囲で、差異はなかった。
    また、酢酸、プロピオン酸、酪酸のモル比は、通常より多く、いずれの区も4.3~4.1:1:0.8~0.7の範囲であった。
  7. 試験期間中、供試した乳牛について軟便、下痢などの異常牛はなかった。
  8. ジュース粕の飼料としての経済性を検討するため、養分からの適正価格を算出したところ、市価の方が安く、経済的な飼料であることがうかがえた。

7.日周期延長が鶏の産卵性に及ぼす影響

水野隆夫・和田健一・阿部清

産卵ピークを過ぎて産卵が徐々に低下してきた鶏に対して、日周期を35適齢より25時間、さらに49週齢より26時間へと延長した場合とリ、35適齢より25時間、さらに62週齢より26時間へと延長した場合、従来の24時間日周期と比較して産卵性、飼料利用性等に差が生ずるかについて、二鶏種を用いて検討した。

  1. 日周期延長が産卵性に及ぼす影響は鶏種、日間期切替時期の差により反応が異なった。
    35週齢より25時間、さらに62週齢より26時間へと日周期を延長することにより、両鶏種とも2~2.5%ほど産卵率が向上したが、25時間から26時間への切替時期を49週齢に早めると、その時点で高い産卵率を示していたB鶏種は産卵率が低下した。なお、A鶏種は49適齢切替でも2%ほど産卵率が向上した。
  2. 飼料摂取量は日周期延長により増大したが、飼料要求率は差がなかった。
  3. 生存率、卵重については日周期延長による影響はみられなかった。
    日週期を24時間から25時間、さらに26時間へと延長する日令について検討したが、日令を基準として日周期を延長するよりも、産卵率が何パーセントになった時点で、その処理を施すかという方向で、今後検討することが必要と考える。
    今回の試験結果から推察すれば、鶏群の産卵率がピーク時の90%を超える時点から漸次低下してきて、約85%になった頃に日周期を24時間から25時間に延長し、その後、約75%に産卵率が低下した頃に25時間から26時間へと切替えるのが適当ではないかと考えられる。

8.液体窒素で15年保存した牛凍結精液による受胎試験

白山勝彦

著者はさきに、液体窒素中で5年以上10年まで保存した牛凍結精液を用いて受胎試験を行ない、授精した計212頭の受胎成績を保存期間ごとに明らかにした。その結果、精液によっては凍結直後のものに比べて受胎率に若干の低下が認められることがあるものの、実用上なんら遜色のない成績が期待できることを明らかにし、あわせて分娩された子の性比ならびに在胎日数などをしらべて、その概要を本誌第5号(1976)に報告した。
牛の凍結精液は、理論的には半永久保存が可能であろうと推測されており、したがって保存経過に伴う受胎能力を逐次実証していくことは、意義のあることと考えられる。
しかし、10年以上を経過した長期保存精液について受胎能力を実証した報告はきわめて少なく、著者の知る限りではたまたま、川口ら(12年保存、1975)の報告とMixner(12年保存、1968)の報告をあげ得るにすぎない。
前報に記したように、昭和37年に当時の三重県畜産試験場が京都大学の協力を得て、長期保存を目的として精液の備蓄を開始したが、その精液の一部がようやく15年を経過し、融解して精子生存性をしらべたところ、15年前の性状と変わるところがなく、受胎試験に供し得る見とおしを得た。
そこで、県下小俣町で受胎試験を行ない、その成績を取りまとめたので報告する。

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