三重県総合博物館は「三重の自然と歴史・文化に関する資産を保全・継承し、次代へ活かす」という使命のもと、資料の調査研究、収集保存、展示、活用発信などの活動を行っています。
このたび、英文国際学術誌「Conservation Genetics Resources」に、当館学芸員らが取り組んだ希少淡水魚イチモンジタナゴの地域集団の系統を識別する環境DNA検出ツールの作成に関する研究成果が論文として掲載されました。
1 出版日(オンライン)
令和8年1月19日(月曜日)
2 掲載誌、タイトルおよび著者
・掲載誌:Conservation Genetics Resources(Springer Nature社)
(コンサベーション ジェネティックス リソーシーズ:保全遺伝資源学の意)
・英文タイトル:「Development of a lineage-specific environmental DNA assay to differentiate
intraspecific lineages of the endangered freshwater fish, Acheilognathus cyanostigma (Cyprinidae: Acheilognathinae)」
・日本語タイトル「絶滅危惧種の純淡水魚・イチモンジタナゴ(コイ科タナゴ亜科)の種内系統を識別するための系統特異的環境DNA検出系の開発」
・著者:伊藤 玄 (いとう げん 龍谷大学 生物多様性科学研究センター)
北村 淳一(きたむら じゅんいち 三重県総合博物館)
川瀬 成吾(かわせ せいご 滋賀県立琵琶湖博物館)
朝見 麻希(あさみ まき 龍谷大学 生物多様性科学研究センター)
後藤 祐子(ごとう ゆうこ 龍谷大学 生物多様性科学研究センター)
山中 裕樹(やまなか ひろき 龍谷大学 生物多様性科学研究センター)
・掲載HP:https://link.springer.com/article/10.1007/s12686-026-01410-3
(HPから論文PDFを無償でダウンロード可能)
3 研究内容
本研究では、イチモンジタナゴの地域ごとに異なる遺伝的系統を、採取した水から識別できる環境DNAの新しい検出手法「系統特異的環境DNA検出系」を開発しました。遺伝情報のわずかな違いを識別できるこの手法を用いることで、現在では三重県のみに生息する東海地方の系統と近畿地方の系統という2つの主要な系統を魚体を痛めることなくかつ高感度に識別することに成功しました。また、イチモンジタナゴの各系統を保全している三重県の池等でこの手法を試験したところ、各池で保全している系統と一致した検出結果が確認され、本手法の有効性が実証されました。
今回の技術開発により、希少魚類の在来系統を外来系統の侵入による遺伝的撹乱から守るための迅速で低コストのモニタリングが可能となり、今後の地域固有の生物多様性保全や外来系統の早期発見に大きく貢献することが期待されます。