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平成27年03月18日

簡易施設等を用いたきのこの通年栽培

林業研究所  西井孝文

1.はじめに
 シイタケやエノキタケ、ブナシメジといった年間を通じて販売されているきのこの大半は、空調施設栽培により通年生産されています。しかしながら、きのこの新規参入にあたっては、栽培施設の整備、稼働にかかるランニングコスト等多額の経費を必要とします。
 そこで林業研究所では、シイタケ人工ほだ場や育苗ハウス等簡易な施設を用いて、誰もが容易にきのこ栽培に取り組めるよう、季節に応じて栽培可能なきのこの探索、栽培方法の検討を行い現場への技術移転を図ってきたので、その概要について紹介します。なお、ここでは主に菌床栽培きのこを対象としています。 

1.春、秋発生可能なきのこ
 春と秋はシイタケを中心に最も食用きのこが発生しやすい時期です。秋口にシイタケの完熟菌床を導入し、散水しながら発生させ方法が容易ですが、発生時期が集中し出荷量が増加するため、高価格販売が困難です。
 そこで、商品性の高いきのことしてハタケシメジの野外栽培について検討を行ってきました。ハタケシメジは自然条件下では春と秋に林地や道端等に発生します。そこで、シイタケの人工ほだ場を利用して、ハタケシメジの菌床をプランタや大型の容器等に埋め込み、発生時期を分散させる方法について検討しました。
 その結果、春発生では4月中旬から5月中旬にかけて、秋発生では9月上旬から10月上旬にかけて菌床を埋め込むことにより、いずれも埋め込みから1カ月程度で2.5㎏菌床1個当たり800g前後のハタケシメジが収穫でき、発生時期の分散が可能なことが分かりました。この方法を用いて現在県内各地でハタケシメジの自然栽培が行われています(図-1)。


図-1. シイタケほだ場を用いたハタケシメジ栽培


2.秋から冬場にかけて発生可能なきのこ
 秋から冬場にかけて発生可能なきのことして、ヒラタケとナメコの菌床栽培が有効です。
 ヒラタケの菌床栽培では、長期間培養しても袋内に原基を形成しない種菌を用いることが重要です。培養の完了した菌床を15℃以下の低温条件下に置くと1週間程度できのこの原基が形成されます。炭酸ガス濃度が上昇しないよう袋の上部を切り取り、きのこが乾燥しないよう噴霧器等で散水を行うことにより大型のヒラタケが収穫できます(図-2)。


図-2.  ヒラタケの簡易施設栽培

 

 ただし、シイタケの人工ほだ場のように外気の影響を直接受ける環境下では、12月以降になると低温のためきのこの生育が遅れるので、ビニールがけを行うなど気温の低下を防止することにより、冬場の継続発生が可能となります。
 また、ナメコ菌床を用いることにより、ヒラタケより低温条件下での収穫が可能です。ナメコ菌床の場合、袋内で発生させても炭酸ガス濃度の影響を受けにくいことから、散水の必要が無く管理が比較的容易です。
 
3.夏場に発生可能なきのこ 
 夏場は、食用きのこにとって、一番発生の難しい時期です。そこで、自然界で夏場にも発生するアラゲキクラゲについて、野外における菌床栽培法について検討しました。
 5月下旬から9月下旬にかけて、菌糸の蔓延した菌床の表面にカッターで切れ目を入れ、シイタケ人工ほだ場の中で朝夕30分ずつ散水管理を行いながらきのこの発生を促しました。
 この結果、8月末までに発生処理を行うと、1菌床当たり1㎏を超える発生が認められましたが、9月以降になると気温の低下により2回目以降の発生量が減少するため、発生処理は遅くとも8月中に終えることが重要です。
 現在県内の事業体が、この栽培方法を用いて林内に簡易施設を設置しアラゲキクラゲ栽培を行っており、良好な発生が認められています(図-3)。


図-3.  林内を利用したアラゲキクラゲ栽培

 

4.新しいきのこの栽培方法の検討
 林業研究所では、さらに比較的気温の高い時期に発生する商品性の高いきのことして、ウスヒラタケ、タモギタケの人工栽培技術の開発を行っています。
 発生温度別の試験では、ウスヒラタケ、タモギタケいずれも24℃を超える高温条件下でも良好な子実体発生が認められることが明らかになっています(図-4)。


図-4. ウスヒラタケの菌床栽培

 

 特にタモギタケでは、シイタケ人工ほだ場を用いた発生試験において、毎日散水管理を行うことにより、アラゲキクラゲ同様、夏場でも継続した発生が可能であることが判明しました(図-5)。今後は気温が低下する秋から冬にかけて、どこまできのこの発生が認められるか追跡調査を行う予定です。


図-5. 夏場のタモギタケ発生状況


5.まとめ
 以上の結果から、季節に応じたさまざまな種類のきのこの菌床を導入することにより、簡易な施設を用いてきのこの通年栽培が可能なことが示唆されました。
 4月~5月にかけてハタケシメジ菌床の埋め込み、ウスヒラタケの発生処理を行い、6月~8月にかけて、アラゲキクラゲ、タモギタケの発生処理、さらに9月中にハタケシメジ菌床の埋め込み、11月~2月にかけてヒラタケ、ナメコの発生処理を行うことにより、散水のみで年間を通じたきのこ栽培が可能です。これに、シイタケの発生が可能な春、秋に菌床を導入すればさらに安定した生産が望めます。
 しかしながら、いずれのきのこも温湿度を制御した空調条件下での栽培と異なり、乾燥や気温の変化さらには、虫害や雑菌等による汚染といったリスクが高く、安定的に良い商品を作るためには、人の手によるこまめな管理が必要です。
 今後は、簡易施設だけではなく、林床等を利用した新しいきのこの導入についても検討していく予定です。
 

本ページに関する問い合わせ先

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津市白山町二本木3769-1
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