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平成20年03月13日

保環研年報 第7号(2005)

2005年報表紙



 三重県科学技術振興センター 保健環境研究部年報 第7号(通巻第50号)(2005)を発行しましたのでその概要をご紹介します。

   各研究報告(原著、ノートおよび資料)の全文(PDF形式)をご希望の方は、こちらからダウンロードできます。
 


研究報告

 ノート

2005rep1 三重県感染症発生動向調査において指定届出機関から自由記載で提供される医療情報
  大熊和行,松村義晴,福田美和,中山 治
   キーワード:感染症発生動向調査,指定届出機関,医療情報,ワクチン接種
 三重県の感染症発生動向調査では,感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく指定届出機関から届け出される法定患者情報のほかに,地域における感染症の詳細な発生状況や患者に対する治療状況等に関する医療情報(自由記載意見)を収集・整理し,関係機関に提供している.
1999年11月~2005年4月に収集した医療情報を集計・分析し,以下のことについて明らかにすることができた.
①指定届出機関から提供された医療情報は合計4,434件あり,その疾患別内訳は,インフルエンザが 最多で1,012件(22.8%),次いで感染性胃腸炎の721件(16.3%),水痘の442件(10.0%),流行性   耳下腺炎の275件(6.2%),アデノウイルス感染症の249件(5.6%),A群溶血性レンサ球菌感染症の238件(5.4%)の順であった.
② ワクチン接種済者の罹患状況に関する医療情報は合計458件あり,その疾患別内訳は,水痘が最多で197件(43.0%),次いでインフルエンザの143件(31.2%),流行性耳下腺炎の87件(19.0%),麻しんの21件(4.6%)の順であった.
③水痘罹患者のうちワクチン接種済者は21.1%(615人中130人)であった.
④インフルエンザ迅速診断キットでA型と診断された罹患者のうちワクチン接種済者は17.9%(1198人中215人),同B型と診断された罹患者のうちワクチン接種済者は24.2%(752人中182人)であった.
⑤流行性耳下腺炎罹患者のうちワクチン接種済者は31%(113人中35人)であった.
2005rep2 科学教育を目指した出前講座の実践と反省点-今日もレモン電池に夢中-
  加藤進,吉村英基,吉岡理,岩崎誠二
   キーワード:レモン電池,出前講座,小学校,ボルタ電池,電気伝導率,pH
 出前講座の題材にレモン電池,ボルタ電池および燃料電池をとりあげた.生徒を4~6名の班構成にし,出来るだけ生徒が電池作りに関与するように努めた.また,サブノートを利用して実験記録にも留意した.これらの題材は,4年生で学習する光電池の続編として有用であり,生徒あるいは教師側の反応も良好であった.しかしながら,限られた時間での講座のために,やや説明が難しくなったりした嫌いがあった.今後さらに題材を精選し,より実りのある出前講座としたい.
2005rep3 不法投棄された硫酸ピッチの分析に関する研究
  吉村英基,岩崎誠二,吉岡理,加藤進
   キーワード:硫酸ピッチ, 不法投棄, 硫酸イオン, pH
 不正軽油製造に伴い発生する硫酸ピッチの性状分析について検討した.環境庁告示13号に基づく産業廃棄物の溶出試験法を元に,不法投棄事案への迅速な対応を可能とするためpH、硫酸イオン、n-ヘキサン抽出物質について迅速分析法を構築した.この方法を用いて実際の不適正処分された硫酸ピッチの分析を実施し、pHと硫酸イオンの間に明確な相関があること及び硫酸ピッチ中の亜硫酸イオンの存在を明らかにした.
2005rep4 ロートコン配合製剤中のアルカロイドの定量法について
  志村恭子,佐藤誠 , 橋爪清,中山治)
   キーワード:ロートコン,アルカロイド,アトロピン
 ハシリドコロ又はその他同属植物の根茎及び根であるロ-トコンは,消化液分泌抑制,鎮痛,鎮けい作用を持つことから,主に胃腸薬等に配合されている.ロートコン配合製剤中のアトロピン及びスコポラミン等の微量のアルカロイドの定量法は,他の配合生薬等妨害物の影響を受け易い.そこで,ロートコン配合生薬製剤(胃腸薬)をモデル処方とし,アルカロイドの測定方法,抽出法,精製法等を検討し,アトロピン等の定量法を確立した.本法はイオン交換樹脂を用いる精製法により配合生薬による妨害を除去することができるもので,本法により多くのロートコン配合市販胃腸薬中アトロピン等の微量成分の分析が可能であった.
2005rep5 GC/MS,LC/MSを用いた河川水中農薬の同時分析法の検討
  早川修二,佐来栄治,山川雅弘
   キーワード:GC/MS,LC/MS,農薬,固相抽出,水質
 問題発生時等の危機に対応するために,河川水中の農薬(主としてゴルフ場で使用される農薬による水質汚濁防止に係る暫定指針値に記載されている農薬)を対象に迅速性を主眼においてGC/MS,LC/MSを用いた同時分析法を検討した.
試料水500mLをpH3.5以下に調整後ポリスチレン系固相カートリッジに通水した後溶離液としてアセトニトリル5mLとジクロロメタン5mLを用いることで,GC/MS及びLC/MS分析用農薬を同時に溶出することができ,前処理の効率化が可能となった.
溶出液は2等分し,GC/MS用はジクロロメタンを加え脱水・濃縮後42農薬の分析が,またLC/MS用としてはそのまま濃縮し24農薬の分析が可能であった.
2005rep6  三重県北部河川中のアルキルフェノール類とビスフェノールAについて(第5報)
  佐来栄治,早川修二,山川雅弘
   キーワード:環境ホルモン,ノニルフェノール,4-tert-オクチルフェノール,ビスフェノールA,水中濃度,
          底質中濃度,分配試験
 平成10年度から16年度にかけて,三重県北部の河川を中心にノニルフェノールなどのアルキルフェノール類とビスフェノールAの11物質について環境調査等を行ってきた.14年度までの結果については,主にノニルフェノール,4-tert-オクチルフェノール,4-tert-ブチルフェノールやビスフェノールAの4物質が水,底質中から検出され,各物質とも水中濃度に比べ底質中濃度が高く底質に蓄積されていることなどを報告した.今回,15,16年度の環境調査結果とこれまでの調査結果をまとめた.また,河川中でのノニルフェノール,4-tert-オクチルフェノールの挙動を検討するために分配試験を行ったのであわせて報告する.
2005rep7  四日市地域における酸性雨の状況について(平成14-16年度調査結果)
  西山亨,佐来栄治,塚田進,山川雅弘
   キーワード:酸性雨モニタリング調査,N式パッシブ簡易測定法,沈着量,初期酸度,全無機態窒素,
           潜在水素イオン
 平成16年度調査は,15年度に引き続き四日市市内の2地点(新正,桜町)で,湿式調査(2種類の降水捕集方法)と乾式調査(N式パッシブ簡易測定法)を行った.その結果,pHは4.59-4.90であり,前年度(4.44-4.63)より酸性度は低くなった.N式パッシブ簡易測定法調査では,前年度と同様に,オゾン以外は新正が桜町より多く,約2倍の捕集量があった.
また,平成15年度結果を全国調査結果と比較すると,pHは両地点とも低い方から2%以内に入り,新正は太平洋側の地点にしては,非海塩性硫酸イオン濃度が高かった.また,水素イオン沈着量と初期酸度沈着量は北陸山陰地方に近い傾向があり,全無機態窒素沈着量と潜在水素イオン沈着量は共に多く,北陸山陰地方と似た傾向を示した.

 資料

2005rep8  2004年感染症発生動向調査結果
山内昭則,中野陽子,矢野拓弥,赤地重宏,岩出義人,杉山明,中山治
キーワード:感染症発生動向調査,インフルエンザ,アデノウイルス

 2004年1月から12月までに検査依頼のあった患者数は740名で,うち322名(43.5%)から病原体が分離・検出された.その内訳はインフルエンザ69名,感染性胃腸炎54名,ヘルパンギーナ20名,手足口病12名,無菌性髄膜炎7名等であった.このうちインフルエンザと診断された患者126名中69名からインフルエンザウイルスが分離され,その内訳はAH3型では65名(96.5%),B型 2名(3.5%)であった.感染性胃腸炎で依頼のあった109名の患者から集団発生に注意が必要なノロウイルス(NV)遺伝子型2(GⅡ)が最も多く13名から検出された.手足口病についてはコクサッキーA群(CA)16型が10月に7名,11月には2名から検出され,エンテロウイルス71型(EV71)は,11月に1名から検出された.EV71は,無菌性髄膜炎により重症化することと2~3年間隔で流行する傾向があり2006年は注意しなければならない.また,アデノウイルス(Ad)等呼吸器感染症疾患による患者からは,Adが106名から検出され,その内訳はAd3が67名で一番多かった.特に咽頭結膜熱が流行した7月から9月にかけては44名と特に多く検出された.た.
2005rep9  2004年度の日本脳炎,風疹,インフルエンザ,麻疹流行予測調査の概要
  矢野拓弥,中野陽子,赤地重広,岩出義人,山内昭則,杉山明
   キーワード:流行予測調査,日本脳・梶C風疹,豚インフルエンザ,人インフルエンザ,麻疹, 2004年度
 2004年度は,日本脳炎,風疹,豚インフルエンザ,人インフルエンザ,麻疹について感染源または感受性調査を実施した.日本脳炎感染源調査については三重県中部地方で飼育された豚の日本脳炎ウイルス赤血球凝集抑制(HI)抗体保有の有無を調査した.160倍以上のHI抗体を保有した豚が,2004年8月4日に3頭で確認された.IgM抗体の指標となる2-Mercaptoethanol(2-ME)感受性抗体も3頭全てで認められた.新型インフルエンザウイルスの侵入を監視する体制強化の一環として,豚の動物インフルエンザに対するHI抗体保有状況調査を実施したところ,A/swine/Saitama/27/2003(H1N2)に対するHI抗体保有豚2頭(HI抗体価:10倍)を確認した.2004/05シーズン流行期前に採取した人の血清での,人インフルエンザHI抗体保有率はA/NewCaledonia/20/99 (H1N1)に対して47.2%,A/wyoming/03/2003 (H3N2)では41.5%,B/Shanghai/361/2002は23.6%であった.麻疹感受性調査での全年齢層でのPA(Particle Agglutination Test)抗体保有率は98.6%と免疫獲得状況は良好であった.
2005rep10  2004年に三重県で発生した食中毒
  中野陽子,矢野拓弥,赤地重宏,岩出義人,山内昭則,杉山明
 2004年1~12月に三重県で発生した食中毒は発生件数11件,患者数503名であった.病因物質の内訳はNorovirus 4件(喫食者数415名,患者数214名),Salmonella sp.Enteritidis 2件(喫食者数149名,患者数37名),Salmonella sp.Virchow1件(喫食者数24名,患者数15名),Vibrio parahaemolyticus 1件(喫食者数235名,患者数42名),Campylobacter sp.1件(喫食者数394名,患者数96名),Staphylococcus aureus 1件(喫食者数162名,患者数48名),Bacillus cereus 1件(喫食者数60名,患者数51名)であった.
2005rep11  2004年度の先天性代謝異常等検査の概要
  山中葉子,橋爪 清
   キーワード:先天性代謝異常等検査,先天性副腎過形成症,先天性甲状腺機能低下症
 先天性代謝異常等検査は県を実施主体としており,2004年度は県内の新生児のうち保護者が希望した17,239件について検査を行った.疑陽性と判定し再検査を行った検体は386件であり,精密検査依頼数は先天性副腎過形成症27件,先天性甲状腺機能低下症24件であった.確定患者数は先天性副腎過形成症2人,先天性甲状腺機能低下症8人であった.出生体重2,000g以下の未熟児は282件で,17-OHPについては精密検査依頼数が22件,再採血依頼数が37件であった.
2005rep12  三重県の有害大気汚染物質の状況について(第2報)
  塚田 進,山川雅弘,佐来栄治,西山 亨,早川修二,白井宣一郎
   キーワード:有害大気汚染物質,ベンゼン濃度,PRTR法,黄砂
 前報では,平成10年度から平成14年度までに測定された有害大気汚染物質について解析,検討を行った.それによると有害大気汚染物質の濃度は,ベンゼンが環境基準を下回っているものの比較的高濃度であり,その他の物質は環境基準値,指針値を十分に下回っていること.濃度の経年変化は,おおむね低下あるいは横ばいの傾向にあること.また,測定項目について主成分分析を行ったところ,おおむね重金属類と有機化学物質類の2つのグループに分けることができる等について報告した.
今回は,さらにデータを加え平成16年度までの7ヵ年の測定データを使って解析,検討を行った.その結果,有害大気汚染物質の濃度の経年変化は依然として低下傾向あるいは横ばいの状態であり,特にベンゼン濃度は平成12年に自動車燃料の品質規制が行われたことから減少傾向にあることが判明した.大気汚染常時監視測定局の測定データと比較したところ,窒素酸化物(NO,NO2)は自動車排出ガス関連物質と良好な相関が得られた.特に,ベンゾ[α]ピレンとの相関が最も良かった.また,PRTR法による公開有害物質排出量の地域別排出量結果と最寄りの測定地点における有害大気汚染物質濃度を比較検討した結果,双方を容易に関連づけることができた.さらに,黄砂が観測された日とされなかった日の濃度と比較した結果,黄砂日の粉じん濃度,金属濃度は大幅に増加していることがわかった.
2005rep13  大気中多環芳香族炭化水素類高濃度日における気象,オキシダント,窒素酸化物等について
  山川雅弘,早川修二,佐来栄治,西山亨,塚田進,白井宣一郎
   キーワード:多環芳香族炭化水素類,大気,HPLC-FL
 大気中の多環芳香族炭化水素類6物質を対象に,三重県内5地点で月1回調査を実施した.
その結果,多環芳香族炭化水素類が高濃度となった日のオキシダント濃度は低く,平均風速,日射量は比較的小さかった.また,多環芳香族炭化水素類が高濃度となった日前後10日程度の窒素酸化物濃度,オキシダント濃度,平均風速等を考察したところ,調査地点だけでなく,それ以外の大気環境測定局ほぼ全ての地点で似かよった傾向(前後の日と比べて調査日の窒素酸化物濃度が高く,オキシダント濃度が低く,平均風速が小さい等)がみられた.このことから,今回考察した高濃度日は,周辺発生源の発生量変化等よりも,気象条件が大きく影響したのではないかと推測される.

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