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令和05年11月01日

まちかど博物館体験レポートvol.16 ~大黒屋旅の資料館~
2023.11.1公開



<目次>
はじめに
大黒屋の歴史
まちかど博物館の展示品(建物と庭)
まちかど博物館の展示品(館入口)
まちかど博物館の展示品(前館長のコレクション)
まちかど博物館の展示品(メディアへの登場)
まちかど博物館の展示品(昭和のおもちゃ)

館の概要

 

はじめに


 今回ご紹介するのは、桑名市のまちかど博物館、「大黒屋旅の資料館」です。

 多度大社の門前町に店を構える鯉料理の専門料亭が、地域の文化振興の一翼を担う「まちかど博物館」という活動に参加しました。

 

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大黒屋の歴史


 大黒屋が多度の地でいつ営業を開始したかについては、正確な記録は残っていないものの、江戸時代の享保年間(1716~1736)ともいわれます。現在の店主であり、まちかど博物館としては館長になる蒔田誠治(まいたせいじ)さん13代目です。

 250年以上の歴史があることは確実で、そこから現在まで、多度大社を参拝する旅人に食事と休憩場所を提供してきました。宿泊できる旅館だった時期もあります。現在は食事の提供のみの営業ですが、大黒屋は旅館としても登録されており、「料亭旅館」としての格式を保っています。レストランではなく料亭です。食事客は一組ずつ、お座敷に案内されます。個室ではなく一続きの日本間です。空間が和の文化を創り出します。

 

  
 鯉料理を提供するようになったのは、天保年間(1830~1844)、大黒屋がすでに100年の歴史を重ねていた頃に、地域の人から「良い鯉があるのだが料理できないか」と相談されたことが始まりと伝わっています。いつしかメイン料理は全て鯉を調理する専門料亭となりました。鯉料理だけで150年以上の歴史を積み重ね、代々追求してきました。鯉料理に徹底的に特化した料理店は全国的にも珍しく、この地域に根差した文化となっています。

 
(左)鯉のみで出汁をとり、味付けは味噌のみという「鯉こく」を中心とした前菜
(右)「鯉のあらい」と「煮付け」の両メインのランチ


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まちかど博物館の展示品(建物と庭)


  まちかど博物館としての展示品の第一は、この歴史ある料亭の建物と、見事な庭です。

 


 裏庭の池に、多度山の湧き水がたたえられています。透明度の高い水に鯉が泳ぎます。

 料理として提供されるのは、その鑑賞用の鯉ではなく、衛生的で臭みのない食用の鯉です。大黒屋では、仕入れた後、鯉をこの湧き水の生け簀(す)に入れます。そこで一週間ほど餌を与えず泳がせていると、さらに臭みが抜けて、鯉の身が引き締まるのだそうです。

 蒔田さんは、「鯉の最大の味付けは、多度の水です。」と表現します。地域に湧く水が鯉と一体となって、いわば一つの作品になったのがこちらの料理です。裏庭は、そんな文化の営みを表す舞台でもあります。

 

 

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まちかど博物館の展示品(館入口)


 建物に入ると、土間に骨董品などを並べたスペースがあります。

 ランチ営業中と、コース料理の予約が入っている時間帯には、食事のお客さんが優先になりますので、まちかど博物館の入館者が見られるのは、建物の前景と、前庭と、この建物入口の展示品までです。さらに奥に案内してもらうためには、電話等で予約して、館長さんの予定を確認しておく方が確実です。

 

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まちかど博物館の展示品(前館長のコレクション)


 まちかど博物館に参加したのは、現館長の亡くなったお父様でした。三重県内全体にまちかど博物館という活動を広めるべく、参加希望者を各地で募集していた時期です。当時は、桑名まちかど博物館といなべまちかど博物館が、「桑員まちかど博物館」という名称で一つのまとまりになっていました。多度大社門前町の地域を代表する料亭の主人として、お父様は、地域の文化を盛り上げる試みに賛同し、まちかど博物館の活動を開始しました。

 
お父様は、皇室の方も訪れる料亭を長年運営し、地域のため働きました。


 同館では、お父様の代から所蔵していた品を展示しています。

 賓客を通す応接間が、その展示場所になっています。食事客のいない時間で、館長さんの手が空いていれば、こちらも見せてもらうことができます。

 


 歴史ある料亭らしく、由緒ある品が多くあります。たとえば、江戸時代、大黒屋の当主は商人ながら帯刀を許されていました。とはいえ、普段から腰に刀を差していたわけではなかったのでしょう。名刀を保管し、代々受け継ぎました。包丁さばきには覚えがありつつ、おそらく刀は一度も使ったことがないのではないかと想像しました。

 


 また、多度山で出土したとされる銅鏡や、地域の歴史の貴重な資料である『桑名日記』『柏崎日記』の写しなども展示されています。さらに、大黒屋の屋号にちなんだ七福神に関係するものもあります。大黒天と福禄寿が相撲を取って、大黒天が福禄寿の大きな頭を抱え込んでいる像が面白かったです。

※『桑名日記』『柏崎日記』
桑名藩に仕えた武士の親子が、それぞれ赴任する桑名城下と桑名藩領柏崎との間でやりとりした交換日記。下級武士の日常生活、藩政、庶民の風俗習慣などが記録されている。








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まちかど博物館の展示品(メディアへの登場)


 この歴史ある料亭は、映画やドラマの撮影に使われてきました。

 令和元年(2019年)に公開された映画『アルキメデスの大戦』(山崎貴監督、菅田将暉さん主演)で撮影に使われました。また、平成29年(2017年)に放送されたスペシャルドラマ『LEADERS Ⅱ』(佐藤浩市さん主演)や、令和5年(2023年)公開の映画『最後まで行く』(藤井直人監督、岡田准一さん主演)でもロケ地となりました。

 それらの関連資料も展示されています。

 
 

 映像ではなく、文芸作品でも大黒屋は登場しています。とくに、時代小説の大家・池波正太郎さんが、大黒屋の常連だったことは有名です。『鬼平犯科帳』に登場した鯉料理が、この料亭のメニューをモデルにしたことが、『池波正太郎・鬼平料理帳』という本で紹介されています。また、小説『雲霧仁左衛門』で大黒屋が物語の舞台になりました。雑誌連載のエッセイでも、池波さんは詳しく大黒屋を紹介しています。その書籍や掲載原稿を展示しています。
 


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まちかど博物館の展示品(昭和のおもちゃ)


  亡くなった大黒屋12代目当主で、先代館長の蒔田誠昭さんは、地域を代表する老舗料亭の主人として、歴史ある建物と庭に加え、骨董品や地域の歴史にまつわる貴重な資料などを展示し、和の文化を追求したまちかど博物館を作りました。

 大黒屋13代目、現館長の蒔田誠治さんも、歴史ある料亭を受け継いだ責任を胸に、鯉料理の道に邁進し、建物と庭の維持に心を砕いています。現在、息子さんが県外の料理屋で修行中です。いずれ14代目当主として桑名に戻ります。息子さんは現在、海で獲れる魚を中心に料理していますが、多度山の湧き水で磨かれた大黒屋の鯉料理は、海の魚より臭みがないと感じているそうです。桑名の地域で伝統を積み重ねてきた和の食文化が、過去から現在、そして未来に受け継がれていきます。

 館長さん個人の文化活動を展示することが多いまちかど博物館の中で、こちらは受け継がれた歴史を地域に還元しようとする館だといえます。




 その上で、現館長さんは、ご自身が長年集めてきたコレクションを、先代の所蔵品に加えて、まちかど博物館の展示品として公開しています。

 ブリキのおもちゃソフトビニール人形ホーロー看板のような宣伝商材など、館長さんが子どもだった昭和時代に、子どもたちをワクワクさせたコレクションの数々です。

 本館や庭から館長さんのコレクションが飾られる離れに移動した途端、それまでの和の料亭の雰囲気が一変し、6畳ほどの部屋の四方に所狭しと懐かしの品が並び、昭和から子どもたちを魅了してきた駄菓子屋さんのような空間が登場しました。

 あえて申し上げれば、かなりのギャップです。




 館長さんは、初代『ウルトラマン』放送開始の2年前に生まれました。最初の放送は記憶にありませんが、物心ついた頃に再放送が繰り返され、時代は怪獣ブームでした。館長さんも怪獣に夢中になり、三重県北端の桑名市から愛知県犬山市のモンキーパークで開催された怪獣博覧会に出かけたり、「ソフビ人形」で遊んだりして、幼少期を過ごしました。

 大人になって60年代のソフビ人形を集め出したことが、館長さんのコレクター人生のはじまりです。館長さんによると、この当時の人形は、腕のいい職人が金型を作り、それを元に、町工場の職人さんが一体ずつ手作りしていたそうです。一点物の美術品に匹敵するような芸術性すら感じられます。

 館長さんの集める人形は、コンディションのいいものばかりです。そこに館長さんのこだわりがあります。ここまで状態のいい品を揃えるコレクターは珍しいでしょう。その状態の良さで、当時のソフビ人形の見事さがよくわかります。この館のコレクションなら、これまで昭和玩具に特に興味がなかった人も、惹き付けてしまうに違いありません。




 現在、館長さんのコレクションの中心にあるのが、ブリキのおもちゃです。館長さんによると、60年代、日本には名高いブリキのおもちゃメーカーがいくつもあり、アメリカなどに製品を輸出していたのだそうです。日本の職人がデザインしたブリキのおもちゃは高い評価を得て、高度成長期を迎える日本に外貨をもたらし、経済を支える存在だったとか。

 こちらもコンディションのいいものばかりが集まっています。錆などもほとんど見られません。おもちゃの美しさがストレートに伝わってきます。ゼンマイを巻けば動き出すものもあります。動きがユーモラスだったり、表情が豊かだったり、館長さんが「見ていると心が癒されます」と話す優れモノが、いくつも揃っています。

 ソフビ人形と同じで、ブリキのおもちゃにこれまで関心がなかった人でも、こちらの館なら楽しめること間違いなしです。


ロケットや車は当時よく作られました。車はチョロQのように後ろに引くと走ります。

館長さんのお気に入り。ピエロが体を捻りながらバイオリンを弾きます



 飲料品のおまけのタンブラーやメンコやブロマイドなどもコレクションしています。懐かしかったり、こんなものもあるのかと驚いたり、この部屋には色んなものがあります。

 昭和のブリキのおもちゃや、60年代の特撮作品が好きな方なら、話が盛り上がること間違いありません。本当にたくさんの展示品があって、それぞれが面白く、何時間でも眺めていたくなります。

 『最後まで行く』の藤井直人監督も、撮影に訪れたときに、この部屋を見学していったそうです。また、『アルキメデスの大戦』の山崎貴監督とは、ソフビ人形や特撮の話で盛り上がり、館長さんは「ぜひ特撮映画を撮ってください」と希望を伝えたのだとか。それが理由かはわかりませんが、令和5年(2023年)、山崎貴監督作品『ゴジラ-1.0』が公開されました。




 自らのコレクションについて、館長さんが詳しく教えてくれます。

 鯉料理について話すときの館長さんには、とても優しく丁寧に説明をしてもらえる一方で、プロの料理人としての真剣さや威厳が感じられました。

 コレクションについて話すときの館長さんは、本当に楽しそうで、口数が10倍くらいになっているように感じました。

 伝統ある建物、庭、そして鯉料理と、おもちゃのコレクション、二つの大きな魅力を持つまちかど博物館です。



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館の概要


大黒屋旅の資料館

蒔田 誠治(まいた せいじ)  館長

桑名市多度町柚井1799
養老鉄道多度駅下車徒歩15分
駐車場 30台

開館時間 11:30~18:00(木曜・祝日定休日)
※ランチタイム 11:30~14:00頃
※お食事のお客さんがいる時間は見学できる場所が限られます。
原則予約不要(ランチタイム終了後の来館の場合は要予約)

電話 0594-48-2018
FAX  0594-48-5602

入館無料(飲食する場合は別途代金が必要)

県HPでのご紹介はこちらから




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本ページに関する問い合わせ先

三重県 環境生活部 文化振興課 〒514-8570 
津市広明町13番地
電話番号:059-224-2176 
ファクス番号:059-224-2408 
メールアドレス:bunka@pref.mie.lg.jp

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