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研究報告第16号

1.露地トマト畑における有機物施用と土壌改良方法

安田典夫・稲垣卓次・中川智仁

野菜畑の土壌調査および調査結果に基づいて行った露地トマト畑における有機物および土壌改良資材の施用効果を検討し、以下の結果を得た。

  1. 調査地区の土壌は細粒黄色土であり、腐植が少く、物理性とくに下層土のち密度が高く、通気、透水性も不良であった。一方、深耕した圃場では下層まで物理性は良好であったが、下層土が露出するため、腐植含量、pHは低下した土壌が多かった。
  2. 露地トマトに対する深耕の影響について、生育はいずれも良好であり、根群の発達も良好であった。
  3. トマト果実の品質については、糖酸比でみると深耕区および深耕+堆肥増殖区で高かった。
  4. 秀品着果数は深耕+堆肥増惰区が最も多かった。また不良果の割合は無深耕区に多く、裂果についても同様であったが、とくに、苦土石灰およびカキ殻を増施した区が少かった。
  5. 収量については、深耕+堆肥増施区の秀品収量が最も多く、無深耕区に対し、約30%の増収となった。
  6. 跡地土壌の化学性のうち、堆肥増施区は腐植含量が増加し、石灰増殖区はpH、塩基含量が改善きれた。

2.浄水ケーキの農業利用に関する研究 第1報花き鉢物培土への利用

中野直・西田悦造・山部十三生・児玉幸弘

シクラメンおよび観葉植物の培土として、浄水ケーキを利用する場合の有機資材との配合による保水性の改善効果と培土への燐酸施用効果について検討した。

  1. 有機資材のうち腐葉の増肥で培土の気相率が高まり、ピートモスの増肥で液相率と易効水分が高まる傾向であり、腐葉、ピートモスの配合によって浄水ケーキ培土の保水性が高まった。
  2. 培土の配合割合は、シクラメンでは浄水ケーキ40%、腐葉30%、ピートモス20%、川砂10%の配合でよく生育し、草姿のバランス等からみて適切であった。観葉植物では、有機資材の配合による生育差は少なかったが、浄水ケーキ50%、ピートモス30%、腐葉10%、川砂10%が適当と思われた。
  3. 浄水ケーキ培土への燐酸の施用によって、培土中の有効燐酸含量が高まり、シクラメンおよび観葉植物の植物体のP吸収率が増加した。この傾向は、燐酸施用量が多いほど顕著で生育も旺盛になり、生育に対する燐酸施用効果が確認された。
  4. 浄水ケーキ培土への燐酸施用量はシクラメン、観葉植物とも培土1g当たり燐醸成分2,000mgの元施用が適切であった。
  5. 以上のようなシクラメン、観葉植物の浄水ケーキを基土として利用した規格培土が設定できた。

3.浄水ケーキの農業利用に関する研究 第2報野菜育苗培土への利用

庄下正昭・西岡忠文・藪田信次・児玉幸弘

山村浄水ケーキを、イチゴ、トマト、レタスの育苗培土基土として利用するため、燐酸施用量、土粒径の大きさ、育苗施肥量および灌水法、そして有機資材との配合割合が、野菜類の育苗、生育に対する影響を検討した。

  1. イチゴ
    1. 浄水ケーキの砕土による土粒径は、鉢上げ作業、初期生育の順調さから10mm程度以下にすることが望ましい。
    2. 有機資材の配合割合は、モミガラ堆肥、パーク堆肥とも1/3程度の配合が適当と思われた。しかし浄水ケーキ単用でも、利用の可能性は十分あると思われた。浄水ケーキ培土の育苗による苗質は、一般慣行培土より旺盛になる為か、総収量は慣行培土に優るものの、初期収量が少収となり、早期採りからは課題を残した。
    3. 浄水ケーキ培土の燐酸施用量は、培土100g当たり50mg~100mgが生育良好となり、無施用は不良であった。
    4. 育苗における窒素施用量は、透水性の良好さを活かし、日灌水回数は4回を前提とした。培土1リットル当たり0.5g施用で苗質は良好であった。
  2. トマト
    1. 育苗培土での有機資材配合は、1月3日~1/4量の配合が生育、収量に好影響し、好適配合割合と思われた。
    2. 夏期育苗での施肥量、燐酸施用が培土1リットル当たり1gで生育を良好にしたことから、三要素施肥量は、N=0.26g、P2O5=1.0g、K2O=0.3gが生育、収量に好結果あった。
    3. 低温期育苗における燐酸施用量は、低温期における養分吸収の関係から、夏期育苗時より多用し、培土1リットル当たり2.0gの施用が好影響を与えた。また苗質を高める上から、育苗中期にN=0.03g程度の追肥が効果を高めた。
  3. 葉菜類(レタス等)
    1. 葉菜類を代表したレタスの育苗培土としては、窒素を、一般慣行より多めとし、培土1リットル当たり2.0g与えることが好結果となった。合わせて燐酸も多くした方が苗質良好となった。

4.ナシ黒星病菌(Venturianashicola)のチオファネートメチル耐性に関する研究 第2報チオファネートメチル耐性菌に起因するナシ黒星病の防除

冨川章・長江春季・山本敏夫

  1. 1975年、ベンズイミダゾール剤耐性菌に起因するナシ黒星病の防除対策を早急に確立するため一連の試験をおこなった。
  2. 耐性菌が存在する圃場において、ペンズイミデゾール系薬剤と他剤との交互散布、当該薬剤と地剤との混用、予め混合製剤されたキャプタン・ベノミル剤、これらと他剤との体系防除による効果は、多くの場合、有効であった。しかし、ベンズイミダゾール剤を含む場合には、耐性菌占有率や耐性程度の高くなることが観察された。このため、ペンズイミダゾール剤の防除効果が発現しないことが危倶された。また、圃場の耐性菌占有状況により防除効果が左右されるものと思われた。
  3. ペンズイミデゾール系薬剤と作用機作の異なる、既登録薬剤のうち、ジチオノン剤について検討した。実用性があると思われたが、重要防除時期の一つである満開期には、花粉発芽への影響が認められた。
  4. 耐性菌に対する防除効果と耐性菌占有率の低下を期待して、特異的に有効な薬剤を培地上で検索した。その結果、S-165剤、NF-124剤がその傾向を示した。
  5. 特異的に有効なS-165剤、NF-124剤とそれぞれに、ベンズイミダゾール系薬剤を混合したS-365剤、NF-124剤は、耐性菌に起因する本病防除の効果は高く、S-165剤、NF-124剤では強度耐性菌の占有率が低下した。しかし、散布翌春には、耐性菌占有状況は散布前に近い状況となった。

5.多肥栽培茶園における減肥方法

池田敏久

三重県北勢地方の「かぶせ茶」栽培地帯では、1965年頃から急激に多肥化が進み、200kgN/10aも珍しくはなくなった。このことは農業経営、省資源あるいは環境汚染防止の上からも早急に改善が望まれていた。そこで収量、品質を低下させずに、当初の100gN/10aレベルまで減肥する方法を検討した。

  1. 隔畦段階的減肥方法として、隔畦毎に土壌改良と、50%減肥(全体としては25%減肥)を行い、2年目にもう一方の畦間も同様に処理し(全体として50%減肥)当初の半量に当る93kgN/10aまで減肥した。その・級ハ、年間の収量は試験期間を通じて増加の傾向を示した。品質は1年後のアミノ酸含量が減少し、続いて官能評価も低下した。しかし次年度には回復がみられた。2回目の減肥も同様なパターンを示した。
  2. 同様に隔畦減肥に援肥(樹脂被膜肥料)、2年分(50kgN/10a)深耕かくはんした。その結果、前の隔畦段階的減肥方法と同様に、アミノ酸の減少傾向がみられた。
  3. さらに品質を低下させない方法として、株下の肥料濃度が低いことから、樹冠下へ超緩効性肥料(IB固形肥料)を2年分(25kgN/10a)を投入した。その結果、収量、品質とも向上した。樹冠下の土壌溶液中窒素濃度は100ppm前後で推移し、1年9ケ月間の肥効持続が認められた。しかし樹冠下の土壌溶液pHが4以下に低下しないように、石灰を投入する必要がある。

6.湛水土壌中直播によるホールクロップ用稲の栽培と貯蔵

浦川修司・坂本登

排水不良田における高栄養粗飼料の生産技術として水稲を湛水土壌中散播法により栽培し、ホールクロップサイレージとして収穫・調整する方法について、その省力生産を中心にサイレージの発酵品質や飼料価値、さらに生産費について検討した。

  1. 種籾を背負い式動力散粒機で畦畔から散播する場合、過酸化カルシウム粉衣の上にさらに加重の目的で鉄粉を粉衣すると一定の播種深度が得られ、発芽や初期の苗立ち安定に効果がみられた。
  2. 水稲ホールクロップサイレージの発酵品質は、pHが5.2で乳酸含量が低く酪酸が認められたため、フリーク評点は43点と低かった。
  3. 黄熟期に収穫した水稲サイレージの飼料価値はTDN55.1%、DCP2.32%でソルガムサイレージと同程度であった。
  4. 本体系による稲サイレージの生産費は、サイレージ1kg当たり14.9円、TDNkg当たり60.4円となり、従来の稚苗移植法に比較して大幅なコストダウンができた。なお、本体系の適用範囲として収穫時に大型機械の導入が可能な圃場に限定される。

7.自給飼料利用と肥育月齢差が和牛去勢牛の枝肉構成におよぼす影響

山田陽稔・加藤元信・蹄未波太夫

濃厚飼料と粗飼料を共に飽食給与させる飼養条件のもとで、自給飼料(サイレージ)の利用と肥育仕上月齢の違いが増体、飼料効率、肉質、枝肉構成に及ぼす影響を調査し、その経済性について検討した。
供試牛は生後10ケ月齢の黒毛和種去勢牛20頭を用い、ワラ区とサイレージ区に分け、試験Ⅰでは仕上月齢を、21、24、27ケ月齢とし各2頭づつ配置し、試験IIでは仕上月齢巷24と30ケ月齢とし各2頭づつ配置し下記の結果が得られた。

  1. 増体成績は、1ケ月齢時点では、両区とも同等の成績(DGO.81kg)が得られたが、それ以降では、サイレージ区の増体が良好で30ケ月齢(DGR区0.64、S区0.71kg)ではサイレージ区が35kg大きく仕上った。
  2. 飼料乾物摂取量は一生期間においてS区が多く、TDN摂取量は21ケ月齢以降でサイレージ区が多かった。また、ワラ区においては、肥育の進行とともに乾物摂取量の低下に伴うTDN摂取量の減少が見られた。これらのことから、飼料要求率(TDN)は、21ケ月齢では、両区とも約7.0kgでほぼ同じであったが、それ以降の要求率の増加は、ワラ区の方が多く、肥育開始から30ケ月齢までのそれは、ワラ区8.27kg、サイレージ区8.07kgとなった。
  3. 枝肉状態は、枝肉重量が低いこともあって、外観の格付けで21ケ月齢がやや劣ったが、取引上最も需要視される。胸最長前の脂肪交雑(第5~6肋骨断面)については、21ケ月齢で高い水準(平均+3.5)にあり、月齢の進行による増加傾向は得られなかった。ただ、21ケ月齢では、肉のしまりにやや難があるようであった。
  4. 枝肉を全農Ⅰ規格に基づき分割したものからは、両区に差は見い出せなかったが、体重の増加により、脂肪が主たる構成部位となる部分肉の割合が増加することが分かった。
  5. 経済性については、飼料価格、素牛価格に大きく左右されることから、ここ3年の価格に基づき計算をした結果、素育価格の低い時には早期の高い時には、やや遅らせた出荷が良いこととなったが、イナワラの給与においては、経済性が良いことと、肉質面で問題を残さないために、24ケ月齢前後の仕上げが、また、サイレーヅの給与においては、増体、飼料効率の良いことから、24~27ケ月齢の肥育仕上げとすることが良いと考えられた。

8.踏み込み式ビニールハウス豚舎の利用に関する研究 第1報:舎内環境と肉豚の発育

和田健一・伊藤均・坂倉元・加藤元信・今西禎雄

昭和57年頃より普及しはじめた堆肥あるいは敷料上で糞尿を堆積したままで肉豚を飼養する。いわゆる踏み込み式豚舎は、建築が簡単で、糞尿処理の手間とコストがかからず、極めて省力的であることから、全国的に普及してきた。本方式による肉豚飼養については、現在不明の点も多く、試行錯誤がくりかえされている現状である。そのため踏み込み式ハウス豚舎の効率的な利用を検討する目的で試験を実施した。試験は5.6m×14mの園芸用ビニールハウス2棟を用い、その中に3m×8mの豚房を設置して実施した。飼養密度は1m2に1頭とし、一方には発酵菌を添加してその効果も検討した。本報告では、主としてハウス内の環境条件と肉豚の発育について取りまとめた。

  1. ハウス豚舎内温度は、一般豚舎よりもやや高く夏期床面上0.3mで概ね3.0℃、冬期で5~6℃高く推移した。
  2. 床面温度は、豚の休息する場所で夏期冬期ともに35℃前後となった。夏期は室温を低下させるとともに、床面温度の低下を考慮しなければならない。
  3. 床の敷量水分は、夏期はむしろ乾燥し過ぎる傾向があり、水分25%以下の塵埃の舞い上がるような部分が試験開始後72日で50%前後となった。冬期は逆に泥濘化するような水分55%以上の部分が試験開始後76日目で40~50%となった。
  4. 発酵菌使用で、夏期冬期ともに床面温度は高くなった。敷料水分は、夏期発酵菌添加でやや低く、冬期は逆に若干高くなる傾向にあった。
  5. 夏期と冬期について、晴天(雲量0.3~1.0)、曇天(雲量8.7~10.0)、雨天のハウス豚舎内温度の日内変動をみると夏期では晴天、曇天とも温度較差10℃、冬期は同様16℃となり、一般豚舎の5℃と比べ大きな差があった。雨天の場合、夏期、冬期とも日内温度変化は3~5℃であった。
  6. ハウス豚舎の換気状況は、5.6m×14m程度のハウスでは、夏期は良好であった。冬期は、ハウス両端の上部を一部開放とし、両サイドは密閉した状態では、入気側と排気側の部分に循環する気動がみられた。そのため、冬気このような防寒措置を講じた場合換気に留意する必要がある。
  7. 発育は、夏期では暑さによる飼料摂取量の減少から日増体重で200g程度悪くなった。特に室温(床面上0.3m)が30℃を超えると日増体量が低下した冬気は、一般豚舎に比べ日増体量はやや大きくなった。 
  8. 飼料要求率は、ハウス豚舎では、一般豚舎に比べ夏期ではやや悪くなるが、冬期は差がなかった。
  9. 枝肉および肉質については、ハウス豚舎と一般豚舎でほとんど差はなく、夏期は背脂肪がやや薄くなるため上物率が上り、冬期は背脂肪がやや厚くなるため上物率は若干低くなった。
  10. 発酵菌の添加で発育に差は生じないものの、飼料要求率はやや良くなった。敷料の温度上昇と水分低下に対しては効果があり、豚舎臭気についても軽減効果があった。
  11. 内部寄生虫の寄生は、入舎前の駆虫により、ハウス豚舎飼育期間中には認められず、肝臓を中心とする内蔵廃棄も全く認められなかった。
  12. 踏み込み式ハウス豚舎による肉豚の飼養は、夏期暑熱対策、防塵対策、冬期の厚脂対策等、今後解明すべき問題点はあるが、衛生上の基本的手順を厳守すれば、多くの利点を有する効率的な肉豚飼養方式である。

9.消毒液の高濃度少量散布による鶏舎の消毒効果 第1報グルタールアルデヒド製剤の消毒効果

今西禎雄・坂倉元・水野隆夫

高濃度のグルタールアルデヒド製剤(GA製剤)を少量散布することにより次の結果を得た。

  1. 人工又は自然汚染検体及び無窓鶏舎を消毒の対象として散布濃度と量の検討を行った。50%のGA製剤を空間1m3当たり100mlを散布すると散布後に検出された菌数は1m2正当たり102以下で、対照のホルマリン燻蒸消毒と同等の高い消専効果が得られることが知られた。
  2. 50%のGA製剤をジェット・エンジンを備えた散布機で無窓平飼い鶏舎と開放平飼い鶏舎に100ml/m3を散布すると、散布後に検出された菌数は101/cm3以下であった。
  3. 50%のGA製剤を100ml/m3散布した無窓鶏舎内のデルタールアルデヒドの気中濃度は、散布1日後で0.5ppmであり、ホルマリン薫蒸消毒後ホルムアルデヒド濃度の約1/30であった。

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