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木材乾燥と強度性能

林業研究所 小林秀充

はじめに

 「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」が2000年4月に施行され約14年が経過します。この法律では新築後10年間に欠陥(瑕疵)のあった場合は、住宅供給側が無償補修などの責任を負うこととなっています。木造住宅でのクレームは、雨漏りや壁の亀裂、引き戸が閉まらなくなるなど収縮や反り等の木材を充分に乾燥しないまま使用したことが原因と考えられるものが多くみられ、これらのクレーム対策や品質確保のため木材乾燥の重要性は増しています。乾燥のメリットについてまとめると次のとおりです。

1.製品における狂いや隙間の発生を防止する。

2.重量が軽くなり、輸送、取扱いが楽になる。

3.腐朽を防止する。

4.強度性能が向上する。

 今回は、乾燥のメリットの内の強度性能の向上について説明したいと思います。まず、強度性能の向上に関係する水分量と細胞の収縮の関係についてふれた後、本年度、当研究所でスギ心去り平角材を用いて乾燥試験を行った中で含水率変化とヤング係数変化について計測を行いましたので、その結果を示し説明したいと思います(ヤング係数については、後ほど説明します。)。

 

水分量(含水率)変化と細胞壁の変化

 図‐1は、水分量の変化と木材細胞の状態を示したものです。木材を乾燥するうえで木材に含まれる水分は、自由水と結合水の2種類に分けて考えられています。自由水は、細胞腔(針葉樹では仮道管)の内にある水で普通の水と同様に流動し蒸発します。結合水は細胞壁中に含まれる水で強く木材と結合しています。

 木材の乾燥では、始めに流動しやすい自由水が蒸発します。その後乾燥が進むと、どのような樹種でもだいたい含水率30%前後で自由水が抜けきります。この状態を繊維飽和点といいます。この時点を過ぎると細胞壁に結合していた水分が抜け始め、細胞壁の収縮が始まります。強度は、含水率が繊維飽和点(約30%)以下になると低いほど増します(ただし、5%ぐらいまで。それより低い含水率では低下します。)。これは、細胞の収縮により凝集力が高くなるためと考えられています。また、細胞壁の収縮により反りやひねり、寸法減少などが発生します。

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図-1 水分量の変化と木材細胞の状態

ヤング係数

 ヤング係数という言葉をよく耳にすると思います。ヤング係数は、材料のたわみにくさを示す数値でその値が高いほどたわみにくい材料となります。(図-2)

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図-2 ヤング係数

 

 ヤング係数を算出するには、写真-1のように実際に荷重をかけ、荷重と変位計により計測したたわみによりヤング係数を算出する方法があります。こうして算出されたものを静的ヤング係数といいます。しかし、この方法は破壊を伴うため、非破壊の計測方法として写真-2のようにハンマーで木材をたたいて発生した打撃音の周波数を計測しヤング係数を算出します。こうして算出されたものを動的ヤング係数といいます。

 

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写真-1 静的ヤング係数

 

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写真-2 動的ヤング係数

 

 こうした動的ヤング係数と静的ヤング係数、静的ヤング係数と強度の間には良好な正の相関関係が存在します。図-3は動的ヤング係数と曲げ強度の関係を表したグラフの一例です。相関係数が約0.73と良好な正の相関関係があります。JASではこの関係を利用して非破壊で測定できる動的ヤング係数から強度を推測して機械等級区分が行われています。

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図-3 動的ヤング係数と曲げ強度

 

含水率と強度

 図-3にスギ心去り平角材(寸法:240×120×4,000㎜10本)を用いて乾球温度80℃以下の中温人工乾燥を行い、乾燥途中の含水率と動的ヤング係数を計測した結果を示しました(計測は乾燥開始直前と乾燥開始後6、12、23日目に実施)。このグラフは、含水率と動的ヤング係数の平均値を示したもので、エラーバーは動的ヤング係数の最大値と最小値を示しています。乾燥開始後6日目の平均含水率は38%で動的ヤング係数はほぼ横ばいで推移しています。12日目の平均含水率は25%で動的ヤング係数は上昇しており、その後は含水率の低下とともに動的ヤング係数が上昇しています。これは、前述の「水分量(含水率)変化と細胞壁の変化」の中で説明したとおり、含水率が6日目と12日目の間で繊維飽和点(含水率約30%)を迎えたことにより強度が増加したためと考えられます。

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図-4 中温乾燥時の含水率と動的ヤング係数変化

 

おわりに

 木材は乾燥を行い含水率約30%(繊維飽和点)以下とすることで寸法や形状の安定性だけでなく強度も増加します。しかし、日本の*平均平衡含水率は一般的に15%前後で室内の並行含水率は暖房等の影響で10%を下回る場合があり、乾燥を行う際は用途に合わせた仕上がり含水率を考慮する必要があります。

 

*平衡含水率:一定の温湿度の中に長時間放置すると最終的に外部空気の温湿度とつりあって安定する含水率    

 

 

 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 林業研究所 企画調整課 〒515-2602 
津市白山町二本木3769-1
電話番号:059-262-0110 
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