現在位置:
  1. トップページ >
  2. まちづくり >
  3. すまい >
  4. 住まい >
  5. 空き家対策 >
  6.  令和4年度 住宅市場を活用した空き家対策モデル事業
担当所属:
  1.  県庁の組織一覧  >
  2. 県土整備部  >
  3. 住宅政策課  >
  4.  住まい支援班 
  • facebook
  • facebook share
  • twitter
  • google plus
  • line
令和05年03月08日

令和4年度 住宅市場を活用した空き家対策モデル事業

 

1.事業の背景と目的

 三重県の空き家率は、全国平均(13.6%)を上回る15.2%(H30住宅・土地統計調査)と全国21位であり、そのうち、使用目的のない「その他空き家」の率は、全国10位となっています。空き家の活用や除却に補助を行う市町も増えていますが、空き家は今も年平均約1,800戸のペースで増加しています。
 
 図1 三重県と全国の空き家率等


 このため、県内市町では、空家等対策計画に基づく取組を進めており、空き家やその所有者の調査等による情報収集を行っているところもあります。その中には、空き家の今後の対応を問う実態調査結果等の情報もありますが、個人情報を含むことから、「空き家を利活用したい」などの意向があっても、民間団体等との関係情報の共有が行えず、流通促進を図るうえで、十分な活用ができていない状況にありました。
 
 また、三重県内の空き家を相続するなどして、取得することになった方の中には、遠方にお住まいで、どうすればよいか分からず困っている方も多い状況です。これらの空き家は放置されてしまう場合があるため、対策の必要性が高いと考えられます。
 

2.事業の内容

(1)事業の概要と手順

 空き家の中には、物件の情報がオープンになれば、流通が促され、「その他空き家」の状況から脱するものが出てくると考えられます。
 そこで、市町が把握した空き家の所有者に対し、改めて空き家に対する意向調査を実施し、活用や解体等の希望を確認しました。回答のうち、個人情報の外部提供可とした所有者には、意向を実現するために専門家の紹介等を行うとともに、「空き家バンク」への登録等も進めるなどとして、活用可能な空き家の掘り起こしを図りました。
 また、関東や関西に住む方を対象に、広域空き家相談会を開催し、各種専門家からのアドバイスを受けることで、放置空き家の対策を促すことができました。
 これらの総合的な取組によって、県内の空き家の流通促進と、放置空き家の減少に寄与できたものと考えます。 
 さらに、これを機会に、行政・民間団体及び県民の皆様全てが、空き家対策に対する意識を高め、地域において波及的な効果が生じることも期待しています。

 図2 空き家(予備期のものを含む)と所有者の意向に応じた取組

 

(2)事業の取組詳細

① 協議会の設立
 県が調整役となり、県、県内の5市町(鈴鹿市、名張市、志摩市、東員町、明和町)及び関係3団体で「三重県空き家対策連絡協議会」を設立し、本モデル事業の実施主体としました。
 
② 空き家所有者の意向調査
 空き家所有者に対して、売買・賃貸、解体希望等の意向を把握するため、「空き家所有者情報の外部提供に関するガイドライン」(平成30年6月国土交通省住宅局)を活用して一斉調査(2,084件)を実施しました。
 
③ 売却・賃貸希望者への対応(取組①)
 空き家を売却・賃貸希望の所有者に対して、市町が運営する「空き家バンク」への登録を案内するとともに、了解が得られた物件については建築士による「空き家バンク」登録のための現地調査を実施しました。また、個人情報等の外部提供に同意された方に対しては、関係団体を通じて宅建業者の紹介等も行いました。
 
④ 解体希望者への対応(取組②)
 空き家の解体を希望する所有者に対しては、解体工事の事業者等の情報や補助金情報の提供を、さらに希望される場合は、関係団体を通じて解体業者の紹介等を行いました。
 
⑤ 所有者不明物件への対応(取組③)
 空き家の所有者が不明の物件については、専門家による調査を行ったうえで、物件に関する情報を当協議会で共有することとしました。これらの物件について、取得希望者が現れた場合は、財産管理制度を活用することで空き家の解消につなげたいと考えています。
 
⑥ 広域相談会の開催(取組④)
 県内の空き家の所有者が、関東、関西などの都市部に居住しているケースも多いことから、東京・大阪にサテライト相談会場を設け、県内の会場とオンラインで結び個別相談会を開催しました。
 

(3)成果

① 協議会の設立
 令和4年8月24日に、空き家対策を目的とした県内広域を対象とした官民連携の協議会を設立し、全体会議を開催しました。空き家対策において、行政のみ、民間のみでは十分な効果は上げられないと認識し、互いの強みをいかして、実効性のある取組を行うことで意見は一致しました。
 
 写真1 協議会全体会議の様子 図3 協議会規約(抜粋)

 ② 空き家所有者の意向調査
 まず、空き家が所在する市町において意向調査を実施しました。
 実施にあたり、意向調査票の形式、設問の内容、設問数、読みやすさ等によって回答率にも大きな影響があると考え、慎重に議論・検討を行いました。
 調査票は、市町ごとにそれぞれ事情に応じて加工できるようにするとともに、回答しやすいようにするため、フロー形式で線をたどってもらう形を標準案として採用しました。 
  図4 意向調査票(標準案)
 
 4市町から計2,084件の空き家所有者に対して郵送で調査票を送付しましたが、回答を得られたのは、全体で22.5%にとどまりました。また、個人情報等の外部提供に同意された方は、返信があったもののうち19.4%であり、いずれも当初の想定より大幅に低い結果となりました。

 表1 意向調査実施結果                       図5 意向調査設問概要
 

 なお、調査票は、大きく分けて活用と解体のいずれを希望するか、また、個人情報の外部提供に同意するか、さらに、活用希望の場合に「空き家バンク」等の登録を希望するか、という流れにしました。
 
③ 売却・賃貸希望者への対応(取組①)
 空き家の売却・賃貸希望者に対しては、市町が運営する「空き家バンク」への登録を促すため、意向調査票の発送時に、「空き家バンク」の登録書類を同封しました。しかし、現地調査や間取り図の作成等を所有者自身で作成することが困難な場合も多いと考え、希望者には建築士による現地調査を実施しました。
 
 図6 現地調査実施フロー図  写真2 現地調査の様子

 建築士による現地調査では、「空き家バンク」登録に必要な情報だけでなく、今後の空き家の活用に向けて参考にしていただけるよう、専門家の視点から、建物の劣化状況、問題点等を確認できる技術的知見を盛り込んだ簡易な報告書も作成することとしました。
 
  図7 空き家調査報告書(表紙)         図8 現地調査実施マニュアル(表紙)


 また、現地調査方法等について、これまで決まった手法がなかったことから、複数の調査員が、均質な成果物を作成できるようにするため、調査マニュアルが必要となりました。そこで、調査箇所、方法、体制、トラブル対策、近隣対応等について主に三重県建築士事務所協会において検討を重ねられ、実施マニュアルを作成しました。

 図9 現地調査実施マニュアル(付属棟の扱い)  図10 現地調査実施マニュアル(成果物の扱い)
 

 これら現地調査に基づき、52件の空き家が「空き家バンク」等への登録に向けて、準備が進められることとなりました。
 
④ 解体希望者への対応(取組②)
 空き家の解体を希望する所有者のうち、個人情報等の外部提供可と回答された方に対しては、三重県建設業協会から解体業者を紹介するとともに、外部提供不可と回答された方には、自身で行動しやすいよう、関係団体の連絡先等の資料を送付しました。
 これによって、53件の空き家が解体に向けた行動につながりました。
 
⑤ 所有者不明物件への対応(取組③)
 所有者がいない空き家においては、誰も管理しないため、腐朽するのみとなってしまいます。一方で、近隣住民等、当該空き家又はその敷地の取得希望者が現れる可能性もあります。その場合、市町が財産管理人の選任を家庭裁判所に申し立て、当該管理人が対応することで、空き家の活用等につながることも考えられます。
 
 そこで、当協議会では、本当に所有者が不明又は不存在であるか、専門家に調査を委託し、不存在が確定した空き家について、情報共有を行うこととしました。
 これにより、今後、仮に、取得希望者が現れた場合は、円滑に空き家の活用等を行うことも可能となります。
本事業では、7件の空き家について調査を実施しました。

⑥ 広域相談会の開催(取組④)
 県内の空き家を所有しているものの、県外の遠方に居住している場合、空き家の管理も容易ではありません。
 このようなケースでは空き家が放置される場合が多くあるものの、空き家の所有者としても、何とかしたいが、どうすればよいか分からない、気になってはいるが、現地に行くのも大変、と悩んでいる方も多いと考えられます。
 
 そこで、東京と大阪に設けたサテライト会場に空き家所有者にお越しいただき、三重県内に設けた会場に待機する各種専門家が相談に応じる広域空き家無料相談会を開催しました。

図11 広域空き家無料相談会の案内チラシ

 
 相談会の実施にあたっては、以前より宅地建物取引士、建築士、司法書士等の関係8団体で構成する「空き家ネットワークみえ」が、三重県内で空き家相談会を実施しているため、この取組においても「空き家ネットワークみえ」の協力を得て実施することができました。

 図12 相談会の実施フロー


 しかし、オンラインの相談会は初の試みであり、多くの方が関わるイベントでもあることから、会場運営、資料の取扱方法、相談に対する回答方法、機材の使用方法の説明等を整理した実施要領等をまとめる必要がありました。
 そこで、「空き家ネットワークみえ」の協力をいただきながら実施要領を作成し、これに基づき、相談会を実施しました。
 
2会場における相談者アンケート結果
 図13 アンケート結果   
    

 

   令和4年12月17日(土) 大阪会場での相談会   

   令和5年1月14日(土) 東京会場での相談会
    
 
⑦ 成果のまとめ
 本事業により計130件の空き家について、活用や解体に向けた動き等につなげることができました。
中には、無償譲渡が成立した事例もあり、多様な方法で空き家の活用が実現できることを認識することとなりました。

 図15 取組成果集計

 

3.評価と課題

本事業の各取組による評価
・2,084名の空き家所有者への調査実施をきっかけとし、130件の空き家が活用等に向けた具体的な対応につながりました。
・このうち、52件の空き家が「空き家バンク」等の登録対象となりました。
情報の外部提供を目的とした空き家所有者の意向調査の標準案を作成し、今後の他市町における調査に活用可能となりました。
「空き家バンク」登録等のための現地調査マニュアルを作成し、専門家による調査手法が確立できました。
・2つの会場をオンラインで接続して行う相談会の実施要領を作成し、遠隔地での相談会の運営手法ノウハウを得ることができました。
① 協議会の設立
 本協議会の構成員はいずれも空き家対策に積極的であり、各取組に前向きに取り組んでいただきましたが、今後、より多くの団体等に参加いただき、新たな取組についても検討しながら、さらなる機能強化を図りたいと考えます。
 
② 空き家所有者の意向調査
 今回、意向調査票は予定件数を発送したものの、返信率が低かったことが残念な点として挙げられます。空き家の流通促進には所有者自らの行動が必要不可欠です。このため、いかに、所有者に訴えかけるか、意向調査の方法や意向調査以外の方法も含めたさらなる試行錯誤と、空き家対策自体に対する啓発活動も引き続き必要と考えます。
 
③ 売却・賃貸希望者への対応(取組①)
 「空き家バンク」の登録希望者は一定数存在することが把握できたため、今後、さらに有効な対応策を実行できれば、登録件数の増加も期待できると思われます。
ただし、一般公開される「空き家バンク」への登録には抵抗感を感じられている方も少なくないため、別の新たな仕組みについても検討が必要と考えます。
 また、本事業により、建築士による現地調査の仕組みを作ることができたため、今後、市町による「空き家バンク」登録推進の取組に利用できると考えます。
 
④ 解体希望者への対応(取組②)
 空き家の解体に要する多額の費用が大きな問題であり、この負担感の軽減と解体工事の動機付けにつながる取組の実施についても課題の一つと考えます。
 また、解体業者の選定についても、一般の方にとっては難しい問題であるため、関係団体による適切なアプローチも有効と感じます。
 
⑤ 所有者不明物件への対応(取組③)
 財産管理制度を利用して所有者不明・不存在空き家の活用を実現するハードルは低くはないと考えられるものの、一手法として知られることを期待したいと考えます。
 
⑥ 広域相談会の開催(取組④)
 今回、大阪会場の参加希望者は、空き家所有者の居住地が比較的三重県と近く、参加者は4組にとどまりましたが、東京会場の希望者は多く、アンケートの結果も好評であり手ごたえが感じられました。
 相談者の内容から、空き家問題と一言に言っても、相続の問題、境界の問題、維持管理の問題等、様々な問題があり、解決のためには様々な専門家のアドバイスを必要とすると考えられることからも、相談会に対するニーズは大きいと言えます。
 ただ、県内全域の空き家を対象としているため、空き家の所在地付近の事情が分からない相談員が話を聞く場合もあり、具体的な踏み込んだアドバイスができないケースもありました。事前に市町から情報を収集等することである程度はカバーできるものの、相談者・相談員ともに満足度を低下させてしまうおそれがあります。
 
⑦ まとめ
 空き家は今後もますます増え続ける考えられる中、行政機関においてできることには限りがあります。
 このような状況で、根本的な空き家対策のためには、民間の力を活用した官民連携の新たなスキームが必要とされていると考えます。

 令和3年度までに三重県内の市町により実施された空家等対策の推進に関する特別措置法第14条の規定に基づく代執行(解体等)は15件あり、単純平均でその解体工事費は約270万円となっています。
 一方、本事業における事業費は、約250万円であり、対応に着手された空き家130件で除すると、1件あたり2万円弱となります。
 この130件について、まだ空き家解消には至っていないため、単純に比較はできないものの、このコストで放置状態から脱出でき、今後、活用や除却される空き家が出てくると思われることから、一定の費用対効果が得られたものと考えます。

 写真7 代執行の特定空家等
 

 空き家は、1件、2件の問題ではなく、膨大な数の空き家に対応する必要があります。したがって、壊さざるを得ないような終局的な状態まで放置し、1件数百万もかけるのではなく、不確実でも、早期に安価で幅広くはたらきかける手法も併せて実施する必要があると思われます。

 図16 費用対効果検証

4.今後の展開

 本事業の成果を広く県民、市町、関係団体等に周知し、取組内容の理解を得るとともに、今後も本事業の各取組を展開していきたいと考えます。
 
 また、官民が連携して取り組むことの有効性、必要性等について理解を深め、可能なことから着実に実施し、空き家の流通促進・発生抑制を図っていきたいと考えます。
 

本ページに関する問い合わせ先

三重県 県土整備部 住宅政策課 住まい支援班 〒514-8570 
津市広明町13番地(本庁4階)
電話番号:059-224-2720 
ファクス番号:059-224-3147 
メールアドレス:jutaku@pref.mie.lg.jp

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

ページID:000272251