三重県情報公開審査会 答申第91号
答申
1 審査会の結論
実施機関が行った非開示決定は妥当である。
2 異議申立ての趣旨
異議申立ての趣旨は、異議申立人が平成12年2月16日付けで三重県情報公開条例(昭和62年三重県条例第34号。以下「条例」という。)に基づき行った「三重県議会傍聴規則第12条に定める写真、映画等の撮影及び放送録音等の禁止で同行為の許可願に関して県政記者クラブ等と県民に対してその取扱いが定められた文書」の開示請求に対し、三重県議会議長(以下「実施機関」という。)が平成12年2月28日付けで行った非開示決定(以下「本決定」という。)の取消しを求めるというものである。
3 実施機関の非開示理由説明要旨
実施機関の主張を総合すると、次の理由により、本件請求は条例附則第3項に規定する公文書に該当しないため、非開示が妥当というものである。
開示請求のあった公文書(以下「本件公文書」という。)については、昭和60年12月23日の議会運営委員会において諮られた「三重県議会傍聴規則の取り扱いについて」という文書が存在するが、条例附則第3項により、議会が管理している公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書について適用することとしており、本件公文書については適用対象外にあたるため本決定をしたものである。
なお、本件公文書の内容については、議会事務局担当者から異議申立人に対しては口頭で説明し、議会としての説明責任は十分果たしてきたところである。
4 異議申立ての理由
異議申立人の主張を総合すると、次に掲げる理由から実施機関の決定は、条例の解釈運用を誤っているというものである。
- 平成9年度以降に作成、又は取得した文書しか存否の確認をしていないのであれば、それ以前に行われた本会議や委員会等の議決機関の存在そのものを否定するに他ならず、開かれた議会とは言えない。
- (2)傍聴規則の取り扱いが、仮に本会議や委員会等の議決機関で決定されたとするならば議事録は条例上の対象公文書であり、平成9年度より以前のものであり対象外であるとの判断は、本会議や委員会等の傍聴制度との整合性を著しく欠いている。議決機 関による決定ではなく、代表者等の取り決めや申し合わせ事項であっても書面により保管されているならば対象公文書となるし、作成そのものがされていないのであれば明確な要綱を定め、県民に対しても権利を保証しなければならない。
- (3)開かれた議会を標榜するなら条例の例外規定を乗り越え、一定の範囲において期日以前の文書も開示もしくは任意により情報提供されなければならない。
5 審査会の判断
(1)基本的な考え方について
条例第1条によると、本条例の目的は、県民の公文書の開示を求める権利を明らかにするとともに、県民の県政に対する理解と信頼を深め、開かれた県政を一層推進する、というものである。条例は、原則公開を理念としているが、公文書を開示することにより、請求者以外の者の権利利益が侵害されたり、行政の公正かつ適正な執行が損なわれるなど県民全体の利益を害することのないよう、原則公開の例外として限定列挙した非開示事由を定めている。
当審査会は、情報公開の理念を尊重し、条例を厳正に解釈して、以下について判断する。
なお、本件異議申立ては、改正された三重県情報公開条例(平成11年三重県条例第42号)の施行前になされた処分にかかるものであるため、改正前の条例に則して判断する。
(2)条例附則第3項の意義について
改正前の条例は、当初昭和63年6月1日に施行されたが、平成9年3月に条例が改正され、議会が実施機関として加えられた。なお、議会が管理している公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書について適用することとし、同内容の経過措置が、附則第3項に規定されたものである。
(3)条例附則第3項の適用について
実施機関は、実施機関が管理している公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書について適用することとしており、今回の請求については条例の適用範囲外にあたる、と主張している。本件公文書は、昭和60年12月23日の議会運営委員会において諮られた「三重県議会傍聴規則の取り扱いについて」という文書であり、条例附則第3項が、「議会が管理している公文書については、・・・平成9年度以降に作成され、又は取得した公文書」に限定している以上、条例上の対象公文書の範囲外であると言わざるを得ない。
よって、実施機関の本決定は、妥当である。
(4)結論
よって、主文のとおり答申する。
6 審査会からの提言
当審査会の結論は以上のとおりであるが、審査会として次のとおり提言する。
本件事案の場合、対象となる公文書は条例附則に規定する対象公文書の適用範囲外であることは明らかであり、形式的に条例を解釈すれば、実施機関の本決定に法的な瑕疵があったとは認められない。
条例上、議会が管理する公文書については、平成9年度以降に作成され、又は取得したものについて適用していることに関しては、立法政策上の判断であり、当審査会として意見を述べる立場にない。しかし、条例上の対象公文書ではない公文書の開示請求があった場合であっても、単に形式的に条例上非開示決定を行うにとどまるのではなく、公文書の内容に応じて積極的な情報提供を進められるよう希望する。特に、本件公文書の内容は、議会傍聴規則の取り扱いを定めたものであり、また、実施機関が主張するとおり、本件公文書の内容を口頭で説明し得るものであれば、傍聴希望者を対象に掲示あるいは配付しても差し支えない性質のものと考えられる。
7 審査会の処理経過
当審査会の処理経過は、別紙1審査会の処理経過のとおりである。
別紙1
審査会の処理経過
年月日 | 処理内容 |
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12. 5.16 | ・諮問書受理 |
12. 5.17 | ・実施機関に対して非開示理由説明書の提出依頼 |
12. 6. 6 | ・非開示説明書受理 |
12. 6.12 | ・異議申立人に対して非開示理由説明書(写)の送付、 意見書の提出依頼及び口頭意見陳述の希望の有無の確認 |
12.11.28 | ・書面審理 ・実施機関の非開示理由説明の聴取 ・異議申立人の口頭意見陳述 ・審議 (第119回審査会)
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12.12.19 | ・審議 ・答申 (第122回審査会)
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三重県情報公開審査会委員
職名 | 氏名 | 役職等 |
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※会長 | 岡本 祐次 | 三重短期大学法経科教授 |
※会長職務代理者 | 樹神 成 | 三重大学人文学部教授 |
※委員 | 渡辺 澄子 | 松阪大学短期大学部教授 |
委員 | 早川 忠宏 | 弁護士 |
委員 | 丸山 康人 | 四日市大学経済学部教授 |
委員 | 豊島 明子 | 三重大学人文学部助教授 |
※委員 | 山口 志保 | 三重短期大学法経科助教授 |
なお、本件事案については、※印を付した会長及び委員によって構成される部会において調査審議を行った。