みえ国際協力大使 中森千春さんからの活動報告
赴任国:モザンビーク 職種:薬剤師 2013年3月派遣
こんにちは。2013年3月からJICAボランティア青年海外協力隊として、モザンビーク共和国に派遣されております 中森 千春 と申します。
職種は薬剤師で、現在は首都マプト市にあるマプト医療従事者養成学校・薬学科コースで教師として活動しております。
私の故郷である三重県の皆様に、今私が住んでいる大好きな第2の故郷、モザンビーク共和国の紹介と、私の活動紹介をさせて頂きます。少しでも多くの方が、モザンビークの現状を知って頂き、開発途上国が抱える様々な問題について、一緒に関心を持って頂ければ幸いです。
モザンビーク共和国
モザンビーク共和国はアフリカ大陸の南部アフリカに位置し、ポルトガルを宗王国とする旧ポルトガル植民地です。公用語はポルトガル語で、英語は首都以外、ほとんど使用されていません。1975年ポルトガル植民地から独立したものの、社会主義路線を推進。反政府組織モザンビーク民族反対運動は政府軍と衝突し、モザンビーク内線が勃発しました。1992年に内戦は終結しましたが、内戦後22年しか経っていないこの国では、経済、教育、医療、インフラ整備などに顕著な遅れが現れています。一人当たりのGDP634ドル(日本46760ドル)、識字率は54%、平均寿命は49歳です。主要産業は農業(トウモロコシ、砂糖。カシューナッツなど)で、最近では石炭や天然ガスなどの工鉱が栄えてきています。
モザンビークの食べ物
モザンビークの主食は『シーマ』という、とうもろこしの粉を煮てダマにしたものです。少しの量でも満腹感を得られる主食です。シーマには味がないのでスープにつけて食べます。シーマを手にとり、片手でにぎって丸め、スープにつけて食べます。メジャーなスープとしては、豆のスープや、マタパというココナッツミルクとピーナッツ粉に青野菜が入ったスープがあります。
モザンビークは比較的大地が肥沃なためか、ジャガイモやオクラ、生姜といった日本人になじみのある野菜が市場で種類豊富に売られているのには驚きました。またモザンビークは海に面しているので、海側の町では新鮮な魚やエビも食べる事が出来ます。もちろん、パパイヤやマンゴー、パイナップルなど熱帯のフルーツは安価でとてもおいしいです。
質は悪いですがお米もあります。また、ポルトガル植民地時代の影響で、どこにいっても素朴でおいしいパンが売られています。"グローバル"な世界経済の広がりや影響を、食を通して実感する事が出来ます。
【ホームパーティー】 【シーマを調理中】 【レストランのお食事】
【ホームスティー先のお食事】 どれもとっても美味しいです。
医療事情と私の活動
この国での医療水準は非常に低く水道設備も不十分の為、細菌感染症による下痢症、マラリア、HIV/AIDS、結核などで未だたくさんの人が命を落としてしています。死因の30%はマラリアで、HIV感染率はここ首都マプトでは20%を超えており、日々感染症の脅威を目の当たりにします。
医師、看護師、薬剤師などの医療従事者不足は深刻な問題で、特に医師の数はなんと人口10万人に当たり4.4人、多くの人々が医療にアクセス出来ず、病気に苦しめられています。
私の配属先は、看護師、助産師、薬剤師、理学療法士、臨床検査技師、医療助士などを養成するマンモス校です。高校を卒業し、倍率20倍という厳しい入学試験に合格した者のみ通う事が出来る学校です。薬剤コースは日中、夜間の部を含め計5クラスありますが、常勤教師はたったの3名、不足分は外部講師に依頼していますが、それでも十分ではなく、そして授業の質がとても低い為、学校側がJICAに人材要請を出し、私が派遣されました。
私は現在2クラスを受け持っており、担当教科は薬物治療学と薬剤技術論です。日々の仕事は主に授業が中心で、テスト作り、採点、成績表作り、生徒の病院実習への引率などを行っています。授業はすべてポルトガル語で行う為、毎日とても苦労をしておりますが、生徒達はとても素直で優しく、常に私を助けてくれます。本を数冊持って歩いていると、すぐに手伝ってくれたり、私が座る椅子を自分のハンカチで拭いてくれたりします。そして、「おはよう~」「先生ありがとう」と覚えたての日本語で毎日声をかけてくれます。今の私の1番幸せな時間は、生徒に囲まれ、何気ないおしゃべりを一緒にしている時です。この子達が、立派な薬剤師として育って欲しいという一心で、毎日仕事に励んでいます。
【授業風景】
【三重県を紹介】 【男子生徒】
中でも私が生徒に強く伝えている事は、「患者様の気持ちになって考えること」という事です。残念ながら、現在の病院内薬局では、患者様へのお薬の説明はほとんど行われておらず、薬の管理能力も底辺に近いため、調剤過誤が日常的に発生している状態です。そして、医療従事者の立場はとても強く、病院側の都合で開局時間が遅れるのは日常茶飯事、どんなに患者様が待合室に溢れ返っていても、お腹がすいていればパンを食べ、携帯電話がなれば気にせずに出る、訪問客が訪れればそちらを優先する・・・患者様は後回しという状態です。マラリア患者で40度以上の高熱がある方、妊婦さんで体調を崩している方など、重い病気の患者様は、屋根もない待合室のコンクリートの床の上で寝転がってお薬を待っています。なるべく早くお薬をお渡ししたい!私のこの思いは虚しく、他の薬局スタッフにはなかなか届きません。
モザンビークの方は「人生いかに楽しく過ごしているか」に最優先順位が置かれるため、労働に関する意識は日本と異なります。また、時間の流れがゆっくりとしているモザンビークでは、日本と比較するとすべての物事の流れがスローペース。そして、その時間の流れを変えることはとても難しいです。
歴史、文化、習慣、教育が異なる国で、どのように自分の考えを伝えるか、生徒達に何を教えるべきか、今もまだ手探り状態です。
【薬を待っている人達】椅子がなく立ったまま 【小児科の待合室】診察待ちで溢れ返っています
【薬局の薬棚の中】乱雑に薬が置かれています 【薬局の投薬風景】鉄格子を介してお薬を渡します
大好きな週末
私の学校は通常、土曜日と日曜日がお休みです。週末はたいてい予定が入ります。同僚の家に遊びにいったり、生徒を家に招いて日本料理をふるまったり、ボランティ仲間で海へ行ったり、日本の民間企業の方達とお食事にいったりと、とても楽しく過ごしています。
モザンビーク人の友人達と遊ぶと、いろんな文化、考え方を学ぶ事が出来ます。また日本人の友人達とお話をすると、同じような悩みを分かち合う事ができ、自分の知らない世界を教えてもらう事が出来ます。日本の家族と離れて生活している為、時々寂しい時もありますが、いつも楽しい仲間に支えられながら過ごしているこの時間は、私にとってかけがいのない宝物です。
【誕生日会】 【折り紙教室】
【海と朝日】
最後に・・
三重県の皆様、モザンビークの様子を少しでもご理解頂けましたでしょうか。今回、モザンビークや自分の活動について、ほんの一部分しかお伝え出来ませんでしたが、一人でも多くの方がモザンビークについて、興味を持って頂けましたら幸いです。日本の昔にタイムスリップしたようなこの国を、ぜひ訪れてみて下さい。まだまだ開発途上国ですが、その反面、現在の日本社会に欠けているものが未だ沢山残っているような気がします。