現在位置:
  1. トップページ >
  2. 県政・お知らせ情報 >
  3. 国際交流・国際貢献 >
  4. 国際協力 >
  5. みえ国際協力大使 >
  6. 大使からの活動報告 >
  7.  みえ国際協力大使 坂本宏一さんからの活動報告(2007年3月赴任 赴任国:ミクロネシア 職種:合気道)
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2. 政策企画部  >
  3. 国際戦略課
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
平成19年10月04日

みえ国際協力大使坂本宏一さんからの活動報告

赴任国:ミクロネシア連邦職種:合気道2007年3月派遣

平成19年10月4日報告

【ミクロネシアでの合気道普及】

ミクロネシア

平成19年3月28日、予定通りミクロネシア連邦ポンペイ州の地に降り立った。照りつける太陽が赤道直下の国であることを実感させた。しかし、翌日からその実感は打ち砕かれることとなる。

というのも、翌日から連日の雨、雨、雨。南国らしい晴天がなかなか見られなかったからだ。ここポンペイでは、毎日必ずと言って良いほど雨が降る。それも、晴れた空にほんの少しの雨雲が流れてきただけでも、突如スコールのような激しい雨が降ってくる。そしてひとしきり降るとすぐ止んで、また青い空が広がる。そんな極めて不安定な天気がここの特徴でもある。

最初の2ヶ月くらいは、こんな不安定な天気に悩まされ続けたが、3ヶ月も経つと、なんとなく予測できるようになった。また、予測できずに洗濯物や自分自身がずぶ濡れになってしまっても、「まあいいか」と開き直れるようにもなった。

ミクロネシアと日本との関係

1920年から第2次世界大戦が終了するまで、ミクロネシアは日本の統治下にあった。それ以前にも経済関係を持っていたほか、1940年には5万人のミクロネシア人に対して8万5000人の日本人居住者がおり、農業生産を活発化させていた。日本語教育も盛んだったため、今でも日本語が現地語(ポンペイ語)として現存している。例えば、『ソーリ』=「草履」、『ヤキウ』=「野球」、『シトーシャ』=「自動車」などである。また、高齢者の中にはかつて日本語教育を受けたことのある人もおり、今でもそれを覚えている人がいる。

連邦警察

ここでの私の任務は、首都パリキールにおいて、警察官に対して護身術・逮捕術・格闘術としての合気道を指導することである。

ミクロネシアの警察機構は、領海全域を含む国家全土を管轄する連邦警察(National Police)と、ヤップ州・チューク州・ポンペイ州・コスラエ州の各州をそれぞれ管轄する州警察(State Police)がある。またポンペイ州には、コロニア、ネッチ、ウー、マタラニウム、キチ、ソケースの各自治区があり、それぞれに独立した市警察(Town Police)が存在する。このうち私は連邦警察に所属しており、長官(Chief)直属のトレーニングオフィサーとして、連邦警察の現職警察官に対して合気道を指導する職務に就いている。

稽古は朝と夕方の1日2回で、毎週月曜から金曜までの5日間。警察官たちには、これまで前任の短期隊員と前々任隊員の指導によって2年半の稽古歴があり、もっとも進捗の著しい者は三級を取得している。このため、受身など最低限の動きはできるようになっていたのだが、稽古内容に偏りや癖などが見られたため、きちんとした半身、入身、膝行、前方回転受身、直倒受身、後方受身、後方回転受身、飛び受身など基本的かつ最も重要な動きを再確認するとともに、徹底的に仕込んだ。また、転換や円回転の動きが理解できていないことが判明したため、これについても現在改善策を施している。

日本でもよく“踊り"のような合気道が見られることがあるが、合気道はあくまでも武道であり、武道の根源は武術である。そして現在私が当地で指導している相手は現職の警察官であり、現場で犯罪者や暴漢などに対峙した際に合気道の技法を使えなければ意味をなさない。したがって、より実戦的かつ効果的な技法を修得させる必要があり、時には厳しい技法の稽古や厳しい鍛錬をしなければならない。警察官としての職務の特性に鑑み、中身の濃い稽古ができるよう、様々な点で注意と工夫をしている。

国際合気道連盟(財団法人合気会本部国際部)からは、「在任中にもしも可能ならば、初段合格者を3人生み出してもらいたい」との指示を受けて来ている。この国で初めての初段、つまり黒帯を生み出すということは、単に技術を修得させるというにとどまらず、この国における合気道全体を統括する指導者を生み出すことを意味する。したがって、その人材選定は容易ではなく、人格・技量ともに優れた人材を発掘・育成しなければならない。警察官の職務上、稽古に継続的に参加することが難しいという事情もあり、指導者の育成はなかなか難しい状況でもある。

コロニアタウン合気道クラブ

前任の短期隊員が帰国する直前、ミクロネシア短期大学ポンペイキャンパスレスリング部の顧問から「学内で合気道を指導してほしい」旨の依頼を受けていた。これを受けて、私が当該指導を継続することになった。

同顧問が自ら代表を務め、『コロニアタウン合気道クラブ』なる物を設立し、学内の生徒にとどまらず、門戸を一般に開放して生徒を集めてくれており、老若男女を問わずに受け入れる方針とし、毎週火曜と木曜の夜に同キャンパスの体育館でレスリングマットを使って稽古をしている。これまでの最大値で1回に27人の稽古生が参加している。稽古生の中には日本語を勉強しているという高校生もおり、なかなか熱心に稽古に励んでくれている。また、武道の稽古には必須でもある道場(マット)の掃除や、礼儀作法などについても、謙虚に学ぶ姿勢を持って取り組んでいる。

もしかすると、このクラブがいずれは当国の一般民間人に対する合気道普及の礎になるかもしれない。

ポリスアカデミー

JICAが受けていた連邦警察からの要請には当初含まれていなかったのだが、7月~9月までの3ケ月間にわたって『ミクロネシアパブリックセーフティーアカデミー』(ポリスアカデミー)が開講することになり、そこで合気道とフィジカルトレーニングの指導教官を務めることになった。

当アカデミーは、マタラニウム自治区にある『Pohnpei Agricultural and Trade School』(PATS)のキャンパスを借りての全寮制の学校である。毎朝5時に起床。5時半には4組の能力別チームに分かれて2月5日マイル(4km)のモーニングラン。7時に朝食。7時45分に生徒全体の隊列編成と国旗掲揚を経て、8時から授業が始まる。12時に昼食。夕方フィジカルトレーニングや合気道の稽古を行い、18時20分に隊列編成および国旗降納、18時半に夕食。19時半から21時までは生徒たちの自習時間となり、22時に消灯となる。

この中で私が担当したのは、朝のランニングで最も速いチーム『Lightning Track』を指揮・統括することと、16時45分~18時15分までの合気道の指導およびフィジカルトレーニングの指導・監督などである。そのほか、フィジカルトレーニングやそれに準じた任務も付属的に発生する。生徒たちの怪我や体調管理などには、ほかの現地人同僚では目が行き届かないこともあり、結局私がフォローしなければならなかった。

特に、身体を動かすことにあまり慣れていない者も多くおり、ちょっとした運動ですぐに身体を痛めたり、怪我をする者が多い。ところがこの国の医療体制は不十分なほか、例えば捻挫の患者に対しても外用薬さえ処方されないというのが実情である。このため、捻挫や外傷に対しては私がドクターの代わりを務めなければならなくなっている。日本の整形外科で処方されるような湿布薬はこの国(ポンペイ州)には存在せず、また捻挫や打撲の患者に対して湿布薬を処方するということの必要性を、医師自身が知らないのである。このため当面、自分の手持ちの薬剤やJICA関係者からもらった薬剤などで対処しているが、もはや底を突きかけており、今後の活動に不安を抱かせる要因ともなった。

アカデミーのスケジュールは毎週月曜から土曜までみっちりと組まれており、スタッフも土曜日の午後に州都コロニアのアパートに帰ることができるが、翌日曜日の夕方にはまたアカデミーのあるPATSに戻らなければならない。このため、週末と言っても、休日と言うにはあまりにも短い、たった一晩だけの“ワンナイトブレーク"、つまりただの休憩であり、週末の休みと呼べるものではない。ほとんど3ケ月ぶっ通しの活動だったとも言える。

アカデミーへの注力に伴って残念なことがあった。というのは、この3ケ月間は私自身が当アカデミーに泊り込んでいたことから、連邦警察とコロニアタウン合気道クラブでの指導を中断してしまったことである。せっかくヤル気になってきた生徒たちを放り出す結果となり、極めて残念に思う。

とはいえ、そのポリスアカデミーも9月28日に晴れて卒業式を迎え、私もスタッフとして『Instructor's Recognition』を授与された。10月からは、また連邦警察道場とコロニアタウン合気道クラブでの指導に全力をあげたいと思う。

今後の活動

パリキールにあった連邦警察トレーニングセンターは現在、解体・改築工事が行われており、仮設道場としてネッチ市警察が使用している庁舎を1棟借り上げて稽古を行うことになっている。これに際しては、これまでのように連邦警察だけではなく、ポンペイ州警察やネッチ市警察、コロニア市警察などからの稽古参加も予想される。

また、ポリスアカデミーに注力したことによって活動を中断せざるを得なくなった『コロニアタウン合気道クラブ』についても、指導を再開したいところである。

さらに、来年2月を目途に第2弾のポリスアカデミーを開講する予定と聞いている。これに関しては相応の準備を整えておきたい。また、ポンペイ以外の他州の警察機構に対する合気道指導の要望も出てきており、連邦警察と協議・相談しながら積極的な活動を薦めていきたい。

本ページに関する問い合わせ先

三重県 政策企画部 国際戦略課 〒514-8570 
津市広明町13番地(本庁3階)
電話番号:059-224-2844 
ファクス番号:059-224-2069 
メールアドレス:kokusen@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000041838