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保環研年報 第22号(2020)

 


三重県保健環境研究所年報第22号(2020年)表紙

 三重県保健環境研究所年報 第22号(通巻第65号)(2020)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

 

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらからダウンロードできます。

 

研究報告

原 著

  2020rep1  2009年に発生したA/H1N1pdm09インフルエンザウイルスにおけるHemagglutinin
遺伝子系統樹解析によるアミノ酸変異の変遷
-三重県(2008/09~2019/20シーズン)-

 
        矢野 拓弥,北浦 伸浩,中井 康博
 
       キーワード:A/H1N1pdm09インフルエンザウイルス,Hemagglutinin(HA),遺伝子系統樹解析,
                          アミノ酸変異
 
 三重県内において2008/09~2019/20シーズンに分離されたA/H1N1pdm09インフルエンザウイルス(A/H1N1pdm09ウイルス)について,Hemagglutinin(HA)遺伝子系統樹解析を実施し,そのアミノ酸変異の変遷と流行状況との関連性を調べた.
 今回,調査期間中にHA遺伝子系統樹解析を行ったA/H1N1pdm09ウイルスの特徴を以下に示す.2013/14シーズン以降に解析したAH1pdm09ウイルスは,Clade6B(アミノ酸置換:K163Q,A256T)に属し,その後,Subclade6B.1(アミノ酸置換:S84N,S162N,I216T)への派生がみられた.さらに近年のA/H1N1pdm09ウイルスは,HAアミノ酸置換(S74R,S164T,I295V)を有するSubclade6B.1Aに属した.このSubclade6B.1A内は,HAアミノ酸置換(S183P)を含む7つの群(183P-1~183P-7)に細分化されているが,2018/19シーズン以降,三重県内においては,Subclade6B.1A(183P-5A群)が確認されている.
A/H1N1pdm09ウイルスのHAアミノ酸変異と流行状況との関連性は,2012/13~2016/17シーズンは隔年での流行が認められ,2015/16~2016/17シーズンにSubclade 6B.1に属するアミノ酸置換(S84N,S162N,I216T)を有するA/H1N1pdm09ウイルスが確認された.以後は隔年流行から,毎年,冬季にウイルスが一定数確認されるようシフトした.その後も,異なるHAアミノ酸置換を有する複数の群が形成され多様化の傾向がみられていることは,今後の本ウイルスの流行規模への影響が懸念される.

2020rep2 伊勢湾における有機物の沈降速度に関する研究
 
   渡邉 卓弥,奥山 幸俊,有冨 洋子,辻 将治,柘植 亮,大八木 麻希,千葉 賢
 
   キーワード:伊勢湾,貧酸素水塊,有機物,沈降速度
 
 伊勢湾内で夏季を中心に毎年発生している貧酸素水塊は,成層化によって酸素供給が乏しくなった中底層において,微生物が易分解性有機物を酸素消費しながら分解していくことで発生すると言われている.本研究では,貧酸素水塊の形成に関係する有機物の沈降速度を明らかにし,中層に到達した際の易分解性有機物の残存率を見積もった.
 伊勢湾の湾奥から湾央のクロロフィル極大層の有機物の沈降速度は,3.2 m/day以上であることが明らかになった.クロロフィル極大層の植物プランクトンは,ほとんどが珪藻類であり,なかでもSkeletonema costatumおよびChaetoceros spp.が多く見られた.また,珪藻類の細胞密度が高いほど,有機物濃度も高かったことから,植物プランクトンの細胞密度が有機物濃度に影響していると推察された.さらに,筆者らが過去に実施した有機物の分解特性試験の結果から,湾奥で約40~66%,湾口で約74%の沈降性の易分解性有機物が未分解のまま中層まで沈降すると計算された.このことから,沈降性の易分解性有機物が貧酸素水塊の形成に影響していると考えられた. 

 

ノート

2020rep3   季節性インフルエンザウイルスの遺伝子系統樹解析および薬剤耐性インフルエンザウイルスの検出状況(2019/20シーズン)-三重県
 
   矢野 拓弥,北浦 伸浩,中井 康博
 
   キーワード:季節性インフルエンザウイルス,遺伝子系統樹解析,薬剤耐性ウイルス,2019/20シーズン
 
 2019/20シーズン(2019年第36週~2020年第17週)に分離・検出された季節性インフルエンザウイルスについてHemagglutinin(HA)遺伝子の系統樹解析を実施した.
 AH1pdm09インフルエンザウイルスは全てクレード6B.1AのS183P-5群に分類され,HAアミノ酸置換(D187A,Q189E)を有する集団に属していた.
 AH3亜型インフルエンザウイルスは,全て3C.2a1bに分類されており,前シーズンのワクチン株であるA/Singapore/INFIMH-16-0019/2016と近縁であり,3C.2a1b内の3C.2a1b+135K+137F群に分類された.
B型インフルエンザウイルス(B型ビクトリア系統)は,クレード1A内のHAアミノ酸置換(K136E)を有するサブクレード1A.3に属し,3つのHAアミノ酸(162~164番目のアミノ酸)が欠損したウイルスであった.
 AH1pdm09インフルエンザウイルスについてNeuraminidase(NA)アミノ酸置換におけるオセルタミビル薬剤耐性変異(H275Y)を調べた結果,院内での集団発生事例からオセルタミビル投与歴のある患者より分離された1株がH275Y耐性変異を有するウイルスであった.またAH1pdm09インフルエンザウイルス,AH3亜型インフルエンザウイルス,B型インフルエンザウイルス(B型ビクトリア系統)について抗インフルエンザ薬バロキサビル耐性変異の指標とされるPA遺伝子の38番目のアミノ酸解析を実施したが,耐性ウイルスは確認されなかった.
 
2020rep4 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)におけるアミノ酸変異(D614G)を有するウイルスの動向について-三重県-(2020年1月~2020年9月)
 
   矢野 拓弥,永井 佑樹,楠原 一,小林 章人,大市 真梨乃,竹内 浩,渡部 ひとみ,西 智広,
   林﨑 由美子,森 康則,吉村 英基,北浦 伸浩,中井 康博
 
   キーワード:新型コロナウイルス,SARS-CoV-2,アミノ酸変異(D614G),Ct(Threshold Cycle)値
 
 本県で検出されたSARS-CoV-2におけるSpike遺伝子のアミノ酸遺伝子(614位)がアスパラギン酸(D)からグリシン(G)への置換(D614G変異)を有するウイルスの動向を調査した.またReal time RT-PCR法により得られたCt(Threshold Cycle)値を指標としたウイルス量(感染力)と病日の相関性を調べ,D614G変異との感染力との関連性について検証した.
 SARS-Cov-2陽性患者のSpike遺伝子のD614G変異の解析結果は,30名中26名(86.7%)がD614G変異を保有していたが,2020年3月上旬以前の患者からは,当該アミノ酸変異は確認されておらず,一方で2020年3月下旬以降の患者から検出されたウイルスは,全てD614G変異を保有していた.このことは県内において,D614G変異を有しない中国由来のウイルスが2020年1~3月上旬に流行し,同年3月下旬以後はD614G変異を保有する欧州由来のウイルスによる流行に移行したものと推察された.2020年3月上旬以前に患者から検出されたウイルスは,Ct値からウイルス量が少なく,3月下旬以後の患者は比較的ウイルス量が多い傾向であったことは,D614G変異との関連性が推察される結果であった.また陽性検体中のウイルス量は発症後の時間経過に伴い,Ct値は大きくなり,すなわちウイルス量の低下がみられ,病日とCt値には正の相関を示す可能性が示唆された.
 

資料

2020rep5 三重県独自の調査様式による性感染症サーベイランス結果(2019年)
 
   岩出 義人,原 康之,山内 昭則,樋口 奈津子
 
   キーワード:性感染症,サーベイランス,無症状病原体保有者,パートナー検診,咽頭感染
 
 性感染症は感染しても無症状や軽症にとどまる場合が多く,自覚症状がある場合でも医療機関を受診しないことがある(性感染症に関する特定感染症予防指針)ため,感染の実態を把握することが困難となっている.また,感染症法に基づく発生動向調査で把握される全国の報告数は全体的に減少傾向がみられるものの,依然として十代半ばから二十代にかけての若年層における発生の割合が高いことに加え,性行動の多様化により咽頭感染などの増加が懸念され,対策の必要性が指摘されている.しかし,現行の発生動向調査による性感染症サーベイランスでは,無症状病原体保有者,咽頭感染,混合感染などを把握することはできない.このことから,三重県では,独自の調査様式による性感染症サーベイランスを2012年1月から開始した.以下に,2019年の概要を報告する.
 
2020rep6 2019年感染症発生動向調査結果
 
   楠原 一,矢野 拓弥,永井 佑樹,小林 章人,北浦 伸浩
   
   キーワード:感染症発生動向調査事業,病原体検査定点医療機関,感染性胃腸炎,麻しん,
         インフルエンザ,手足口病
 
 感染症発生動向調査事業の目的は,医療機関の協力を得て,感染症の患者発生状況を把握し,病原体検索により当該感染症を微生物学的に決定することで流行の早期発見や患者の早期治療に資することにある.また,感染症に関する様々な情報を収集・提供するとともに,積極的疫学調査を実施することにより,感染症のまん延を未然に防止することにもある.
 三重県では,1979年から40年にわたって本事業を続けてきた.その間,検査技術の進歩に伴い,病原体の検出に必要なウイルス分離や同定を主としたウイルス学的検査,さらに血清学的検査に加えてPCR法等の遺伝子検査やDNAシークエンス解析を導入し,検査精度の向上を図ってきた.また,検査患者数の増加により多くのデータが蓄積されてきた結果,様々な疾患で新たなウイルスや多様性に富んだ血清型,遺伝子型を持つウイルスの存在が明らかになってきた.
 以下に2019年の感染症発生動向調査対象疾患の検査定点医療機関等で採取された検体について,病原体検査状況を報告する.
 
2020rep7 2019年度感染症流行予測調査結果(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の概要
 
   矢野 拓弥,楠原 一,小林 章人,北浦 伸浩,中井 康博
   
       キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹
 
 本事業は1962年から「伝染病流行予測調査事業」として開始している.その目的は集団免疫の現状把握および病原体の検索等を行い,各種疫学資料と併せて検討することによって,予防接種事業の効果的な運用を図り,さらに長期的視野に立ち総合的に疾病の流行を予測することである.その後,1999年4月「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の施行に伴い,現在の「感染症流行予測調査事業」へと名称変更された.ワクチンによる予防可能疾患の免疫保有調査を行う「感受性調査」およびヒトへの感染源となる動物の病原体保有を調査する「感染源調査」を国立感染症研究所および県内関係機関との密接な連携のもとに実施している.これまでの本県の調査で,晩秋から初冬に日本脳炎ウイルス(JEV)に対する直近の感染を知る指標である2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体が出現したことなど興味深い現象が確認されてきた.また,以前は伝染病流行予測調査事業内で実施されていたインフルエンザウイルス調査において,1993/94シーズンに分離されたインフルエンザウイルスB型(B/三重/1/93株)が,ワクチン株に採用された等の実績がある.ヒトの感染症における免疫状態は,各個人,地域等,さまざまな要因で年毎に異なるので,本年度採取できた血清は同一人であっても毎年の免疫状態とは必ずしも同じではないことが推察される.これらのことはヒト血清だけでなく動物血清についても同様であり,毎年の感染症流行予測調査事業における血清収集は重要である.集団免疫の現状把握と予防接種事業の促進等,長期的な流行予測調査が感染症対策には不可欠であるので,本調査のような主要疾患についての免疫状態の継続調査は,感染症の蔓延を防ぐための予防対策として必要性は高い.以下に,2019年度の感染症流行予測調査(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の結果について報告する.
  
2020rep8  三重県における2019年度環境放射能調査結果
 
   西 智広,森 康則,吉村 英基
   
   キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率
 
 日本における環境放射能調査は,1954年のビキニ環礁での核実験を契機に開始され,1961年から再開された米ソ大気圏内核実験,1979年スリーマイル島原発事故,1986年チェルノブイリ原発事故を経て,原子力関係施設等からの影響の有無などの正確な評価を可能とするため,現在では全都道府県で環境放射能水準調査が実施されている. 
 三重県は1988年度から同事業を受託し,降水の全ベータ放射能測定,環境試料および食品試料のガンマ線核種分析ならびにモニタリングポスト等による空間放射線量率測定を行って県内の環境放射能のレベルの把握に努めている.
 さらに福島第一原子力発電所事故後は,国のモニタリング調整会議が策定した「総合モニタリング計画」に基づき原子力規制庁が実施する調査の一部もあわせて行っている.
 本報では,2019年度に実施した調査の結果について報告する. 
 

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