事業者である株式会社サクシードインブェストメントから送付のあった津市波瀬太陽光発電所造成事業に係る環境影響評価方法書について、知事が環境保全の見地から意見を述べるにあたり三重県環境影響評価委員会へ諮問していました。同評価委員会からは、平成29年10月10日に審議結果の答申がありましたので、平成29年10月11日付けで、下記のとおり環境影響評価方法書に対して知事意見を述べました。
なお、知事意見等については、平成29年10月16日から平成29年11月29日まで、環境生活部、三重県立図書館、情報公開・個人情報保護総合窓口及び津地域防災総合事務所において閲覧に供します。
(事業概要)
・事業者 株式会社サクシードインブェストメント(代表取締役 瀬古 恭裕)
・対象事業実施区域 津市一志町地内
・面積 約107ha(うち約74haを改変)
※環境影響評価方法書について
環境アセスメントにおいて、どのような項目について、どのような方法で調査・予測・評価をしていくのかという計画を示した書類です。
以下、知事意見を掲載します。
(総括的事項)
1 事業を進めるにあたっては、資源エネルギー庁策定の「事業計画策定ガイドライン」や、本県策定の「三重県太陽光発電施設の適正導入に係るガイドライン」に基づき、計画段階から地域住民に情報を提供し、住環境、自然環境、景観等に配慮するとともに、地域住民等の理解が得られるよう、丁寧に対応していくこと。
2 準備書の作成までに環境影響評価の項目及び手法の選定等に係る事項に新たな事情が生じた場合には、必要に応じて、項目及び手法を見直し、追加調査を実施すること。
3 予測及び評価を行うにあたっては、既存の文献、類似事例等を参考にしたうえで、環境影響について可能な限り定量的な把握に努めるとともに、知見が不十分で予測、評価に不確実性を伴う場合には、事後調査を計画すること。
4 環境保全措置を計画する場合には、措置の内容を具体的に記載するとともに、その検討した経緯及び選択した環境保全措置の不確実性についても明らかにし、事後調査を計画すること。
(個別的事項)
1 大気質
伐採した樹木を現地で破砕し、発生する粉じんの飛散防止措置を講じることができない場合には、降下ばいじんに関する予測及び評価を行うこと。
2 騒音・振動・低周波音
(1)パワーコンディショナーの設置場所は、民家からの距離をできるだけ確保すること。
(2)伐採した樹木を現地で破砕する場合や、掘削時に発破を行う場合には、騒音等に関する予測及び評価を行うこと。
3 水質
(1)除草剤を使用しない計画であることを準備書に記載すること。
(2)ソーラーパネルは20年以上風雨に曝され続けたり、台風等により破損することも考えられるため、破損時における含有物質の溶出に関する情報を既存の文献等で確認し、その結果を準備書に記載すること。また、溶出による影響の有無が確認できるよう、あらかじめ必要な調査をするなどの措置を講じること。
4 地下水、地形・地質
(1)大規模出水時に耐えられるよう、また、泥岩の風化による土砂の流出にも対応できるよう、調整池の規模を適切なものとすること。
(2)盛土造成した平場を調整池とする計画となっていることから、地すべり等の発生が懸念されるため、準備書を作成するまでに関係機関との協議や調整を行ったうえで、盛土地盤の安定性が十分確保された計画とすること。また、準備書には土地の断面図や地形断面図を示すこと。
(3)地下水や湧水の現況を把握し、切土等による水の流れの変化を予測することに努めること。
(4)土砂災害の発生による影響を及ぼさないよう、人家や人家立地見込み地周辺への、法面の形成を避けること。
5 陸生植物、陸生動物、水生生物、生態系
大規模な森林伐採が行われ、生物多様性への影響が大きくなると考えられるため、その影響を可能な限り回避・低減することを検討したうえで、森林や草地のまま改変せずに残す場所が極力大きくなるようにすること。
6 陸生動物
(1)標高の高い箇所や湿地環境等、多様な環境が反映できるような場所を調査地点として選定すること。
(2)当該事業実施区域に近接する松阪市内では、天然記念物のヤマネと思われる動物の生息情報が報告されていることから、ヤマネの調査を行うこと。
(3)事業実施区域内及びその周辺において、シカ、イノシシ、サル等の行動パターンや生息状況を調査し、移動等の予測を行うこと。
7 水生生物
波瀬川において、三重県指定希少野生動植物種であるネコギギの調査を行うこと。
8 生態系
(1)事業実施区域に囲まれた水田は、事業実施区域と一体となって生態系が成り立っていると考えられるため、その相互関係に留意のうえ、適切に調査、予測及び評価を行うこと。
(2)希少猛禽類の営巣地が事業実施区域内だけでなく、周辺で確認された場合にも、事業実施による影響を適切に予測及び評価すること。
9 景観
ソーラーパネルが周辺の自然環境と調和するよう、また、温度上昇や反射光によって住居や周辺環境等に影響を与えないよう、十分なシミュレーション等を行い、残置・造成森林の配置及びパネルの素材や配置等を十分検討すること。
10 その他(気温)
気温の上昇による農作業者や生物への影響が回避または低減できるよう、水田において気温の調査地点を追加するとともに、適切な環境保全措置を講じること。