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ヒノキ樹幹の細り形状

三重県林業研究所 野々田 稔 郎

 

1.はじめに

 樹幹の細り形状を把握することは、主伐材の採材、間伐材の利用径級などの推定を行う場合や立木の丸太材積、材積ベースでの間伐率の正確な算定等の際に必要な情報です。このため,実測値に基づいた樹幹の細り形状を一覧表にまとめた「細り表」がいくつかの地域で作成されています。「細り表」は樹幹の細り程度の把握や採材計画の立案等において利用されていますが、三重県では作成されていないのが現状です。

 そこで、「三重の林業 No.354」では、ヒノキ6林分(林齢17~38年生、立木密度1700~3900本/ha)の試験木43本から得られた測定結果をもとに、ヒノキの細り形状について報告しました。この報告では、対象とした6林分の林齢がいずれも38年生以下と若く、林分の平均胸高直径:12~17cm、平均樹高:10~17m程度の範囲を対象としているため、より林齢、胸高直径、樹高などの大きい樹幹について、同じ傾向を示すものかどうかは疑問でした。このことから、より林齢の大きい林分において測定を行い、樹幹細り形状の推定可能性について検討しましたので報告します。

 

2.新たに測定した試験木の概要

 図-1は、採取した試験木の胸高直径と樹高の関係を示しています。先に三重の林業No.354で報告した38年生以下のヒノキ林(6林分、43本)から採取した試験木を図中に○で示しています。また、今回、新たに測定したデータ(54本)を図中に▲で示しています。同図に示すように、新たに測定したデータは、胸高直径、樹高ともに、既存データより大きく、不足していた範囲のデータを補うものと考えられます。▲で示した試験木を採取した林分の概要は、林齢39~99年生、立木密度300~1050本/ha、林分平均胸高直径24~43cm、林分平均樹高16~26mの範囲でした。
                  
                     図-1 測定木の胸高直径と樹高の関係         図-2 相対化した樹幹の形状

 

 3.樹幹形の 相対化

 図-2は、図-1に○で示したデータ(43本)の樹幹形を示しています。横軸を梢端からの距離、縦軸を直径(皮付き)として、相対化して表しています。一般に樹幹の形状は、梢端を原点、横軸を梢端からの距離(長さ)、縦軸を樹幹半径(同図では直径)に定めた図により表されます。同図は梢端からの距離、直径をともに相対化して表していますが、相対距離Lxとは、梢端からの距離Lを樹高Hで除して求めた無次元距離(LxLH)であり、相対直径Dとは、高さ別の直径dを基準直径dsで除して求めた無次元直径(Ddds)です。なお、ここでの規準直径dsは、樹高H×0.1の地上高さに位置する直径を用いています。したがって、樹高(梢端長さ)10mの樹幹において、梢端からの距離が5mのときの相対距離Lxは5m÷10m=0.5となり、基準直径(樹高10mの場合、10m×0.1=1mの高さの直径)が30cmのときに、胸高直径27cmであったとすると、相対化した胸高直径Dは、27cm÷30cm=0.9となります。

 樹幹形を相対化するメリットは、樹体の大きさが異なる樹幹形を一つに統合して表せることです。図-1においても林齢17~38年生、試験木の胸高直径範囲9~20cm、樹高範囲9~19mと個体サイズの異なる試験木の樹幹形をほぼ一つに統合して表せています。このため、樹幹形を推定する回帰線も、統合した一つの線で表すことが可能となります。この回帰線が相対幹曲線と言われるもので、図-2では、43本の樹幹形を平均的に表す相対幹曲線を実線で示しました。相対幹曲線式は、現在まで様々なものが提案されていますが、ここでは相対距離Lxと相対皮付き直径Dの関係を以下に示す多項式を用いて表しています。

f (D ) = a1・Lx+ a2・Lx 2 + a3・Lx 3   (1)

図-2に示した相対幹曲線の(1)式における係数は以下となりました。

a1=1.5452653、a2=-2.852387、a3=2.5023018

上の(1)式の係数a1~a3を定めれば、ヒノキ林を対象として、樹高と胸高直径を用いて樹幹形状の計算や任意の高さ(地上3m、6mなど)の直径推定が可能となります。

 

4.相対幹曲線を利用した樹幹細りの推定方法

前述の(1)式を利用して、具体的な樹幹細り推定方法を説明します。表計算ソフトなどを利用すれば平易に計算することが可能です。対象とするモデル樹幹の胸高直径dを15cm、樹高Hを15mとして、高さ3m、6m、9mの位置の直径を推定する計算手順を以下に述べます。

①胸高(1.2m高さ)の相対梢端距離Lxを求める。

 胸高の梢端からの距離は、15m-1.2m=13.8mであるから、相対梢端距離Lxは樹高(=15m)で除して以下となる。

Lx =(13.8m/15m)= 0.920

②胸高の相対梢端距離Lx = 0.920を(1)式に代入して相対胸高直径D(1.2)を求める。

D(1.2) =1.091

③基準直径dsを求める。

相対胸高直径D(1.2)は、胸高直径(=15cm)を基準直径dsで除して求めている(下式)。

D(1.2) =DBH/ds

したがって、ds = DBH/D(1.2)によりdsを求められる。

 ds =15/1.091=13.7 (cm)

④求める高さの相対直径(ここでは3m、6m、9m)を(1)式から求める。

高さ3mの相対梢端距離は、(15m-3m)/15m=0.800であるから、(1)式にLx = 0.800を代入すると、相対直径D(3.0)=0.967が求まる。同様に、高さ6mの相対直径はD(6.0)=0.808、高さ9mの相対直径はD(9.0)=0.643となる。

⑤求めた各高さの相対直径D(x)と基準直径ds (=13.7cm)を用いて、直径d = D(xds から以下に示す高さ別の直径が求められる。

高さ3m直径:d (3.0)=0.967×13.7=13.2(cm)

高さ6m直径:d (6.0)=0.808×13.7=11.1(cm)

高さ9m直径:d (9.0)=0.643×13.7= 8.8(cm)

上述した相対幹曲線式を利用し、胸高直径と樹高の組み合わせごとに高さ別の直径を求め、一覧表にしたものが、「細り表」と言われるものです。

 

5.相対幹曲線(1)式の適用性と修正

 前述した樹幹細り計算に用いた(1)式の係数は、ヒノキ38年生以下の測定データから得られた値です。このため、林齢、胸高直径、樹高などが38年生より大きい林分のデータを加え、修正する必要があります。しかし、相対幹曲線式がサイズの異なる樹幹形の特徴を統合して表しているのであれば、よりサイズの大きい個体の樹幹形をある程度の精度で推定可能であることが予想されます。そこで、(1)式により、新たに測定した林齢39~99年生の試験木(53本)について枝下高付近(地上高さ6~20m)の直径を推定し、実測値と比較してみました。その結果を図-3に示します。図中実線は1:1の線を表し、推定した直径と実測直径が等しければ、○は実線上にプロットされることになります。同図に示すように、やや推定値が小さい傾向を示しましたが、実測値との平均誤差率は8%程度(直径20cmで1.6cm)と僅かでした。したがって、新たに測定した39年生以上のデータを加え、(1)式の係数の微修正
を行えば、より精度良くヒノキ樹幹形の推定が可能であると考えられます。今後は、(1)式の修正を行い、これを用いてヒノキ細り表の作成を検討したいと思います。

      
        図-3 推定した直径と実測直径の関係

 

 

 

 

 

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津市白山町二本木3769-1
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