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平成23年03月07日

 人権教育を効果的に行うためには、住民一人ひとりをはじめとする多様な主体が、地域の資源を生かすという視点と、みんなで協働して取り組むという考え方をもって、取組を着実に進めていくことが必要です。
 一人ひとりが大切にされる「人権尊重の地域づくり」に向けた、地域の青年等による自発的な学習活動の事例を紹介します。 
 

地域における仲間づくりの広がりと深まり
     ~青年と高校生による「津友」の活動について~

                                     津市反差別青少年友の会              (2011年3月作成)                                                                           

 

1.はじめに

 津市反差別青少年友の会(以下、津友)を結成して、5年目を迎えようとしています。
 これまで津友で大切にしてきた、自分を語ることと反差別の仲間づくりを柱にした取組を紹介します。

 

2.「津友」結成へ

(1)つながる場を求めて

 近年、反差別の活動に取り組む青年層の活動離れがよく話題になります。これらの背景には、厳しい経済状況の中、安定した就労が保障されなかったり、進学・就職により地域を離れてしまったり、様々な課題があります。しかし、社会には様々な差別があり、いじめやインターネットを利用した差別事象等も後を絶ちません。その結果、ふるさとを語れなくなったり、自分に自信をもてなくなったりする現実があります。
 そのような状況の中で、主体的で自主的な活動を行っていくためには、ともに同じ方向をめざす仲間としてのつながりが必要です。

(2)津市反差別青少年友の会の結成

 津市内のある地域で活動している青年Aは、中学生の頃から人権活動に参加し、高校卒業後も青年として活動を続けていました。彼の地域では、高校生の活動は行われていても、高校卒業後の活動へとつなぎきれていないという状況がありました。
 彼が高校生として活動していた10年前、他地域で活動している仲間との出会いやつながりを感じることが、彼にとっては地域や学校でさらに活動をすすめていく原動力になっていました。そして、後輩の高校生をみたときに、他地域の仲間とつながる場がこの子たちにあるのだろうか、そんな場が必要ではないかと感じていました。
 その思いは、2006年1月(10市町村合併後)、彼が中心になって企画した、市内の各地域で活動に取り組む高校生や青年の交流会において、高校生たちが積極的に語り合う姿を見ることによって、さらに強いものとなりました。そこで彼は、高校生の頃に、中勢地区高校生友の会でともに活動していた仲間に声をかけ、2007年7月、津市反差別青少年友の会を結成しました。それを私たちは、「津友(つとも)」と呼んでいます。

(3)何を大事にしながら活動を進めていくのか

 津友の目的は、市内の各地域の教育集会所等を拠点に活動する高校生や青年が、地域、世代の枠を超えた幅広い交流をとおして連携し、より強いつながりを構築することです。また、その交流をとおして、各地域での活動を活性化させることも目的にしています。
 しかし、結成1年目、津友に集まった各地域の高校生や青年の状況は様々でした。Aの地域のような状況があったり、数年前から青年活動として、高校生や子どもたちにかかわっていく取組が確立されようとしている地域があったり、活動している青年は全くいないという地域もあったりしました。
 各地域の状況が違う中で、その現状や将来への展望、特にAの思いを十分共有することができなかったこともあり、年数回の交流会を一部の青年で運営していくことで精一杯でした。その結果、「私たちはどのポジションに立ったらいいのか。高校生と同じ一参加者なのか?それとも高校生を指導する立場なのか?」や「津友が何をめざしているのかわからない」といった、津友のあり方にとまどいをもつ声が青年たちから出ました。
 このような状況は、青年Bの「青年だけで集まって津友のこれからのことを話そう」という声をきっかけに変化していきます。2008年1月のことでした。Bは、「目の前の高校生の課題から始めよう!そこから何を一緒にしたいのか、自分たちのどんな経験を伝えたいのかを考えなければ意味がない」と意見を出します。その声をきっかけに、交流会の前には、まず青年だけで集まり、高校生の課題は何なのか、自分のどんな経験を届けたいのか、どんな交流会にするのか、などを話し合う現在の津友のスタイルが確立されていくことになります。

 

3.つながるために自分を語り、自分を語ることでつながる

(1)自分を語ることを大切に

 津友は、様々な地域から高校生と青年が集まってくるため、レクリエーションなどをとおしてお互いのことを知ることから始めています。その上で、メンバーそれぞれが、自分はどんな課題と向き合おうとしているかをふり返り、語り合うことを大切にしています。
 結成2年目の夏、初めての夏期合宿では、「思いっきり遊び、共通の体験をとおしてつながろう!自分自身をふり返ろう!自分を語ることでつながろう!」というテーマで、部落問題を語り合いました。
 高校生Cが向き合っていた課題や自身の変容、そして、彼女に伝えられることは何かと考え行動した青年たちの姿をとおして、これまでの津友の取組を伝えたいと思います。

 

(2)なぜ、この活動に取り組むのか

 Cは、活動の中心にいて、仲間を引っ張っていく存在で、私たちの前では、明るく元気に振る舞っていました。そんな彼女は、「なぜこの活動に取り組むのか」と仲間から何度も言われたことがあります。しかし、そのことに、何も返しきれないことや母親がこの活動を肯定的に捉えてくれないことにも悩んでいました。そのようなことから、自分の居場所や周りとのつながりが見出せず、仲間と活動していても、寂しさや孤独を感じていきます。

 

(3)お前らしく胸張って

 Cの悩みを知ったAは、自分自身の高校生の頃の出来事を思い出しました。
 当時、彼は、「差別の厳しさは、本当に差別を受けた者でしかわからない。同じ痛みをもつ者どうしでなければ、つながれないのではないか」という思いから、仲間との反差別の活動に不安をもっていました。そんな彼を支えたのは、生活する地域も環境も異なるDの「仲間が大切だから活動している。自分は、差別を受けたことがあるかどうかに関係なく、とにかく差別は嫌だからなくしたい」という言葉でした。
 そんな経験からAは、Cに、「仲間としてつながっているから、その関係性の中で差別がひとつなくせるんだ。お前らしく胸張って差別をなくしたいって言ったらいいんだ」と伝えました。
 また、Aは、現在も青年として活動を続け、Cと同じ迷いを感じたことのあるDに、自分の経験を合宿で語ってもらいました。
 こんな青年たちの経験を知ったCは、「もっと自分の思いを出さなければ。抽象的なことやその場の雰囲気じゃなくて、ここで真剣に語り合いたい。合宿に行ってよかった。津友があってよかった」と後に語っています。
 Cの価値観を転換させたのは、仲間として一緒に活動しようと伝えたAの存在はもちろんですが、同様の迷いを持っていたDが、今も活動を続けているという姿が、これからの生き方の「モデル」としてCに展望をもたせることになったからだと思います。

 

(4)活動する姿を見てもらうことが大事

 ある日、青年Eのもとに、Cから電話がありました。いつもの様子とは違い、なかなか用件を言わず、「会って話したい」と言うまでに時間がかかりました。
 Cは、Eと会って、母親が自分の活動を肯定的に捉えてくれないことについて打ち明けました。
 そこで、Eは、自分のことを話しました。彼の母親も、活動に対して肯定的ではありませんでした。活動を続ける中で、互いに言い争いをすることが増え、Eは、次第に母親を否定するようになります。しかし、母親の言葉の背景には、被差別体験からくる不安があることがわかってきました。この経験から、「自分もいっしょだった。でも、お母さんは、心のどこかでは応援してくれていると思う。今すぐはわかってもらえないかもしれない。だけど、いつかわかってくれるはずだから、活動する姿を見てもらうことが大事だ」と話しました。さらに、「お母さんと向き合うことは、しんどいかもしれない。でも、自分には支えてくれる仲間がいた。だから、自分も、Cを支える仲間の一人でありたい」と伝えました。
 そして、Cは、母親に、「人権劇で舞台に立つ私の姿を見てほしい」と伝えていきました。人権劇の後、親子で話をする中で、活動を肯定的に捉えられない背景には、その生い立ちの中で、部落問題に対する誤った認識をすり込まれてきた経験があることがわかってきました。
 彼女は、「Eが語ってくれたことを忘れたことがない。ようやくお母さんと真剣に部落問題について話をすることができた。これが、私にとってのスタートだと思う。これからも、活動する自分の姿を見せ続けていきたい」と後に語っています。

 

(5)理解してくれるまで活動を続ける

 現在、Cは、青年となりました。今年度の「つとも夏期合宿2010」のテーマは、「わたしがぶつかった壁」と決めました。そこで、高校生だった頃、自分の居場所や活動する意義を見出せなかったことを、どう乗り越えてきたか、後輩たちに伝えました。
 そして、Cは、合宿で、「お前がいるから差別がなくなるんだというAの言葉や、仲間が大切だから差別をなくしたいというDの言葉によって、自分自身の居場所を見つけられた。また、Eの言葉によって、母親を否定することしかできなかったそれまでの自分をふり返り、そこに向き合っていきたいと思えるようになった」と話しました。また、「自分はなぜ活動しているのだろうとすごく悩んだし、考えることも嫌だったときもある。それでも活動を続けてきたのは、負けてしまえば、自分を否定することになると思ったから。そんな生き方はしたくない。私の目の前にある課題は、たった一人のお母さんが、部落問題を正しく理解してくれるまで活動を続けることだ」と語りました。
 津友の青年との出会いによって、活動の中での居場所を見つけられたCは、さらに、自分をふり返り、語る活動をとおして、自分にとっての部落問題は、身近で大切な存在である母親の偏見や差別心をかえていくことであり、それが自分自身の活動の意義だと感じられるようになっていきました。このことこそが彼女にとっての差別を許さない生き方そのものです。
 合宿でCの語りを聞き、その後の津友の活動をとおして、新たに自分にとっての部落問題とは何なのかを考え始めている多くのメンバーがいます。

 

4.おわりに

 自分にとっての部落問題に向き合い、自分を語り、わかりあえる仲間をつくることで、反差別のつながりが深まっていくことを私たちは実感しています。そんな仲間の輪を広げ、つながりを深めていけば、社会から差別をひとつずつなくしていけると思います。だからこそ、私たちは、自分をふり返り、語り合うことを続けていきます。
 「差別を許さない生き方をしたい」そんな仲間が隣にいるからこそ、歩み続けます。

 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.lg.jp

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