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令和06年02月28日

保環研年報 第25号(2023)

 三重県保健環境研究所年報 第25号(通巻第68号)(2023)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

 

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらからダウンロードできます。

 

研究報告

ノート

2023rep1  SARS-CoV-2(オミクロン株:BA.2,BA.5,XBB系統)のゲノム分子疫学解析(2022年11月~2023年10月)-三重県-

  矢野拓弥,川合秀弘,下尾貴宏
 
  キーワード:新型コロナウイルス,COVID-19,SARS-CoV-2,ゲノム解析,オミクロン株,組換え体
 
 国内第8波および第9波の流行に関与したSevere Acute Respiratory Syndrome Coronavirus 2(SARS-CoV-2)の変異株であるオミクロン株におけるゲノム系統分類を実施した.
 調査期間中における本株のゲノム系統分類の内訳はBA.2系統(42件),BA.5系統(544件),組み換体のXBB系統(236件)およびrecombinant(6件)であった.第8波の流行に関与したオミクロン株は,BA.5系統が主流であったもののBA.2系統も僅かであるが検出され,その多くが派生株のBN.1系統が大半を占めていた.一方で2023年10月にはBA.2系統の新たな変異株であるBA.2.86.1系統が検出された.BA.5系統は,BA.5.1系統やBA.5.2系統から派生した亜系統のBF.5系統とBA.5.3系統の派生株であるBQ1.1系統が多くを占めていた.
 第9波は組換え体であるXBB系統が主流となったが,本県では2022年11月に初めて検出され,2023年5月以降に増加傾向がみられた.XBB.1.9.1系統やXBB.1.9.2系統から派生したEG.5.1あるいはXBB.1.16系統の亜系統であるHF.1系統の検出率が高く,複数の亜系統が流行に関与していた.
   
2023rep2 3シーズンぶりに流行した季節性インフルエンザウイルスの遺伝子系統樹解析および薬剤耐性インフルエンザウイルスの検出状況(2022/23シーズン)-三重県
 
  矢野拓弥,川合秀弘,下尾貴宏
 
  キーワード:季節性インフルエンザウイルス,2022/23シーズン,遺伝子系統樹解析,
        薬剤耐性インフルエンザウイルス,三重県感染症発生動向調査事業
 
 三重県感染症発生動向調査事業において2022/23シーズン(2022年第36週~2023年第35週)は,3シーズンぶりに季節性インフルエンザウイルスが分離・検出された.その季節性インフルエンザウイルスについてHemagglutinin(HA)遺伝子の系統樹解析と薬剤耐性インフルエンザウイルスの動向調査を実施した.
 本シーズン,流行の主流となったA/H3N2インフルエンザウイルスは,クレード3C.2a1b2aに分類されており,解析を実施した46件は全て3C.2a1b2a.2内に分類された.これらのクレードは3C.2a1b.2a.2b,3C.2a1b.2a.2a.1b,3C.2a1b.2a.2a.3aおよび3C.2a1b. 2a.2a.3a.1の4種が検出された.また2022/23シーズン終盤に分離・検出された4件のA/H1N1pdm09インフルエンザウイルスは,全てクレード6B.1Aに属し,クレード6B.1A.5a.2と6B.1A.5a.2a.1が確認された.
 A/H1N1pdm09インフルエンザウイルスについてオセルタミビル薬剤耐性変異の指標であるNeuraminidase(NA)遺伝子の275番目のアミノ酸解析を実施したが,H275Y耐性変異を有するウイルスは確認されなかった.またA/H1N1pdm09インフルエンザウイルス,A/H3N2インフルエンザウイルスについて抗インフルエンザ薬バロキサビル マルボキシル耐性変異の指標であるPolymerase acidic subunit(PA)遺伝子の38番目のアミノ酸解析を実施したところ,A/H1N1pdm09インフルエンザウイルス1件はI38T耐性変異を有していた.
  
2023rep3  フェントン反応による汚染土壌中の1,4-ジオキサン分解と重金属類の溶出に関する研究
 

  石田健太,奥山幸俊,渡邉卓弥,森 理佳,近藤笑加,今村一貴,春日井 忍,
  加納久義
 
  キーワード:地下水汚染,土壌汚染,化学浄化,1,4-ジオキサン,重金属類,フェントン反応
 
 廃棄物の不法投棄に起因した1,4-ジオキサンによる汚染が判明した土地において,化学的分解法であるフェントン反応を用いた浄化方法の適用を検討するにあたり,現場の土壌を用いた分解試験を実施した.当該浄化法は,1,4-ジオキサンに対して有効な対策の一つとの報告がある一方,土壌のpHが低下し,重金属類の溶出を引き起こすことが懸念されている.そこで,本研究では,フェントン反応による1,4-ジオキサン分解の有効性の検証を行うとともに,分解試薬に1,4-ジオキサンの分解を促進させる目的でクエン酸を添加した場合と添加しなかった場合において,1,4-ジオキサンの分解および重金属類の溶出量に違いが出るかについての検証も行った.
 その結果,帯水層土壌においてはクエン酸の有無にかかわらず分解が進んだ一方,不透水層土壌においてはクエン酸を添加しなかった場合に1,4-ジオキサンが完全に分解されずに残存するケースがみられた.
 また,重金属類についてはクエン酸を添加しない分解試薬を用いた方が土壌からの溶出量は低く抑えられた.分解試験実施後の土壌に重金属類の溶出を抑える目的でクエン酸三ナトリウムを中和剤として添加したものの,期待した効果は得られなかった.
 

資料

2023rep4 2022年感染症発生動向調査結果

  楠原 一,小林章人,矢野拓弥,永井佑樹,川合秀弘
 
  キーワード:感染症発生動向調査事業,病原体検査定点医療機関,感染性胃腸炎,
        日本紅斑熱,手足口病,新型コロナウイルス
 
 感染症発生動向調査事業の目的は,医療機関の協力を得て,感染症の患者発生状況を把握し,病原体検索により当該感染症を微生物学的に決定することで流行の早期発見や患者の早期治療に資することにある.また,感染症に関する様々な情報を収集・提供するとともに,積極的疫学調査を実施することにより,感染症のまん延を未然に防止することにもある.
 三重県では,1979年から40年以上にわたって本事業を続けてきた.その間,検査技術の進歩に伴い,病原体の検出に必要なウイルス分離や同定を主としたウイルス学的検査,さらに血清学的検査に加えてPCR法等の遺伝子検査やDNAシークエンス解析を導入し,検査精度の向上を図ってきた.また,検査患者数の増加により多くのデータが蓄積されてきた結果,様々な疾患で新たなウイルスや多様性に富んだ血清型,遺伝子型を持つウイルスの存在が明らかになってきた1~3)
 以下に2022年の感染症発生動向調査対象疾患の検査定点医療機関等で採取された検体について,病原体検査状況を報告する.  
 
2023rep5 2022年度感染症流行予測調査結果(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の概要
 

  矢野拓弥,楠原 一,小林章人,川合秀弘,下尾貴宏
 
  キーワード:感染症流行予測調査,日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹
 
 本事業は1962年に「伝染病流行予測調査事業」として開始された.その目的は集団免疫の現状把握および病原体の検索等を行い,各種疫学資料と併せて検討することによって,予防接種事業の効果的な運用を図り,さらに長期的視野に立ち総合的に疾病の流行を予測することである.その後,1999年4月「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の施行に伴い,現在の「感染症流行予測調査事業」へと名称変更された.ワクチンによる予防可能疾患の免疫保有調査を行う「感受性調査」およびヒトへの感染源となる動物の病原体保有を調査する「感染源調査」を国立感染症研究所および県内関係機関との密接な連携のもとに実施している.これまでの本県の調査で,晩秋から初冬に日本脳炎ウイルス(JEV)に対する直近の感染を知る指標である2-メルカプトエタノール(2-ME)感受性抗体が出現1)したことなど興味深い現象が確認されてきた.また,以前は伝染病流行予測調査事業内で実施されていたインフルエンザウイルス調査において,1993/94シーズンに分離されたインフルエンザウイルスB型(B/三重/1/93株)が,ワクチン株に採用された等の実績がある.ヒトの感染症における免疫状態は,各個人,地域等,さまざまな要因で年毎に異なるので,本年度採取できた血清は同一人であっても毎年の免疫状態とは必ずしも同じではないことが推察され,毎年の感染症流行予測調査事業における血清収集は重要である.集団免疫の現状把握と予防接種事業の促進等,長期的な調査が感染症対策には不可欠であるので,本調査のような主要疾患についての免疫状態の継続調査は,感染症の蔓延を防ぐための予防対策として必要性は高い.以下に,2022年度の感染症流行予測調査(日本脳炎,インフルエンザ,風疹,麻疹)の結果について報告する.
 
2023rep6 三重県における2022年度環境放射能調査結果
 

  佐藤大輝,森 康則,吉村英基
 
  キーワード:環境放射能,核種分析,全ベータ放射能,空間放射線量率
 
 日本における環境放射能調査は,1954年のビキニ環礁での核実験を契機に開始され,1961年から再開された米ソ大気圏内核実験,1979年スリーマイル島原発事故,1986年チェルノブイリ原発事故を経て,原子力関係施設等からの影響の有無などの正確な評価を可能とするため,現在では全都道府県で環境放射能水準調査が実施されている.
 三重県は1988年度から同事業を受託し,降水の全ベータ放射能測定,環境試料および食品試料のガンマ線核種分析ならびにモニタリングポスト等による空間放射線量率測定を行って県内の環境放射能のレベルの把握に努めている.
 さらに福島第一原子力発電所事故後は,国のモニタリング調整会議が策定した「総合モニタリング計画」 に基づき原子力規制庁が実施する調査の一部もあわせて行っている.
 本報では,2022年度に実施した調査の結果について報告する.
  

本ページに関する問い合わせ先

三重県 保健環境研究所 〒512-1211 
四日市市桜町3684-11
電話番号:059-329-3800 
ファクス番号:059-329-3004 
メールアドレス:hokan@pref.mie.lg.jp

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