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平成27年02月26日

圧密処理による三重県産ヒノキ材フローリングの開発

林業研究所 中山伸吾

○はじめに
 スギやヒノキなど針葉樹材を用いたフローリングは、一般住宅においては徐々に利用されるようになってきましたが、大勢の人が利用する店舗の木質系フローリングには、耐久性などの点から外国産の硬い広葉樹材が多く用いられています。
 針葉樹材を店舗などのフローリングに用いることができれば、県産材の利用拡大や資源確保の点で非常に有効となりますが、針葉樹材は軟らかくそのまま用いることはできません。
そこで、三重県林業研究所では木材の圧密処理により針葉樹材の硬さを改善することで、圧縮に対し耐久性のある床材の開発を目標とした研究に取り組んでいます。
 木材の圧縮強度は、密度に影響されることがこれまでの研究から明らかとなっています。このため、密度の低い針葉樹材を圧密し、広葉樹材と同じ程度の密度にまで上げることで、床材として利用が可能となると考えられます。そこで、ヒノキ(比重0.41)を40%圧密し、広葉樹(比重0.68)並みの密度にすることを試みました。
 
○全層圧密処理
 全層圧密処理は、厚さ30 mmのヒノキ板材を、平板ホットプレスを用いて厚さ18 mmまで圧密しました(図1)。


図1.全層圧密処理


 処理条件は、熱圧温度が140℃または170℃、枠による幅方向への広がりを抑制するかしないか、含水率が12%または20%の8パターンとしました。これらの試験片を10分間圧締した後、常温まで冷却してから解圧しました。
 処理後、日本工業規格(JIS)による表面硬さの測定(図2)と、簡易型分光色差計による処理前後の色(CIE Lab、C光源、2度視野)の測定を行いました。


図2.表面硬さの測定方法

 全層圧密処理したヒノキ材の平均表面硬さは、図3に示すように無垢材の5.8 N(SD=1.8)と比較して処理条件にかかわらず向上しており、170℃-20%の処理において最大15.4 N(SD=4.5)の値を示し、床材として用いられる広葉樹のナラ材と同等の表面硬さを得ることができました。
 また、処理温度が高く、含水率が高いほど表面硬さは向上する傾向が見られましたが、心材と辺材、木目や年輪の影響などもあり、試験片毎の測定値のばらつきが大きくなったことから(SD=2.9~5.8)、170℃-20%の処理については有意差(P<0.05)は見られたものの、他の処理条件については有意差は見られませんでした。また、元の材の性状が圧密処理後の表面硬さに影響を及ぼしている可能性もあります。


図3.全層圧密処理によるヒノキ材の表面硬さの変化
 (平均±標準偏差)

 処理前後の色差(ΔE*)については、表1のとおり170℃処理の方が140℃と比較して変化が大きく、全体的に明度(ΔL*)の低下が起こっており、処理温度が高いと暗色化することがわかりました。
 また、含水率20%の処理では黄色の強さを示す Δb*の増加が含水率12%の処理と比較してかなり小さくなっており、熱による黄変が抑えられていることがわかりました。

表1.全層圧密処理前後でのヒノキ材表面の色差

処理の上段は熱圧温度、下段は初期含水率
 

○表層圧密処理
 木材を均質に圧縮する全層圧密は、木材の表面硬さを向上させ、ヒノキ材を広葉樹並みの硬さにすることが可能なことがわかりました。しかし、全体が圧縮されるために材料の歩留まりが悪くなり、製造には厚い板材が必要となります。そこで、元の材料の板厚を薄くし、木材の表層のみを選択的に圧縮することで、歩留まりを良くすることが可能なのかを検証しました(図4)。


図4. 表層圧密処理

 処理条件は、熱圧温度が140℃または170℃、含水率が12%または20%とし、厚さ24 mmの三重県産ヒノキ板材を、木表側のみ140 ℃で3分間または170 ℃で2分間加熱した後、厚さ18 mmまで圧密しました。加熱開始より10分間圧締した後に解圧し、全層圧密処理と同様の評価を行ないました。
 なお、圧密に際してはあらかじめ木表側より6 mm間隔で木口面に直線を引いておき、圧密後にその間隔を測定することで、表層部分のおおよその圧密度を求めました。
 表層圧密処理では、写真1のようにすべての条件において表層から12 mm程度までの範囲で選択的に圧密されており、表層部分の圧密度は全層圧密とほぼ同じ40~50%程度となりました。


写真1.表層圧密処理したヒノキ材
 

 しかし、図5に示すようにその表面硬さの平均値は5.2~5.8 Nと無処理材と比較しても表面硬さの向上はなく、有意差は見られませんでした。この原因としては、ブリネル硬さは下地の影響を受けやすいため、圧密された層が薄く、板厚方向の圧密度に傾斜を持つ表層圧密は、圧密されていない下部の影響を受けていることなどが考えられます。


図5.表層圧密処理によるヒノキ材の表面硬さの変化
 (平均±標準偏差)

 この結果、表層圧密処理は耐久性を必要とするフローリングにはあまり適さないことがわかりました。

 

本ページに関する問い合わせ先

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