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研究報告第13号

1.水稲早期栽培地帯における大規模穀類乾燥貯蔵施設に関する研究

田中正美

  1. 高水分籾が集中して搬入される早期稲地帯における大規模穀類乾燥調製貯蔵施設のあり方とその利用について検討した。
  2. 稲収穫ピーク時に連続して荷受け量を高めるためには、原料籾の二段乾燥方式が優れ、原料籾を通風貯留ビンと乾燥機との連動で半乾燥して半乾燥籾をローテーション可能なタンク又はサイロに貯留する。このサイロを籾貯蔵にも利用する方式とする。
  3. 現在のドライストアーについては、通風貯留ビンによる予備乾燥と乾燥機による仕上げ乾燥を同時に行なう方法が、荷受け能力を高め籾品質の面からも最も望ましい方法である。通風貯留ビン数・容量の算出法は、(1)・(2)・(4)・(5)式である。
  4. 原料籾を乾燥機でストレート乾燥し、残った生籾を通風貯留する方法は、荷受け能力が低く、籾の品質低下を防止するために通風貯留時の風量比の確保とローテーション機能が必要である。
  5. 連続乾燥械と大型循環型乾燥機とを比較すると、大型循環型乾燥機(20tが3機の場合)、乾燥能力当たり施設費・電力が少なく、乾燥機に原料籾を投入した後無人運転が可能であった。
  6. 通風貯留ビンは、大型循環型乾燥機に比し籾貯留能力は高いが、乾燥のみの利用では経済性が劣る。

2.イチゴの立体栽培に関する研究

庄下正昭・伊藤重雄・西口郁夫・東上・剛福永勉

イチゴを立体ベンチで栽培し、単位面積当りの収量増を図ることが、イチゴ栽培での経営効率を高め、作業の快適性が図られるものと考え、ベンチの培地組成、培地の連用、栽植密度、そして裁培にまつわる気象環境の把握、加えて立休ベンチ栽培における労働生産性、経済性および作業性について検討したところ次のような成果を得た。

  1. イチゴの生育、収量には、光(日射量)が大きく関与し、日射量が少ない栽培位置は、収穫始期が遅れ収量も低くなるので、ベンチ構造は南北配置3段式が適していると認められた。
  2. 栽培培地は、山砂とモミガラ牛糞堆肥又はバーク堆肥を2:1の客積比に混合したものが、実用性の高いことが判明し利用価値を認めた。
    なおモミガラ牛糞堆肥は、自家製で簡便に作ることが出来、資材も県内で安価に入手出来、そして製品も安定していることからも、実用性は高いと思われた。
  3. 培地連用の実用性は、モミガラ牛糞堆肥培地の5年連用で、新培地とほぼ同様の収量性があり、連用の可能性が十分あることが認められた。
  4. 立体ベンチの栽植密度は、ベンチ1条植、株間15cm(3段ベンチ、株当り培地量3リットル)が適当であり、10a当り19,000株内外は植栽出来ることが判った。
  5. 単位面積当り労働時間は、地床栽培(10000株/10a)に対し、立体ベンチ栽培の栽植株数が倍近くにもかかわらず、1.3倍程度であり省力化が図られた。
    なお作業性についても、収穫作業の消費エネルギーで、地床栽培対比80%と、かなりの快適性が認められた。
  6. 経済効果としては、10a当り粗収益が地床栽培対比140%、所要経費が150%内外である結果を得たが、時間当り所得としては、地床栽培と同等であることも判った。

3.潜熱蓄熱材を利用した太陽熱温室暖房に関する研究

西口郁夫・伊藤重雄・山口省吾

1980年12月から1983年3月まで、当センターのビニル温室内に潜熱蓄熱材を収納した空気集熱式蓄熱槽を設置して、太陽熱利用の温室暖房の可能性を検討した。

  1. 潜熱蓄熱材としてポリエチレングリコールと芒硝系資材を用いたが、潜熱蓄熱能力が大きくかつ安定的な、価格の安い芒硝系資材がすぐれていた。
  2. 蓄熱装置は棚板方式、パイプ方式および吊り下げ方式を試みたが、集熱効率が高く、小型で施工の簡便な吊り下げ方式蓄熱装置が一番よかった。
  3. 芒硝系蓄熱材の吊り下げ方式蓄熱装置は実用性が高く、集熱効率は約0.1で、厳寒期の室温6℃維持日数は調査期間中の80%であった。この温度は期間変温管理下のトマト栽培では収量・品質に問題はない。しかし調査期間中の10%にあたる4℃の日については補助暖房が不可欠となる。
  4. 相対湿度の日変化は無加温室に比べて少なく、夜間の湿度は低かった。また蓄熱材容器に付着する凝結水は午前中に多く、集水方法の改良を行えば過湿対策として有効である。
  5. 以上のことから、芒梢系・吊り下げ方式潜熱蓄熱システムは既設の温風機などの補助暖房と組合せれば、同じ内部集熱型の地中熱交換システムと同等か、それ以上の効果が得られる。

4.野菜育苗用播種作業の機械化に関する研究

横山幸徳・前田拓・細野満典

野菜移植栽培における大量育苗方式の導入の際に、播種作業労力の集約化が問題となる。この播種作業の省力化対策技術として、育苗用播種機の開発改良を行ないこれを解決しようとした。磁性粉体粉衣種子を用いる永久磁石式播種機の試作、さらに種子1粒汲み上げ装置付磁石播種機の試作、続いて、裸種子(普通種子)用の摺動式目皿播種機の試作を行なった。この試作播種機3機種について、播種精度と作業能率および間引き・補植時間を検討し、試作摺動式目皿播種機を軸とした播種作業能率と最適組人員について現地実証試験を実施した。

  1. 永久磁石式播種機の性能を、種子の形状・粒径・重量の異なるタマネギ・ハクサイ・ブロッコリー・レタスを供試し、各種子について播種量制御法を検討した。磁石と粉衣種子の磁極間距離を変えることにより、1株播種粒数を2~4粒に制御することが明らかとなった。しかし、粒数分布の巾が大きく間引き時間を多く要する問題が懸念された。
  2. 種子1粒汲み上げ装置付磁石播種機の播種精度は、汲み上げロッド径・孔径・孔深の大小により1株平均播種粒数が変化し、上記4作物種子について最適ロッド形状が明らかとなった。タマネギ・ハクサイでは、孔径2.8mm、孔深0.75mmの時、1粒播種分布が94~96%確保でき、ブロッコリーでは孔径2.5mm、孔深0.5mmの時、1粒播種分布が94%となった。しかし、レタスは、粒数分布巾が1~4粒に向上したものの、最適形状を見い出すことが困難であり、播種の均一化について更に検討が必要である。なお、ロッド材質は、常磁性物質のステンレスが最適であることも明らかとなった。
  3. 間引き・補植作業能率と播種粒数の関係は、2粒播種が最も能率的であり、続いて1粒・3粒・4粒の順となった。試作永久磁石式播種機の1箱当たり播種時間は、0.3分と非常に高能率であるが、機械的欠株の生じない1株平均播種粒数は4粒程度であるため、間引作業能率が悪く、播種~間引き・補植作業全体の能率からみれば2粒整一播種する機能を持ち、1箱2分以下の播種能率の播種機が良いことが明らかとなった。
  4. 摺動式目皿播種機の播種精度(ブロッコリー)は、シャスター・東京みどりの各品種では、2粒播きが60~70%確保でき、欠株率も2~3%であった。しかし、種子粒径が不均一の中生2号の播種精度が悪く、粒径を各段階に分類する前処理が必要であり、各分類毎に適合する目皿の交換が必要なことが示唆された。作業能率は、組人員11人の時ペーパーポット展開~潜水までの処理箱数は58.5箱/時であり、組人員16人では98.5箱/時となった。連続作業実施可能な最低組人員は11人必要であることが明らかとなった。
    このように、磁石式播種機・目皿播種機ともに、整-2粒播種が可能で、しかも1箱30秒以内の播種能率の機能を持つ播種機に改良する必要のあることが、現地実証試験を通じて明らかとなり今後さらに、研究を継続する必要があろう。

5.ハネギ育苗移植の機械化に関する研究(第1報)

細野満典・前田拓・横山幸徳

1979年よりハネギの育苗移植の機械化のため、田植機利用について険討した。

  1. 育苗については、田植機で植付けられる苗質として、草丈15~20cm、茎径2~3mm、葉数2~3枚を目標に、又1株6~7本を均一に植付けるため1箱の苗立本数を4100~4700本を目標として、1箱当りの播種量、播種様式、床土の種類、育苗管理などの検討をした結果、床土種類はスーパーソイル(黒ボク9:スーパーソイル1)7:ピートモス2:ジョアソイル1の容量比で混合したものが良く、播種様式では条播が散播より苗質、苗立の揃いなどが良く、播種量は15g/箱程度で目標の苗立本数が均一に得られることがわかった。しかし苗の茎径、葉数は目標よりやゝ不足した。
  2. 移植精度については圃場の砕土性として、2cm以下土塊が80%程度以上必要であり、移植後は灌水することが必要であった、田植機は強制爪付きのものを利用して、2cm以上土塊99.2%の砂壌土で損傷苗率15.7%、欠株率3.5%となり、欠株発生は苗立の不揃によるものと思われた。移植能率は10a当り1.35時間こ 2人組作業で延2.7時間となり慣行より大巾に省力化された。生育収量については、植付後82日で草丈55.2cm、葉数3.4枚となり、生育期間が長くなった。
  3. 栽植本数は田植機の株間設定16cmで2.4mの畦巾で6条植として10a当り14,476株となった。
  4. 今後、苗質の向上により植付後の活着生育の促進について、又苗立の揃いを良くして、1株植付本数の均等性を良くするなどの検討が必要と思われる。

6.K.Ca.Mgの施用が早生温州の樹体および土壌におよぼす影響 第1報 樹勢、収量、果実特性について

浦狩芳行・森本拓也・橋本敏幸

早生温州の早期出荷を行なう方法の一つとして、N、Pの施用を一定にし、K、Ca、Mgの施用量を組み合せ、圃場試験を8年間行なった。その結果、次の成績が得られた。

  1. 幹周、樹容積の伸長率が大きかったのは、K、Ca、Mgの施用割合が(多少多)(中少少)であり、小さかったのは(少少多)であった。
  2. 収量が多かったのは(中多少)(中少多)で少なかったのは(多多多)(少少少)であった。隔年結果が少なかったのは(少少少)(中多多)であり、多かったのは(多少多)(多多少)であった。
  3. 果皮色が濃橙であったのは(中少少)(中多多)で、淡橙であったのは(少少少)(中少多)であった。可溶性固形物が高かったのは(少少多)(少多多)であり、低かったのは(中多少)(中多多)であった。クエン酸含量が少なかったのは(中多少)であり、多かったのは(少多少)であった。
  4. 施肥組み合せと樹勢とでは主効果、交互作用とも有意差は見られなかった。収量とでは、主効果がKにあり、その他では主効果、交互作用とも有意差は見られなかった。果実特性とでは、主効果がKで可溶性固形物およびクエン酸含量に見られ、交互作用はK×Ca、K×Ca×Mgで見られた。
  5. 以上の結果、樹勢、収量、隔年結果、果皮色、可溶性固形物、クエン酸含量を考慮すると、標準(慣行)の(中少少)又は(中少多)の施用割合が栽培上好ましいと思われる。

7.北勢地域における多肥栽培茶園の土壌溶液法による実態解析 第1報調査圃場の土壌条件と土壌溶液濃度と土壌成分濃度との関係

吉川重彦・橘尚明・松田兼三

北勢地域の“かぶせ茶"栽培での多肥茶園の実態調査を行い、土壌の特徴およひ土壌溶液法の検討を行った。

  1. 土壌は黒ボク土壌又は礫質土壌であった。施肥窒素量は130~300kgーN/10aが畦間部に施用され、畦間部は強酸性を示し、高濃度の土壌溶液によりCaさえも溶脱されていた。畦間部と株下部は極端な土壌成分濃度の差があり畦間部の根は腐っていたが株下部は健全であった。
  2. 土壌成分濃度と土壌溶液濃度との間には陰イオンでは高い相関関係がみられ、又、陽イオンでも畦間部では相関係数が高かった。
  3. 土壌成分濃度と土壌溶液濃度の変動係数も畦間部では似たような値を示し、畦間部では多量の施肥により土壌溶液が支配的な場面であることが推察された。
  4. 施肥窒素量と土壌溶液の間もー定の相関が認められた。以上の検討を通じて現場採取の土壌溶液法が多肥栽培茶園の実態解析に有効な手法であることがわかった。

8.暗渠排水における地下水位低下と排水時間に関する研究 第3報農家のほ場における暗渠排水試験

磯島義一

農業機械が大型になって作土直下を輪荷重で締固めた結果堅い層が生ずる。弾丸暗渠等を施エして、水か滲透しやすいようにすることが望ましい。
隣接ほ場沿いに敷設する本暗渠は、隣接ほ場からの滲透水の遮断に役立つ。
大豆の生育途中の前半は梅雨と重なり、生育が劣る。この時期に根及び茎が十分発育をしなければ収量は十分期待できない。暗渠からの排水以外に畦及びその溝を設けて地上の排水方法をとらなければ安定した収量が十分期待できないと思われる。

9.暗渠排水における地下水位低下と排水時間に関する研究 第4報室内試験における理論と実際

磯島義一

透水層の底に暗渠を2Lの間隔で設けた場合、任意の位置及び時刻における水深yを表す関係式は
y=HoZ×1/((kHot/αL)+1)
Ho(cm)はt→0のとき暗渠と次の暗渠の中央における水深
Zは第一表に示されるものでX/Lに対する値である
αは暗渠で排水できる水に対する土壌全体の体積比。
Lは暗渠間隔の半分の数値(cm)
tは時間(sec)
kは透水係数(cm/sec)
実験より得られた数値を使って理論式(3′)より透水係数を求めた結果、粗砂については0.097から0.17cm/S、細砂については0.019から0.036cm/Sの範囲の数値を得た。
平均の透水係数を使って粗砂及び細砂についてそれぞれ理論の水面曲線を計算した結果、実測の水面曲線に近い理論曲線を得た。
理論と実際の水面曲線はよく合うという結論を得たが、理論式はダルシーの法則、即ち透水速度は動水勾配に比例するという法則から出発しているので、ダルシーの法則が今回実験材料に使った細砂及び粗砂について、非常によい精度で適合していることが確認された。

10.三重県の農耕地土壌に関する研究(第4報)土壌の重金属類等の含量について

米野泰滋・安田典夫・戸田鉱一・戸波多美子・広瀬和久・児玉幸弘・石川裕一

三重県の農耕地土壌および農作物、かんがい水中の重金属類含量について調査し、重金属類の相互関係等についても検討を行った。

  1. 土壌中の重金属類含量について、水田土壌では、全国平均値にくらべ、カドミウム、鉛、砒素は同程度、亜鉛、銅はやや低かった。
    土壌の種類別には、西員弁地域の土壌統群で高いものが認められたほかは、余り明らかではないが、カドミウムは細粒灰色低地土・灰褐系、細粒強グライ土等でやや高い傾向がうかがわれ、また土性が細粒質のものも高い傾向が認められた。銅は多湿黒ボク土が低い傾向を示した。
    普通畑土壌では、全国平均値にくらべ、カドミウム、砒素は同程度、銅は・竄竰痰ュ、鉛はやや高かった。
    樹園地土壌では、全国平均値にくらべ、カドミウムは同程度、亜鉛、銅、鉛、砒素は低かった。
    土壌の種類による差は明らかではないが、黒ボク土の銅含量は水田と同様、低い傾向が認められた。
    地目別の重金属類含量を比較すると、カドミウムは最高値で水田がやや高い傾向があり、亜鉛、銅、砒素は樹園地が最も高く、ついで水田で、鉛は水田が最も高く、普通畑土壌はいずれも低かった。
    各重金属類の最高値は、いずれも水田で認められたが銅、砒素とも規制値をこえるものはなかった。
    地域別の水田土壌重金属類含量は、西員弁地域を含む流域が明らかに高いが、その他の地域では特に異常なものは認められなかった。
    重金属類含量の経年変化をみてみると、水田土壌では余り変化は認められなかった。畑土壌では亜鉛、銅などが、最近になってやや増加の傾向にあるが、地点数が少なく必ずしも明らかでなかった。
  2. 農作物中の重金属類含量について、水稲玄米では全国平均値にくらべ、カドミウム、砒素は同程度、鉛はやや低かった。
    玄米中カドミウム含量は、土壌の種類別には明らかな傾向は認められなかった。
    普通畑の大根では、ほぼ全国平均値と同程度であり、樹園地のみかん、茶ではいずれも低かった。
  3. かんがい水中の重金属類含量については、全国平均値よりいずれも低かった。
    経年変化は大きなものはないが、最近、亜鉛がやや高い値を示した。
  4. 土壌中の重金属類の相互関係について、全体としてみると、カドミウムと亜鉛との間には高い相関があり、鉛、砒素との間にも、年次によりかなり高い相関がみられた。しかし、土壌の種類別、地域別等にも区分してみると、一定の傾向はみられなかった。
  5. 土壌と玄米中の重金属類の相互関係について、土壌中のカドミウムをはじめ、いずれの重金属頼も、玄米中のカドミウム含量との間に、一定の傾向は認められなかった。

11.家蚕の稚蚕人工飼料育における光線管理技術に関する研究

石原林・中田弘道

  1. 稚蚕人工飼料育における光線管理技術の実用化をはかるため稚蚕期における明暗切替について、飼育温度および飼料形態の面から検討し、次に壮蚕期における照明飼育および幼若ホルモン様物質(JHA)の投与について検討した。
  2. 稚蚕期における飼育温度については、26℃の場合、3つの明暗リズム条件下とも飼育成績が劣り、30℃の場合には眠蚕体重は重くなるものの4齢起蚕率は低く、28℃の場合に最も良好な成績が得られた。一方光条件に対する反応性は、それぞれの温度条件下で同様であった。
  3. 稚蚕期における飼料形態は切削飼料が、より良好な飼育成績であった。
  4. 発育経過については、壮蚕期における照明飼育によって発育経過が約半日~1日延長しJHAを投与した場合さらに延長した。照明時期についてみると、4齢後期および5齢後期が最も効果的であった。
  5. 繭重、繭層重は、照明飼育によって5~10%の増加が認められ、JHA投与によってさらに効果が増大した。照明時期については、4齢後期から5齢前期にかけての期間が最も効果的であった。
  6. 以上の結果から稚蚕人工飼料育における光線管理技術の実用化について考察した。

12.牛乳の無脂固形分に関する試験 第1報県内生産牛乳の品質と気象との関連

余谷行義・伊藤雄一・佐々木敏雄

1979年4月から1982年3月までの3年間、県下生産牛乳の品質と県内各地の気象データに基づき、牛乳の品質が気象によってうける影響の程度を、重回帰分析を用いて要因分析したところつぎの結果を得た。

  1. 各調査年度とも県下生産牛乳の約80%の乳質データがえられ、無脂固形分率と乳脂率の平均値はそれぞれ昭和54年度8.37%、3.45%、昭和55年度8.40%、3.53%、昭和56年度8.48%、3.53%となり、3か年の平均値ではそれぞれ8.42%、3.50%であった。
  2. 乳質の年間変動のうち、最高値は無脂固形分率、乳脂率ともに1月で、最低値は無脂固形分率7月、乳脂率8月となり、無脂固形分率、乳脂率ともに春、秋期を境にして冬期高く、夏期低かった。また、乳量の年間変動は最高値が4月で最低値は10月となり、夏、冬期を境にして春期高く、秋期低かった。
  3. 乳質の年度間の推移は無脂固形分率では、昭和54・55・56年度と漸次高くなり、乳脂率では昭和54年度にくらべ、昭和55・56年度が高かった。
  4. 乳質と各形質の相関関係
    1. 無脂固形分率:地域乳量、日照時間、風速、乳脂率との間に正の相関があり、最高気温、湿度、降水量、雲量との間に負の相関があった。
    2. 乳脂率:地域乳量、風速、無脂固形分率との間に正の相関があり、最高気温、湿度、降水量、雲量との間に負の相関があった。
  5. 気象要因が乳質におよぼす影響
    1. 無脂固形分率:寄与率は80.5%となり、相対寄与率は地域乳量26.4%、最高気温23.6%、風速21.5%、年次17.7%、雲量10.8%となった。無脂固形分率の変動中約45%が気象の影響によるものと思われ、また、同変動中約20%が地域の影響によるものと思われた。
    2. 乳脂率:寄与率は77.5%となり、相対寄与率は最高気温67.1%、雲量13.1%、年次10.2%、地域乳量5.7%、風速3.9%となった。乳脂率の変動中約65%が気象の影響によるものと思われ、なかでも同変動中約50%が気温の影響によるものと思われた。

13.牛乳の無脂固形分に関する試験 第2報飼養管理が乳質におよぽす影響

伊藤雄一・余谷行義・東原信幸・佐々木敏雄

1980年6月から1981年10月までの17か月間、南勢地域の12戸の酪農家の飼養する乳牛を供試して、乳質に関するデータを集積し、重回帰分析による要因分析を用いて、乳質に関する各要因の寄与の程度を分析したところ、つぎの結果を得た。

  1. 1.乳質と各形質の相関係数
    1. 無脂固形分率:全体として、初産年率、飼養経産牛頭数、粗繊維自給率との間に正の相関があり、細菌数、平均産次数、舎内温度、同湿度、濃厚飼料栄養比との間に負の相関があった。また、季節別ではこれ以外に、酸度との間に冬期で、経産年体重との間に夏期で、DCP適正度との間に春、夏期で、TDN自給率との間に夏、秋期で、DCP自給率との間に夏期で、生農産製造粕給与割合(TDN)、同(DCP)との間に夏期でそれぞれ正の相関があり、乾乳牛率との間に夏期で、経産年体重との間に冬期で、泌乳最盛期牛率との間に春、夏期で、TDN適正度との間に秋期で、DCP適正度との間に冬期で、濃厚飼料給与割合(TDN)、同(DCP)との間に夏期で、生農産製造柏給与割合(TDN)、同(粗織維)との間に冬期で、粗飼料栄養比との間に夏期でそれぞれ負の相関があった。
    2. 乳脂率:全体として、酸度、初産牛率との間に正の相関があり、乳量、細菌数、平均産次、舎内温度、同湿度との間に負の相関があった。また、季節別ではこれ以外に、経産年体重との間に夏期で、TDN適正度との間に春期で、DCP適正度との間に夏期で、TDN自給率との間に秋、冬期で、DCP自給率との間に冬期で、粗繊維自給率との間に夏、秋、冬期で、生農産製造柏給与割合(TDN)、同(DCP)との間に秋期で、濃厚飼料栄養比との間に冬期でそれぞれ正の相関があり、乾乳牛率との間に夏期で、泌乳最盛期牛率との間に夏、冬期で、濃厚飼料給与割合(TDN)同(DCP)、濃厚飼料栄養比との間に夏期でそれぞれ負の相関があった。
  2. 乳質に関する各要因の寄与率
    乳質に関する要因全体の寄与率と、各要因を牛乳、牛群、環境、飼料給与の4項目に分類して相対寄与率を求めたところ、つぎのようになった。
    1. 無脂固形分率:全体では、寄与率47.8%、相対寄与率は、飼料給与40.2%、環境31.2%、牛群23.1%、牛乳5.5%の順となり、飼料給与の寄与の程度が最も大きかった。季節別の寄与率は全体のそれをすべて上廻り、寄与の程度は大きくなった。相対寄与率の順位は、春期では、牛群、飼料給与、環境、牛乳、夏期では、飼料給与、牛群、牛乳、環境、秋期では、飼料給与、牛群、環境、牛乳の順となり、また、冬期では、飼料給与、牛群、環境、牛乳の順となった。
      季節別でも飼料給与要因は大きく寄与していたが、環境要因の寄与の程度は小さく、牛群要因の寄与の程度は大きくなった。また牛乳要因は、いずれの場合も寄与の程度は小さからた。
    2. 乳脂率:全体では、寄与率44.1%、相対寄与率は、環境40.8%、牛乳29.2%、牛群15.4%、飼料給与13.1%の順となり、環境の寄与の程度が最も大きかった。季節別の寄与率は全体のそれと同等か、若干低くなった。相対寄与率の順位は、春期では、環境、牛群、牛乳、飼料、給与、夏期では、牛群、飼料給与、牛乳環境、秋期では、飼料給与、牛乳、環境、牛群の順となり、また、冬期では、飼料給与、牛群、環境、牛乳の順となった。環境要因は全体では極めて大きく寄与していたが、無脂固形分率の場合と同様、季節別では小さくなった。飼料給与要因は全体では小さかったが、夏、秋、冬期で寄与の程度が大きく、特に秋、冬期には無脂固形分率のそれと同程度で大きく寄与していた。牛群要因は無脂固形分率のそれと同程度であり、牛乳要因は無脂固形分率の場合よりも寄与の程度は高かった。
  3. 乳質向上のための飼料給与
    飼料給与要因が無脂固形分率の全変動中に占める割合は20~35%と極めて大きく、また、乳脂率でも環境の影響が小さくなると、15~20%と大きくなり、適切な飼料給与が牛乳品質、特に無脂固形分率を向上させる大きな要因であると判断できた。本試験のなかで、飼料給与を考えると、夏期を中心とする高温期と、それ以外の季節に分ける必要があり、高温期の粗飼料は、自給飼料を中心とした良質粗飼料で、やや栄養比の狭いものを粗繊維給与量が下限値を下廻らないよう給与し、濃厚飼料もやや栄養比を狭くして少量給与とし、養分所要量は必要量を特にDCPで若干上廻る給与が良く、また、高温期以外では、粗飼料はやはり自給飼料が中心であるが、高温期にくらべて栄養比の広いものを十分給与し、適量の濃厚飼料を併用して、必要養分量を満足する給与が良いと思われた。

14.酪農における飼料給与診断、改善システムの利用とその効果 第1報全牛群の飼料給与について

坂本登・佐々木敏雄

  1. マイクロコンピュータによる乳牛飼料給与診断と給与改善システムを開発し、これを利用して給与改善を行った酪農家の飼料給与実態の分析と給与改善効果の検討を行った。
  2. 調査農家の平均飼養頭数は27.5頭、1日1頭当たり乳量は14.8kgと県下の平均値とほぼ同じであった。養分給与割合の平均値は、ほぼ適正であったが、飼料のTDN自給率は低かった。また、1日1頭当たり購入飼料費は、平均で850円であり、乳飼比は51.4%であった。
  3. 調査酪農家の飼料給与パターンは粗飼料購入型大規模酪農と粗飼料自給型小規模酪農に分類され、この2つのパターンに全体の75%が分類される。
  4. 飼料給与診断、改善システムの給与改善に対する効果は、飼料給与の適正化および購入飼料費の低減に認められた。

15.採卵鶏の育成期における制限給餌としての絶食方法

矢下祐二・水野隆夫・今西禎雄

採卵鶏の育成期における簡易的な制限給餌方法としての絶食法について、絶食処理の期間および開始時期の検討を加え、さらに量的制限給餌方法との比較を行うため春ふ化鶏を用いて実験を行った。
絶食処理の期間については6~10日間の絶食処理区が産卵率、飼料要求率で良好となり、1羽当たりの経済性でも対照区を上回る結果であった。また、12日間以上の絶食区は他の絶食区に比べて飼料要求率が劣る傾向がみられた。絶食日数を8日間にした場合、絶食開始週齢は14~16過齢が産卵率、産卵日量、飼料要求率で良好となり対照区を上回った。また、1羽当たりの経済性も実験区間で最も良好であった。すでに初産を開始している鶏に絶食を施したところ、産卵率が低下し飼料要求率も悪くなった。
以上の結果から16週齢時より8日間の絶食処理を施すことは10%前後の量的制限を施したものと同様の成績を示し、育成飼料の節約、産卵日量の増加がみられ経済効果が高かった。以上のことから、春びなの育成期における絶食法は16適齢時より8日間が最も適正であると考えられた。

16.傘型ガスブルーダーにおけるブロイラーの育すう温度に関する研究

水野隆夫・今西禎雄・矢下祐二

無窓鶏舎で傘型ガスブルーダーを使って、ブロイラーの育すう温度について、省エネルギー的考え方を考慮して春、秋、冬ふ化鶏について検討したところ、いずれのふ化季においても第1週目を30℃とする育すう温度については、4週齢時までの育成率が35℃区およぴ33℃区よりも1~2%低く、さらに入すう時にひなが育すう器内に密集しており育すう温度としてはやや低すぎた。ところが、第1週目の最初3日間を33℃、後の4日間を30℃とし、2週目以降は毎週3℃ずつ漸減させる温度管理は、育成率を低下させることはなく、9週齢時体重、飼料要求率についても従来の基準温度に比べてほとんど差がなかった。また、この育すう温度管理はプロパンガス代の節約が大きく、育すう用の温源費を低下させるために1羽当たり経済性がかなり改善された。
次に、餌付後5日間を33℃とする育すう温度については、餌付後3日間を33℃とする場合と育成成績、ひなの分布状態などにほとんど差がなかった。

17.地域農業集団と利用権設定の実態

小河内一司

利用権等設定の実態調査は、一志町庄村を選定し実施した。庄村は一志町の農用地利用改善推進地区として指定されている集落である。庄村は実行組合を組織し、組合員からの拠出田と非組合員からの期間借地を対象に機械化麦作を実施してきた。水田利用再編を契機とした転作田の受託をおこない麦作集団栽培を実施し成果を上げている。組合の執行部は、大豆の導入による麦・大豆二毛作の定着・青刈大豆による地力の維持・機械装備の充実による生産性の向上につとめている。この組織は当初機械利用のための組織であったが、集団規模(麦作)の拡大と生産力の安定と向上をはかるためには、大型機械化による生産の技術化が求められ、組合員が互に協力して生産をおこなう協業方式をとっている。この方式に対する評価は生産性の向上では、中核農家の形成がみられる点、一方これに依存する農家層が形成されつつある点から評価できる。
利用権の設定については、現在の実行組合については、内容的に受委託組織であるので受託組織としての変質がはかられなければならない。現在の実行組合は、執行部が安定した生産力を持つ受託体として成長することが必要であり、そのための支援組繊として役割をはたしているとみることができる。受託体としては経済的自立のできる新しい受委託体制が望まれるわけである。そしてこの受託体に対する委託者の関係ができる。実行組合は、新しく地権者の土地利用改善の調整体として機能することがのぞまれることになる。それには、稲・麦あわせた技術が定着技術として体系化されなければならない。

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