地方交付税制度の概要
1 地方交付税制度の目的
地方交付税法(昭和二十五年法律第二百十一号)
(この法律の目的)
第一条 この法律は、地方団体が自主的にその財産を管理し、事務を処理し、及び行政を執行する権能をそこなわずに、その財源の均衡化を図り、及び地方交付税の交付の基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することによつて、地方自治の本旨の実現に資するとともに、地方団体の独立性を強化することを目的とする。
このように地方交付税は、地方団体の税源の偏在を補正(財政力の格差是正)し、地方自治体の自主性を損なうことなく、すべての地方団体が一定の水準の行政サービスを維持しうるよう財源を保障する「財政調整機能」と「財源保障機能」を果たすものであり、地方団体の固有財源とされています。
2 地方交付税の総額
(1)法定分
所得税・法人税(33.1%)、酒税(50%)、消費税(19.5%)、地方法人税(全額)
(2)特例加算分等
各年度の地方財政対策による、国の一般会計からの加算、借入金の返済等
(法定分の不足を補てんするための総額の特例措置等)
3 地方交付税の性格
(1)地方の一般財源
地方交付税の使途は、地方団体の自主的な判断に任されており、国がその使途を制限したり、条件を付したりすることは禁じられています。
この点で、地方交付税は、地方税と並んで、憲法で保障された地方自治法の理念を実現していくための重要な一般財源(地方の自主的な判断で使用できる財源)とされています。
(2)国と地方の税源配分を補完
歳出面での国と地方の支出割合は、およそ2対3となっていて、地方の役割が相対的に大きくなっているのに対して、租税収入全体の中における国税と地方税の比率は、およそ3対2となっており、地方に配分されている税収は相対的に小さなものとなっています。
地方交付税は、国と地方の税源配分を補完する機能を果たしています。
4 地方交付税の種類
(1)普通交付税
地方交付税総額の94%
(2)特別交付税
地方交付税総額の6%
(特別交付税は、災害等の普通交付税で捕捉されない特別の財政需要に対して交付されます。)
5 普通交付税のしくみ
(1)各団体毎の普通交付税額
[ 基準財政需要額 ](標準的な財政需要) - [ 基準財政収入額 ](標準的な財政収入) = [ 財源不足額 ](交付基準額)
交付基準額をもとにして、実際の交付金額が決まります。なお、基準財政収入額が基準財政需要額を上回る団体については、普通交付税は交付されません。
(2)基準財政需要額の計算
[基準財政需要額] = [単位費用] × [測定単位] × [補正係数]
1.単位費用
1測定単位当たりの費用(一般財源所要額)
地方団体が標準的な行政を行う場合に必要な一般財源の額を、測定単位1単位当たりで示したもので、各行政項目の各測定単位ごとに定められています。
2.測定単位
人口、面積等、各行政項目の財政需要をできるだけ的確に反映しうるものです。
(例えば、住民を対象とする社会福祉費や保健衛生費等は「人口」を、高齢者保健福祉費は「高齢者人口」を用いています。)
3.補正係数
各団体毎の自然条件や社会条件等の違いによる財政需要の差を反映するものです。
(例;寒冷補正、段階補正、事業費補正等)
6 地方交付税の決定時期
(1)普通交付税
普通交付税は、遅くとも毎年8月31日までに決定されます。
(2)特別交付税
2回に分けて決定し、1回目は12月中、2回目は3月中に行われます。
(大規模災害等の発生時においては、交付額の決定等の特例が設けられることもあります。)
7 地方交付税の交付時期
(1)普通交付税
4月、6月(概算交付として、前年度実績の4分の1ずつを交付)
9月、11月(既に交付した額と決定額の差引を2回に分けて交付)
(2)特別交付税
12月、3月
8 財政力指数
普通交付税の算定に用いた数値から、その団体の財政力を簡便に比較する指数を算出できます。
[財政力指数] = [基準財政収入額] ÷ [基準財政需要額]
なお、一般に財政力指数として用いられるのは、上記で算出された値の3か年平均値です。この数値が高いほど財源に余裕があるとされています。そのため、国庫補助金等のなかには、財源に余裕があるとして、財政力指数の高い団体に対して補助率を変える制度を持つものもあります。
ただし、基準財政需要額や基準財政収入額の計算式は年度によって変わるため、年度間の数値の高低がその団体の財政状況の変動をそのまま反映しているわけではありません。