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2014(平成26)年度 人権学習指導資料「気づく つながる つくりだす」活用のための連続講座 講演記録

「クラスに一人は必ずいる!?性的マイノリティの子どもたち」

 杉山 文野 さん#

 

 2014(平成26)年7月に開催した「気づく つながる つくりだす」活用のための連続講座(女性の人権)では、杉山文野(すぎやま ふみの)さんを講師にお迎えし、ご講演いただきました。杉山さんご自身の経験をふまえ、性的マイノリティの子どもたちについての理解を深め、具体的な取組をしていくうえで、有益なご示唆をいただきました。ぜひ、ご一読ください。

1 はじめに

 今日は性的マイノリティについてお話をさせていただきます。最近は、文部科学省の調査報告があったり、海外の著名な人がカミングアウトしたり、同性婚が話題になったりというように、ニュースなどでも性的マイノリティのことが取り上げられる機会が多くなってきていますが、具体的なことまでは分かりづらいかと思います。僕がお話することによって、そういった存在が身近であるということに少しでも気づいていただけたらと思います。

2 性って何

 そもそも「性って何なのか」というところからお話をさせていただきたいと思います。突然ですが、もし「あなたの性別は何ですか」と問われたら、皆さんは何と答えますか。

 だいたいは「男性です。ついているものがついているから」とか「女性です。身体的に」といった答えが返ってきます。人が性について語るとき、「子どもを産むことができるから」など、生物学的な性、身体の性についてのみ語られることが多いと思います。しかし性というのはそんなに単純なものではなく、いくつかの要素が組み合わさってできているのではないかと僕は思います。まず、性は3つの要素に分けて考えることができます。

3 性の3つの要素と「第三の性」

 一つ目は「身体の性」です。これは先ほどの生物学的な性、例えば精巣や卵巣があるといったような内外生殖器の話です。二つ目は「心の性」で、これは性自認、「自分は男である」とか「自分は女である」という心の性別です。そして、三つ目は「好きになる性」で、これは性的指向、好きになる対象の性別です。このように、性を3つの要素に分けて考えた時に、それぞれに、「男」「女」だけでは分類できない「第三の性」が存在すると考えています。

(1)身体の性

 性分化疾患あるいはインターセックスという言葉を聞いたことがある人もいらっしゃると思います。男性と女性の両方の生物学的要素を未分化の状態で持ち合わせていることをいいます。1000~2000人に1人くらいの割合でいると言われています。性分化疾患というのは、特定の症状があるわけではなく、70種類以上の症状の総称です。例えば、精巣と卵巣の両方の要素を持って生まれてくるとか。あるいは、染色体がXXなら女性、XYなら男性になりますが、XXY、XXXYというような染色体を持って生まれてくるとか。XYだけれども身体は女性化しているという症状もあります。

(2)心の性

 多くの人は自分が「男性である」とか「女性である」ということを疑ったことなどないと思います。しかし「心の性」も100%男性とか100%女性というふうにきっぱり分けられないのではないかと思います。グラデーションになっていて、グレーの部分があるのではないかと思っています。

(3)好きになる性

 お聞きになったことがあると思いますが、異性が好きな人、同性が好きな人、そして異性も同性も好きなバイセクシュアルという性的指向の人もいます。

4 27通りの性

 このように性を3つの要素に分けて考えた時に、どの性にも「男」「女」に当てはまらない「第三の性」が存在するとすれば、3×3×3で、27通りの性別があるという仮説が成り立ちます。それが、皆さんのお手元にお配りした表です。【資料1】

 いわゆる一般の女性というのは、身体が女性、心も女性で、男性が好きなので表の2番に当てはまります。僕はどうかといいますと、身体は女性として生まれてきました。だけど、ずっと自分を男性だと思っていて、女性が好きなので4番に当てはまります。レズビアンといわれるのは、身体が女性で、心も女性で、女性が好きなので1番に当てはまります。これだけ多様に考えられる性を、「男」「女」という2つの箱に押し込めるのはちょっと窮屈なのではないでしょうか。

5 LGBTについて

 LGBTという言葉を聞いたことがありますか。LGBTの人に会ったことがありますか。LGBTとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの頭文字をとったものです。女性として女性が好きなのがレズビアン、男性として男性が好きなのがゲイ、どちらも好きになる対象であるのがバイセクシュアル。トランスジェンダーというのは少し聞きなれないかと思います。これは、性同一性障がいも含めて、生まれた時に、法律的、社会的に割り当てられた性別にとらわれない性別のあり方を持つ人ということです。僕もこれに当たります。

(1)性同一性障がいとは

 性同一性障がいとは、「身体の性と心の性の不一致」や「外見と中身の不一致」に苦悩する状態を言います。Gender Identity Disorderの頭文字をとってGIDという言い方もします。余談ですが、アメリカの精神疾患リストでは、最近、GIDが「性別違和」という意味のGender Dysphoriaに変更されました。日本ではこれからどう呼ぶか、現在様々なところで議論されているところです。

 僕が性同一性障がいをカミングアウトして本を出したのは今から9年くらい前です。僕と同じような人がいるはずだとは思っていたのですが、本を出したらすごくたくさんのメールをいただくようになり、今でも全国から届きます。そのほとんどが「僕もそうです」「私もそうです」「でも誰にも言うことができません」というものです。最近は割とポジティブな、「いろいろあるけれども、今はカミングアウトして楽しくやっています」といったメールもいただきますが、それでも、「僕も性同一性障がいだと思います。ただ、今まで誰にも言えずに40歳近くになり、2児の母です」といったメールも少なくありません。根深い問題だと思います。

(2)性同一性障がいの生きづらさ

  僕はとにかく、セーラー服を着るのが嫌で仕方がありませんでした。学校に行くと必ず体操服に着替えていました。中学生のときは、第二次性徴が始まって、生理がきて身体が丸味を帯び、順調に女性として成長していく一方で、気持ちは順調に男性として成長していき、まさに「引き裂かれる」という言葉でも足りないような心理状況でした。「自分は頭がおかしいんじゃないか」とか「こんな変態はこの世に自分一人なんじゃないか」というふうに自分を責め続ける毎日でした。

 自分の心の性に合わせて生活しようとしたときに何が大変だったかというと、まずは「男性」「女性」がきっぱり二分されるトイレ、お風呂、更衣室などです。「トイレはどっちを使うのですか」と聞かれるのですが、この風貌で女性用のトイレに入って行ったら大変なことになってしまうので、男性用トイレの個室を使用しています。ただ、「かわいい男性なのか、ボーイッシュな女性なのか、どっちなのか」という時期は大変でした。

6 企業や行政の変化

 2012年に7万人を対象に行った電通総研LGBT調査では、5.2%の人がLGBTに該当するという結果が出ています。5.2%というと、だいたい全国で670~680万人くらいいることになります。これは血液型がAB型の人や、左利きの人の数とさほど変わらない数だと言われ、このことからもかなり多いことが分かっていただけると思います。

 最近ビジネスの世界では、市場規模が年間5.7兆円にのぼると言われるLGBTのマーケットを開拓していこうとする動きが出ています。人権問題としてではなく、経済誌に取り上げられたり、ファッション誌に取り上げられたりすることもかなり増えてきています。

 例えば海外のある家具販売会社では、男性同士が手をつないで家具を買いに行くというCMを流しています。フランスのファーストフード店も、ゲイの少年をCMに登場させています。これらは、「どんな人でもウェルカムですよ」というメッセージを伝えるものです。また、LGBTの人たちは、ペットを飼う傾向が強いことから、あるペットフード会社はLGBTにフレンドリーなことを打ち出しています。

 日本ではまだまだ少ないのですが、ある携帯電話会社は婚姻関係にかかわらず住所が同じなら家族割が使えるようにしました。これにより同性パートナーの加入がすごく増えたといいます。

 国や地域をあげて取り組んでいるところもあります。マドリード観光局は、「同性カップルにもフレンドリーですよ」ということを打ち出していますし、イスラエルのテルアビブは、LGBTフレンドリーな都市として観光客誘致をしています。

 日本では、大阪の淀川区役所が2013年にLGBT支援宣言を出しました。職員に対してLGBTについての研修を行ったり、相談窓口を設けたりしています。僕は今、東京の渋谷区と一緒にいろいろやらせていただいています。このように行政としての取組も増えてきています。

 またLGBTの従業員に配慮している企業も増えています。同性婚でも異性婚と同様に結婚祝い金を出すなど、福利厚生を整備している企業やLGBTの学生に向けた就職説明会を行っていたり、社内にLGBTネットワークをつくって啓発活動を行ったりしている企業もあります。

7 子どもたちにロールモデルを

 自殺総合対策大綱が2012年に5年ぶりに改訂されました。このときに自殺の要因の一つとして「性的マイノリティ」が入りました。

 残念なことに、LGBTと自死の問題というのは切っても切れません。岡山ジェンダークリニックが、10年間にクリニックに訪れた1200人の患者を対象にして調査を行ったところ、自殺念慮を抱いたことのある人が約6割、自傷・自殺未遂の経験がある人が3割という、かなり高い数字が出ています。しかも、これは病院までたどり着いた人の数ですので、たどり着く前に自ら命を絶たれた方を含めるともっと高い数字だろうと言われています。この自殺念慮、自傷・自殺未遂は、中学生から高校生にかけてがピークであるというデータも出ていることから、学校教育においてもLGBTについての学習は必須の課題であると思います。

 LGBT の子どもたちが、自分の悩みを一人で抱え込むことのないようにサポートする活動として、NPO法人「ハートをつなごう学校」というプロジェクトを、2012年から始めました。LGBTの先輩や、LGBTにフレンドリーな著名人から「君は君のままで大丈夫なんだよ」「状況はどんどんよくなるよ」といったメッセージをいただき、ホームページで動画配信しています。

 この活動のねらいの一つは、子どもたちにロールモデルを提供することです。TVをつければ男女の恋愛ものをやっていて、ファッション誌といえば男性誌と女性誌に分かれている。算数の教科書にすら太郎さんと花子さんが登場する。「世の中やっぱり男性と女性」という考え方に基づいた発信がまだまだ多いのではないかと思います。そういう風潮の中だからこそLGBTの子どもたちには、ロールモデルとの出会いが必要なのです。

 子どもは身近にいる大人や親などに憧れて未来を描くものだと思うのですが、自分がLGBTであることをオープンにして社会生活を送っている人はまだまだ少ないです。メッセージを通して、「こんな人たちもいる」と見せることができたら、LGBTの子どもたちが、未来を描けるのではないかということで始めました。

 僕自身も未来を描けずに、どういうふうに生きていったらいいんだろうと思っていました。僕のようなセクシュアリティで社会生活を送っている人が見つかりませんでした。いろいろ探した結果、「おなべバー」を見つけて、「水商売で働くしかないのかな」と思っていました。大学で就職活動した時も、履歴書の男女どちらに印をつけたらいいんだろうと考えたら、「就職はあきらめよう」と思ってしまいました。最近では、LGBTであるということをオープンにしながら、活躍されている人もかなり増えてきていますので、そんな人々のメッセージを届けることで、子どもたちのロールモデルになればと思っています。

8 LGBTに係わる国際的な動き

 2000年にオランダで世界で初めて同性婚が認められてから、先進国ではどんどん同性婚の流れができていますが、国連加盟国190数か国中、80か国以上では未だに同性愛が罪になります。そのうちの数か国では死刑になる可能性もあります。また、同性愛者であることを理由に撲殺されたり、レズビアンであることを治療するという名のもとにレイプされたりといったヘイトクライムもいろいろな国で起こっている現実があります。

 しかし、国連事務総長の潘 基文さんは国連人権理事会等で、LGBTの人権について演説を行い、「差別全般、特に性的指向や性同一性に基づく差別を拒絶する」と述べています。LGBTの人権を尊重することは、国際社会として取り組むべき人権課題なのです。

9 パワーカミングアウト

 そんな中ですごく大きなことは、著名な人たちがLGBTであることをカミングアウトする、いわゆるパワーカミングアウトが増えてきたということです。

 例えば、水泳で5つの金メダルをとったオーストラリアのイアン・ソープ選手がゲイであることをカミングアウトしました。女優のジョディ・フォスターさんはレズビアンであることを公表して、女性のパートナーと結婚しました。レディ・ガガさんはバイセクシュアルであることを公表しました。リッキー・マーティンさんはゲイであるということを公にして、代理母出産で二児の双子のパパになりました。フェイスブックの共同創設者のクリス・ヒューズさんも、かなり早くから同性愛者であるということを公にして社会活動を行っておられます。エルトン・ジョンさんも早くから同性愛者であるということを公表し様々な活動をされています。

 他にも、女子サッカーアメリカ代表チームのエースストライカーであるワンバック選手は、チームメイトの女性と結婚しましたし、アイスランドの元首相、ヨハンナ・シグルザルドッティルさんも同性と結婚し、同性婚をした世界初の首相となりました。

 日本でも、「あの人、早くカミングアウトしてほしいな」と思う人がいます。直接お願いしたこともあるのですが、本人はいいと思っていても周囲のことを考えると、なかなか公表は難しい状況です。

10 学校でできること

 学校でできることをいくつか提案させていただきたいと思います。

(1)保健体育での発信

 僕は大学の時、「保健体育の教科書から見るセクシュアリティの比較」を研究しました。小学校から高校までのどの保健体育の教科書にも第二次性徴についての記述があります。その授業のときに先生方がLGBTについて何かしら触れるだけで、クラスの中に数名はいるであろう当事者の子どもたちの気持ちは楽になると思います。また先生がLGBTを肯定的に捉えていることを伝えれば、周囲の子どもも肯定的に捉えるようになると思います。

(2)トイレ等の表記

 僕自身の経験でいうと、トイレのプレートが一カ所でいいから「男女兼用のトイレ」になっていれば、すごく気持ちが楽だったかなと思います。

(3)知識の共有

 LGBTの子どもたちへの対応はマニュアル化できるものではないと思います。マニュアル化ができない分、その知識を得るための本を身近な所に置いていただくといいと思います。最低限の知識を共有しておくことは大事であると思います。

 例えば、

○『ゲイのボクから伝えたい「好き」の?(ハテナ) がわかる本』(石川大我、太郎次郎社エディタス、2011年)は、かなりわかりやすいセクシュアリティの入門書になっています。

○『ハートをつなごう』(石田衣良他、太田出版、2010年)は、NHKの特集番組でセクシュアリティを扱ったものを一冊の本にまとめたものです。

○『ダブルハッピネス』(杉山文野、講談社、2009年)は、僕が9年前に書いた本の文庫版です。本が出てから手術に至るまでとか、今日お話しさせていただいたことも書いています。

 子どもたちに対しても、こういった本を図書室や保健室に置いたり、もし何かあれば、手渡してもらえたらいいなと思います。ただ、図書室というのは、難しいところがあって、「本を借りることによって自分がそうだと思われたらどうしよう」と考えて借りることを躊躇してしまう子どもたちもいます。だから保健室とか教室の隅に置くことをお勧めします。

11 ウェルカミングアウト

 誰にでもすぐできることとして、ウェルカミングアウトというのをお勧めしています。これは、「実は僕、性同一性障がいなんです」というカミングアウトではなくて、周りの人たちが「ウェルカムですよ」というのをどんどん伝えていくことです。例えば、今日この後、みなさんはそれぞれ職場や家庭に戻られたり、友だちと会われたりすると思います。そこで「今日、こんな話を聞いたんだよ」と話したり、テレビを見た時に「こんなテレビを見たけれど、こういうふうに思うんだ」という肯定的な発言をしたり、「実はゲイの友だちがいるんだよ」ということを伝えたり、肯定的にどんどん口に出すことです。そうすると、「この人にだったら言っても大丈夫かもしれない」というふうに、カミングアウトのきっかけづくりにもなると思うのです。

12 マイノリティにやさしい社会はマジョリティにもやさしい社会

 今まで性的マイノリティというのは夜の世界の人とか、テレビのバラエティの人、ちょっと自分とは遠い存在と思われている人も多かったかもしれませんが、実は、すぐ隣にいるような存在なんだと感じていただければと思います。クラスの中や職場にもいるでしょうし、コンビニの店員さんや乗っている電車の隣の席の人がそうかもしれません。家族の中にもいるかもしれません。そのくらい身近な存在なんだということを心のどこかに留めていただければと思います。そうすれば、想像力を働かせてコミュニケーションもできると思います。僕も、例えば男性には「彼女はいるんですか」と聞きたくなるんですが、その人が異性愛者かどうかは分かりません。「恋人はいるんですか」とか「パートナーはいるんですか」というような聞き方をするだけで少し心が楽になる人がいるのかもしれません。こんなふうに、少し想像力を働かせたコミュニケーションをとるのも必要かなと思っています。

 多様化する社会ではなく、すでにもう多様な社会なので、目に見えないものや初めて触れ合うものに対して、柔軟に対応する適応能力や応用能力というのが必要とされていると思っています。今日はたまたま性的マイノリティ当事者としてお話させていただきましたけれども、それだけではなくて、マイノリティに優しい社会はマジョリティにも優しい社会でしょうし、マイノリティに優しい学校はマジョリティにも優しい学校になると思っています。今日のこのお話が、これからみなさんがいろいろな課題に向き合う時の何かのヒントやきっかけになればいいなと思います。

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