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平成20年08月05日

黒潮大蛇行と熊野灘における漁海況変動

平成16年度水産海洋学会シンポジウム講演要旨(2005年3月31日)

久野正博・山田浩且(三重科技セ水産)

本州南岸の黒潮には、紀伊半島沖を東へほぼ直進する流路を取る場合と、遠州灘沖に出現する冷水塊を迂回して大きく蛇行する場合(大蛇行型)があり、熊野灘沿岸の海況は黒潮流路によって大きく変化することが報告されている。過去の事例から熊野灘沿岸の海況と黒潮流路には密接な関係があり、大蛇行時には黒潮内側反流など黒潮系暖水の影響を受けて高水温傾向になりやすいことが知られている。また、黒潮大蛇行期には黒潮内側反流の影響で厚みのある暖水が沿岸側に分布することから、沿岸の潮位が通常より高い「異常潮位」の状態になりやすいことが明らかになっている。

沿岸漁場への魚群の来遊量は各魚種の資源量水準と海況条件によって決定される。ここでは以下の指数を用いて、来遊量への資源量水準の影響を除去した来遊量評価を試みた。来遊量指数( I ) = Cym / Cave ここで、Cymは y年m月の熊野灘主要港(錦港・紀伊長島港)における中型まき網の漁獲量、Caveは y-5年~y+5年のm月漁獲平均値。この方法で求めた漁獲量指数と水温の平年偏差との関係を魚種別に検討した。カタクチイワシ、マイワシ、マアジ、さば類の漁獲量指数と水温の関係から、高水温時に不漁傾向、低水温時に好漁傾向となりやすいことがわかった。言い換えれば、水温が高め基調となる黒潮大蛇行期には不漁傾向ということになる。2004年夏季に始まった今回の大蛇行においても、熊野灘沿岸の中型まき網では蛇行移行期にマイワシ等で一時的な好漁がみられたものの、全般に低調に推移し、主要港における漁獲量は大蛇行移行後に落ち込んでいる。また、定置漁業でも大蛇行移行後は全般に不漁傾向となっている。黒潮の直進期には熊野灘沿岸は栄養塩の豊富な沿岸系水に覆われやすいが、大蛇行期には黒潮の一部が内側反流として沿岸に流入し、ごく沿岸まで栄養塩の少ない黒潮系水に覆われやすい。熊野灘沿岸定線全測点平均のマクロプランクトン採集量の平年偏差から、A型大蛇行期や2000年頃の準大蛇行期にはプランクトン量が顕著に少ないことがわかった。黒潮の蛇行が持続する期間には熊野灘は貧栄養の外洋水に覆われて沿岸の低次生産が低下し、浮魚の餌環境が悪化する。また沿岸一帯が黒潮系水に覆われやすいことからフロントが形成されにくく、漁場形成の頻度も低下する。大蛇行期が浮魚漁況に負の影響をもたらすのはこれらのことに起因すると考えられる。

漁場別の詳細な漁獲データが長期間にわたって得られている定置網での漁獲資料から、ブリの漁獲は大蛇行期に熊野灘全域で不漁傾向になるのではなく、漁場によって好不漁傾向に大きな差があることが明らかになった。特に不漁傾向が顕著であったのは水深が深いため外洋系水に直接覆われやすい熊野灘南部の漁場で、逆に伊勢湾系水の影響を受けやすい北部海域では直進期より蛇行期の方が好漁傾向となる漁場も認められた。ブリの事例から、黒潮大蛇行の漁況への影響は、魚種や漁場によって異なることが示唆された。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 水産研究所 企画・水産利用研究課 〒517-0404 
志摩市浜島町浜島3564-3
電話番号:0599-53-0016 
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メールアドレス:suigi@pref.mie.lg.jp

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