第7回イセエビの生態と資源管理に関する国際会議への参加報告
平成16年2月8日から13日にかけてオーストラリアのホバート市(タスマニア州)において,「第7回イセエビの生態と資源管理に関する国際会議」が開催されました。この国際会議に参加し,水産研究部でのイセエビ研究の成果について発表しましたので,会議の概要と発表内容について報告します。 |
会議名称 | 第7回イセエビ類の生態と資源管理に関する国際会議 (7th International Conference and Workshop on Lobster Biology and Management) |
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コンビ-ナー | Dr. Stewart Frusher (Tasmania大学) |
開催日時 | 平成16年2月8日~13日 |
開催場所 | タスマニア州ホバート市 (Hotel Grand Chancellor) |
発表内容 | イセエビのフィロゾーマ幼生の飼育に適した新しい飼育水槽の開発 (A new tank design for the successful larval culture of Japanese spiny lobster, Panulirus japonicus) |
参加者数 参加国数 |
約200名 アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・メキシコ・インド・ブラジル・日本等 20カ国 |
内容
当会議はほぼ4年に1度,イセエビ類に関する様々な面での研究成果を発表し,情報の交換,研究者間の交流を行うことを目的として開催されています。会議には,約20カ国からイセエビ類の研究者約200名が参集し,150の口頭発表,50のポスター発表により最新の研究成果が発表されました。日本からは,松田(三重県)の他4名が参加していました。 | 会場となったホテル |
ホテルの会議場前 |
会議では,コンビーナーのフラッシャー博士による開会の辞,タスマニア州知事,及びタスマニア大学漁業養殖研究所長による開会の挨拶の後,オーストラリア国立カートン大学のフィリップス教授による基調講演が行われました。 |
研究発表は,再生産,疾病,幼生の分散と回帰,生理,資源評価とモデル,漁業管理,行動,環境収容力,飼育,加工と輸送,など15分野に分かれて行われました。最も発表数の多かった分野は漁業管理に関してのもの(口頭発表数31)であり,次いで幼生の分散と回帰(同26),飼育技術(同19)の順でした。三重県で取り組んでいる分野であるイセエビ類のフィロゾーマ幼生の飼育研究に関しては,口頭発表は8件,ポスター発表は4件と,これまでの会議と比較して,格段に多くなっており,世界的にもイセエビ幼生の飼育研究に対する関心が高まっていることがうかがえました。
本会議において,松田は「イセエビのフィロゾーマ幼生の飼育に適した新しい飼育水槽の開発]とのタイトルで,平成14年から15年に実施したフィロゾーマ幼生の飼育研究の成果について口頭発表しました。内容は,「新しく製作した飼育容器を用いてイセエビのフィロゾーマ幼生を飼育したところ,中期幼生からの生残率が30~55%,1水槽あたりのプエルルス幼生の生産数が21~37個体と,これまでの飼育結果を格段に上回る成績で飼育が可能になった」というものでした。この研究成果は,イセエビ類のフィロゾーマ幼生の飼育研究の進展に大きく貢献するものと思っています。
平成16年2月14日と15日には,国際会議のポスト会議として「フィロゾーマ幼生飼育研究担当者による検討会」がタスマニア大学漁業養殖研究所において開催され,タスマニア大学漁業養殖研究所のRitar博士やSmith博士等と共に,イセエビ類のフィロゾーマ幼生の飼育研究の課題と今後の研究の方向について議論しました。
この会議では,三重県においてイセエビ幼生を飼育している研究施設の紹介,日本のイセエビ幼生の成長の特徴,これまでに実施した幼生飼育研究の結果の紹介,等を行いました。タスマニア大学からは,飼育海水の処理方法,ふ化した幼生の活力判定の方法について等,最新の研究成果について紹介がありました。こういった新しい技術は、三重県での今後の研究に役立つものであり,どんどん取り入れていきたいと考えています。
次回の会議は,カナダのクイーン・エドワード島のシャーロットタウンにて,2007年9月に開催されることになっています。