政治資金規正法について
- 政治資金規正法ってどんな法律?
- どのような規正があるの?
- 規正の対象となるのは?
- 政治資金の流れを公開するとはどのようなこと?
- 政治資金の流れを制限するとはどのようなこと?
- 政治資金の運用を制限するとはどのようなこと?
- 罰則等はどうなっているの?
1 政治資金規正法ってどんな法律?
議会制民主政治のもとで、大きな役割を担う政党その他の政治団体及び公職の候補者の政治活動の公明と公正を確保 し、わが国における民主政治の健全な発達に寄与することを目的として、昭和23年に制定された法律です。
政治活動の公明の確保
政治資金を公開することで、政治活動の実態を国民の前に公開し、いわばガラス張りの中において国民の不断の監視と批判のもとにおくことにより、政治活動の公明を確保しようとしています。
政治活動の公正の確保
政治資金の授受を量的、質的に規制することで、積極的に社会的、倫理的な正義の実現を期することにより、政治活動の公正を確保しようとしています。
こうした趣旨から法律の名称も、「規制法」ではなく「規正法」とされています。
ただ、その後の政界の疑惑事件等を契機として幾度か改正が行われ、政治資金の授受を直接的に規制する性格が強くなってきています。
2 どのような規正があるの?
政治資金の規正には、(1)政治団体に対して、毎年の収入、支出及び資産等について記載した収支報告書の提出を義務づけ、これを公開することによって国民に判断の資料を呈示し、政治のために要する資金をガラス張りとすることで規正の効果をあげる「政治資金の流れを公開する」、(2)政治資金の集め方に節度を持たせるために「政治資金の流れを制限する」及び(3)政治資金を投機的に用いることを禁止する「政治資金の運用を制限する」の3つがあります。
3 規正の対象となるのは?
(1)政治団体
政治団体は自由に設立できますが、設立の届出をしない限り、寄附を受け、又は支出をすることができないこととされています。
(参考)政治団体の種類
- 政党…次のいずれかにあてはまる政治団体
- 所属国会議員を5人以上有するもの
- 前回の衆議院議員総選挙、前回又は前々回の参議院議員通常選挙のいずれかの全国を通じた得票率が2%以上であるもの
- 政治資金団体…政党のために資金を援助することを目的とし、政党が指定したもの
- その他の政治団体…政党・政治資金団体以外の政治団体(後援会等)
(2)公職の候補者(政治家)
公職の候補者とは、公職にある者、公職の候補者及び候補者となろうとする者をいいます。
なお、公職の候補者は、自らが代表者である政治団体のうちから、一つの政治団体を自らのために政治資金の拠出を受けるべき政治団体(資金管理団体)として指定することができます。
4 政治資金の流れを公開するとはどのようなこと?
(1)収支報告書の提出
政治団体の会計責任者は、毎年1回、年間の政治資金の収支や資産等の状況について報告書を作成し、これを総務大臣又は都道府県の選挙管理委員会に提出することを義務付けられています。
- 寄附についての明細の公開基準
…年間5万円を超えるものについて、寄附者の氏名等を収支報告書に記載 - 支出についての明細の公開基準
…一件5万円以上のものについて、支出を受けた者の氏名等を収支報告書に記載 - 公開される資産等
…土地、建物、建物所有のための地上権又は土地賃借権、100万円超の動産、預貯金(普通預金等を除く。)、金銭信託、有価証券、出資による権利、100万円超の貸付金、100万円超の敷金、100万円超の施設利用権、100万円超の借入金
(2)収支報告書の公表及び閲覧
政治団体の収支報告書の要旨は官報又は都道府県の公報により公表され、総務省又は都道府県の選挙管理委員会において公表の日から3年間閲覧に供されます。
5 政治資金の流れを制限するとはどのようなこと?
(1)寄附者と寄附の対象者の制限
- 会社、労働組合及びその他の団体(政治団体を除く。)のする「政治活動に関する寄附」は、政党・政党支部(1以上の市町村の区域又は選挙区の区域を単位として設けられる支部に限る。)及び政治資金団体へするものを除き禁止されています。(会社等が負担する党費又は会費は「寄附」とみなされます。)
なお、何人も会社、労働組合及びその他の団体(政治団体を除く。)に対して、「政治活動に関する寄附」をすることを勧誘し又は要求してはならないとされています。 - 個人や政党以外の政治団体が政治家に対してする「政治活動に関する寄附」は、選挙運動に関するものを除き「金銭等(金銭及び有価証券)」によるものが禁止されています。
(2)寄附の量的制限(一覧表参照)
寄附の量的制限とは、政治活動に関して一の寄附者が年間に寄附することのできる金額についての制限で、総枠制限と個別制限とがあります。
- 総枠制限→一の寄附者が1年間にできる寄附額の総量を制限
- 政党・政治資金団体に対するもの
個人…2,000万円まで
会社・労働組合等…750万円~1億円まで(資本金額、組合員数等によりそれぞれ限度額が定められています。) - その他の政治団体・政治家に対するもの
個人…1,000万円まで
- 政党・政治資金団体に対するもの
- 個別制限→一の寄附者が同一の者に対して1年間にできる寄附額を制限
個人のする寄附で、その他の政治団体に対してする寄附は、150万円まで
(3)寄附の質的制限
寄附の質的制限とは、寄附者に一定の制限を設けたもので、
- 国や地方公共団体から補助金等を受けている会社等
- いわゆる赤字会社
- 外国人、外国法人等
- 他人名義及び匿名(政党匿名寄附の特例あり)
の寄附が禁止されています。
(4)公正な流れを担保するための措置
政治資金の授受が公正に行われるために、
- 寄附のあっせんによる威迫的行為
- 意思に反するチェック・オフ
- 寄附等への公務員の関与等
の行為が禁止されています。
(5)政治資金パーティーの規制
政治資金パーティーとは、対価を徴収して行われる催物で、その催物の対価にかかる収入の金額から催物に要する経費の金額を差し引いた残額をその催物を開催した者又はその者以外の者の政治活動(選挙運動を含む。これらの者が政治団体である場合には、その活動)に関し支出することとされているもので、次のような規制があります。
- 開催団体…
政治資金パーティーは、政治団体によって開催されるようにしなければならないとされています。また、政治団体以外の者が特定パーティー(政治資金パーティーのうちその政治資金パーティーの対価にかかる収入の金額が1千万円以上であるもの)になると見込まれる政治資金パーティーを開催しようとする場合には、その者も、政治団体と同様に報告等の義務が生じます。 - 収支報告…
政治資金パーティーの対価にかかる収入・支出については、政治団体の収支報告書に所要の事項を記載しなければならないとされています。 - 公開基準…
一の政治資金パーティーの対価にかかる収入のうち、同一の者からの政治資金パーティーの対価の支払で、その金額の合計が20万円を超えるものは氏名等を公開しなければならないとされています。 - 対価の支払に関する制限…
何人も、一の政治資金パーティーの対価の支払をする場合において、150万円を超えて対価の支払をしてはならないとされています。
※なお、(4)と同様の規制がある。
6 政治資金の運用を制限するとはどのようなこと?
政治資金が民主主義の健全な発達を希求して拠出される国民の浄財であることから、政治資金を株券などによる投機的取引で運用することを禁止し、政治団体の会計帳簿の中に資金の運用状況を記載することが義務付けられています。
7 罰則等はどうなっているの?
(1)罰則
収支報告や寄附制限等の履行を担保するための主な罰則は、次のとおりです。
- 無届団体の寄附の受領、支出の禁止違反…5年以下の禁錮、100万円以下の罰金
- 収支報告書の不記載、虚偽記載…5年以下の禁錮、100万円以下の罰金
- 寄附の量的制限違反…1年以下の禁錮、50万円以下の罰金
- 寄附の質的制限違反…3年以下の禁錮、50万円以下の罰金
(注)寄附の量的、質的制限等違反による寄附にかかる財産上の利益については、没収又は追徴する。
(2)公民権の停止
政治資金規正法に定める罪を犯した者は、選挙犯罪を犯した者と同様、次の期間、公民権(公職選挙法に規定する選挙権及び被選挙権)を有しないこととされています。
- 禁錮刑に処せられた者…裁判が確定した日から刑の執行を終わるまでの間とその後の5年間
- 罰金刑に処せられた者…裁判が確定した日から5年間
- これらの刑の執行猶予の言い渡しを受けた者…裁判が確定した日から刑の執行を受けることがなくなるまでの間
(注)なお、この公民権の停止される場合においては、あわせて選挙運動も禁止されます。
【寄附の量的制限等の概要 】
受領者 寄附者 |
政治家 個 人 |
その他の政治団体 | 政党 | |||
---|---|---|---|---|---|---|
資金管理団体 | 資金管理団体 以外の団体 |
|||||
個人 | 総枠制限 | 年間1,000万円以内 ただし、政治家に対するものは、選挙運動に関するものを除き、金銭等によるものは禁止 (注1) |
年間 2,000万円以内 |
|||
同一の受領者に対する個別制限 | 年間150万円以内 ただし、政治家に対するものは、選挙運動に関するものを除き、金銭等によるものは禁止 (注2) |
制限なし | ||||
会社労働組合等の団体 | 総枠制限 | 一 切 禁 止 | 資本金、組合員数等に応じて 年間 750万円以内 ~1億円以内 |
|||
同一の受領者に対する個別制限 | 制限なし | |||||
政治団体 | 政党 | 量的制限 | 制 限 な し | |||
政党以外の 団体 |
選挙運動に関するものを除き、金銭等によるものは禁止 | 制 限 な し ただし、その他の政治団体に対するものは、同一の政治団体に対し年間5,000万円以内 |
(注1)
資金管理団体の届出をした政治家が、その者が公職の候補者である間に政党から受けた政治活動に関する寄附を、その資金管理団体に対してする寄附(特定寄附)については、総枠制限はない。
(注2)
資金管理団体の届出をした政治家がその資金管理団体に対してする寄附(特定寄附及び自己資金による寄附)については、個別制限はない。
(注3)
遺贈による寄附については、量的制限はない。