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平成21年01月27日

研究報告第14号

1.水陸稲品種の自然交雑について

伊藤敏一

本県の採種は産糯品種種子に粳粒の混入が多くみられ、採種上問題になったが、その原因は、粳品種との自然交雑によるものと考えられたので、各種の調査、試験を実施し、その実態について検討した。
その結果、

  1. 全国各県より取り寄せた水陸稲糯品種原種種子の粳混入率を調査した結果、水稲で最高1.98%、陸稲で4.92%の粳粒の混入がみられた。
  2. 各県より取り寄せた水稲糯品種原種種子から粳粒を除外し、3カ年間玄米播種して育苗、隣接条に出穂期がほぼ同一の粳品種を作付け、自然交雑による粳粒の混入率を調査した結果、品種間差がみられた。
    交雑しにくい品種は両親が糯×糯か純系分離のものであった。
  3. 本県の推奨品種のカグラモチは交雑しにくく、喜寿糯は交雑しやすいことがわかった.
  4. 交雑しやすい喜寿糯は隣接粳品種ほ場との出穂期差を10日以上開くように移植期をずらす必要がある。また、粳品種では晴々と親が近縁関係にあり、交雑しやすいので、晴々の隣接ほ場に作付けしないことが必要である。
  5. 粳品種に褐穂がみられたので調査したところ糯粒の混入が、全体の1/4ほどみられ、前年糯品種と交雑したのがF1で分離したものと考えられる。

2.水稲湛水土壌中直播の機械化に関する調査研究

田中正美

  1. カルバーコーティング種子の繰出し精度は、パケットロール式が、横溝口ール式よりやゝ優り、コーティング種子の水分に対する適応性が高い。種子ホッパーの床勾配は、45度以上にする必要がある。
  2. 湛水土壌中直播機の覆土機構は、作溝により両側に寄せた土を戻す土寄せ方式がよく、土寄せ板+押え板方式は軟らかい土壌において播いた種子を押し寄せる。
  3. 湛水土壌中直播機の作溝覆土精度がよい土壌硬度は、さげふり円錐沈下深で7~14cmであり10cmが最もよい。
  4. 各種土性において、苗立ち率が最も高い播種深さは1cmであった。埴壌土では、播種深さが1.5cm以上になると苗立ち率が50%以下であった。
  5. 22馬力のトラクタ・6条湛水土壌中直播機・2条刈自脱コンバインを基軸としたこの直播体系の場合、耕起から収穫運搬までの延労働時間は約15~18時間であった。また、この休系の精玄米重は、10アール当たり470~500kgで稚苗移植とほぼ同等であった。

3.加工用ネギの栽培技術に関する研究

田中一久・豊冨康弘

  1. 乾燥用のネギの加工適性を満足する栽培方法を確立するため、作期別適品種、施肥量、作期別収穫時期について検討した。
  2. 品種については、春まきでは最も生体収量の高い「九条浅黄」が乾物収量が高く、乾燥用のネギとして適し、秋まきでは生体収量、乾物率ともに高く、葉鞘径の小さい「西田」が適していると認められた。
  3. 施肥量は春まきにおいて、Nの増施が乾物率の増加にならず、またP205、K2Oがともに多い区で乾物率が高い傾向を示したことより、N:P205:K2O=25:27:30kg/10aが適当であると考えられる。
  4. 作期別収穫時期については、春まきは定植後3~4ケ月の葉鞘径が大きくならない時期、秋まきは千住系は4ケ月、九条系は5ケ月が適当であると認められた。

4.土壌条件がサツキの生育に及ぼす影響 第1報

山部十三生・中野直・横山幸徳・安田典夫

  1. サツキの生育に影響を及ばすと思われる土壌条件のうち、耕土の深さ、耕起方法、土壌水分、pHについて検討した。
  2. 耕土の深さを30cmと15cmとして比較したところ、サツキの生育は、地上部、地下部とも30cmで良好となったが、樹形には差がなかった。
  3. 転換畑において、深耕ロータリーおよびパイプロドレーナーを用い、耕起方法が生育に及ぼす影響を検討したところ、深耕区では、物理性の改善効果が大きく、サツキの生育は地上部、地下部とも最も長好となった。パイプロドレーナ一区でも透水性などが改善され、深耕区に次ぐ生育を示し、普通耕区に優った。しかし、再び水田化した場合、深耕区では大型機械による作業がやや困難となり、水稲が減収した。パイプロドレーナ一区では、作業性に問題はなく、減収の程度もごくわずかであった。
  4. 土壌水分、pHが生育に及ばす影響を検討したところ、土壌水分は、pF2.0程度でかん水を行う水分管理がよく、pHは5.0で最も良好であった。pH4.0では生育がやや劣り、pH6.5ではクロロシスが発生し、生育は極端に不良となった。

5.ナシ幸水の簡易被覆栽培に関する研究

渋谷久治・服部吉男

今後のナシ生産の中心的な品種となる条件を備えている幸水について、その出荷調整と労力配分の上で簡易被覆栽培による早熟化技術を確立することが、重要な研究課題であると考えられたので、1980年から1984年の5ケ年間にわたり検討を行った。

  1. 施設の構造は、間口2.5m、株高2.6m(棚上0.8m)とし、棚上被覆のみの雨除け型とサイド被覆を加えた簡易ハウス型の二つのタイプについて検討した。雨除け型では、開花盛期が5日、収穫盛期が4~5日促進された。簡易ハウス型では開花盛期が11日、収穫盛期が11~12日促進された。施設の構造は、本研究に採用したものが標準型としてほぼ適正と考えられるが、棚上棟高とサイドの開閉操作について若干の改良を要する。
  2. 被覆期間について、開始期は3月上旬頃がよく、除去期は、サイドが満開後10~15日目、棚上が5月中旬から6月上旬頃が適当と考えられた。その場合、被覆開始に当っては徐々に密閉度を高めて昇温を図ることが重要である。また、除去期はその年の気象条件に応じて決めるのが適当と考えられ、除去期が遅れると早期落葉が助長され樹体や果実にも影響が生じる。
  3. 温度変化について、雨除け型は平均気温、平均地温ともに露地に比して約1℃上昇し、5月中旬以降は逆に1℃低下した。簡易ハウス型では、平均気温は棚上、棚下ともに3~4℃上昇し、平均地温は2.5℃高くなった。簡易ハウス型において密閉度を高めると、棚上の最高極温は40℃以上となり30℃以上の真夏日日数が露地の17倍にもなった。簡易ハウス型では高温障害が発生しやすく、適正な温度管理を要する。除去時期の目安となる温度は、棚上の最高温度が30℃以上となり棚の上下の温度差が10℃以上となる時期が適当と考えられる。
  4. 果実肥大は、雨除け型では生育初期が5日促進されたが、収穫時点では露地との差はなくなった。簡易ハウス型では約10日肥大が促進され、収穫期までその傾向が続き大黒割合が高まった。
    果実品質は、腰高傾向となり果皮の色上りが淡黄白色となり黒点間コルクの発達が悪く汚れが目立った。糖度、硬度、酸度については露地と大差は無かった。
  5. 新梢は、やゝ軟弱徒長の傾向を示し、花芽着生率はやゝ低下する。葉は緑色が濃くなったが厚さはやゝ薄くなった。
  6. 熟期促進剤の利用について、雨除け、簡易ハウス型のいずれも、GAペースト処理により約5~7日、エスレル処理により約5日、両剤の併用処理により約8~10日の促進効果が認められた。簡易被覆との相乗効果は、雨除け型で5日、簡易ハウス型で11~12日が追加されて早熟化された。しかし熟期促進剤の使用により、果実の糖分、硬度がやゝ低下する傾向があり使用に当っては過用をさけ、被覆栽培の補助的手段とすべきである。
  7. 病害虫の発生について、黒星病、赤星病等の雨滴伝染性の病害防止効果は顕著であった。ダニ類の発生は早くなり多発性になりやすい。

6.温州萎縮病のまん延に及ぼす防風垣用サンゴジュの影響

前博視

早生温州ミカン園で萎縮症状が防風垣用サンゴジュに沿って長方形状にまん延し、その原因究明とサンゴジュの影響について検討した。

  1. 萎縮症状の発生は防風垣用サンゴジュ周辺に多く、すでにサンゴジュの伐採されたところでも同様の傾向がみられた。
  2. 萎縮症状はELISA及び白ゴマ検定の結果、温州萎縮病によるもので、サンゴジュに隣接したミカン樹ほど激しい病徴を示し、距離が遠くなるに従って症状が軽く発生樹率も低下した。
  3. 防風垣用サンゴジュもELISA及び白ゴマ検定の結果温州萎縮病を保毒し、隣接するミカンが本病を保毒している場合は、サンゴジュの保毒率も極めて高かった。
  4. 熊野市金山町における温州萎縮病の急速なまん延は、本病を保毒している防風垣用サンゴジュが関与しており、他の防風樹種についても同様の可能性があるものと思われる。

7.北勢地域における多肥栽培茶園の土壌溶液法による実態解析 第2報強酸性茶園土壌の酸性要因と酸性矯正

橘尚明・吉川重彦・松田兼三

多肥栽培下における強酸性茶園土壌の酸性矯正を試み、施肥成分濃度の動態と酸性要因について土壌溶液から検討した。

  1. 園内の各部所および層位別の土壌溶液濃度は、極めてヘテロ性が強く、畦間、雨落部では陽イオンに対し陰イオンが多く、特にSO4が高濃度に存在していた。
  2. 土壌のpHは、石灰施用により矯正されたが多肥によりその溶脱も急激であった。一方土壌溶液pHは、若干矯正されるのみで、石灰添加よりむしろ施肥量の影響が強く、多肥矯正区では少肥無矯正区より低いpHで3.0程度であった。
  3. 硫安など窒素質肥料の施用により溶液中のNO3、SO4が増加するとともに土壌に吸着置換されたCa、Mgが著しく溶出されるが溶液pHへの影響はきわめて小さかった。
  4. 陰イオンと陽イオンの濃度差と溶液pHの推移はよく対応し、pHの高い標肥区は10~30me/リットル、pHの低い多肥区では20~60me/リットルの値を示した。
  5. 茶園土壌での強酸性は、NH4-Nの硝酸化成によるNO3と硫酸根肥料によるSO4、その他の陰イオンの高濃度によるもので、陰イオンが陽イオンより多くなるとpHは4以下となった。この差を土壌よりのALイオンが陽イオンとして補償する間はpHは3台を示すが、さらに陰イオンが多くなるとpHは2台の強酸性を示した。

8.下水汚泥の農業利用に関する研究(第1報)下水汚泥の品質と施用実態について

広瀬和久・石川裕一・米野泰滋・戸田鉱一・児玉幸弘

三重県下の代表的な下水道終末処理場の汚泥の品質、及び汚泥を使用した農用地の実態調査を行い、下水汚泥の農用地利用の可能性について検討を行った。

  1. 県下において、下水汚泥の農用地利用を行っているのは、2ケ所の処理場のみであり、他は陸上埋立処分されている。
  2. 発生する汚泥のうち緑農地利用されるのは10%に過ぎず、その性状も脱水ケーキがほとんどである。
  3. 凝集剤として消石灰を使用している処理場の汚泥は、pHと石灰含量が高く、窒素、りん酸、加里含量は低い。
  4. 夏期採取の汚泥は石灰と重金属含量が高く、窒素含量は低いが、冬期採取では逆の結果である。
  5. 工場排水が流入している2ケ所の処理場の汚泥は他に比べて重金属含量が高い。
  6. 汚泥を施用したほ場の作物の生育は、ほぼ良好であるが、脱水ケーキの取扱い性と悪臭に問題がある。
  7. 石灰処理汚泥を多量に施用したは場では、pHと石灰含量が高くなった。
  8. 汚泥を多量に施用した土壌への重金属の影響については、亜鉛と銅の蓄積が顕著であった。

9.桑古条挿木における挿穂の温浴処理に関する研究(1)温浴処理条件及び古条マルチング挿木法への応用について

中村清・平野三男

古条挿木法に温浴処理を併用する方法について、処理条件及び古条マルチング挿木法への応用に関する試験を実施した結果、以下の点が明らかとなった。

  1. 処理条件については、水温及び水質について検討した。設定した水温は、25℃、30℃、及び33℃で、一ノ瀬では30℃区が最も高い発根率が認められた。また水質については、水耕用肥料(市販品)を用い、液中の栄養素無機塩類等の量を変えて試験した。その結果、各区とも差が認められず、本方法では水道水で良いと結論した。
  2. 温浴処理前後の貯蔵(5℃)は、それぞれ約1カ月が実用上適当と認められた。
  3. 桑品種間の発根性の差異について試験したところ、系統別にみると、カラヤマグワ系>ログワ系>ヤマグワ系の順に高い発根率が認められた。
  4. 採取部位については、3芽(15cm)の挿穂で基部から5本まで試験した結果、一ノ瀬の第4及び5部位(50%)を除き高い活着率が認められた。また条長は各区とも2m前後で、植付当年における収穫が可能であると結論した。
  5. さらに古条の先端部分及び1芽挿木について試験した。その結果、圃場に移植後の活着率は80%程度であったが、温床保護中の生存率はかなり低く、今後の課題と考えられる。

10.豚体各部位における体脂肪の脂肪酸組成

和田健一・伊藤均

豚枝肉の7部位より脂肪を採材し、それぞれを性別に分析し、性間差と蓄積部位の差、脂肪品質の改善程度の差を検討した。

  1. 性別では、脂肪品質は去勢>雌>無去勢豚の順となった。
  2. 各部位間では、皮下外層、腹部皮下、内股皮下は概ね同じであり、筋間脂肪は皮下内層にやや近似するものの腎臓周囲脂肪との中間に位置し、腹腔内脂肪は、腎臓周囲脂肪と近似した。ただ腹腔内においては、やや脂肪の品質が不均一であることも示唆された。
  3. 各部位の脂肪酸組成は、いずれの部位においても飽和脂肪酸量は去勢>雌>無去勢豚の順で、不飽和脂肪酸量は去勢く雌<無去勢豚の順となった。
  4. 脂肪の厚さとC18:2/C18:0の相関は、性別にみれば認められず、去勢と雌を一諸にしてみると、ー0.29という相関係数は小さいながら意味のある関係が認められた。
  5. 各部位間で、脂肪品質の改善程度に差は認められなかった。

11.鶏舎消毒の実施方法に関する研究

今西禎堆・水野隆夫・矢下祐二・古田賢治

三重県農業技術センター畜産部で慣行的に実施している鶏舎消毒法の付着菌数の減少を指標として評価し、消毒効果を高める目的でその改善を試みた。

  1. 約1200羽のブロイラーを生産出荷した直後の平飼い窓鶏舎を清掃した後に、動力噴霧機により鶏舎内面積1m2当たり4リットルの水を噴射し水洗した。天井は水流のみで、壁面と床面は水流が当っている間にデッキ・ブラシにより6回擦って洗うと、菌数の減少は1/101.1~1/101.3であった。オルソ剤を散布して消毒すると菌数の減少は1/100.8~1/101.3で、その後逆性石鹸を散布して再消毒するとさらに1/100.3~1/100.8の減少がみられた。水洗後、消毒液を2回散布した後でも天井から102.1/cm2、壁面から102.2/cm2、床面から103.3/cm2の菌が検出され、菌数の減少は水洗後の菌数の1/101.4~1/101.7であった。
  2. 水洗による菌数の除去効果を高める目的で1m2当たりの水量を4、6、8リットルとし、擦り洗いの回数をそれぞれ6、9、12回として壁面と床面を水洗した。水量が多く擦り洗い回数が多い程菌数は減少した。しかし、擦り洗いをしなかった天井では水量の増加による菌数の減少は顕著でなかった。
  3. 水洗後に鶏舎を乾燥させても付着菌数の減少は僅かであった。
  4. オルソ剤を散布し消毒した後に、逆性石鹸を散布し再消毒したが、逆性石鹸散布後の付着菌数(Y)とオルソ剤散布前(水洗又は水洗乾燥後)の付着菌数(X)との間に
    logY=0.818logX+1.176
    r=0.866
    の関係が認められ、水洗又は水洗乾燥により付着菌数を少なくしておけば、消毒液散布後の菌数が少ないことが知られた。
  5. 機械力によって舎外から無窓鶏舎内に30ml/m2のホルマリン(試薬1級)を散布し消毒したところ、40ml/m2のホルマリンで燻蒸消毒した効果と同等以上の効果が得られ、ほぼ完全な消毒効果であった。同様に40ml/m2のホルマリンを散布し開放式ケージ鶏舎を消毒したところ、高い効果が得られたが、無窓鶏舎の場合よりも効果が低かった。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 農業研究所 〒515-2316 
松阪市嬉野川北町530
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