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旧長谷川治郎兵衛家・原田二郎旧宅(松阪市)体験レポート
公開2019.9.30 改訂2021.2.8


 今回は、2019年に広く一般公開を開始した二つの松阪市の施設をご紹介いたします。


<目次>
・旧長谷川治郎兵衛家(きゅうはせがわじろうべいけ)
・原田二郎旧宅(はらだじろうきゅうたく)
・松阪という街について

・各館の概要


 

旧長谷川治郎兵衛家


 こちらは、旧小津清左衛門家(きゅうおづせいざえもんけ)と並んで、「豪商の町」である松阪を代表する文化施設です。

 とくに、長谷川家は近代までこの松阪の地で商売を続け、邸宅を広げ続けました。そのため、現代になって市に邸宅が寄贈された段階でも、経済力に裏付けられた建物と庭の豪華さがかなりの部分で残っています。

 



 庭には京都の鞍馬石が置かれ、秀吉の時代の灯篭が目を引きます。屋内には、木を編んで、光の屈折で濃淡が生じる見事な欄間があります。栃の木の一枚板でできた美しい床の間があります。黒檀や紫檀などの、極めて固い木材を曲げて加工した難しい細工が見られます。

 また、屋根を見ると、「うだつ」と呼ばれる防火用の装飾があります。日本語には「うだつが上がらない」という慣用句があり、「出世できない」といった意味で使われますが、その言葉は、屋根に立派なうだつが上がるのは、経済的に栄えていることを意味することから生まれたものです。長谷川家には立派なうだつが上がっています。

 

 


 それらは日本人が長く慣れ親しんできた味わいですが、素人の私が見ても、他と比べてその洗練の度合いがすさまじいことがわかりました。ここにあるのは、必ずしも豪華絢爛できらびやかなものではありません。しかし、純和風の贅を尽くした意匠の数々は、落ち着いたわびさびの奥深い美しさを感じさせます。

 私が訪れた日はあいにくの雨降りでした。しかし、同施設の館長さんは、「良い日に来られました。この庭は雨の日がおすすめなんですよ」とおっしゃっていました。苔が一層元気な姿を見せていました。雨だけではなく、どんな天候でも、どんな季節でも、そのときどきで自然の良さを楽しめるように考えられているのです。

 豪商の経済力があってはじめて実現できた贅沢さ、それも何代にもわたってその経済力を維持し、心の豊かさを手に入れたことで到達できる領域の美です。「日本の良さ」をとことんまで楽しむことができる場所です。

 


 同施設には、350年前の創業以来の会計帳簿が残っています。その一部が、当時の蔵を改造した展示スペースで見ることができます。そして、長谷川家は、三井家や小津家・長井家と並んで、藩札(紙幣)を発行することが許されていました。その貴重な資料も展示されています。

 また、施設内には、当時の商家の生活をしのばせるアイテムがいくつか展示されています。たとえば、台所の竈に貼られた「ある貼り紙」から、商家に伝わる風俗に触れることができます。貼られているのは何気ない言葉なのですが、ちょっとしたエピソードがありますので、機会があれば、ガイドさんなどにお話を伺ってみていただきたいです。

 「豪商のまち」の松阪らしく、日本の商業の歴史を学ぶことができる施設です。

 


 何より、ここは、本当のお金持ちにしか味わうことができない感覚を、入館料だけで体験できるすごい施設なのです。
 

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原田二郎旧宅


 旧長谷川治郎兵衛家や旧小津清左衛門家が「豪商のまち」松阪を象徴する施設であるのに対し、この原田二郎旧宅は、「御城番屋敷(ごじょうばんやしき)」と並んで、「武士のまち」でもあった松阪の名残を残す施設です。

 


 といっても、以前に「松阪市立歴史民俗資料館」をご紹介した記事でも述べましたが、松阪は、立派なお城がありながら、決して武士が権勢を誇った街ではありません。むしろ、武士が少なかったことで抑制が弱く、自由に商業を発展させることができた歴史があります。

 松阪には強力な武士の官僚機構はなく、「武士のまち」を構成していたのは、お城の警護等、現場の任務に従事する武士の住居でした。俸禄の石高は決して高くなく、経済的には豊かというものではありません。この家の主である原田二郎はとくにそうでした。松阪町奉行所の同心として紀州藩に仕官していた原田家は7石二人扶持でした。そのため、文化施設として公開される原田二郎旧宅は、とても質素な建物です。たとえば、「式台」は武家としての格式に基づいた大きさであり、それにつながる庭も質素です。

 


 とはいえ、単に「古い家屋だから文化的だ」という意味で公開されているわけでは、もちろんありません。江戸末期に生まれ、明治になって成功した原田が増築した部分も含め、質素で簡素でこじんまりとした家屋と庭ですが、和風の落ち着いた美を感じることができる施設になっています。

 


 その上で、原田二郎旧宅が前述の長谷川家や小津家と異なるのは、原田二郎個人の生きた証を残す場所となっている点です。長谷川家や小津家の施設にも個人名が付されていますが、それは代々の当主が名乗った名跡です。一人の個人を指すものではありません。豪商の一族が何代にもわたって極めた隆盛を示すための施設です。それに対して、この施設には、原田個人を顕彰する意味があります。

 原田は、江戸末期の貧しい武家に生まれましたが、漢学、国学に加え、当時の最新の学問である英語や医術も学んでいます。原田家は、質素倹約をしながら、嫡男に高い学問を修めさせたのです。明治になって大蔵省に勤めた原田は、存分に才覚を発揮し、国立銀行の頭取になりました。

 原田は明治の大立者(おおだてもの)とも親交がありました。同施設には、井上馨の書と、大隈重信から贈られた座布団が展示してあります。とくに後者について、そんな生活必需品が贈られるところから、その親交がかなり深かったことがわかります。

 

 
 当時の財界で大きな事業を成し遂げた原田は、莫大な退職金など、相当の蓄財をしました。原田は、その財産を全て、社会公共事業に対する助成団体「原田積善会」の設立に投じます。原田の優れた経済感覚で設立された同財団は、今でも活動を続け、松阪市等の公共事業や市民活動を支援しています。

 この施設は、そんな原田の人生と、彼が残したものを称えるための場所でもあります。
 
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松阪という街について

  前述の長谷川家や小津家は、豪商としての経済力や経済感覚に裏付けられた高い教養や見識によって、地域の文化に多大な貢献をしました。高名な茶人を何度も招いて、盛大な茶会を催し、茶道文化を地域に根付かせました。才ある芸術家の支援者となって、優れた作品を残すことを助けました。伊勢参りをする旅人に炊き出しをするなど、地域の発展につながる奉仕活動にも努めました。何より、文化の粋を集めた邸宅を残しました。
 
 そして、貧しい武家に生まれた原田も、高い教養を持ち、優れた経済感覚を有して、道徳的な公共心を持っていました。原田個人が傑物であったことは間違いないと思います。ただ、松阪の必ずしも豊かではなかった武士たち自体が、教養と経済感覚と公共心を持つ人の集まりだったように思えるのです。
 

 原田二郎旧宅では、2019年11月10日までの企画展として、城代組同心服部家伝来の資料と、士族授産のため設立された「松阪徳義社」所蔵の資料とを、1階の特別ケースで展示していました。

 服部家は松坂城代組を勤めた家系で、廃藩置県でその任を解かれました。その際、紀州藩主から一時金を支給されたのですが、それを同心仲間で持ち寄り、職を失った紀州藩士を救済する相互扶助団体を設立しました。なんと、原田積善会と同じく、同社も現在まで活動を続けています。松阪市及びその周辺市町における学校教育に対する支援活動、文化振興に関する支援活動をしています。

 


 松阪市の各文化施設には、通底するものがあるように思いました。人々の勤勉さ、経済感覚の鋭さ、高い教養と美的センス、自らを律し皆のために働こうとする心構えなどの、この地域から何人もの豪商が生まれた理由となりうる特徴が、いくつかの館で共通して示されています。この地域のそんな特性がどこから来るのか、一つの研究テーマになりそうです。
 
 そんな特徴を感じ取ることができる施設が、今回ご紹介した2館を含め、松坂城の周りに集まっています。いくつもの施設に入場できる共通チケットもあるということですので、丸一日かけて、お城の周りを廻ってみるのも楽しいのではないでしょうか。
 
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各館の概要


旧長谷川治郎兵衛家

松阪市魚町1653
0598-21-8600
隣接する駐車場はなし

開館時間: 9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日 : 毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

入場料: 一般 320円/6歳以上18歳以下 160円
※20名以上の場合は、団体割引があります。

「旧小津清左衛門家」「歴史民俗資料館」との3施設に入館できるチケット、「豪商のまち松阪3館共通入館券」(一般500円、6歳以上18歳以下250円)あり。

松阪市公式サイトはこちらから。
県HPでのご紹介はこちら。 




原田二郎旧宅

松阪市殿町1290
0598-23-1656
専用駐車場あり

開館時間:午前9時~午後5時
休館日:月曜日(祝日の場合はその翌日)・年末年始
入場無料

松阪市公式サイトはこちらから。
県HPでのご紹介はこちら。 



両施設とも、お車でお越しの方は市営駐車場(松阪市民病院前)をご利用できます。

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本ページに関する問い合わせ先

三重県 環境生活部 文化振興課 〒514-8570 
津市広明町13番地
電話番号:059-224-2176 
ファクス番号:059-224-2408 
メールアドレス:bunka@pref.mie.lg.jp

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