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木材の含水率は乾量基準です!

林業研究所  山吉栄作

はじめに
 一般的に木材の含水率は、伐木直後が最も高く、乾燥に伴い徐々に低下していきますが、最終的には木材の置かれている周囲の気象条件(相対湿度)に応じて、一定の含水率に落ち着いてきます。この落ち着いた時の含水率を平衡含水率と呼び、自然大気中に放置した時の平衡含水率は、全国平均で約15%と言われています。また、この15%という数値は、製材の日本農林規格(JAS)において、D15(未仕上げ材)、SD15(仕上げ材)といった平均含水率の基準が15%以下の含水率区分に相当します。
 一方、近年の木造住宅は、高気密・高断熱化と冷暖房の普及により、住宅内における木材の平衡含水率はさらに低くなる傾向にあり、需要者側からは、15%より低い含水率の木材が求められるようになってきています。
このように、乾燥材の需要と供給において、含水率の認識を深めることは重要ですので、今さらですが、改めて木材の含水率について説明します。

1.木材の含水率の求め方
1-1.携帯型木材水分計による含水率の計測
 製材品の簡易な含水率管理においては、携帯型の高周波木材水分計がよく使用されていますが、本機の仕組みは、本体の電極部分を材面に押し当てた時に、電極間に流れる電気容量が、材内の水分量に応じて変化することを利用して含水率を計測しています。本機のメリットは、コンパクトで、軽く、容易に含水率を計測できるという点ですが、材面から数cm程度の深さまでしか計測できないため、板類以外の柱や梁桁では、表層部のみの計測値になります。しかし、通常木材は、外気に触れる表層部から乾燥するため、表層部の含水率は低くても、中心部は高いままということがよくあります。特に、梁桁のような断面の大きな材を、蒸気式乾燥機を用いて短期間で乾燥させた場合、材内の水分傾斜が大きく残っている可能性が高いので注意する必要があります。この対処法としては、乾燥スケジュールの末期で調湿処理を行うことや、十分な養生期間を設けることが必要です。
 また、高周波木材水分計で注意すべき点は、計測値が製材品の比重(全乾比重)に大きく影響されるため、水分計の計測値と含水率の実測値の差が大きい場合は、製材品の全乾比重を抽出により測定し、その測定値を水分計の比重補正値に用いて計測する必要があります。

1-2.全乾法による含水率の算出
 木材の含水率を正確に求めるには、全乾法が用いられます。この全乾法は、製材のJASでは、人工乾燥材の場合2個の試験片を、天然乾燥材の場合3個の試験片を切り出し、その試験片で測定した値の平均値で求めることになっています。その測定方法は、試験片の乾燥前の重量を測定した後、恒温器中で103±2 ℃で乾燥させ、完全に水分を飛ばした状態の全乾重量(木質重量)を測定します。これより、試験片に含まれていた水分量を、[乾燥前の重量-全乾重量]で算出し、含水率を求めます。ただし、木材の含水率は、通常の含水率測定でよく使われる湿量基準ではなく、乾量基準で求められるので、注意が必要です。
 以下に、材内の木質と水分の重量配分を模式的に示した3パターンの例を用いて、湿量基準と乾量基準による各含水率を求め、比較してみます。


図-1.湿量基準による含水率の求め方

 まず図-1の湿量基準では、水分の重量を、木材全体の重さ(水分を含んだ全体の重さ)で割って、百分率で表します。よって、湿量基準の場合、木材全体に対する水分量の比率を表しており、含水率は100%を超えることはありません。


図-2.乾量基準による含水率の求め方

 次に図-2の乾量基準では、水分の重量を、木質の重量で割って、百分率で表します。よって、乾量基準による含水率は、木質に対する水分の比率を表しており、含水率が50%の時(図-2 ①)は木質の半分の重さの水分を含んでいる状態、100%の時(図-2 ②)は木質と同量の水分を含んでいる状態、200%の時(図-2 ③)は木質の2倍の重さの水分を含んでいる状態となります。
 乾量基準の良い点は、含水率が低下した時の水分の変化量が分かりやすいことです。例えば、初期含水率200%の材が、乾燥により100%にまで低下した時の水分減少量は1/2(100/200)、さらに乾燥により50%にまで低下した時の水分減少量は、初期水分量の1/4(50/200)になるというように、水分の変化量を直感的に捉えやすい点がメリットです。

2.細胞内の水分状態と乾燥収縮の関係
 木材は、内腔(空隙)を持つ細胞の集合体で、その細胞の水分状態を表した模式図を図-3に示します。なお、細胞の空隙内に存在する水を自由水、細胞壁内に入り込んでいる水を結合水と呼びます。
 多くの水を含んでいる状態(生材状態)の木材は、自由水と結合水の両方が存在し、乾燥に伴い自由水から先に抜けていきます。その後、自由水が無くなり、壁内のみ結合水で満たされている状態を繊維飽和点と呼び、その時の含水率は、乾量基準で約30%と言われています。また、さらに乾燥が進むと、壁内から結合水が抜け出し、自然大気中の環境下では、乾量基準で約15%の含水率(気乾状態)で安定します。
 これらの水分状態と、木材の乾燥収縮の関係において、収縮が始まるのは、含水率が繊維飽和点(約30%)を下回ってからであり、細胞の空隙に溜まっているだけの自由水がいくら抜けても変化はありません。木材の収縮は、壁内の結合水が抜け、細胞壁が痩せることで生じます。
 よって、乾燥収縮に伴う割れや反り等の発生が問題になるのは、繊維飽和点(含水率 約30%)を下回ってからということになります。また、木材の強度は、繊維飽和点を境に、含水率が低下するほど、上昇することが明らかとなっています。


図-3.細胞内の水分状態(含水率)と乾燥収縮の関係

おわりに
 繊維飽和点は、前述したように、木材の物性の変化点となる重要な意味合いを持ちます。このため、繊維飽和点の時の含水率は、比重が異なっても、全ての木材において30%で表される、乾量基準が適しています。また、繊維飽和点以下における水分の変化量と物性の変化量は、密接な関係にありますが、この水分変化量は、乾量基準による含水率の方が表しやすく、これらの理由から、木材の含水率は、乾量基準により求められています。
 最後に、通常、心持ち角材の乾燥では、表層部が先に繊維飽和点以下に達し、中心部は生材状態のままとなりますので、表層部の収縮が、未だ収縮しない中心部に抑制されるため、表面割れが発生します。
よって、割れの少ない乾燥材を生産する上では、木材全体の平均含水率だけでなく、材内の含水率変動(水分傾斜)も意識することが重要です。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 林業研究所 企画調整課 〒515-2602 
津市白山町二本木3769-1
電話番号:059-262-0110 
ファクス番号:059-262-0960 
メールアドレス:ringi@pref.mie.lg.jp

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