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三重県水産研究に100年(創立百周年記念誌)

三重県水産試験場・水産技術センターにおける研究史のトピックス

11.海洋観測調査

明治36年(1903年)発行の三重県水産試験場事業成蹟第一巻には、明治33年(1900年)11月から35年(1902年)11月に伊勢湾の若松沖1浬において毎月1回測定された気温・表面水温・底層水温・比重の記録が残されており、この観測結果が三重県水産試験場による伊勢湾での最も古い定期海洋観測結果であると考えられる。明治42年(1909年)度三重県水産試験場報告に熊野灘におけるカツオ漁場観測表、マグロ漁場観測表、サンマ漁場観測表(漁獲物と水温・比重・潮流の観測結果)がみられるが、定点観測としての熊野灘における調査結果は、明治43年度三重県水産試験場報告の浜島定期観測が最も古い。浜島定期観測は、外海における海洋の状況と浮遊生物との関係を調べることを目的に御座岬西方1浬半沖合において表面と底層の水温、表面比重、潮流速度、主な浮遊生物の種類の調査が行われた。また、同年には内湾と外海における海洋の差異及び漁場との関係を調べるための観測が毎月3回行われ、伊勢湾内は若松沖2浬、外海は志摩郡和具沖2浬の海域が定点とされた。明治44年には、三重県外海方面定期海洋観測が和具沖南南西2浬(水深12尋の砂底地)で毎月3回午前10時に行われ、試験場報告に観測結果と共に水温・気温・比重・浮遊生物量の年間変動グラフが示されている。

大正3年(1914年)には各所属船からの漁業情報により漁況通信を始め、この年から大正7年まで毎年1回、外洋漁場要覧が発行され、年間の漁況経過に関する記述と月別の漁場海況図が示されている。漁場海況図には魚種別の漁場位置図に表面水温・表面比重の等値線が引かれている。また、この年の三重県水産試験場事業報告の調査部の報告には、英虞湾赤潮調査、伊勢湾口横断観測、本県外洋漁場観測、本県外海定地海洋観測、気象観測などについての記述がみられる。伊勢湾口横断観測については大正6年末に観測を実施したとの記述があり、大正7年度は7回の調査を行い、大王崎~大山下、大山下~安乗崎の2ラインの水温・比重の断面図が事業報告に描かれている。本県外海定地海洋観測については、前年に継続し御座岬南5浬にて三水丸が浜島出入港時に観測を行ったと記述されている。大正8年の三重県水産試験場事業報告によると、御座沖南東沖100マイルまで観測点は延びており、水産庁発行の海洋調査要報には御座沖の観測結果が大正7年9月から記載されているので、御座沖100マイル観測はこの年には開始されていたようである。

三水丸
三水丸

大正8年(1919年)の事業報告には熊野灘3ラインの水温・比重の断面図と伊勢湾の横断面図(安乗崎~大山下、津~野間崎、幡豆崎~二見)が描かれている。また大正11年4月からは水深表記が「尋」から「米」に変更された。

大正14年(1925年)の海況観測表に2月9日、外洋100浬観測の御座沖南東80マイルにおいて漂流瓶が200本放流された記載があり、その後、熊野灘沖で漂流瓶の放流が繰り返された。昭和2年(1927年)の海況観測表に8月の伊勢湾観測で、伊勢湾内で漂流瓶20本が4ケ所で放流された記載がある。

昭和3年(1928年)の海況観測表に9月の外洋200浬観測は「神威丸」によって行われたと記載があるが、他の観測表には調査船名の記載がなく、戦前の観測は使用した調査船名が不明な場合が多い。昭和4年5月から塩分検定が行われるようになり、また翌年の海況観測表から観測点における水深の表記がみられるようになった。昭和5年には本場付属の川越養魚場が竣工し、伊勢湾の湾奥部での海洋観測が始まった。本場による伊勢湾横断観測も継続していたようで、同年1月の伊勢湾横断観測線は合計29測点の観測が行われた。昭和6年12月からは熊野灘沿岸線の測点数が増大し、25~30測点の観測(水温・比重、透明度、水色、水深など)が冬春季に行われるようになった。これはブリ定置漁場の海況調査が目的と考えられる。昭和9年1月の熊野灘沿岸線は合計38測点で観測が行われた。昭和12年度三重県水産試験場業務報告には、外洋観測と伊勢湾横断観測並びに英虞湾観測についての目的や調査時期等の記述がある。

昭和23年(1948年)7月に川越分場調査船「ヴィナス号(2.33トン、6馬力)」が竣工し、戦争のため中断していた川越分場による伊勢湾奥部の横断観測が昭和24年8月から再開された。戦前の観測項目に加えて、pH、溶存酸素(11月から実施)、栄養塩、プランクトン調査が実施された。12月からは漁業取締船「はやぶさ丸」を使用して、湾全域の調査(水温、比重、プランクトン量)を実施した。昭和28年から漁況海況予報事業が国庫補助事業として開始され、三重県は初年度からの10県の中に参画した。昭和32年にイワシ産卵調査海洋観測(沿岸観測線・御座岬~梶取崎間に5測点、潮岬正南100浬観測線・8測点、沖合補助線・潮岬正南100浬~御座岬間に9測点)が「あさま丸」によって年3回行われた。同観測線での観測は年2~4回、昭和38年まで行われた。昭和33年度は前年度のイワシ産卵海洋観測に加えて、漁況海況予報調査海洋観測が11月と翌年2月の2回行われた。同年尾鷲分場事業報告には、神路丸(25.64トン)による冬季の沿岸定線観測結果の記載がある。翌年には三木埼沖観測線が本場によって観測され、同観測線での観測は昭和38年まで行われた。この年、初冬に発生した日本近海で異常冷水現象への対応が不十分であったため、漁海況に対する組織的な調査研究の必要性が認められ、翌年度からは予算も大幅に増額され、「沿岸沖合漁海況予報事業」が開始された。この年、4月から熊野沿岸定線観測20測点の観測が開始されたが当初は欠測が多く、ほぼ周年の観測が行われるようになったのは昭和41年(1966年)度以降であった。昭和39年は沿岸定線観測の他に沖合定線観測が年3回行われ、この年から毎月2回の漁海況速報(内容は漁況の情報が中心)の発行が開始された。昭和47年4月から沿岸定線観測の20測点のうち熊野灘南部の5測点が廃止され、熊野灘北中部に5測点が新設された。一方、伊勢湾では毎月1回の浅海定線観測が開始され、当初の観測点は伊勢湾全域に沿岸重要資源委託調査と合わせて27測点が設定され、昭和52年3月まで継続されたが、4月からは20測点となった。

漁海況速報は昭和53年(1978年)度から、漁業情報サービスセンターの海況情報を加えて内容を充実させ、昭和60年度以降は毎週1回の周年発行となり、情報提供方法も郵送からファックス主体に変化し、昭和62年3月末には約7割の漁協にファックスが整備され、情報提供の迅速化が進んだ。

昭和59年(1984年)9月には調査船「あさま丸(56トン、800馬力)」が竣工し、10月から伊勢湾浅海定線観測も担当するようになり、同年10月の沿岸定線観測からCTDによる観測を開始し、正確な深度における連続的な観測が可能となった。浅海定線観測では12月以降、CSTDによる観測を開始した。溶存酸素量の測定は10月以降、DOメーターを使用するようになった。9月までの沿岸定線観測は、水温は転倒式水温計、塩分はデジタル塩分計を使用していた。また、昭和60年4月には気象衛星ノアの簡易信号(分解能4km)を受信できるカラー海象ディスプレイを導入し、人工衛星による海面水温の観測を開始した。得られた情報を「人工衛星海況情報」としてとりまとめ、昭和61年度には年間44回発行した。昭和62年10月に熊野灘沿岸定線観測で1,000mの観測(水温・塩分)が初めて行われ、翌年6月の沿岸定線観測から毎月、2測点で1,000m観測が行われるようになった。

平成2年(1991年)8月には調査船「あさま丸」にGPSプロッタを装備し、観測点の位置精度が向上するとともに、平成5年7月、CTDをDOセンサー付きに更新し、溶存酸素量の鉛直分布を詳細に調査することが可能となった。また翌年10月にはドップラー流向流速計を更新し、流向流速データを航走水温と共にパソコンに収録、解析するシステムも導入した。平成7年には全国的な海洋観測定線の見直しが行われた結果、三重県の定線も4月から変更され、熊野灘沿岸定線観測の測点数は20測点から17測点となり、伊勢湾浅海定線観測は14測点となった。

平成8年(1996年)6月からは気象衛星ノアの高性能信号(分解能1.1km)受信解析装置を運用開始し、海面水温の分布を詳細に観測できるようになった。このノア高性能信号受信解析装置を導入したのは全国の水産試験場では三重県が初めてであった。翌年2月から人工衛星情報を「人工衛星海況速報」として発行するサービスを開始し、1年間で150回の速報を発行した。3月からはこの速報を三重県のファックスサービスシステムに提供を開始し、広く県民への提供が可能となった。平成10年3月にはファックスサービスによる速報の利用件数が提供開始から約1年で1万件を越え、利用者の漁海況関係情報への関心の高さが明らかになった。このため、情報提供のさらなる充実を検討し、平成11年(1999年)5月から三重県のホームページ上で人工衛星ノアによる海面水温画像や海況情報等の公開を開始した。その結果、漁業関係者のみならず一般県民からも多くの反響が寄せられ、提供開始当初から三重県のホームページのアクセス件数の上位にランクされた。

人工衛星海況速報
人工衛星海況速報

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