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平成25年10月11日

2013(平成25)年度 人権学習指導資料「気づく つながる つくりだす」活用のための連続講座報告(7月31日実施分)

 部落問題を解決するための教育

部落問題学習を進めるうえで大切にしたいこと

~ 目の前の子どもの実態からはじめよう ~

 テーマの設定理由

 県立学校で発生した部落問題に係わる差別事象(人権侵害)の背景を探っていくと、「正しい知識や行動力を身に付けるための学習の弱さ・不十分さ」や「地域社会やネット上などに存在する偏見や差別意識の影響」が大きな課題として浮かび上がってきます。

 一方で、ここ数年の県立学校における部落問題学習の実施状況(学校数)は、2012(平成24)年度までの四年間に毎年数%ずつ減少してきています。この理由としては「部落問題を中心に据える必要性に対する意識の薄れ」「取り組むべき課題の多様化」「人権学習の内容として、仲間づくりやコミュニケーション力の向上に力点を置く傾向があること」等が考えられます。その他にも、例えば統一応募用紙についての学習は行っていても、その歴史的な背景としての部落問題にまで学習が及ばなかったり、部落問題学習として捉える認識が弱かったりするといったことが考えられます。

 このような状況をふまえ、小学校や中学校では部落問題学習をとおしてどのような「子どもたちの姿・生き方」の育成をめざしているのかについて理解を深めるとともに、県立学校においても「より生徒の実態に即した部落問題学習を進めるために、指導資料をどのように活用していくか」について考え合うことを、本講座のねらいとしました。

研修概要

1.講演と解説講演風景

 はじめに、文部科学省「人権教育の指導方法等に関する調査研究会議」委員であり、前伊賀市立柘植中学校長の桒原成壽(くわはら なりひさ)さんから「高校における人権・同和教育や人権・部落問題学習実践に向けての一提言 ~文科省「取組状況調査」を根拠に~」と題してお話しいただきました。前述の調査研究会議が、全国の教育委員会と小・中・高・特別支援学校を対象に実施した「人権教育の推進に関する取組状況調査」は、2009(平成21)年にその結果が公表されています。そこから見えてくる課題について、柘植小学校や柘植中学校での取組における子どもたちの姿を重ねながら具体的に説明していただきました。

講演内容より  

 取組状況調査結果からは「人権学習が座学的・講義的な学習に偏っていないか」「取り組むべき人権課題がすべての教職員で共有されているか」「指導の工夫や改善ができているか」「家庭や地域への働きかけや連携ができているか」等の課題が見て取れる。

 柘植小・中学校の取組においては、教育的に不利な立場に置かれている子どもたちの暮らしに象徴的に表れている差別の現実をふまえ、それを取組の立脚点とすることの必然性を、すべての教職員で確認しながら進めてきた。具体的には「自尊感情の獲得」「学力の保障」「将来の自分を思い描くこと」そして「なかまづくり・学級集団づくり」といった観点を組織として共有することである。

 特に「なかまづくり」は、すべての活動の基盤であり、「子どもたちどうしの自然発生的なものではなく、教職員の意図的・継続的で計算された取組である」という認識のもと、取組を進めてきた。

講演の感想

  • 離婚すると、仕事も辞めてしまって地元に帰ってくる卒業生の姿を見て、生き方や生きがいに結びつくような仕事観を育ててきただろうかと反省され、自己実現をめざした進路指導をつくってこられたのはすごいなあと思った。特別活動・総合的な学習の時間等、様々な機会をとおして人権教育・キャリア教育の観点から生徒の生き方を育むことの大切さを実感した。
  • 小中学校の取組の様子がよくわかった。改めて校種間連携の重要性を感じた。

  続いて、県内の部落問題学習の取組状況および指導資料の部落問題に係わるワークシートについて、事務局より解説を行いました。全9枚のワークシートが、「憲法の理念・忌避意識」「自己開示」「進路保障・統一応募用紙の理念」をキーワードとして、「部落問題は、個人的な問題ではなく、社会問題であることを理解すること」「自己開示を通して、他者に共感するための想像力や感受性を養うこと」「公正な採用選考を求める取組に学び、自分のこれからの生き方について考えること」を目的に構成されていること等について説明しました。

2.指導略案づくりグループワーク

 5つのグループに分かれ、講演の感想及び各校の部落問題学習の現状について意見交流を行った後、参加者各自で指導略案の作成に取り組みました。最後に、作成した指導略案について、工夫したところやこだわったところを中心に交流しました。

 

P.19~P.24 「基本的人権と私たちの生活」 

  • 在日の人との結婚を考えている友人から「国籍のことで、結婚を迷っているんだけど…」という相談を受けたことがある。「そんなことが結婚をしない理由になるのはおかしい」と自分が言うと、友人からは「そう言うのはあなただけで、他の人からはやめた方がいいと言われる」と返された。自分はその時、何も反論できなかった。生徒には、正しい知識をもって反論できるようになってもらいたいと思って指導案を考えた。ワークシート1では、「『大事でない』と思う項目に基づいて、周囲から結婚を反対されたらどう反論・説得するか」を考えさせる。ワークシート2では、Aさんの悩みの原因が何であるかを考えさせ、それはAさん個人で解決する問題ではなく、周り(社会)を変えることで解決していくべき問題であることを考えさせたい。
  • 導入として、中学校までの学習のなかで部落問題について「どんなイメージを持っているか」「どんなことを知っているか」を出させる。ワークシート3のエピソードを用いて、部落問題を遠いことのように感じがちな生徒たちに、世の中のふとした場面で出てくる差別の現実を伝え、そこから学習を展開させたい。

 P.43~P.48 「『打ち明ける』こと、『つながる』こと」

  • 短い時間で活動を行う工夫として、ワークシート1の代わりに、「私は…」と書いた3~5枚の名刺を作って交換させるやり方を考えた。
  • ワークシート1を活用するにあたって「これは部落問題学習なんだ」という軸をしっかりさせるために、まず授業者自身が部落問題とどう出会い、どう取り組んできたかを生徒に話すところから始める。ワークシート2では、「関係ないよ」「がんばってください」といった言葉は他人事だから言えるのだということへの気づきを大切にしたい。この場面は、ロールプレイ形式で行うとよいと思う。
  • ワークシート1の「私は…」と伝える10の言葉を自分で書くことは難しいと思い、2人組でのインタビュー形式に変更した。担任と副担任で実演し、答えにくい質問に対しては答えなくていいこと、質問者も突っ込んで質問しないことを伝え、生徒たちが安心して取り組める工夫をした。

P.73~P.78 「進路を切り拓く」 

  • 卒業後就職する生徒が多いこともあり、ワークシート1を使うにあたってはグループごとに業種を指定し、その業種ならではの質問表を考えさせる。また振り返りシートには記名させ、授業者が生徒個々の思いを把握できるようにする。授業者のコメントを添えた感想集を配付するなどして「返し」を行いたい。
  • 5限目にキャリア教育の授業、6限目に人権LHRを行うという設定で、統一応募用紙ができた意義や背景を理解する学習を計画した。統一応募用紙が現在の様式になるまでを具体的につかむために、社用紙と比較し、なくなった項目を確認するとともに、その理由を考えさせることで、何を大切にすべきなのかということを学ばせたい。

 

研修を終えて

 講演やグループでの話し合いをとおして、取組を進めていくうえで大切にしたいこととして、「子どもの姿や現実を立脚点とすること」や「取組を進める必然性を共有することの重要性」を確認することができました。このことは、校種に関わらず大切にしたいことです。まずは目の前の生徒のことをよく知ることから始め、取り組むべき課題が明らかになれば、その課題を解決するためにどのような学習や体制づくりが必要かを具体的に考えることができるのではないでしょうか。

 指導略案の作成においては、参加者は自校の生徒の様子を思い起こし、「この生徒に対し、なぜこの学習をするのか、どのように進めるのが効果的か」を考えながら、様々な工夫を凝らしました。私たち教職員が自分自身の生き方や考え方を問いながら、生徒とともに取組をつくっていこうとする姿勢も見られました。今後とも、これらを大切にしながら取組を進めていく必要があると考えます。

 

 

 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 教育委員会事務局 人権教育課 調査研修班 〒514-0113 
津市一身田大古曽693-1(人権センター内)
電話番号:059-233-5520 
ファクス番号:059-233-5523 
メールアドレス:jinkyoui@pref.mie.lg.jp

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