直接的被害
犯罪被害者等は、犯罪等により、生命を奪われる、身体を傷つけられる、財産を奪われるといった生命・身体・財産上の被害を受けます。心身の不調
精神的反応
犯罪被害者等は、事件により大きな精神的ショックを受けることで不眠や食欲不振、集中力の低下等、心身にさまざまな不調が現れます。また、加害者から再被害を受けるかもしれないという恐怖や不安に苦しめられる場合もあります。
これらにより、事件前には当たり前にできていた家事や育児、仕事等が一時的にできなくなることがあります。
類型 | よくある症状 | |
大 人 ・ 子ども |
被害直後 | 頭が真っ白、現実として受け止められない、感情や感覚がマヒする、集中できない 等 |
中長期 | 事件を何度も思い出す、気持ちや感覚が自分から切り離されたような状態になる、混乱・動揺、不眠、食欲不振、吐き気 等 | |
子ども |
突然不安になり興奮する、いつもびくびくしている、集中力がなくなる、無表情、赤ちゃん返り、不登校、非行 等 |
後遺症
犯罪等による負傷が治癒せず、体の一部に不随等の身体障がいや、高次脳機能障がい等の精神障がいとして残る場合があります。精神的な不調は、一時的な反応として時間とともに軽くなる傾向がありますが、PTSD、うつ病、パニック障がい等の精神疾患として現れる場合もあります。
日常生活の不安
仕事上の困難
身体的・精神的被害が原因で、仕事上においてミスが増加したり、作業能率が低下したりします。
同僚との人間関係に問題を抱える場合もあります。加えて、ケガの治療や捜査協力、裁判手続きのための欠勤等が増加します。
このような状況について職場での理解が得られず、退職を余儀なくされる場合もあります。
不本意な転居
犯罪被害者等は、さまざまな事情により転居を余儀なくされる場合があります。
【主な理由】・ 自宅が損壊し、物理的に居住が困難となる
・ 自宅にいると事件のことを思い出してしまうなど精神的な問題
・ ストーカー被害や加害者と同居していること(DV、虐待等)により、再被害のおそれがある
・ 周囲のうわさ話等の二次被害 等
このほか、報道機関等による過剰な取材等や居宅内の捜査のためなどにより、一時的な避難が必要となる場合もあります。
経済的負担の増加
ケガの治療費やカウンセリング費用等の医療費が増加します。前述のように転居等の費用がかかるケースもあります。特に被害直後は、葬祭費や家事・育児・介護が手につかなくなったことによる一時保育や配食サービスの利用増加等、さまざまな面で経済的負担が増加します。
加えて、生計維持者が死亡した場合や身体的・精神的被害により働けなくなった場合は、収入が途絶え、たちまち経済的に困窮します。
捜査、裁判への負担
捜査や裁判にあたり、事件について何度も話さなければならず、その度に事件について思い出し、つらい思いをします。刑事手続きにおいては、一般的に接する機会がなく、知識も少ないため、捜査が進展しないように感じたり、勝手に進められていると感じたりすることがあります。
また、損害賠償請求等の民事手続きにおいては、訴訟費用・弁護士費用等の経済的負担が増加するほか、時間と労力が必要とされます。弁護人に委任しない場合は、加害者と法廷において直接向き合う可能性もあり、精神的負担が大きくなります。
再被害のおそれ
多くの犯罪被害者等は、加害者から再び危害が加えられるのではないかという不安や恐怖にさいなまれています。特にDVや児童虐待等は、加害者と同居している場合が多いため、再被害に遭う可能性が、他の犯罪等に比べて高いといえます。
再被害が現実となった場合には、より重大な結果が生じることがあるため、迅速かつ慎重な対応が必要です。
二次被害
人から危害を加えられ、人間社会に対する信頼が揺らぐ中、周囲からの好奇の目、偏見や誤解による心無い言動や中傷、興味本位の質問、インターネット上のいわれなき書き込み、報道機関等による過剰な取材等が大きな精神的苦痛となっています。周囲に不信感を募らせ、社会から孤立することも多く、こうした被害後における精神的被害は極めて深刻です。