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平成20年03月13日

保環研年報 第4号(2002)


'1999年報表紙



三重県科学技術振興センター 保健環境研究部年報 第4号(通巻第47号)(2002)を発行しましたので その概要をご紹介します。

各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらから ダウンロードできます。
 


研究報告

 原著

200201  各種焼却灰からのリン,金属等資源回収技術開発研究(Ⅴ)  ―下水汚泥焼却灰からのリン酸塩回収方法 ―
  高橋正昭,加藤進,男成妥夫,円城寺英夫
   キーワード:焼却灰,リン酸塩,資源回収
    下水汚泥焼却灰中に多量に含まれているリンを回収する方法として酸・アルカリを用いた
   pH調節による方法を検討している.この方法で回収されるリンはリン酸アルミニウムの形態
   であり,利用用途が少ないことから強酸性下においてアンモニウムイオンを加えて硫酸アルミ
   ニウムアンモニア複塩を形成させることによりリン酸アルミニウム中のアルミニウムを分離除
   去する方法を検討した.下水汚泥焼却灰から回収した200gのリン回収物(主にリン酸アルミ
   ニウムと硫酸カルシウムから構成される.)に硫酸を加えて,回収物中のリンを溶解した.
   これに硫酸アンモニウムを加えて冷却し,硫酸アルミニウムアンモニウム結晶を分離回収した.
   分離液にアルカリとして炭酸ナトリウムあるいはアンモニア水を加えてpH 4 ~ 5 にして未反
   応のリン酸アルミニウムを除去,さらに,これらのアルカリを加えた結果,リン酸ナトリウム
   12水和物(310g)あるいはリン酸アンモニウム(95g)を回収した.
200202  浚渫汚泥を用いた干潟造成技術開発研究 造成干潟の浚渫土適正混合率と底生生物の関係
  国分秀樹, 吉村英基, 佐藤邦彦, 加藤進, 高橋正昭,上野成三1), 高山百合子1)
    1) 大成建設株式会社
   キーワード:浚渫汚泥,人工干潟,干潟造成技術,底生生物
     英虞湾において浚渫土を用いた実験的な干潟を造成し,造成干潟周辺の定期的な環境調査を
    継続している.本研究報告では,造成後約1年半の干潟周辺の水質,底質,定着した底生生物
    の変化について整理した.造成後,干潟周辺の水質は造成工事の影響が現れたが,2ヶ月で安定
    し,平年の英虞湾の水質と同じレベルに推移した.底質中のCOD, TOCは各実験区とも減少して
    おり,干潟材料の浚渫土中の有機物は徐々に分解していると推測できた.また定着した底生生
    物の種類数,個体数は造成前のものと比較すると約半年で種類数が,約1年で個体数が回復する
    ことが確認できた.しかし,放流したアサリは冬から春にかけては干潟に定着し,成長が見ら
    れたが,夏期には減少してしまった.以上のように浚渫汚泥を用いた干潟は,本来の干潟とし
    ての機能を発揮しつつあると考えられる.さらに,浚渫土の混合割合と底生生物の定着状態と
    の関係を整理し,最適な浚渫土混合率を評価したので報告する.
200203  三重県内のNorwalk virus動向に関する研究(2001年度)
  西香南子, 杉山明,中山治
   キーワード:Norwalk virus,感染症発生動向調査,集団発生事例,環境因子
     Norwalk virus(NV)は食中毒を含む集団発生事例以外にも小児における感染症発生動向調査
    でも検出されており,狭い地域内での集団発生やdiffuse outbreakの原因としても着目されて
    いる.2001年度の定点のカキの汚染状況と環境因子との関連性について検討を行うとともに,
    集団発生事例,感染症発生動向調査のNV検出状況及びその遺伝子解析を行った.定点カキでは
    海水温が10℃以下になる頃からNV検出数が増加したことから,海水温との関連性が推測された
    が,雨量,海水比重については直接的な関連は認められなかった. NVは感染症発生動向調査
    で陽性検体数が増加し,同時期に貝類の関与しない集団発生事例が増加した.約1ヵ月後に定
    点カキで陽性数が増加し,貝類の関与が疑われる集団発生事例が増加した.
200204  伝統薬の継承(3) 実母散
  志村恭子,佐藤 誠,橋爪清,中山治,長谷川正樹1)
     1) 工業研究部
   キーワード:伝統薬,実母散,グリチルリチン酸,バリデーション
     三重県内には古くから伝わる伝統薬を製造している中小零細企業が立地している.実母散は
    江戸時代に有名であった,婦人薬等に用いられる生薬製剤であり,県内北勢地区の零細企業で
    も細々と製造が続けられている.こういった零細企業がGMPやバリデーションに対応していく
    ことは難しい.そこで,当部は,伝統薬を継承していくことを目的として,実母散に配合され
    た甘草中のグリチルリチン酸の定量法を見直すとともに,零細企業のレベルに合ったバリデー
    ションの指導を行った.その結果,定量法の精度は良好であり,また製造工程は十分管理され
    ていた.
200205  GPC及びGC/MS-SIMを用いた農産物中残留 農薬の迅速一斉分析(第3報)
  小川正彦,冨森聡子,林克弘,橋爪清
   キーワード:GPC,GC/MS-SIM,農産物中の残留農薬,一斉分析
     農産物中の残留農薬の迅速一斉分析法として,前報に引き続き,脱水抽出及びGCPによる
    クリーンアップを行いGC/MS-SIMにより分析する方法を検討した. 
      1)抽出溶媒の使用量を90mL,無水硫酸ナトリウムの使用量を90g,試料量を15gに減らし
       た条件で分析が可能であった.169種類の農薬で抽出率が高かった.
      2)GPCの分離カラムにShodex CLNpak EV-2000ACを使用し,GPC移動相にアセトン-
       シクロヘキサン(2:8)としたところ,流速3.0mL/minで農薬と農産物中の共存成分と
       の分離がよかった.172種類の農薬で回収率が高かった.
      3)以上の条件下での玄米及び野菜・果実4種類への添加回収実験で農薬170種類は実用上
       十分な回収率が得られた.
      4)検出された農薬を確認するため,試験溶液の一定量についてフロリジルミニカートリッ
       ジカラムクロマトグラフィーによりクリーンアップを行い,ECD-GC,FPD-GC,PDA-HPLC
       用の試験溶液とした.本法により146種類の農薬で分析可能であった.本手法とGPCの
       限定画分の再分取を併せ,添加回収実験で良好な結果であった農薬に対応可能と考えら
       れた.
     このことから本法はジクロロメタンを用いない,溶媒使用量の少ない農産物中165種残留農薬の
    迅速一斉分析法として有用と考える.
200206  山地森林の快適性(第2報)
  市岡高男,山川雅弘,加藤進,佐来栄治,早川修二
   キーワード:カンフェン,α-ピネン,揮発性有害大気汚染物質,測定方法
     四季について,穏やかな晴天日に森林及びその周辺においてテルペン類の濃度挙動と揮発性
    有害大気汚染物質濃度を調査した.その結果,森林及びその周辺におけるカンフェンの濃度挙
    動がα-ピネンに類似していることが明らかになった.森林の内外における揮発性有害大気汚
    染物質濃度の比較により,森林が揮発性有害大気汚染物質を吸収している可能性が示唆された.
    固体吸着-加熱脱着-ガスクロマトグラフ質量分析方法に比べて,容器採取-ガスクロマトグ
    ラフ質量分析方法ではα-ピネンの正確な測定が難しいことが示唆された.
200207  LC/MSを用いた大気中ニトロピレン類の分析法の検討
  山川雅弘,佐来栄治,早川修二
   キーワード:大気,1-ニトロピレン,ジニトロピレン,LC/MS,高速溶媒抽出装置
     大気中の1-ニトロピレン,1,6-ジニトロピレン,1,8-ジニトロピレン,1,3-ジニトロピレン,
    2-ニトロフルオレンおよび3-ニトロフルオランテンを対象に高速溶媒抽出装置および液体クロマ
    トグラフ質量分析計を用いて分析法の検討を行った.
    その結果,高速溶媒抽出装置での抽出ではジクロロメタンおよびトルエンとそれぞれのアセトン
    混合溶媒で良好な回収率が得られた.
     クリーンアップ方法を検討したところ,5%水酸化ナトリウム水溶液およびSep-Pak-Silicaに
    よる処理が有効であることがわかった.
     添加回収試験を行ったところ,1-ニトロピレン,1,6-ジニトロピレン,1,8-ジニトロピレンお
    よび1,3-ジニトロピレンで良好な回収率が得られたが,2-ニトロフルオレンおよび3-ニトロフル
    オランテンは大気捕集時の破過等により回収率が低くなった.
     今回検討した方法で大気中の1-ニトロピレン,1,6-ジニトロピレン,1,8-ジニトロピレンおよ
    び1,3-ジニトロピレンが検出限界0.12pg/m3~0.35pg/m3まで分析できた.

ノート

200108  2000/2001年シーズンの三重県における乳幼児に対するインフルエンザHAワクチンの有効性と安全性
  大熊和行,寺本佳宏,福田美和,高橋裕明,矢野拓弥,杉山明,中山治,神谷齊1)
     1)国立療養所三重病院
   キーワード:インフルエンザ,乳幼児,ワクチン効果,HI抗体価,副反応
     2000/2001年シーズンの三重県における乳幼児に対するインフルエンザHAワクチンの有効性と
    安全性に関する調査研究を行った.調査対象は,三重県内6か所の小児科医療機関を受診した6歳
    未満の乳幼児とし,保護者に調査の概要,意義等を説明し同意を得たうえでワクチン接種群,
    非接種群を設定し,基本属性,基礎疾患の有無,調査開始後1週間毎のかぜ症状の有無等を調査
    した.また,接種群については,ワクチン接種後48時間以内の副反応調査を行うとともに,採血
    に同意が得られた乳幼児を対象として,ワクチン接種前,1回接種後,2回接種後の計3回採血し,
    HI抗体価を測定した.これらの調査結果をもとに,ワクチン接種群162人,非接種群102人を対象
    としてインフルエンザの罹患・発病状況を38℃以上又は39℃以上の発熱を指標として解析を行っ
    た.解析にあたっては,インフルエンザの流行状況に沿って解析対象期間の絞り込みを行うとと
    もに,ワクチン接種群から1999/2000年シーズンにワクチン接種歴又はインフルエンザ罹患歴の
    あった者を除外した.その結果,38℃以上の発熱に関する非接種群に対する接種群の相対危険は
    0.66と,1999/2000年シーズンの三重県における乳幼児を対象とした相対危険(RR=0.62,P=0.006)
    に近い結果が得られ,統計学的に有意ではなかった(P=0.083)もののワクチンの有効性が期待で
    きる傾向が認められた.なお,1999/2000年シーズンの解析対象期間(2000年第2週~第7週)と
    本研究での解析対象期間(2001年第5週~第13週)における週・定点あたり平均患者報告数を三
    重県感染症発生動向調査結果から算出して比較すると,それぞれ35.5人,8.8人とインフルエンザ
    の流行規模が1/4と小さく,これが解析結果に影響したものと考えられた.
200209  発展途上国を対象とした簡易UV計による有機汚濁測定法の開発
  加藤進,佐藤邦彦,吉村英基,岩崎誠二,高橋正昭
   キーワード:有機汚濁,COD-Mn,COD-Cr,発展途上国,環境教育
     環境に優しい分析方法として簡易UV計を開発し,簡単にCOD-MnあるいはCOD-Crを推定できる
    方法を検討した.従来のUV計は高価で,持ち運びが困難である点を考慮し,安価でコンパクト
    なUV計の開発に努めた.本装置はゼロドリフト,再現性,直線性およびスパンドリフトが少な
    く,河川水や工場廃水を用いて,分光光度計と本装置との吸光度の比較を実施したが,有意な
    差異は認められなかった.実際のサンプルに適用し,COD-Mnに対する推定式はy=60×吸光度
    +0.34(R=0.89,n=70)であった.本装置をフィリピン等に持参し,種々の検体のUV254とCOD-Cr
    の関係を求めたところ,良好な回帰式y=170×吸光度(R=0.87,n=27)を得た.このようなこと
    から安価でしかも簡単な有機汚濁の測定に本法は利用が可能と思われた.
200210  オゾン,半導体光触媒,過酸化水素及び紫外線を併用する高度酸化による環境ホルモン類の酸化分解
  男成妥夫,吉岡理,岩崎誠二,高橋正昭
   キーワード:オゾン,半導体光触媒,紫外線,酸化分解,環境ホルモン,エストロゲン
     オゾン,半導体光触媒,紫外線等を併用する方法等のいわゆる高度酸化処理技術(Advanced
    Oxidation Process,AOP)を用い,環境ホルモン類を効果的に分解して無害化し除去する方
    法について検討した.その結果,以下の事がわかった.
      1)オゾン単独で用いる方法に比べ,オゾン-二酸化チタン光触媒-紫外線併用のAOPでは,
       TOC成分の除去速度が速くより完全な酸化分解の点で優れている.
      2)チオベンカ-ブはオゾン-二酸化チタン光触媒-紫外線併用のAOPにより,60min以内
       に効果的に酸化分解し無害化することが可能である.チオベンカ-ブのAOPによる酸化
       では,ギ酸やシュウ酸に代表されるカルボン酸類を経て無機化が生じ,最終生成物として
       炭酸ガス,水,硝酸イオン,塩化物イオン等が生じるものと考えられる.
      3)エストロゲンのAOPによる酸化では,ギ酸やシュウ酸に代表されるカルボン酸類を経て
       無機化が生じ,最終生成物として炭酸ガスと水が生じるものと考えられる.
200211  伊勢湾の水質環境の変遷
  吉岡理
   キーワード:伊勢湾,水質,閉鎖性水域,内部生産
     伊勢湾広域総合水質調査(環境省委託事業)データ(1978~1999年度)を用い,汚染物質濃度
    の経年変化,季節別地域別平均濃度,測定データ間の相互関係について解析を行ったところ,COD
    等伊勢湾に排出される汚染負荷量は削減されているにもかかわらず,表層におけるCOD,T-N,T-P
    等汚染物質濃度は横ばいのまま推移していた.CODは,クロロフィル-a,Org-NおよびOrg-Pと強い
    正の相関関係を有し,伊勢湾の有機汚濁が,陸上起源に加え内部生産起源の有機物に強く支配さ
    れていると考えられた.無機態窒素の主要成分であるNO3-Nは,表層において他の無機態栄養塩
    類と正の相関関係,塩分濃度と負の相関関係を有することから,陸域から流入したと考えられた.
    PO4-Pは,DOと負の相関関係を有することから,底質からの溶出,そしてさらに表層へ移動するこ
    とが考えられた.
200212  水中作業を利用した底質エストロゲン様物質の調査
  岩崎誠二,国分秀樹,加藤進,高橋正昭,澤井浩寿1),粟冠和郎1),大宮邦雄1),松田知成2),松井三郎2)
     1)三重大学生物資源学部微生物工学教室 2)京都大学工学研究科 環境工学専攻 環境デザイン工学講座
   キーワード:岩礁海域,潜水(水中)作業,エストロゲン様物質,Yeast Screen Assay,浮泥
     三重県志摩半島東海岸における岩礁海域の水質及び底質調査を,潜水技術を用いて実施した.
    その結果,本海域の海底は大部分が岩礁であり,海藻がよく繁茂している状況であった.
    水質は,海域が平穏である時は,上層水でCOD1.0mg/L,T-N0.09mg/L,T-P0.022mg/L等,閉鎖
    性水域と比較すると全般に低い値であった.また本海域の底質は新生堆積物の浮泥であり,
    TOC及びT-Nは,伊勢湾の底質より10倍以上高い値であった.エストロゲン様物質は水質0.20~
    0.55ng/L,底質11.6~14.6ng/gであり,底質のエストロゲン様物質は,伊勢湾の湾奥と同程度
    の値となった.本調査の底質はTOCが高く,化学物質の吸着が容易であると考えられることから,
    エストロゲン様物質が高い値を示したと推察された.
200213  多自然型河川作りに関する研究 鹿沼土を用いた同時脱リン・脱窒法 第4報
  吉村英基,加藤進,高橋正昭
   キーワード:鹿沼土,脱リン,吸着,重金属
     環境に優しい吸着担体として鹿沼土を利用した生活排水中のリン除去の実用化に向け,20L/日
    のスケールでのリン除去能力の検討および生活排水中に多量に含まれる塩化物イオンの吸着能力
    の検討をおこなった.回分式処理および連続式処理で処理実験を行ったところ,20L/日のスケー
    ルにおいても基材は実用可能な吸着能力を示すとともに,塩化物イオンは回分式処理においては
    基材の吸着能力に影響を及ぼさないことが明らかとなった.
     また,鹿沼土の基材は重金属類の吸着能力を有することを見いだし,重金属を含む汚水の流出
    等の対策において使用できる可能性を示した.
200214  アースラブ方式を用いた汚泥減量化の試み
  佐藤邦彦,高橋正昭,矢部栄次1),矢部孝1),安田雅直2)
    1)(有)アースラブ・ニッポン 2)環境部大気水質課
   キーワード:活性汚泥法,有用微生物群,汚泥の減量
     アースラブ方式排水処理技術による小型排水処理試験装置を用いた汚泥削減の実証実験を
    実施した.約5ヶ月間,余剰汚泥の引き抜きを行わずに連続運転を実施したところ,装置内
    の汚泥増加量は同一流入水を処理する下水処理場の汚泥引き抜き量の27%であった.処理水
    の水質としては,BOD, CODは安定して80~90%の削減率が得られた.T-Nは50%程度の削減
    率であったがT-Pについては約80%の削減率が得られた.
200215  2001年に三重県で発生した食中毒
  岩出義人,中野陽子,矢野拓弥,西香南子,山内昭則,川田一伸,杉山明
   
     2001年1~12月に三重県で発生した食中毒は発生件数14件,患者数397名であった.病因物質
    の内訳はVibrio parahaemolyticus 3件(喫食者数445名,患者数158名),Salmonella sp. 
    3件 (喫食者数60名,患者数17名),Staphylococcus aureus 2件(喫食者数180名,患者数34名),
    Norwalkvirus 2件(喫食者数24名,患者数19名),Campylobacter sp. 1件(喫食者数95名,
    患者数31名),Shigella sonnei 1件(喫食者数12名,患者数12名),不明 2件(喫食者数218
    名,患者数126名)であった. 
200216  2001年感染症発生動向調査結果
  矢野拓弥,中野陽子,西香南子,岩出義人,山内昭則,杉山明,中山治,神谷齊1)
    1) 国立療養所三重病院
   キーワード:感染症発生動向調査,コクサッキーA群ウイルス16型,B型インフルエンザ,Norwalk viruses
     2001年感染症発生動向調査定点から報告された疾患のうち,感染性胃腸炎が40.8%を占め
    最も多く,次いでインフルエンザ疾患が14%で以下,流行性耳下腺炎9.4%,水痘9.2%,手足
    口病6.3%と続いた.手足口病患者数は前年に比較し,やや減少した.同患者からコクサッ
    キーA群ウイルス16型(CA16)等が分離された.しかし本年は前年の起因ウイルスと推測された
    エンテロウイルス71型(EV71)は分離されなかった.例年どおり冬季にはインフルエンザ 疾
    患の発生がみられたが,本年の発生時期は遅く,昨年に比較して総患者数は大幅に減少した.
    1月下旬から3月にAソ連型(AH1)とB/山形系統のウイルスが分離された.12月にもAH1が分離
    された.冬季の感染性胃腸炎患者からはNorwalk viruses(NV),A群ロタウイルスが検出され
    た.また4月にはアストロウイルス(AstV)が検出されている.アデノウイルス感染症が年間
    を通じてみられ,消化器症状や咽頭炎等からアデノウイルス(Ad)1,2,3,4,7,40/41型等
    が分離された.
200217  2001年度の日本脳炎,風疹,豚インフルエンザ流行予測調査の解析
  中野陽子,矢野拓弥,杉山明
   キーワード:流行予測調査,日本脳炎,風疹,豚インフルエンザ,2001年
     6月中旬から9月上旬まで三重県中部地方の豚から日本脳炎ウイルスのHI抗体は,ほとんど検
    出されなかった.この期間中2-ME感受性抗体保有豚も検出されなかった.風疹のHI抗体保有率
    は男性で83%,女性では77%であった.風疹ワクチンを接種していた対象者のHI抗体保有率は接
    種者で93%,未接種者では74%であった.新型インフルエンザウイルスを想定した感染源調査に
    ついては120検体すべてからHI抗体は検出されなかった.
200218  三重県の酸性雨の状況について
  川上正純,佐来栄治
   キーワード:酸性雨,pH,SO42-,水溶性イオン,主成分分析
     酸性雨について,県下6地点(四日市市,上野市,松阪市,飯南町,磯部町,尾鷲市)で調
    査を行ってきた.その結果,pHは,平成11年度までは,全体的には6地点とも横這いないし僅
    かな上昇傾向を示し,同年では4.88~5.32であったが,12年度には全地点で0.5程度低下して
    4.37~4.81に,13年度もほぼ同様の値で推移し4.38~4.76であった.この原因としては,12年
    8月に発生した三宅島の噴火による酸性ガスの影響と考えられた.イオン濃度,沈着量及び主
    成分分析の結果から,6地点の降雨を比較すると,四日市,上野はSO42-,NH4+タイプ,磯部,
    尾鷲は海塩粒子タイプ,松阪,飯南はその中間タイプと考えられた.
200219  県下河川水中の環境ホルモン類の状況(第3報)
  早川修二,佐来栄治,山川雅弘
   キーワード:環境ホルモン,エストラジオール類,GC/MS,水質
     いわゆる環境ホルモン類(外因性内分泌攪乱物質)の内でフェノール系(ノニルフェノール,
    ビスフェノールA他)10物質について,三重県北部の5河川を対象に,固相抽出-誘導体化-
    GC/MS-SIM法で分析を行った.
     その結果,ノニルフェノールが,ND(0.05μg/L)~1.1μg/Lの範囲で,ビスフェノール Aが,
    ND(0.01μg/L)~2.0μg/Lの範囲で検出された.
     また,人畜尿由来の女性ホルモンである17βエストラジオールやエストロン等のエストラジ
    オール類4物質について,三重県下の8河川を対象に,固相抽出-誘導体化-GC/MS-SIM
    法で分析を行った.
     その結果,エストロンが検出されその濃度範囲は,ND(0.001)~0.020μg/Lであった.
200220  中国・瀋陽市における浮遊粉じん中の重金属濃度について(第1報)
  塚田進,松本寛1),崔金山2),山内徹3)
    1)北海道環境科学研究センター,2)瀋陽医学院,3)三重大学医学部
   キーワード:大気汚染,中国・瀋陽市,浮遊粉じん,有害重金属
     中国・瀋陽市の大気中の有害な重金属濃度の実態を把握するため,ハイボリウムエアーサン
    プラーを用いて地域別(工業地域,住居地域,幹線道路近傍,郊外の4地域)に,平成12年9月~
    平成13年8月までの1ヵ年にわたり浮遊粉じんを採取し,その中に含まれる重金属成分の調査行
    った.その結果,各地域の重金属濃度は高く,かつ工業地域>住居地域,幹線道路近傍>郊外
    の順に多かった.また,これらの重金属濃度は秋季から冬季にかけて濃度が高かった(夏季に
    比べて2~30倍).これは家庭用暖房として使用する低品位石炭の使用の増加や気象の影響によ
    ると考えられた.有害な金属の高濃度状況から,今後の汚染の進行が懸念された.
200221  三重県北部河川中アルキルフェノール類とビスフェノールAについて(第3報)
  佐来栄治,早川修二,山川雅弘
   キーワード:ノニルフェノール,ビスフェノールA,4-tert-ブチルフェノール,4-tert-オクチルフェノール,GC/MS,分解試験
     平成10年度から,三重県北部の河川についてノニルフェノールなどのアルキルフェノール
    類とビスフェノールAの11物質について調査を行ってきた.その結果,4-tert-ブチルフェ
    ノール,4-tert-オクチルフェノール,ノニルフェノール,ビスフェノールAの4物質がお
    もに水,底質中から検出された.また、産業廃棄物処分場跡地の排水からビスフェノールA
    と4-tert-ブチルフェノールが高濃度で検出された.平成13年度は,ビスフェノールAと
    4-tert-ブチルフェノールの高い排水が流入する三滝川について調査を行ったところ,流下
    中に希釈だけでなく分解にもより濃度が減少し下流にほとんど影響をあたえなかった.また,
    三滝川での挙動と分解試験結果がほぼ一致した.

資料

200222  食品衛生検査におけるISO9001:2000品質マネジメントシステム
  大熊和行,冨森聡子,橋爪清,杉山明,橋倉清和,福上清敏,中山治
   キーワード:食品衛生検査,ISO9001,GLP,品質マネジメントシステム,継続的改善
     2000年12月22日付けでISO9002:1994規格に基づく認証登録を受けた食品衛生検査における
    品質システムを組織のパフォーマンス改善のための8原則をもとに再構築し,2002年8月2日付
    けでISO9001:2000規格に基づく品質マネジメントシステムの移行認証登録を受けた.新しい
    システムは,PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを円滑に廻転できる”しくみ”を持ち,
    システム及びシステムの有効性を継続的に改善することが可能となった.本システムによる
    適正で信頼性の高い食品衛生検査を通じて,顧客の信頼と満足を得るとともに,公衆衛生の
    向上に寄与することができる.
200223  問題発生時の試験法導入(1)-レトルトカレー中のポリソルベート試験法
  小川正彦,林克弘,冨森聡子,橋爪清
   キーワード:ポリソルベート(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル),食品添加物,GLP,SOP(標準作業書)
     ポリソルベートは,食品添加物として国内で使用が認められていない化学物質である.
    これが県内事業者が輸入したレトルトカレーから検出された.そのため緊急にポリソルベート
    を検査することが求められた.そこで試験法を検討し,併せてGLPに対応したSOPの作成
    及び実検体への適用を行ったところ,次のような知見を得た.
      1)公定法の導入とそれ以外の試験法の導入に至る手法の違いが明らかとなった.
      2)薄層クロマトグラフを用いた限度試験としてのポリソルベート定性試験法が確立できた.
      3)チオシアン酸コバルト発色による吸光度を測定する定量試験法が確立できた.
      4)これらの試験法の限界を明確にし,精度管理を行うことで,GLPに適合したSOP
       を作成できた.
     以上のことから,緊急に試験法を導入する場合のモデル化を行うことができた.
200224  2001年度の先天性代謝異常等検査の概要
  山中葉子,長谷川圭司,橋爪清
   キーワード:先天性代謝異常等検査,先天性副腎過形成症,先天性甲状腺機能低下症
     先天性代謝異常等検査は県を実施主体としており,2001年度は県内の新生児のうち保護者が
    希望した18,316件について検査を行った.疑陽性と判定し再検査を行った検体は616件であり,
    精密検査依頼数はガラクトース血症1件,先天性副腎過形成症4件,先天性甲状腺機能低下症
    32件であった.確定患者数は先天性副腎過形成症1名,先天性甲状腺機能低下症11名であった.

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