「戦ひに あまたの人の 失せしとふ
島緑にて 海に横たふ」
令和8年定例会6月定例月会議の議案等の説明に先立ちまして、当面の県政運営にあたっての私の考えを申し上げます。
(国際情勢)
まず、国際情勢について申し上げます。
本年2月末、アメリカとイスラエルがイランへの軍事攻撃を開始し、中東情勢は一気に緊迫化しました。その後、停戦合意がなされるも、予断を許さない状況が続いています。
特に、原油の供給網が断絶されたことにより世界の多くの産業は大いなる懸念と影響を被っています。
5月14日には米中首脳が北京で会談しました。経済・貿易や台湾問題のほか中東情勢についても協議が行われたところであり、今後の国際情勢の安定化が期待されますが、米中二大強国による今後の動きに対して慎重な見極めも必要です。
(国内情勢)
次に、国内情勢について申し上げます。
中東情勢は日本にも大きな影響を及ぼしており、国においては石油製品の安定供給と確保対策などが進められています。
多様な産業が集積している三重県においても、影響の長期化を見据えながら状況を把握し、適切に対応していくことが必要であり、中小企業・小規模企業や農水産業者、交通・貨物事業者等に対する支援にかかる補正予算を今会議に提出しているところです。
また、5月からは神宮式年遷宮に向けたお木曳が実施されています。全国から特別神領民も参加して盛り上がりを見せるなど、令和15年の神宮式年遷宮に向けて機運が着実に高まっています。三重県としては、大都市圏向けの観光プロモーションや三重ならではの観光資源を生かした滞在型周遊観光のさらなる推進を図っていきます。
(国への提言・提案)
国への提言・提案活動について申し上げます。4月23日から2日間、令和9年度の予算確保や制度改善に向けて、財務大臣、総務大臣、国土交通大臣、農林水産大臣とそれぞれ面談を行いました。
国土強靱化のための予算確保や、農地の集積・集約化の推進、災害時に備えた携帯電話基地局の強靱化等について要望したところ、いずれの大臣からも、しっかりと検討していく旨の発言をいただきました。引き続き国と連携しながら、さまざまな施策を進めていきます。
(海外訪問)
海外訪問についてご報告します。
本年3月、半導体を中心とする産業連携やインバウンドの促進を目的に台湾を訪問しました。特に半導体関連企業を中心とした経済団が台湾を訪問したのは初めてのことであり、三重県の立地環境の優位性を効果的に発信することができました。
あわせて、三重県内への誘客促進を目的に、志摩市や観光・交通関連の事業者の観光団も同行いただき、台湾の旅行会社や現地メディアを対象とした観光誘客セミナー等を実施するなど、三重県観光の魅力をPRしました。参加した旅行会社からは「まだまだ知らない三重県の魅力を知ることができた」「三重県を旅行商品に組み込むことを検討したい」など、さらなる送客に向けた高い関心が示されたところです。
5月には、友好提携締結30周年を迎えるパラオ共和国を、議長をはじめ県議会有志の皆さんと共に訪問しました。大統領とは当初の予定時間を大幅に上回って面談を行い、30年間築き上げてきた両者の「トクベツ」な「キズナ」、この「トクベツ」も「キズナ」も日本語由来のパラオ語ですが、それを今後一層推進するための合意書に署名するとともに、三重県PR・交流イベントでは伊勢うどんなどの県産品や忍者文化等の三重県の魅力を政府関係者や高校生等に発信しました。
また、先の大戦の激戦地であるペリリュー島では、上皇上皇后両陛下が天皇皇后両陛下であられた平成27年にご慰霊された「西太平洋戦没者の碑」において、伊勢市の海岸の砂と県庁のツツジを捧げて慰霊を行うとともに、三重県遺族会の伊藤早苗会長からお預かりした「追悼のお言葉」も捧げました。
冒頭の短歌は、平成27年にペリリュー島で慰霊された際のお気持ちを上皇陛下が詠まれた歌です。激戦地でありながら現在は美しい緑に覆われ、静かに海に横たわるペリリュー島の様子と、多くの犠牲への深い祈りが込められています。戦後80年の節目を超えた本年、ペリリュー島訪問を通じて家族や故郷、祖国を思って亡くなられた方を偲び、平和への思いを強くしたところです。
(令和8年度県政にあたり)
令和8年度県政にあたり、行政展開の方向について申し上げます。
国内外情勢の激しい変化は、三重県に対しても大きく影響を及ぼしています。三重県行政府の執行と運営に責任を有する知事としては、そのような中においても県民の命と安全、個人情報を守り、三重県を発展させていく責務を全うする所存です。
予算と条例を車の両輪として着実に県政運営を進めるとともに、時流を正しく見極めながら、適宜適切に必要な対策を取ることで、「住みよい三重」をめざしていきます。
5月19日、津市美杉町で発生した山林火災では、自衛隊幹部の言葉を借りますと「他のどの県よりも顔が見える関係を築いてきた三重県からの要請」を受けて、自衛隊の迅速な災害派遣が実現するとともに、大型の輸送ヘリCH-47をはじめ、他県市の消防・防災ヘリによる空中消火が行われました。対応にあたられた自衛隊、滋賀県、名古屋市、津市消防本部、地元消防団の皆様に心から感謝申し上げます。今回の経験を踏まえ、大規模な山林火災に迅速に対応できるよう、県からのリエゾン派遣も含めた市町、関係機関との更なる連携強化を図ります。
学校の部活動における生徒輸送にかかる安全確保に向けて、現在、県立学校及び私立学校に対して現状調査を実施しています。今後、調査結果に加え、国の検討状況も踏まえながら、生徒の安全・安心の確保に向けて県としての対応を検討していきます。
(産業振興)
産業振興について申し上げます。
中東情勢の不安定化に伴い、原油供給への不安が高まり、県内事業者の経営に影響が生じています。3月27日には、他県に先駆けて「三重県中東情勢の変化に伴う対策本部」を設置・開催し、業種別の相談窓口を開設して、影響把握と支援に当たっているところです。
原油高や先行きの物価上昇懸念など価格面への影響に加え、ナフサ由来の化学製品等の企業の在庫積み増し等による流通量の減少が県内産業の一部において顕在化している状況にあります。影響の長期化に備え、今会議に提出している補正予算により、中小企業・小規模企業、農水産業者等の資金繰りを支援するとともに、事業者や団体、関係者等への丁寧な聴き取りを行い、県内産業への影響を把握していきます。
農林水産業を持続的に発展させていく取組も必要です。
農業の生産性向上に向けて、乾田直播等の省力化技術の導入や生産基盤の整備に取り組みます。また、林業の成長産業化に向けて、スマート林業の現場実装や森林の情報基盤整備を進めるとともに、水産業では気候変動に対応した養殖技術の開発や水産資源の増大に向けた取組を進めます。
(交通政策)
交通政策について申し上げます。
中東情勢の影響により、交通事業者が燃料価格高騰に直面している状況を踏まえ、燃料高騰への支援を行うことにより、地域公共交通の安定的な運行体制の確保を図ります。
5月20日に山梨県で開催された「将来世代応援知事同盟」において、公共ライドシェアなど地方の生活を支える多様な移動手段の確保を進め、地域交通の充実を図っていくことの必要性を訴え、共同声明に盛り込まれました。
公共ライドシェアの導入を一層推進するため、本年度は、既存の交通事業者と共存可能な新たなモデルの構築に向け、名張市と紀宝町において実証に取り組みます。
(観光振興)
観光振興について申し上げます。
3月に開催された「F1日本グランプリ」では、彬子女王殿下、金子国土交通大臣に御来県いただく中、3日間の観客動員数は31万5千人と鈴鹿サーキットでの日本グランプリが再開された2009年以降で最多を記録しました。インバウンドも10万5千人と調査を開始した2017年以降最多となり、大変な賑わいに包まれました。
三重県全体の観光誘客も好調に推移しています。令和7年の延べ宿泊者数、インバウンド延べ宿泊者数はともに歴代3位、インバウンドの前年比は154.3%と伸び率で全国3位を記録しました。
また、インバウンドの令和元年からの回復率は、令和7年が全国39位で、全国最下位であった令和6年から好転の兆しが見えています。
3月には米国の大手ニュース雑誌「TIME」に「世界で最も素晴らしい場所」の一つとして伊勢神宮が県内で初めて選出され、本県は海外からも高い関心を集めています。
加えて、5月から神宮式年遷宮に向けたお木曳が実施されていることから、この千載一遇のチャンスを逃すことなく、本県観光産業を持続的に発展させるため、国内外に向けた戦略的なプロモーションを力強く推し進めるとともに、さらなるインバウンド誘客に向けた計画や、次期観光振興基本計画の策定に向けた議論を進めていきます。
(子ども施策)
子ども施策について申し上げます。
市町から好評を博している「みえ子ども・子育て応援総合補助金」を活用し、地域の実情に合わせた子ども・子育ての取組を引き続き支援するとともに、本年度創設した「働く子育て世帯を支える子どもの居場所づくり」にかかる補助制度により市町の横展開を促進します。
また、高校生の学習ニーズや学びのスタイルが多様化する中、一人ひとりの状況に応じてきめ細かな支援を行う「みえ版フレキシブル高校」の設置に向けた準備を着実に進めていきます。
さらに、三重県誕生150周年を契機として「ふるさと三重」をテーマとした探究学習や、50年後の「みえの未来」を英語で発信するコンテストなどを実施し、将来を担う子どもたちの郷土への誇りや愛着を醸成していきます。
(防災対策)
防災対策の強化について申し上げます。
5月2日、奈良県を震源とするマグニチュード5.7の地震が発生し、県内でもやや強い揺れが観測され、あらためて地震への備えの重要性を認識しました。
南海トラフ地震の新たな被害想定を踏まえ、三重県南海トラフ地震対策推進条例の制定と南海トラフ地震対策に特化した計画の策定を進めます。
本年3月には、発災当初に災害派遣職員が現地活動で活用するための災害用トイレカーを導入しました。また、本年度は避難所環境改善のための予算を倍増し、市町におけるスフィア基準を踏まえた指定避難所の確保をさらに促進していきます。
今後、新たな被害想定を踏まえ、市町の意見を聴いたうえで津波災害警戒区域の指定を進め、より正確な被害予測に基づいた地域防災計画の策定支援を行っていきます。
(人口減少対策)
人口減少対策について申し上げます。
三重県の令和8年都道府県版ジェンダー・ギャップ指数は経済分野で全国最下位となりました。昨年度末に策定した「三重県ジェンダーギャップ解消基本戦略」に基づき、アンコンシャス・バイアスの解消や働き方の多様な選択肢の提供、育児や介護等と仕事を両立できる環境づくりに向けてさまざまな主体と連携して取り組むとともに、社会全体で推進していくため条例の検討を進めます。
令和7年度の三重県への移住者数は1,044人と初めて1,000人を突破し、集計を開始した平成27年度からおよそ8倍となりました。三重県への人口流入をさらに促進するため、都市部における移住フェアの開催や若者が気軽に相談できる移住相談の仕組みの構築に加え、移住を促進するための実行計画を策定していきます。
(医療・介護)
医療・介護について申し上げます。
医療人材の確保は地域医療の根幹です。本年度は医師確保計画の見直しを行う中で、医師偏在の是正に向けて、データ分析に基づくプランを策定していきます。
介護については、事業者の生産性向上を促進するため、介護ロボット・ICTの導入支援を行うほか、海外からの介護人材の受入れを加速するため、マッチング支援やインターンシップを実施します。
(インフラ整備)
県内のインフラ整備は着実に進んでいます。本年3月には、主要地方道鈴鹿環状線磯山バイパスが開通するとともに、鳥羽河内ダムが本体工事の本格化を迎えるにあたり定礎式を実施しました。
4月には、お木曳行事のルートにもなっている伊勢神宮外宮前の無電柱化が完了し、防災機能の強化のほか、良好な景観形成や、歩行者の利便性・快適性の向上が実現しました。
また、東海環状自動車道の整備促進のため、岐阜県知事らと共に国土交通省、財務省に対して要望活動を行いました。引き続き関係自治体と連携し、一日も早い全線開通に向けた働きかけを行っていきます。
(文化・スポーツ)
文化振興について申し上げます。
県立文化施設では、県民の皆様が文化や芸術にふれ親しんでいただく機会を提供しています。
中でも県立美術館では、「花鳥画」を得意とした、長島藩第5代藩主増山雪斎の作品などを展示する新収蔵品展を開催し、併せて、子どもたちに関心を高めていただけるよう、子ども向けに雪斎の伝記まんがを発行しました。
今後も、県の歴史・文化への理解を深めていただけるよう、県立文化施設で実施する企画展などの充実を図り、本県の文化振興に取り組んでいきます。
スポーツの推進について申し上げます。
4月に、ミラノ・コルティナ2026オリンピック・パラリンピックで活躍し、感動を届けてくれた三重県ゆかりのアスリート2名を表彰しました。
5月には、三重県誕生150周年記念式典でレスリング金メダリストである藤波朱理さんにゲストとして登壇いただき、夢を持ち続け、今もさらなる高みをめざし続けるその姿勢に、我々は勇気をもらいました。
第一線で活躍されている選手の姿が次代を担う選手の夢や希望に繋がるよう、引き続きスポーツの推進に取り組みます。
(三重県誕生150周年)
本年は三重県が誕生してから150周年の佳節を刻む年にあたります。4月18日に県庁前で掘り起こしたタイムカプセルからは、50年前を生きる先人の皆様から「未来への希望」という贈り物を受け取りました。
また、多くの方から高評価をいただいた5月5日の三重県誕生150周年記念式典は、若者のひたむきな姿と三重県の未来に懸けた想いに触れ、若者達に対する頼もしさを実感する機会となりました。
過去からのバトンを未来の主役たる若者に渡すのは、今を生きる我々大人達です。
過去の先人達が示した「未来」への挑戦を止めることなく、県民の皆さんとともに同じ青空を見上げ、心を一つにしながら、ふるさと三重県を共に盛り立て、子どもたちが誇れる三重県を将来に残すべく、全力で取り組んでいきます。
(議案等の概要)
引き続き、上程されました補正予算1件、条例案9件、その他議案3件合わせて13件の議案について、その概要を説明いたします。
議案第79号の補正予算は、中東情勢の変化に伴う影響が懸念される中小企業・小規模企業、農水産業者、交通・貨物事業者等に対する支援を実施するとともに、国のN-E.X.T.ハイスクール構想が示されたことに伴い、高等学校教育改革を先導する拠点校の取組を進めるための経費として、一般会計で3億3,119万1千円を増額するものです。
歳入では、国庫支出金について1億9,687万8千円、基金繰入金について1億3,431万3千円をそれぞれ増額しています。
歳出では、中東情勢の変化を踏まえた経済対策について、中小企業・小規模企業、農水産業者等の資金繰り支援として5,666万7千円を計上し、あわせて債務負担行為の設定を行います。また、交通・貨物事業者への支援として1億3,251万1千円を計上しています。さらに、中小企業・小規模企業等への影響調査等を行うための経費として、770万円を計上しています。
N-E.X.T.ハイスクール構想に基づく高等学校教育改革の取組については、令和10年度までの3年間で確実に完了させるため、施設等の整備に係る進行・施工管理、教育プログラムの構築に係る伴走支援や進捗管理業務の委託等に必要な経費として、1億3,431万3千円を計上し、あわせて債務負担行為の設定を行います。
以上で補正予算の説明を終わり、引き続き条例案等の諸議案について説明いたします。
議案第80号は、関係法律の施行等に鑑み、関係条例の規定を整備するものです。
議案第81号は、自動車取得税の更正、決定等をすることができる期間が経過することに伴い、行政機関の設置に係る規定を整理するものです。
議案第82号及び第86号は、一般職の職員の給与に関する法律の一部改正等に鑑み、通勤手当に関する規定を整備するものです。
議案第83号は、関係省令の一部改正に鑑み、県税の特例措置についての規定を整備するものです。
議案第84号及び第85号は、国が定める基準の一部改正等に鑑み、規定等を整備するものです。
議案第87号は、高等学校等就学支援金の支給に関する法律の一部改正に伴い、授業料の納付時期の規定を整理するものです。
議案第88号は、気象業務法等の一部改正等に鑑み、災害発生時等における避難の規定等を整備するものです。
議案第89号は、工事請負契約を変更しようとするものです。
議案第90号は、財産を取得しようとするものです。
議案第91号は、地方自治法の規定に基づき、公務災害補償等に関する事務の一部を受託するため、協議をしようとするものです。
以上で諸議案の説明を終わり、次に、諮問について説明いたします。
諮問第1号は、三重県教育委員会が行った一般の退職手当等の全部を支給しないこととする処分に対する審査請求について、地方自治法の規定により諮問するものです。
次に報告事項について説明いたします。
報告第7号から第9号までは、議会の委任による専決処分をしましたので、報告するものです。
報告第10号は、議会の議決すべき事件以外の契約等について、条例に基づき、報告するものです。
報告第11号から第15号までは、令和7年度一般会計及び企業会計のうち、翌年度へ繰り越した経費について、それぞれ繰越計算書を調製しましたので、報告するものです。
以上をもちまして提案の説明を終わります。
なにとぞ、よろしくご審議いただきますようお願い申し上げます。