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造林初期コストの低減に向けて ~ 下刈りなしでヒノキは育つか ~

三重県林業研究所 奥 田 清 貴

  ◆はじめに

 植林されず放棄される林地が全国的に増加し、平成22年度の集計では三重県内にも650haの造林未済地があります。放棄林地が増大すれば、災害発生の危険度も増すことになります。また、林業経営を持続するにも生産林としての再造林が必要になります。しかし、県内での標準的な施業を想定した試算では、育林コスト全体に占める地拵、獣害防護柵、植栽、下刈りなどの初期保育コストは約70%に及び、なかでも、下刈りコストは38%と格段に大きくなっています。そのため、初期造林コストの低減に関心が高まり、大苗の植栽、成長の速い品種の導入や下刈りの省略や簡略化する方法など、各地で様々な取組がなされています。

 林業研究所でも、ヒノキ低密度植栽試験地を設置して、主に下刈りの省力化、簡略化を目指した研究を実施しています。今回は、紀北町の鍛冶屋又国有林において三重森林管理署と共同で取り組んでいる事例について概要を紹介します。

 

◆植栽試験区の設定と調査経過

 ヒノキ低密度植栽試験地は、県南部の紀北町紀伊長島区十須にある鍛冶屋又国有林の主に北東側を向いた谷斜面に設定されており、標高140m~250mで面積は2.5haです。2008年2月に前生樹が伐採された跡地に、2010年3月ヒノキの実生2年生苗及び上高2号挿し木1年苗(かん水チューブポット、セラミックポット)が植栽密度(1000本/ha、1500本/ha、2000本/ha)、下刈りの有無、獣害防護柵の有無別に11処理区60~152本/区が植栽されました。

 植栽直後の4月に樹高、地際径、最大・最小枝幅を測定し、1生長期経過後には防護柵外でのシカによる食害及び雑草等による被圧状況も加えて毎木調査を行いました。また、7月に各試験区の1㎡枠内で採取した木本、草本、シダ類別の乾燥重量を測定し、植物現存量を調査するとともに、その後、毎年同時期に同様の調査を行っています。防護柵外の試験区では、毎木調査時にシカによる食害状況と生息確認のため糞粒調査も併せて実施するとともに、下刈り区では年1回8月に下刈りを実施しています。

 また、3成長期目の2012年8月に防護柵内の無下刈り区域で5m×5mの調査区を設けて、植栽木と雑草木との競合状況を調査しました。


図-1 鍛冶屋又国有林のヒノキ植栽試験区

  ◆植栽後3年経過後の状況

 防護柵内の植栽木のうち、実生苗は3年経過後においても下刈りの有無に関わらず80%以上が生存していましたが、上高2号挿し木苗では植栽1年後の生残割合がかん水チューブポット区で70~76%、セラミックポット区で53~58%と活着率の低さが目立っていますので、今後検証が必要です。

 一方、防護柵外ではシカの食害により植栽木は毎年減少し続けて、2012年の生残率は実生苗区39%、上高2号挿し木苗区9%になり、調査継続が困難になっています。3成長期経過した段階では、下刈りの有無が植栽木の生残割合に及ぼす影響は特に認められません。

 樹高成長に関しては、防護柵内の実生苗区では植栽密度や下刈りの有無に関わらず順調に生育し、3生長期経過後の樹高は2m前後になっており、植栽時の3.6~4.7倍になっています。上高2号挿し木苗は実生苗に比べると樹高は1m前後低いものの、ポットの種類によらず3成長期経過後には植栽時の3.6~5.7倍の樹高となっており、成長率では実生苗に劣っていません。しかし、植栽時の樹高差に起因する開きは大きく、今後の雑草木との競合には予断を許さない状況になっています(図-2)。

   図-2. 3生長期経過後の樹高推移

 

 防護柵内における植栽木の地際径に関しては、植栽密度に関わらず下刈り区が無下刈り区に比べ2成長期経過後から肥大成長が大きく、3成長期経過後には差はさらに開いています。挿し木苗区では、その差はまだ小さい状況です。

 植栽木の最大枝長と最小枝長から計算した樹冠面積は、植栽密度、苗木の種類に関わらず地際径同様に下刈り区が無下刈り区より大きくなっています。

 雑草木の現存量は下刈り区と無下刈り区での差はあまりみられず、下刈り区では草本類の割合がやや多いのに対し、無下刈り区では草本類は少なく、斜面下部ではシダ類が、斜面中~上部では木本類が多くなっています。

 防護柵外でのシカの出没と枝葉食害は、植栽木での食害は年々増加し、2成長期経過後までにすべての植栽木が被害を受け、現在では枝葉はほとんど食べられて回復が見込めない状況にあります。糞粒法によるシカ密度はいずれの調査時期にも46頭/km2を越えていることから、この試験地では、防護柵が無ければ植栽木の生育は困難と判断されます。

 雑草木が植栽木を覆い隠すことによるシカの食害回避を検討するため、防護柵外で植栽木の雑草木による被圧レベル(C1:植栽木が雑草木から1/2以上露出、C2:植栽木の先端だけが雑草木から露出、C3:植栽木と雑草木が同じ高さ、C4:植栽木が雑草木に隠れる)を調査したところ、図-3のようになりました。植栽時に苗木が小さかった上高2号挿し木苗でも、植栽木が雑草木のなかに完全に隠れる割合は低く、シカの徹底した食害を受けています。タケニグサなど夏緑性植物が多い当試験地では雑草木によるシカの食害回避効果は期待薄です。  

 2012年9月に防護柵内で植栽木、雑草木調査を行ったところ、すべての箇所でヒノキの平均樹高、最高樹高より雑草木のそれらの方が勝っていました。雑草木の大部分を木本類が占め、これにシダ類が続き、草本類はわずかでした。ヒノキより樹高が大きくなった木本類はアカメガシワ、カラスザンショウ、キイチゴ類などの落葉性木本で、葉が散生し、成長期の着葉量もさほど多くないため、植栽木の生育を阻害するほどにはなっていません。また、この試験地では常緑木本のつる性植物のカギカズラが偏在するものの、現時点では植栽木の成長に悪影響を与えるまでには至っていません。

図-3. 防護柵外での植栽木の被圧レベル割合

 
まとめ

 植栽されたヒノキ実生苗及び上高2号挿し木苗とも、防護柵内においては植栽密度、下刈りの有無に関係なく良好な樹高成長を示しており、雑草木の被圧による枯損も特にみられません。しかし、どの植栽密度でも地際直径と樹冠面積に関しては、下刈り区に比べ無下刈り区では成長が劣っています。無下刈り区では雑草木が繁茂し、ヒノキ枝の伸長が雑草木に阻害されているものと思われます。現時点では、上長成長、肥大成長の傾向は、他県での下刈りを省略したヒノキ林造成に関する報告と同様となっています。そのため、つる性植物が多いなど特別な林地を除けば、防護柵等でシカ害を確実に防げば、下刈りの省略、又は簡略化してヒノキ林造成は十分可能であると考えます。今後は、競合する広葉樹による被圧害、つる性植物の巻き付きによるヒノキの曲り発生具合などを考慮に入れてヒノキ植栽木の成長経過を調査することにしています。

 

参考文献

佐々木祐希子ほか(2009):九州森林研究62.14-17

白井一則ほか(2003):愛知森・林技セ報告40.1-10

長谷川健一ほか(2005):中部森林研究53.19-22

山川博美(2010):123回森林学会学術講演要旨集

 

 

本ページに関する問い合わせ先

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