親魚の由来がアマゴ稚魚放流効果に与える影響
-放流試験と水槽実験による検討-
平成15年度日本水産学会春季大会講演要旨(2003年4月1日~5日)
宮本敦史(三重科技水)・原田泰志(三重大生物資源
目的
アマゴの稚魚放流に用いられる種苗は,養殖場内で継代された系統のものが用いられることが多い。しかし,継代された系統の種苗は,家魚化などにより,天然個体と比べて放流先の河川環境での適応度が低い可能性が指摘されている。そこで,河川での放流試験と水槽でのとびはね実験により,親魚の由来が放流効果に与える影響を検討した。
方法
2001年10月に三重県宮川水系から採捕した天然雄と,宮川水系に由来する養殖場で継代された雌雄を親魚に用い,天然雄と継代雌のかけあわせによる種苗(交配魚)と,継代雄と継代雌のかけあわせによる種苗(継代魚)の2系統の種苗を生産した。2002 年6月,体長約7cm,体重約6gに成長した両者を用い,アユとびはね検定を模した水槽実験を行った。水槽実験実施後,左右の腹鰭を切り分けて両者を識別できるようにしたうえで宮川水系の河川に放流し,放流1,3ヶ月後にエレクトロフィッシャーを用いた採捕調査を行い,放流魚の動向を追跡した。
結果
継代魚は,放流試験では放流地点からの下流方向への移動が交配魚に比べ顕著であり,水槽実験では交配魚に比べとびこみ個体が少なかった。即ち,親魚の違いが流水に対する反応に影響を与えることが示唆された。また,交配魚に比べ放流後の生残率も低く,親魚の違いは初期減耗にも影響を与えることが明らかとなった。