なぜマツが枯れるの?
マツクイムシ被害林(多気郡明和町)
今、北海道を除く全国各地でマツ(アカマツ、クロマツ、ゴヨウマツなど)が枯れています。その原因はひとつではありませんが、主な原因は俗に言う「マツクイムシ(松くい虫)」、正式には「マツの材線虫病」によるものです。
マツの材線虫病はマツノマダラカミキリ(この虫を一般にマツクイムシと呼びます)によって運ばれるマツノザイセンチュウによって引き起こされます。
マツノマダラカミキリ (オス成虫) | マツノザイセンチュウ |
マツノマダラカミキリ(コウチュウ目カミキリムシ科)は体長が18~30mmで、褐色系のまだら模様のカミキリムシです。このカミキリは、三重県では6月初旬頃に成虫になり、マツの枯れ木の中から出てきます。そしてマツの若枝の皮をかじって食べます(これを「後食(こうしょく)」といいます)。その後7月頃、弱ったマツの樹皮に卵を産んで、幼虫はマツの幹や枝の中で内樹皮(かたい樹皮の下の甘皮)を食べて育ちます。その後、材内に深く穿入し、越冬します。翌年の5月下旬頃に材内で蛹(さなぎ)になり、前述のとおり、6月初旬頃成虫になります。
三重県におけるマツノマダラカミキリの生活史
樹皮下幼虫 | 材内幼虫 |
蛹(さなぎ) | 穴を開けて脱出しようとする成虫 |
マツノマダラカミキリの体にはたくさんのマツノザイセンチュウがついて(「寄生」と言います)います。マツノザイセンチュウというのは、長さ1mmくらいの小さな線虫で、北アメリカから入ってきた「外来(移入)生物」です。このセンチュウがマツの幹の中で増えてくると水の通りが阻害されるため、マツの葉が急に赤くなって枯れてしまいます。
しかし、マツノザイセンチュウは自分で木から木へと移動することができません。マツノマダラカミキリに寄生して元気の良いマツ運ばれます。
カミキリはセンチュウが体の中に入っても死ぬことはありません。そして、カミキリが若い枝をかじる時に、カミキリの体の中(「気門」という呼吸するための穴)から出てきて、枝の「かじり傷」からマツの材内に入ってしまいます。材内に入ったセンチュウはどんどん増えて、木を枯らしてしまいます。
カミキリは餌としては元気なマツを選び、産卵には弱ったマツを選びます(元気なマツに卵を産んでも,卵が松ヤニに巻かれて死んでしまいます)。
つまり、マツを枯らす主犯はマツノザイセンチュウで、マツノマダラカミキリはその運び屋と言えるでしょう。マツノマダラカミキリはマツノザイセンチュウを運んでやるかわりに、マツノザイセンチュウに木を枯らして産卵できるようにしてもらっています。このように、マツノマダラカミキリとマツノザイセンチュウは互いに利益を得ながら(「共生関係」と言います)、材線虫病という恐ろしい病気を広げているのです。
今年のマツノマダラカミキリの発生時期は? |