1 不登校児童生徒の現状について
令和元年度の県内公立学校の不登校児童生徒数(30日以上欠席)は小学校695人、中学校1,612人、高等学校778人(全日制516人、定時制262人)で年々増加しています。【別添表1】
2 訪問型支援について
(1)訪問型支援の実施について
不登校児童生徒については、学校における別室登校や放課後登校、養護教諭による相談・指導、スクールカウンセラーによる面談、担任が家庭訪問をするなどの支援を行っています。こうした中で、教員を除いてどの相談機関ともつながっていない不登校児童生徒を対象に、臨床心理士等の専門家による訪問型支援を実施することとしました。
県教育委員会では、市町教育委員会を通じて、学校から「教員(養護教諭以外)を除いてどの相談機関等ともつながっていない」、「令和元年度に90日以上欠席していた、または今年度90日以上欠席する可能性がある」など、訪問型支援が必要と考えられる児童生徒の情報を提供してもらい、19人に訪問型支援を実施しています。
支援にあたっては、19人の児童生徒やその保護者の状況に応じて、県が委嘱する不登校支援アドバイザーやスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーが役割分担して実施しています。
(2)訪問型支援を行っている主な事例
【事例1】
『状況』児童Aは文字の構造やパターンを思い起こすことが苦手であり、得られた情報を新たな場面で活用することや、一般化することに困難が見られる。やらなければいけないことができていないとこだわってしまい、学校を欠席することがあり、今年度に入り、欠席が増えている。
『対応』不登校支援アドバイザーが児童Aの特性を見立て、家庭での学習に対してスケジュールをノートに記入し、達成状況を確認している。児童Aの状態を確認しながら、放課後の教室に入ってみるなど、スモールステップで教室に近づけている。
【事例2】
『状況』児童Bと児童Cは母と祖母と暮らしている。母は夜勤をしており、子どもたちの生活リズムとのずれがある。また、祖母の介護にも時間を要する状態である。経済的に厳しい状態であるが、福祉的支援は受けていない。
『対応』学校は地域の民生委員の協力を得て、親戚から母親に児童B・Cの登校について話をしてもらった。また、スクールソーシャルワーカーが学校と連携し、母親に児童扶養手当・学習支援事業など福祉的支援を紹介し、関係機関にも同行して手続きを行った。児童Bは登校できるようになっており、児童Cも少しずつ登校し始めている。
【事例3】
『状況』生徒Dは一昨年頃から登校しようとすると腹痛を訴えるようになった。学校に登校できる日もあるが、始業時間に間に合わないと欠席することが多い。生徒Dには他に2人のきょうだいがいるが、母親は生徒Dに特に厳しく接してしまう。
『対応』スクールカウンセラーが家庭訪問して母親と面談し、家庭での状況等を聴き取った。そして、不登校の要因について見立てを行い、母親に対して、生徒Dとの1対1でのやりとりの具体的な方法を提案した。その後、学校にもその内容を共有のうえ、担任が家庭と連携して登校意欲が高まるような学習環境づくりに努めている。
【事例4】
『状況』生徒Eは、一昨年度に病気で学校をしばらく欠席し、学習や部活動で遅れてしまったことで、昨年度から欠席しがちとなった。友達からの誘いで登校できるようになってきたものの、学校の課題が終わらないなどつまずきを感じると欠席する。
『対応』不登校支援アドバイザーが保護者や生徒Eとの面談等を行い、登校と欠席を繰り返すことに不安を感じている保護者に寄り添いつつ、生徒Eの状態を確認し、少し距離をおいて見守ることや、変化があったときの声のかけ方などについて助言している。
3 来年度の取組
(1)訪問型支援について
訪問型支援については、個々の事例の支援内容と児童生徒の変容を見極めながら継続していきます。加えて、教育支援センター3施設をモデルとし、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーを重点的に配置して、不登校支援アドバイザーの助言を得ながら訪問型支援や相談体制の強化等に取り組みます。
(2)不登校支援のデータベース化
今年度実施した訪問型支援を含め、不登校児童生徒の状況に係る情報や支援内容、児童生徒の変容等をデータベース化し、教職員が類似の対応事例を参考に適切な支援ができるしくみを構築します。
(3)専門スタッフを活用した支援について
不登校児童生徒が増加し、その状況も多様化していること、福祉的な支援などが必要な家庭が増加していること、さまざまな不安や課題のある児童生徒への多様な支援が必要となっていることなどから、スクールカウンセラーとスクールソーシャルワーカーの学校への配置時間を拡充します。スクールカウンセラーについては、新たに教育支援センターや特別支援学校にも配置します。また、中学校、県立学校には、生徒がより相談しやすい環境を整備するため、教員OBなどの教育相談員を新たに配置します。