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令和05年09月12日

まちかど博物館体験レポートvol.15~参宮ブランド 擬革紙の会~
2023.9.12公開


<目次> 

はじめに
擬革紙とは
擬革紙つくり
擬革紙の会

館の概要


 

はじめに


 今回ご紹介するのは、玉城町のまちかど博物館、「参宮ブランド 擬革紙の会」です。
 
 同会は、江戸時代に伊勢で隆盛を極めた「擬革紙」という伝統工芸の復興を目指して結成された団体です。
 
  まちかど博物館として、伊勢の近隣に位置するこの地域の地場産業にあたる擬革紙の、歴史、つくり方、そして擬革紙を用いた製品などを紹介しています。

  擬革紙の製造技術は昭和に入る頃に一度途絶えましたが、同会の活動によって復活し、平成25年(2013年)、擬革紙は三重県指定伝統工芸品に指定されました。

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擬革紙とは


  擬革紙は、和紙に様々な加工を施して、見た目の風合いや手触りを限りなく革に近づけた素材です。財布、バッグ、小物入れ、手帳の表紙などを、擬革紙を使ってつくると皮革製品と見まがうものに出来上がります。

  お伊勢参りに多くの人たちがやってきた江戸時代に、擬革紙を使った煙草入れは、伊勢みやげとして大流行しました。


 
明治ごろの擬革紙の煙草入れを再現したものです。


 擬革紙とその製品は、当時、伊勢に通じる街道沿いで盛んにつくられました。なぜこの地方で擬革紙がつくられたかについて、「神宮の神域に皮革製品の持ち込みが禁じられていたから」と、まことしやかに語られることがあります。信じている人も多いのではないでしょうか。

  しかし、当時の文献などを調べても、神宮が持ち込みを禁止した記録は見つからないそうです。革が高価で貴重であったために代用品として擬革紙が使われ、旅の土産として軽くて持ち運びやすかったことや、何よりおしゃれであったことから、よく売れるようになり地場産業として発達した、というのが実際のところのようです。

  そんな俗説が生まれた理由について、同会の会長で、まちかど博物館としては館長さんを務める堀木茂さんは、「神様を大事にする日本人の精神性が深く関係しているのではないか」と考えています。殺生と無縁の製品を好んで身に着けることに、日本人の根底に流れる文化的な意識が影響したのではないかと。


  そんな伊勢国ならではの工芸だった擬革紙ですが、昭和に入って、ほとんどつくられなくなってしまいました。紙煙草が中心となって刻み煙草をキセルで吸うことが少なくなり煙草入れの需要が減った、皮革がかつてほど貴重でなくなった、といった時代の流れの中、製法の継承が途絶えてしまいました。

 この伝統工芸の復興を目指し、平成21年(2009年)、「参宮ブランド擬革紙の会」が結成されました。
 
 「人間が使うものをつくるのに、動物の命を奪わない方がよいという意識が、世界的に高まっている現在、改めて擬革紙が果たす役割は大きくなっているのではないか」と、堀木会長は考えています。


 
(左)同会の擬革紙です(加工途中)。
(右)革製品にしか見えない小物入れ。同会の擬革紙を使った製品です。


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擬革紙つくり


 同会の堀木会長に、擬革紙つくりの一部を教えていただきました。


 擬革紙の材料となるのは、白く何の筋も入っていない和紙です。その和紙を、「型紙」の間に挟んで圧力をかけると、皮のようなシワがつきます。

 「型紙」は、和紙を二枚貼ってシワをつけ、柿渋を塗る作業を繰り返して、強度を高めたものです。和紙の強さで、数百回は擬革紙を絞ることができます。型紙は「擬革紙づくりの肝となる存在」とのことです。

 和紙にシワをつけるため、次の手順を踏みます。写真ではすでに着色されシワもついた擬革紙を使っていますが、白い紙の段階でも、「型紙」をつくるときでも、方法は同じです。


 


   擬革紙にする紙を型紙の内側に置いて、芯となる棒に巻き込んでいきます。さらにその周りに布をまいていきます。


 


   それに全体重をかけて転がし、念入りに型紙のシワを写し取っていきます。しっかり足で踏み固めた後、擬革紙を縦にして万力にかけます。


 


  上下に圧縮して、和紙にシワをつけます。


 


   この作業を繰り返し、和紙を革状に仕上げていきます。

  なお、実演しているのは、かつてこのような方法で擬革紙をつくったという復元の道具です。現在では、現代的な油圧式の万力も使っています。





  以上の作業を、下記の手順で繰り返します。

1 白い和紙のまま、荒絞りを2回ほど
2 着色する
3 3回め~6回め、本絞りを繰り返す
4 濃い着色剤で、防水を兼ね本染めする
5 革と同じコーティング剤を塗布し、革に近づける

  同館では、その各段階で、擬革紙の変化の様子を展示しています。


 


  擬革紙にはいくつか種類があります。たとえば、横向きのシワだけをつける絞り方は「さざなみ絞り」、縦横斜めにも筋をつける絞り方を「鹿の子(かのこ)絞り」と呼んでいます。

  また、同館では、擬革紙そのものをつくる作業の見学・体験に加えて、擬革紙を使った製品つくりのワークショップも行っています。


 

 

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擬革紙の会

 三重県の伝統工芸の復興を目指し結成された擬革紙の会は、令和5年(2024年)に結成15年を迎えます。現在、会員数は13名です。

  メンバーとなった皆さんは、それぞれに特技を持っています。古い資料を調べることが得意な人、デザインが得意な人、裁縫が得意な人などです。多様な能力を合わせ、幅広い発想で新しい商品づくりを進めています。

  同会では、一緒に擬革紙を盛り上げる仲間を募集しています。たとえば、現在、会計の得意な会員がいないということで、「経理の仕事をしたことがある人なんかが参加してくれると嬉しいのだけれど」という会話が、会員の間で交わされていました。

  様々な製品の材料となる擬革紙の安定生産と、製品の商品化によって伝統工芸を復興させるために活動している同会ですが、現在はまだ企業として立ち上げるところには至っていません。ここまでご紹介した仕事に限らず、まだまだいろんな技能や労力が必要とのことです。擬革紙に関心がある方は、ぜひ同会の活動を見学してみてください。



本業はリフォーム教室の講師という会員が制作した、擬革紙のドレスです。

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館の概要


参宮ブランド 擬革紙の会

堀木 茂(ほりき しげる)  館長

度会郡玉城町下田辺937
JR参宮線・田丸駅 徒歩13分
駐車場 10台

要予約
開館時間 月~土10:00~16:00
(それ以外をご希望の場合は予約時にご相談ください。)

電話 090-4232-9738
E-mail Sancyuu_h@yahoo.co.jp

入場料 500円
体験 和紙の絞りつく業等(別途費用が必要。金額は内容によって異なります。予約時にご相談ください。)

同館の公式サイトはこちらから
県HPでのご紹介はこちらから

同館の活動は、松阪・紀勢界隈まちかど博物館「擬革紙資料館 三忠」(明和町)と相互に補完しあいながら進められています。





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本ページに関する問い合わせ先

三重県 環境生活部 文化振興課 〒514-8570 
津市広明町13番地
電話番号:059-224-2176 
ファクス番号:059-224-2408 
メールアドレス:bunka@pref.mie.lg.jp

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