選ばれし雄 by ♂パパ
今年の1月に長男が生まれ、一児の父親となりました。現在、7ヶ月でやっと寝返りが打てるようになりました。顔は私似で、周りの人から「お父さんにそっくりやねー」と言われます。
さて、牛にもお父さんがいますが、人のようにそれぞれの仔牛にそれぞれのお父さんがいるというわけではありません。と畜場で検査をしている牛たちは、いろいろな農家から来ているのに、お父さんが同じだったりします。それは、種牛というごく限られた雄牛から採取された精子が、雌牛に人工授精され仔牛が生まれます。その仔牛が肉牛として成長し搬入されてくるからです。
種牛は種畜場で飼育されており、年間120回程度、精液採取が行われます。採取された精子は凍結しても、精子が壊れない液体とともに、特殊なストローに小分けされて、液体窒素(-196℃)で凍結保存されます。1回の採取で100頭から200頭の雌牛に人工授精させることができます。したがって、種牛一頭が、年間20,000頭近い仔牛の出産に関わっています。また、お父さん牛(種雄牛)が現役引退しても、しばらくはその精子で仔牛が生まれてきます。
種牛は、血統などで選考された上で候補牛として飼育され、遺伝子が優秀であると検定で認められた雄牛しかなれません。種牛と認定されるまでに最低でも5年くらいの年月が掛かります。まさに、選ばれしお父さんなのです。宮崎での口蹄疫発生の時、耳にしたスーパー種牛もそんなお父さん達です。
一方、ほとんどの雄牛たちは、去勢されて肉牛として肥育され、やわらかくおいしい牛肉となり、食卓を飾ります。
僕は、幸い優秀ではなくとも去勢されることなく、妻とともに食卓を囲むことができました。しかし、去勢はされませんでしたが、若かりし頃のいきおいは奪われてしまいました。