現在位置:
  1. トップページ >
  2. スポーツ・教育・文化 >
  3. 人権教育 >
  4. 人権教育(調査・資料) >
  5. みえ人権教育News >
  6.  ハンセン病に係わる人権問題を考える・第3回
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2.  教育委員会事務局  >
  3. 人権教育課  >
  4.  調査研修班 
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line

ハンセン病に係わる人権問題を考える 第3回

 「ハンセン病問題検証会議」(厚生労働省設置の第三者機関)は,ハンセン病患者に対する隔離政策が続けられてきた要因,それにともなう人権侵害の実態を明らかにするため,多方面からの科学的,歴史的検証を行い,再発防止のための提言を目的に2002(平成14)年から調査・検証を進めてきました。2005(平成17)年3月1日には,その最終報告書が厚生労働大臣に提出されました。

 報告書は全20章の約1500頁からなり,①強制隔離政策の開始と責任 ②強制隔離の強化拡大の理由と責任 ③ハンセン病への偏見・差別が助長されてきた実態の解明などで構成されていると報道されています。内容の詳細は,今後明らかにされてくると思われますが,報告書の内「被害実態調査報告」は,すでにハンセン病事実検証調査事業を委託された日弁連法務研究財団のホームページ上に公開されています。以下のアドレスを参照して下さい。(http://www.jlf.or.jp/work/hansen_report.shtml)

 公開されている「被害実態調査報告」(約500頁)は,全国13ヵ所の国立ハンセン病療養所及び2ヵ所の私立ハンセン病療養所入所者,ならびにこれらの療養所からの退所者,家族を調査対象としたものです。

 調査は,全国の療養所入所者全員〔3566人,2004(平成16)年2月現在〕から協力者を募集する方法を採用し,回答は758人から得ています。調査内容は,数値データに置き換え可能な質問項目だけではなく,対象者の体験や思いを記録するための聞き取りを実施しています。

 特に聞き取りから得た内容は,「らい予防法」下の過酷な実態が具体的に語られており,国家による人権侵害をともなった施策が,いかに一般社会の末端まで影響を及ぼしていたかが,明らかにされています。
 以下に,調査対象者の声のいくつかを示したいと思います。
 質問項目12-3-1「いま,ぜひかなえてほしいこと」の回答からの抜粋です。

  • ここにいる人達はほとんどが後遺症があるだけで(ハンセン病の)治療は必要ない。ここにおらされるというのがまちがい。みんな故郷へ帰るか、社会に居住して老後を肉親とか血のつながった故郷で死ねる死というものがなければ、療養所の中だけの平和だけでは意味がないと思う。人間として地域社会の一市民として受け入れる社会でないと本ものではないと思う。地域社会が暖かく受け入れ、普通の市民として医療サービスなども受けられるような地域社会〔1926(昭和15)年入所 男性〕。
  • もう一回ただの人間として認めてもらうために、小さなアパートでも借りて、自分の名前の表札をかけて、公共料金も人並みに払って、生きていたあかしに。子どもの頃から出たいばっかりに何十回も出た。外にどれだけ恋焦がれたかわからない。今でもアパートを借りてたことはあるけど、かくれてヤミ、自分を隠して、身も心もさらけ出して生活したことがない。たとえ少しでも税金や電気水道代を払ってみたい。人から見たらたわいもないことかもしれないが、自分にしてみれば大変なこと勇気がいる。
    〔1941(昭和16)年入所 男性〕
  • 「教育」をきちんとして欲しい。何故生きているのか。人とのふれあいはどうあるべきか。人の「心」を持つことの大切さが学べていれば偏見や差別は生まれない。〔1929(昭和4)年入所 男性〕
  • 私は個人自身にとっては何にも望みはないですけれど一応思っていることは、社会の偏見と差別が早く消えてほしいということ。それは私が病気になったばかりに私の身内のものたちが、長い間、肩身の狭い思いを堪えて生きていたんで、そのものたちが胸をはって生きていける世の中、すなわち偏見と差別が完全に消えてしまった世の中が1日も早くきてほしいというのが唯一の私の思いです。自分ではその日が来たことをこの眼で確かめて死にたいと思います。〔1930(昭和5)年入所 男性〕
  • 故郷の土を踏んでみたいと思っていた。故郷から土をもってきたので、私のお墓の中にいっしょに入れてほしい。〔1925(大正14)年入所 女性〕
  • 自分の入園のときにだましたようなことをしないで、病気や治療についてはっきりと本当のことを言ってほしい。だますようなことはせず、なにもかも話し、本人も納得するようにしてほしい。入園する前に、衛生課のひとに「ここで薬を使ってできないか」といったら「できない」といわれて、しかたなく病院に行くことにした。あの時代は、なんとかしてここに連れてくればいいということだった。それがいややねん。大阪大学に行けば、治療できる、1年で帰れると言われたので、そのつもりだったのに。ここに来た後で、親に手紙をかき、こんなところにつれてこられたといったら、親がびっくりして会いに来た。療養所にはいらなくてもふつうの病気のように、外で薬を飲み、治療できるようにできればいい。〔1925(大正14)年入所 女性〕
  • 平均年齢76 歳という現状であり、郷里へ帰っても仕方がなく、50 歳代ならまだしも働くこともできず、場がなく、郷里へ帰っても生活はできないだろう。ある意味ここは安住の地である。よく人は「治ったから郷里へ帰ればいいではないか」と言われるが、現実はそんな簡単なものではない。書物、話のみで知るのではなく、現実の状況を認識するために実際に足を運び、ハンセン病の現実をより深く認識してほしい。またそのことにより人間性を高めることもできる。このような機会の設定を施設にお願いしたい。そしてハンセン病に対する正しい認識を広げていってほしい。〔1926(昭和元)年入所 男性〕
  • ハンセン病に限らず社会には偏見・差別があり、これはよくないことだが、そこでなぜなのかと考えるに、みんな違いがありその違いをもって生きてるのだから、そういう違いをみんな認め合える社会がいいなと思う。自分らしく生まれる社会だ。そう考えると偏見・差別がないほうがいいだろうな、そんな社会をめざしたい。〔1926(昭和元)年入所 男性〕
  • ふつうの目で見てほしい。障害者なら障害者として不自由なりにそのまま認めてほしい。病気になったから可哀想やと思われたくない。〔1934(昭和9)年入所 男性〕

 1996(平成「8)年に「らい予防法」が廃止され,2001(平成13)年に「らい予防法違憲国家賠償請求訴訟」判決が出た頃から,一般社会においてようやくハンセン病に係わる人権問題が周知されてきました。事実が明らかになるにつれ,患者が受けてきた人権侵害の事実に驚愕させられました。

私たちは第一に,ハンセン病が極めて感染力の弱い「感染症」であること,遺伝ではないこと,確実に治る病気であること,過去においてのハンセン病に対する無知や偏見が国家政策に反映され,社会一般に差別を広めていった歴史的事実を学習していく必要があるでしょう。

 第二に,ハンセン病患者であった人たちの話から,病気に対する偏見や差別が,本人と家族,地域社会との断絶を生んでいったことを学び,さらに現在に至るまで背負わされている本人や家族の「痛み」を感じ,共生への願いに共鳴できる感性を養っていかなければなりません。

 第三は,身近なところから具体的行動に移すための手だてを考えていく必要性があるでしょう。

 「ハンセン病に関わる人権問題を考える」第2回に掲載した「ゆきえ」さんの語りや今回掲載した調査報告から,以上の3点についても学んでいけるように思われます。

 「ゆきえ」さんは,現在の心境を「心が二つありまして…」「ふるさとを思わん日はないけども…もう,ここがふるさとです」と話されていました。「仮名」で話される心情と,「本名」でこそ自分の生きた証を残すことができるのではないかという「二つの心」に揺れている彼女に対して,安心できる社会の実現のために私たちができうることを考えていかなければなりません。

 本年度,三重県内のある中学校がハンセン病に係わる人権学習に取り組みました。授業後の子どもの感想には次のようにありました。

  • 最後に読んでもらった作品で作者が小学校6年生だったので,すごく驚きました。そんなに幼いのにふるさと(親)と離れて島へ行くなんて,私には考えられません。すごくひどくて,その子の一生がそこで先が真っ暗になってしまうのだろうなと思いました。無知は罪だと言っていましたけど,本当にそうだと思います。知らなければ何もできないし,対策もできないと思うからです。それに,知らなければ間違った考えをしてしまうかもしれないし,知ろうとしなければちっとも意味がないとも思いました。

 子どもたちは,ハンセン病の学習を通して「事実を知ること」とその学びの重要性を,自己を振り返りながら認識していったと思われます。

 今後ハンセン病に係わる人権問題を学習していく際には,子どもたちが得た新たな気づきや思いをいかに仲間に伝え,差別をなくしていくための思いをいかに共有していくかといった視点から,学習を積み上げていきたいと思います。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000027447